弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成29年(受)第491号居住確認等請求本訴,家屋明渡等請求反訴事件
平成29年12月21日第一小法廷判決
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人河田創,同中道滋の上告受理申立て理由第3について
1本件本訴は,上告人が,被上告人(京都市)の所有する住宅地区改良法(以
下「法」という。)2条6項の改良住宅である第1審判決別紙物件目録記載1の住
宅(以下「本件住宅」という。)を使用する権利(以下「使用権」という。)を上
告人の母であるAから承継したなどと主張して,被上告人に対し,本件住宅の使用
権及び賃料額の確認等を求めるものであり,本件反訴は,被上告人が,本件住宅を
占有する上告人に対し,所有権に基づく本件住宅の明渡し及び賃料相当損害金の支
払等を求めるものである。
2改良住宅に関する関係法令の定めは,次のとおりである。
(1)ア法は,不良住宅が密集する地区の環境の整備改善を図り,健康で文化的
な生活を営むに足りる住宅の集団的建設を促進し,もって公共の福祉に寄与するこ
とを目的とするものである(1条)。
イ住宅地区改良事業の施行者は,市町村又は都道府県であり(法3条),同事
業において,改良地区内の不良住宅を除却しなければならず(法10条),そのた
め必要がある場合においては,当該住宅又はこれに関する所有権以外の権利を収用
することができ,その収用に関しては,土地収用法の規定を適用するものとされて
いる(法11条1項,16条1項)。
ウ施行者は,国土交通大臣による改良地区の指定の日において,当該地区内に
居住する者で,住宅地区改良事業の施行に伴いその居住する住宅を失うことによ
り,住宅に困窮すると認められるものの世帯の数に相当する戸数の改良住宅を原則
として当該地区内に建設しなければならないとされている(法17条1項,3
項)。そして,上記指定の日から引き続き当該地区内に居住していた者等で,住宅
地区改良事業の施行に伴い住宅を失ったものその他の法18条各号に掲げる者につ
いては,改良住宅への入居を希望し,かつ,住宅に困窮すると認められるものを改
良住宅に入居させなければならないとされている(同条)。
エ国の補助を受けて建設された改良住宅の管理については,改良住宅を公営住
宅法に規定する公営住宅とみなして,公営住宅の管理に関する同法27条1項から
4項までが準用されている。他方,公営住宅の入居者が死亡した場合において,そ
の死亡時に当該入居者と同居していた者につき,事業主体の承認を受けて引き続き
当該公営住宅に居住することができる旨を定めた同条6項(平成8年法律第55号
により新設されたもの)は準用されていない(法29条1項)。
オ国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者は,当該改良住宅に引き続き
3年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるときは,
当該改良住宅を明け渡すように努めなければならないとされている(法29条3
項,平成8年法律第55号による改正前の公営住宅法(以下「旧公営住宅法」とい
う。)21条の2)。
(2)施行者は,国の補助を受けて建設された改良住宅の管理について必要な事
項を条例で定めるものとされており(法29条1項,公営住宅法48条),被上告
人は,改良住宅及び公営住宅を含む市営住宅の管理等について京都市市営住宅条例
(平成9年京都市条例第1号。以下「本件条例」という。)を制定している。本件
条例24条1項は,改良住宅の入居者が死亡した場合において,その死亡時に当該
入居者と同居していた者で,入居の承認に際して同居を認められていた者又は同居
の承認を受けて同居している者(以下,併せて「死亡時同居者」という。)は,市
長の承認を受けて,引き続き,当該改良住宅に居住することができる旨を定めてい
る。
3原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)被上告人は,平成20年1月,Aに対し,法18条所定の改良住宅に入居
させるべき者に当たるとして,国の補助を受けて建設された本件住宅を賃貸して引
き渡した。
(2)上告人は,平成22年5月頃からAを介護するため本件住宅に同居した
が,京都市長に対し,本件条例に基づく同居の承認を申請しなかった。
(3)Aは,平成25年9月に死亡した。
(4)上告人を含むAの相続人の間で,平成27年7月,上告人が本件住宅の使
用権を取得する旨の遺産分割協議が成立した。
4原審は,要旨次のとおり判断して,上告人による本件住宅の使用権の承継を
否定した。
