弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各異議を棄却する。
         理    由
 本件異議の申立の適否につき検討するに、本件異議の申立は、被告人等の軽犯罪
法違反被告事件につき昭和二十七年七月二十一日札幌簡易裁判所で言い渡した判決
に対し原審における弁護人杉之原舜一より被告人のために昭和二十七年七月二十一
日各控訴の申立をなしたるところ、札幌高等裁判所第四部において昭和二十七年九
月九日右各控訴を棄却するとの決定があり、本件は右決定に対する右弁護人からの
異議の申立であることは<要旨第一>記録に徴し明かである。元来刑事訴訟法第四一
条、第三五五条によれば原審の弁護人は被告人のために独立して上訴を
為すことを得るものであるが、弁護人の選任の効力はその審級だけに限られること
は同法第三二条により明かであつて、その審級とは上訴により移審の効力を生ずる
までであつて、上訴の申立により上訴審に係属した以後は原審の弁護人としての訴
訟行為はできない次第である。本件は上訴申立後上訴審において控訴棄却の決定が
為され更にこれに対する異議の申立であるから原審弁護人の固有権に基く異議申立
権はないものと解する。
 しかし憲法第三四条、第三七条等によれば、被告人は自己の権利を擁護するた
め、資格を有する弁護人に依頼する権利を憲法上保障されでいるのであるから、刑
事訴訟法上高等裁判所の決定に対する異議の申立をするためにも資格を有する弁護
人に依頼することができるものと解釈しなければならない。そして被告人は特に異
議の申立を依頼する旨明示しなくても自ら高等裁判所の決定に対する異議申立をし
ないでその弁護を弁護士たる弁護人に依頼したときは、右異議の申立をすることも
依頼したものと見るのを相当とするから、かかる場合その弁護人は被告人を代理し
て被告人のため異議の申立をすることができるものといわなければならない。その
際被告人の代理たる旨を明示することは必ずしも必要とするものでなく要は弁護人
選任届、異議の申立書等一件書類によりその趣旨を看取し得るを以て足るものとい
わなければならない。ところで本件においては、被告人自ら異議の申立をすること
なく弁護士杉之原舜一において控訴棄却の決定に対する異議の申立書を提出し同時
に弁護人選任届三通を添付提出しているが、いずれも被告人の下に「氏名不詳A」
「氏名不詳B」「氏名不詳C」と記載していずれも指印し、これに弁護人杉之原舜
一の署名押印があるものである。よつて、弁護人杉之原舜一に代理権があるか否か
は右弁護人選任届の適否にあるといわなければならないので、この点につき按ずる
に弁護人選任届には被告人がこれに署名捺印しなければならないことは、刑事訴訟
規則第一八条、第六〇条によつて明瞭であつて、ここに署名とは氏名を自署する意
であることはいうまでもない。ところが、前叙の通り、本件異議申立書に添付の弁
護人選任届には「氏名不詳A」「氏名不詳B」「氏名不詳C」との記載があり、こ
れが被告人の氏名でないことは明かであるからこれを被告人の署名と認めるわけに
はゆかない。いつたい自分の権利を擁護するために訴訟行為をする場合は、自ら進
んで裁判を求めるのであるから、自分が何某であるかを明かにすることは裁判所に
対する手続として当然の筋道といわなくてはならない。然るに被告人等は単に氏名
不詳A、B、Cとして指印しているのみであつて、かかる弁護人選任届では被告人
が誰であるかこれを特<要旨第二>定することができないし、弁護権の存在を確認す
るに足る資料とは認められないのである。よつてかかる弁護人選任届は
不適法なものであつて無効なものといわなくてはならない。従つて弁護人杉之原舜
一に本件異議の申立につき代理権がないものと断ぜざるを得ないのである。ゆえに
本件異議の申立の手続はその規定に違反するものに外ならない。
 よつて刑事訴訟法第四百二十八条第三項、第四百二十六条第一項により主文の通
り決定する。
 (裁判長判事 藤田和夫 判事 成智寿朗 判事 臼居直道)

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