弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。                    
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人松村信夫,同島村和行,同村本武志,同田中千博,同岩井泉,同近藤
剛史,同和田宏徳,同岡本満喜子,同前田哲男,同小岩井雅行,同斎藤浩貴の上告
受理申立て理由について
 1 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人らは,第1審判決別紙ゲームソフト目録一ないし六記載の家庭用テ
レビゲーム機用ソフトウエア(以下「本件ゲームソフト一」などといい,併せて「
本件各ゲームソフト」という。)の各著作権者である。
 本件ゲームソフト一は,兵器製造会社が製造したウィルスによって汚染された都
市から,主人公がウィルス等と戦いながら脱出するまでのストーリーが展開されて
いくという内容のいわゆるロールプレイングゲームである。本件ゲームソフト二は
,プレイヤーがロボットを操作し,島の危機を救っていくという内容のロールプレ
イングゲームである。本件ゲームソフト三は,刑事が敵を追い怪物等と戦いながら
発火事件の真相を解明していくという内容のロールプレイングゲームである。本件
ゲームソフト四は,様々な格闘技を身に付けた登場人物が戦うという内容の対戦格
闘型ゲームである。本件ゲームソフト五は,プレイヤーがアマチュアレーサーとな
り,レースドライビングを楽しむという内容のレーシングゲームである。本件ゲー
ムソフト六は,ワールドカップ優勝を目指してサッカーを楽しむという内容のサッ
カーゲームである。
 本件各ゲームソフトは,それぞれ,CD−ROM中に収録されたプログラムに基
づいて抽出された影像についてのデータが,ディスプレイの画面上の指定された位
置に順次表示されることによって,全体が動きのある連続的な影像となって表現さ
れるものである。本件各ゲームソフトは,コンピュータ・グラフィックスを駆使す
るなどして,動画の影像もリアルな連続的な動きを持ったものであり,影像に連動
された効果音や背景音楽とも相まって臨場感を高めるなどの工夫がされており,ア
ニメーション映画の技法を使用して,創作的に表現されている。なお,本件各ゲー
ムソフトを使用する場合に,ディスプレイの画面上に表示される動画影像及びスピ
ーカーから発せられる音声は,ゲームの進行に伴ってプレイヤーが行うコントロー
ラの操作内容によって変化し,各操作ごとに具体的内容が異なるが,プログラムに
よってあらかじめ設定される範囲のものである。
 (2) 被上告人らは,上告人らを発売元として適法に販売され,小売店を介して
需要者に購入され,遊技に供された本件各ゲームソフトを購入者から買い入れて,
中古品として販売している。
 (3) 著作権法の制定された昭和45年当時,劇場用映画については,映画館等
で公に上映されることを前提に,映画製作会社や映画配給会社がオリジナル・ネガ
フィルムから一定数のプリント・フィルムを複製し,これを映画館経営者に貸し渡
し,上映期間が終了した際に返却させ,あるいは,指定する別の映画館へ引き継が
せることにより,映画館等の間を転々と移転するという,いわゆる配給制度による
取引形態が,慣行として存在していた。そして,映画製作会社は,配給制度を通じ
た公の上映によって劇場用映画の製作に投下した資金を回収しており,個々のプリ
ント・フィルムは,劇場公開により多額の収益を生み出すものとして,高い経済的
価値を有する状態にあった。
 2 本件は,上告人らが,被上告人らに対し,本件各ゲームソフトの中古品の頒
布の差止め及び廃棄を請求する事案である。
 3 原判決が適法に確定した事実関係の下においては,本件各ゲームソフトが,
著作権法2条3項に規定する「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生
じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物」であり,同法10条
1項7号所定の「映画の著作物」に当たるとした原審の判断は,正当として是認す
ることができる。
 そして,本件各ゲームソフトが映画の著作物に該当する以上,その著作権者が同
法26条1項所定の頒布権を専有するとした原審の判断も,正当として是認するこ
とができる。
 4 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内において当
該特許に係る製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的
を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品を再譲渡する
行為等には及ばないことは,当審の判例とするところであり(最高裁平成7年(オ)
第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁),この
理は,著作物又はその複製物を譲渡する場合にも,原則として妥当するというべき
である。けだし,(ア) 著作権法による著作権者の権利の保護は,社会公共の利益