公営住宅の入居者が死亡した場合には,その相続人が公営住宅を使用する権利を
当然に承継するものではないと解されるところ(最高裁平成2年(オ)第27号同
年10月18日第一小法廷判決・民集44巻7号1021頁),法の規定及びその
趣旨に照らすと,国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合に
ついても,公営住宅の場合と同様に,当該入居者の相続人が改良住宅の使用権を当
然に承継すると解する余地はない。そうすると,本件条例24条1項は,法の規定
の趣旨に違反するとはいえない。
5所論は,原審の上記判断は,国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者
が死亡した場合について,住宅に困窮する低額所得者に賃貸される公営住宅の場合
と同様に解したものであって,法の規定の解釈を誤った違法があり,相続人による
当該使用権の承継を制限した本件条例24条1項は,法29条1項に違反し違法,
無効であるというものである。
6(1)前記2(1)に掲げた法の規定及びその趣旨に鑑みれば,改良住宅は,住宅
地区改良事業の施行に伴い住宅を失うことにより住宅に困窮した改良地区内の居住
者を対象として,建設されるものということができる。また,法は,公営住宅の入
居者が死亡した場合における使用権の承継について定めた公営住宅法27条6項を
準用していない。そうすると,改良住宅の法18条に基づく入居者が死亡した場合
における使用権の承継については,直ちに,住宅に困窮する低額所得者一般に対し
て賃貸される公営住宅の場合と同様に解することはできないというべきである。
(2)ところで,法18条は,改良住宅に入居させるべき者について,改良住宅
への入居を希望し,かつ,住宅に困窮すると認められるものに限定しており,住宅
地区改良事業に伴い住宅を失った者の全てについて,無条件に改良住宅への入居を
認めるものではない。そして,国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者は,
当該改良住宅に引き続き3年以上入居している場合において政令で定める基準を超
える収入のあるときは,当該改良住宅を明け渡すように努めなければならないとも
されている(法29条3項,旧公営住宅法21条の2第1項)。また,改良地区内
の居住者が従前の住宅につき有していた所有権その他の権利に対しては,施行者が
金銭をもって補償することが予定されている(法11条1項,16条1項参照)。
そうすると,施行者が住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失った者等を改良住宅
に入居させることは,上記権利に対する補償ではなく,上記の者等の居住の安定を
図るために義務付けられるものであるということができる。
以上によれば,国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合に
おける使用権の承継については,民法の相続の規定が当然に適用されるものと解す
ることはできない。そして,上記の場合における使用権の承継について,施行者
が,法の規定及びその趣旨に違反しない限りにおいて,法29条1項,公営住宅法
48条に基づき,改良住宅の管理について必要な事項として,条例で定めることが
できるものと解される。
(3)本件条例24条1項は,改良住宅の入居者が死亡した場合において,死亡
時同居者に限り,市長の承認を受けて,引き続き当該改良住宅に居住することがで
きると定めている。上記規定の趣旨は,前記のとおり,改良住宅が,住宅地区改良
事業の施行に伴い住宅を失った者等の居住の安定を図る趣旨のものであることを踏
まえて,改良住宅の入居者死亡時における使用権の承継を死亡時同居者に限定した
ものと解することができる。そうすると,本件条例24条1項は,法の規定及びそ
の趣旨に照らして不合理であるとは認められないから,法29条1項,公営住宅法
48条に違反し違法,無効であるということはできない。
以上によれば,上告人による本件住宅の使用権の承継を否定した原審の判断は,
是認することができる。論旨は採用することができない。
なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の
決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官大谷直人裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官
木澤克之裁判官山口厚)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