弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人堤幸一、同大池龍夫の各上告理由について。
 原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の確定したところによれ
ば、本件家屋の賃貸人である被上告人から賃借人である上告人A1および同A2に
対し、昭和四〇年六月二四日頃到達した書面をもつて、借家法七条(昭和四一年法
律九三号による改正前のもの。以下同じ。)により、本件家屋の賃料を同年七月分
から一ケ月金二六、二五〇円に増額する旨の意思表示がなされ、その当時における
本件家屋の適正賃料たる一ケ月金二二、四九六円の限度で右意思表示による増額の
効果を生じたところ、右上告人らは、同月分については従前の賃料金七、七五〇円
を、また翌八月分以降については一ケ月金一〇、〇七五円宛を提供ないし供託する
にとどまつたので、被上告人は、昭和四一年三月二八日に、昭和四〇年七月一日以
降同四一年三月末日までの一ケ月金二六、二五〇円の割合による賃料を一週間以内
に支払うよう右上告人らに催告したが、右上告人らは、当時すでに本訴が提起され
て調停に付され、その手続上三名の鑑定人の各鑑定書が提出されていて、それらに
より昭和四〇年七月一日現在における本件家屋の適正賃料が少なくとも一ケ月金二
〇、〇〇〇円以上であることを知り得たにかかわらず、その態度を翻さず催告に応
じなかつたというのである。
 右に牴触する上告人ら主張のような賃料に関する特約の存在は認められないとし
た点を含め、原審の右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯すること
ができ、右認定の違法を主張する論旨は理由がなく、採用し得ない。
 ところで、借家法七条による賃料増額請求権はいわゆる形成権に属し、右権利行
使の意思表示が相手方に到達すれば、これによつてその時から賃料は適正額に増額
されるのであつて、その具体的金額について当事者間に意見が合致せず、裁判によ
つてそれが確認される場合でも、右裁判によつてはじめて増額の効果が発生するも
のではないことは、当裁判所の判例(昭和三八年(オ)第一三六五号同四〇年一二
月一〇日第二小法廷判決民集一九巻九号二一一七頁参照)とするところであり、前
記改正法施行後においても、本件のように同法施行前になされた増額請求にかかる
事案につき、右判例を変更すべき必要は認められない。それゆえ、論旨のうち、右
判例と異なり、当裁判所の採らない独自の見解を主張する部分は、採用することが
できない。
 そして、前記事実関係によるときは、適正賃料の半額にも達しない金額をもつて
した上告人A1、同A2の賃料の提供ないし供託をもつて債務の本旨に従つた履行
の提供と同視しうべくもないことは明らかであるから、右上告人らは履行遅滞の責
を免れないところ、同上告人らは、増額の意思表示を受けた当時だけでなく、前記
のように、各鑑定書により客観的に相当とされるべき賃料の額が少なくとも一ケ月
金二〇、〇〇〇円を下らないことを知りえたのちにも、なお従前の態度を固執して
被上告人の催告を無視し、履行遅滞を継続したのであるから、賃借人として通常つ
くすべき義務に著しく違反したものというべく、上告人らの右不履行をもつて賃貸
借の基礎たる当事者相互間の信頼関係を破壊するものとして、催告期限の経過後に
被上告人のした契約解除の効力を認め、これをもつて権利の濫用にあたるものとす
ることもできないとした原審の判断は正当であり、この点においても、原判決に何
ら所論の違法は認められない。したがつて、右判断の違法をいう論旨も理由がなく、
採用するを得ない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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