との調和の下において実現されなければならないところ,(イ) 一般に,商品を譲
渡する場合には,譲渡人は目的物について有する権利を譲受人に移転し,譲受人は
譲渡人が有していた権利を取得するものであり,著作物又はその複製物が譲渡の目
的物として市場での流通に置かれる場合にも,譲受人が当該目的物につき自由に再
譲渡をすることができる権利を取得することを前提として,取引行為が行われるも
のであって,仮に,著作物又はその複製物について譲渡を行う都度著作権者の許諾
を要するということになれば,市場における商品の自由な流通が阻害され,著作物
又はその複製物の円滑な流通が妨げられて,かえって著作権者自身の利益を害する
ことになるおそれがあり,ひいては「著作者等の権利の保護を図り,もつて文化の
発展に寄与する」(著作権法1条)という著作権法の目的にも反することになり,
(ウ) 他方,著作権者は,著作物又はその複製物を自ら譲渡するに当たって譲渡代
金を取得し,又はその利用を許諾するに当たって使用料を取得することができるの
であるから,その代償を確保する機会は保障されているものということができ,著
作権者又は許諾を受けた者から譲渡された著作物又はその複製物について,著作権
者等が二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。
 ところで,映画の著作物の頒布権に関する著作権法26条1項の規定は,文学的
及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(1948年6月26日にブラッセル
で改正された規定)が映画の著作物について頒布権を設けていたことから,現行の
著作権法制定時に,条約上の義務の履行として規定されたものである。映画の著作
物にのみ頒布権が認められたのは,映画製作には多額の資本が投下されており,流
通をコントロールして効率的に資本を回収する必要があったこと,著作権法制定当
時,劇場用映画の取引については,前記のとおり専ら複製品の数次にわたる貸与を
前提とするいわゆる配給制度の慣行が存在していたこと,著作権者の意図しない上
映行為を規制することが困難であるため,その前段階である複製物の譲渡と貸与を
含む頒布行為を規制する必要があったこと等の理由によるものである。このような
事情から,同法26条の規定の解釈として,上記配給制度という取引実態のある映
画の著作物又はその複製物については,これらの著作物等を公衆に提示することを
目的として譲渡し,又は貸与する権利(同法26条,2条1項19号後段)が消尽
しないと解されていたが,同法26条は,映画の著作物についての頒布権が消尽す
るか否かについて,何らの定めもしていない以上,消尽の有無は,専ら解釈にゆだ
ねられていると解される。
 そして,【要旨】本件のように公衆に提示することを目的としない家庭用テレビ
ゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については,市場における商品
の円滑な流通を確保するなど,上記(ア),(イ)及び(ウ)の観点から,当該著作物の
複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡されたことにより,その目的
を達成したものとして消尽し,もはや著作権の効力は,当該複製物を公衆に再譲渡
する行為には及ばないものと解すべきである。
 なお,平成11年法律第77号による改正後の著作権法26条の2第1項により
,映画の著作物を除く著作物につき譲渡権が認められ,同条2項により,いったん
適法に譲渡された場合における譲渡権の消尽が規定されたが,映画の著作物につい
ての頒布権には譲渡する権利が含まれることから,譲渡権を規定する同条1項は映
画の著作物に適用されないこととされ,同条2項において,上記のような消尽の原
則を確認的に規定したものであって,同条1,2項の反対解釈に立って本件各ゲー
ムソフトのような映画の著作物の複製物について譲渡する権利の消尽が否定される
と解するのは相当でない。
 5 そうすると,本件各ゲームソフトが,上告人らを発売元として適法に販売さ
れ,小売店を介して需要者に購入されたことにより,当該ゲームソフトについては
,頒布権のうち譲渡する権利はその目的を達成したものとして消尽し,もはや著作
権の効力は,被上告人らにおいて当該ゲームソフトの中古品を公衆に再譲渡する行
為には及ばない。所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができ
,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
 なお,上告人らは,頒布の差止めを請求しているが,被上告人らは貸与を行って
いると認めるに足りないから,貸与については,理由がないことが明らかである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第一小法廷
(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 町田 顯 裁判官 深澤
武久 裁判官 横尾和子)

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