弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人坂和章平、同木村保男、同的場悠紀、同川村俊雄、同大槻守、同松森
彬の上告理由第一点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
 同第二点について
 公正証書の作成に当たり債務者の代理人が公証人に対し債務者本人と称して嘱託
をしたうえ証書に債務者本人の署名をした場合には、右証書は公正の効力を有せず、
債務名義としての効力がないものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところ
である(昭和五〇年(オ)第九一八号同五一年一〇月一二日第三小法廷判決・民集
三〇巻九号八八九頁)。この理は、債権者の代理人が債権者本人と称して嘱託をし
たうえ証書に債権者本人の署名をした場合においても異ならないものというべく、
これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法
はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官横井大三の反対意見が
あるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官横井大三の反対意見は次のとおりである。
 私は、上告理由第二点について、多数意見と異なり、公正証書の作成に当たり債
権者の代理人が公証人に対し債権者本人と称して嘱託をしたうえ、証書に債権者本
人の署名をした場合であつても、右代理人が債権者本人から公正証書作成嘱託の権
限を授与されており、作成された証書の内容が授与された権限の範囲内のものであ
るときは、その公正証書は、債務名義として有効であると解するのが相当であると
考える。もつとも、代理人による公正証書作成の嘱託については、公証人法に厳格
な手続規定(同法三一条、二八条、三二条、三九条、同法施行規則一三条の二)が
設けられており、これらの規定の趣旨は、公正証書が正当な権限をもつ者によつて
嘱託され、その記載事項が真実に合致することを担保し、もつて公正証書に対する
一般の信頼を高めようとするところにあるものと解される。したがつて、公正証書
の作成に当たつては、このような法の要求する厳格な手続を履践しなければならな
いことはいうまでもない。しかしながら、既に作成された公正証書が、債権者の代
理人において、公証人に対し自分が代理人であることを秘し本人と称して証書の作
成を嘱託したうえ、証書に本人の署名をしたものである場合には、その行為が前記
法の定める厳格な手続を履践したものでないという意味においてその作成手続に瑕
疵があるとしても、本人が代理人に公正証書作成嘱託の権限を与えている場合で、
作成された証書の内容が与えられた権限の範囲内のものであるときは、作成手続に
瑕疵があるという理由だけからこれを無効なものとするのは相当でない。多数意見
のようにこれを無効とするときは、あらためて正しい手続を経たうえ同じ内容の公
正証書の作成嘱託をしなければならないことになつて不経済であるばかりでなく、
債務者を不当に利する結果となるのであつて、公平の理念に反すると考える。
 これを本件についてみると、原審が確定したところによれば、大阪法務局所属公
証人D作成にかかる、上告会社を賃貸人、被上告会社を賃借人とする昭和四九年第
三二二〇号建物賃貸借契約公正証書が存在し、右証書の内容は債務者の執行認諾の
意思表示をも含め双方の代理人に授与された権限の範囲内のものであるが、債権者
である上告会社の専務取締役Eが上告会社の代表者Fから証書の作成嘱託の権限を
授与されていたものの、公証人及び被上告会社の代理人に対しては、自分が代理人
であることを秘し、Fであると称して作成を嘱託したうえ、同証書にFと署名した
というのである。原審は、右事実関係のもとにおいて、本件公正証書は、債権者の
代理人が本人と称してその作成の嘱託をし、自ら債権者の氏名を記載した点に違法
があつて、公正の効力を有しないとするものであるが、私は、かかる公正証書であ
つても、債務名義として有効と解すべきものであると考える。そうすると、原審の
右判断には法令解釈の誤りがあり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるから、この点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れず、さらに審理
を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。
 なお、本件は債権者の代理人が債権者本人と称して公正証書作成の嘱託をした場
合であるが、債務者の代理人が債務者本人と称して公正証書作成の嘱託をした場合
については、債権者の場合と異なり、公正証書作成嘱託行為のほか、執行受諾の意
思表示の効力が問題となる。しかし、私は、この場合にも代理人のした執行受諾の
意思表示が与えられた権限の範囲内のものであるときは、その公正証書は債務名義
として有効であると解する。したがつて、右と異なる見解を採る当裁判所の判例(
昭和五〇年(オ)第九一八号同五一年一〇月一二日第三小法廷判決・民集三〇巻九
号八八九頁)は変更されるべきものである。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    服   部   高   顯
            裁判官    環       昌   一
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    寺   田   治   郎

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