弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Dの本件上告を棄却する。
     原判決中被告人Aに対する部分を破棄し、同被告人に対する住居侵入強
盗教唆被告事件を広島高等裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人鍛治利一、山村利宰平上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りであ
る。
 第一点について。
 原判決は、被告人AがBに対し住居侵入窃盗の教唆をした事実を認め、其証拠と
して原審証人Bの証言と、同人の第一審公判調書中の同人の供述記載を挙示してい
ることは記録上明らかである。然るに、右Bの原審公判における証言によれば、被
告人AはBに対し、E方に侵入して窃盗をなすことを教唆したことになつて居り、
F方に侵入して窃盗することを教唆した旨の原判決の判示と符合しないことは所論
の通りである。そして第一審公判調書中のBの供述記載を調べて見るに被告人Aが
Bに対し住居侵入窃盗を教唆したのはF方であつてE方ではないことになつて居り
原判決の判示と符合するが原判決の証拠説明を見るにF方に侵入して窃盗をするこ
とを教唆したという部分は記載されていないので判示に符合するBの供述があると
いう点が明らかでない、従つて採証法則に違背したという論旨は理由があるから、
被告人Aに対する部分は此点において理由がある。
 第二点について。
 しかし被告人AがBに住居侵人窃盗を教唆した事実は原判決挙示の証拠により認
めることができるものであつて所論の如き法則に反するところはない、論旨は原審
の採用しない証拠に基いて原審の事実認定を非難するに外ならないから、採用し難
い。
 第三点について。
 原判決によれば、被告人AはBに対して判示F方に侵入して金品を盗取すること
を使嗾し、以て窃盗を教唆したものであつて、判示G商会に侵入して窃盗をするこ
とを教唆したものでないことは正に所論の通りであり、しかも、右Bは、判示C等
三名と共謀して判示G商会に侵入して強盗をしたものである。しかし、犯罪の故意
ありとなすには、必ずしも犯人が認識した事実と、現に発生した事実とが、具体的
に一致(符合)することを要するものではなく、右両者が犯罪の類型(定型)とし
て規定している範囲において一致(符合)することを以て足るものと解すべきもの
であるから、いやしくも右Bの判示住居侵人強盗の所為が、被告人Aの教唆に基い
てなされたものと認められる限り、被告人Aは住居侵入窃盗の範囲において、右B
の強盗の所為について教唆犯としての責任を負うべきは当然であつて、被告人Aの
教唆行為において指示した犯罪の被害者と、本犯たるBのなした犯罪の被害者とが
異る一事を以て、直ちに被告人Aに判示Bの犯罪について何等の責任なきものと速
断することを得ないものと言わなければならない。しかし、被告人Aの本件教唆に
基いて、判示Bの犯行がなされたものと言い得るか否か、換言すれば右両者間に因
果関係が認められるか否かという点について検討するに、原判決によれば、Bは被
告人Aの教唆により強盗をなすことを決意し、昭和二二年五月一三日午後二時頃C
外二名と共に日本刀、短刀各一振、バール一個等を携え、強盗の目的でF方奥手口
から施錠を所携のバールで破壊して屋内に侵入したが、母屋に侵入する方法を発見
し得なかつたので断念し、更に、同人等は犯意を継続し、其の隣家のG商会に押入
ることを謀議し、Bは同家附近で見張をなし、C等三名は屋内に侵入して強盗をし
たというのであつて、原判文中に「更に同人等は犯意を継続し」とあることに徴す
れば、原判決は被告人Aの判示教唆行為と、B等の判示住居侵入強盗の行為との間
に因果関係ある旨を判示する趣旨と解すべきが如くであるが、他面原判決引用の第
一審公判調書中のBの供述記載によれば、Bの本件犯行の共犯者たるC等三名は、
F方裏口から屋内に侵入したが、やがてC三名は母屋に入ることができないといつ
て出て来たので、諦めて帰りかけたが、右三名は、吾々はゴツトン師であるからた
だでは帰れないと言い出し、隣のラヂオ屋に這入つて行つたので自分は外で待つて
おつた旨の記載があり、これによればBのE方における犯行は、被告人Aの教唆に
基いたものというよりもむしろBは一旦右教唆に基く犯意は障碍の為め放棄したが、
たまたま、共犯者三名が強硬に判示G商会に押入ろうと主張したことに動かされて
決意を新たにして遂にこれを敢行したものであるとの事実を窺われないでもないの
であつて、彼是綜合するときは、原判決の趣旨が果して明確に被告人Aの判示教唆
行為と、Bの判示所為との間に、因果関係があるものと認定したものであるか否か
は頗る疑問であると言わなければならないから、原判決は結局罪となるべき事実を
確定せずして法令の適用をなし、被告人Aの罪責を認めた理由不備の違法あること
に帰し、論旨は理由がある。
 第四点について。
 原判決挙示の証拠によれば被告人Dが本件強盗の情を知つてBの犯行を幇助した
ものであることは充分に認められるところであつて所論の如き審理不尽の違法はな
い、論旨は原審において採用しない証拠によつて原審の事実認定を非難することに
帰するから採用しがたい。
 第五点について。
 論旨は結局Bの供述について為した原審の自由心証に対する非難に外ならないか
ら採用しがたい。そして原判決挙示の証拠により判示事実を認め得るものであり、
所論の如き違法はない。
 以上説明した通り被告人Aに関係のある論旨第一点及び第三点は理由があるから
同人に対しては旧刑訴第四四七条第四四八条ノ二により、被告人Dに対しては同第
四四六条によりそれぞれ主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二五年七月二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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