弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成14年6月10日宣告 
平成14年(わ)第165号
主     文
   被告人を懲役2年に処する。
   未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
               理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,前橋家庭裁判所桐生支部から,平成12年5月31日,Aの財産管理
人に,同年8月23日,同Aの成年後見人にそれぞれ選任され,財産管理人又は成
年後見人として同Aの財産管理等をしていたものであるが,別紙犯罪事実一覧表記
載のとおり,同年6月16日から平成13年8月20日までの間にかけて,前後2
5回にわたり,群馬県桐生市a町c所在の株式会社B桐生支店ほか9か所におい
て,自己の用途に供する目的で,ほしいままに,前記の各職務として業務上預かり
保管中の上記A名義の預貯金口座から合計1746万8408円の払戻しを受ける
などして着服し,もって横領した。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は包括して刑法253条に該当するので,所定の刑期の範囲内
で,被告人を懲役2年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中50日をその
刑に算入する。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,被害者の財産管理人及び成年後見人の地位にあることを濫用
して,被害者のために預かり保管中の被害者名義の預貯金を横領したという事案で
ある。
 被告人は,平成9年にそれまで勤務していた警備会社を退職したが,その後就職
できなかったことから,平成10年春ころには,当時居住していた公団住宅の家賃
を支払うことができない状態となり,同年11月ころには,公団住宅から退去する
ことを余儀なくされた。しかし,被告人は,転居費用を捻出できなかったことか
ら,平成11年2月ころ,被害者に対して,転居費用の援助を求めたが,被害者は
これに応じず,被害者から預貯金通帳等を事実上預かり保管していた被害者の隣人
に対しても送金を依頼したが,隣人からもこれを拒まれたので,結局転居すること
ができず,妹の住居に転がり込むことになった。その後,被告人は,妹との同居に
耐えられないようになったが,なお就職できなかったので,転居して自力で生活す
ることができなかった
。そこで,被告人は,被害者が被告人に対して全財産を相続させる旨の遺言をして
いたことを思い出し,被害者の死亡前であっても,被害者の財産を自己の用に供す
ることができないかと考え,みずから被害者の成年後見人に就任することを企て,
前橋家庭裁判所桐生支部に対して,平成11年10月ころ,被害者についての成年
後見開始の申請を行い,その後,判示の犯行に及んだものである。
このように,被告人は,みずからの生活費等に費消するため,本件の横領に及ん
だもので,その自己中心的な犯行の動機は酌量の余地に乏しい。また,被告人は,
本件の犯行に先立ち,転居費用等に窮したことから,被害者に対して金銭的な援助
を求めたが,被害者から援助が得られず,被害者から預貯金通帳等を事実上預かり
保管していた被害者の隣人に対して送金を依頼したが,隣人からもこれを拒まれた
のに,生活に窮していたことから,被害者の財産を自由にするため,前橋家庭裁判
所桐生支部に対してみずからを成年後見人として選任するように申請して,被害者
の財産を管理できる地位を得て,本件の犯行に及んだものであって,本件の犯行は
計画的かつ巧妙である。加えて,被告人は,同支部から,成年後見人として選任さ
れた後,説明又は報告を求められながら,本件の犯行を継続してきたものであっ
て,その犯行は大胆かつ悪質である。さらに,被告人は,約1年2か月という短期
間に合計1746万円以上もの額の被害者名義の預貯金を払い戻して横領し,マン
ションの入居費用,自動車,家具,洋服等の購入費用に費消したものであって,被
害額は多額であるにもかかわらず,被害の弁償はほとんどなされておらず,今後な
される見込みも乏しい。
 このような本件の犯行の動機,態様,結果等を併せ考慮すれば,被告人の刑事責
任は重いと言わざるを得ない。
 従って,他方において,被告人が,本件の事実を認め,反省の弁を述べるととも
に,被害者に対する被害回復の努力を行う意思があることを表明し,弁護人を通じ
て示談に向けた努力をしていること,被告人には交通罰金前科のほかに前科前歴が
ないこと,被害者が被告人の叔母であり,従前から被告人と親密な関係を有し,本
件に先立って,被告人に対して全財産を相続させる旨の公正証書遺言をしているこ
となど,被告人のために酌むべき事情が認められるものの,なお,被告人には主文
の刑を科すことが相当であると判断した。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役3年)
    平成14年 6月10日
       前橋地方裁判所刑事部
                 裁 判 官   吉 井 隆 平

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