弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。                    
       上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人兼上告代理人森徹,上告人山口邦明,同土釜惟次,同奥田保,同赤羽健也
の各上告理由について
 1 本件は,公職選挙法(以下「公選法」という。)の衆議院議員選挙の仕組み
に関する規定が憲法に違反し無効であるから,これに依拠してされた平成12年6
月25日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)のうち東京都選挙
区における比例代表選挙は無効であると主張して提起された選挙無効訴訟である。
 2 憲法は,国会の両議院の議員の選挙について,およそ議員は全国民を代表す
るものでなければならないという制約の下で,議員の定数,選挙区,投票の方法そ
の他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条,47条),選挙制度
の仕組みの具体的決定を原則として国会の広い裁量にゆだねている。したがって,
国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記の制約や法の下の
平等などの憲法上の要請に反するため国会の裁量権を考慮してもなおその限界を超
えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反するこ
とになると解すべきである。
3 【要旨1】同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補するこ
とを認めるか否かは,選挙制度の仕組みの一つとして,国会が裁量により決定する
ことができる事項である。そして,重複して立候補することを認める制度において
は,一の選挙において当選人とされなかった者が他の選挙において当選人とされる
ことがあることは,当然の帰結である。
 もっとも,衆議院議員選挙において重複立候補をすることができる者は,公選法
86条1項1号,2号所定の要件を充足する政党その他の政治団体に所属する者に
限られているところ,合理的な理由なく立候補の自由を制限することは憲法の要請
に反するといわなければならない。しかしながら,上記要件は,国民の政治的意思
を集約するための組織を有し,継続的に相当な活動を行い,国民の支持を受けてい
ると認められる政党等が,小選挙区選挙において政策を掲げて争うにふさわしいも
のであるとの認識の下に,選挙制度を政策本位,政党本位のものとするために設け
られたものと解されるのであり,選挙制度を政策本位,政党本位のものとすること
は,国会の裁量の範囲に属することが明らかである。したがって,同じく政策本位
,政党本位の選挙制度というべき比例代表選挙と小選挙区選挙とに重複して立候補
することができる者が上記候補者届出政党の要件と公選法86条の2第1項各号所
定の衆議院名簿届出政党等の要件の両方を充足する政党等に所属する者に限定され
ていることには,相応の合理性が認められるのであって,不当に立候補の自由や選
挙権の行使を制限するとはいえず,これが国会の裁量権の限界を超えるものとは解
されない。そして,重複立候補者の数は名簿登載者の数の制限の計算上除外される
(同条5項)結果,衆議院名簿届出政党等のうち候補者届出政党の要件を備えたも
のは,これを備えないものより,名簿に登載することができる候補者の数が多くな
り,名簿登載者の数に応じて選挙運動の規模が定められている(同法141条3項
等)ため,規模の大きな選挙運動を行うことができることになるが,名簿登載者の
数が多くなるほど選挙運動の必要性が増大する面があり,上記の除外にも合理性が
認められるから,上記のような差異を設けたことが憲法15条1項等に違反すると
はいえない。
 以上によれば,公選法が衆議院議員選挙について採用している重複立候補制は,
憲法14条,15条1項,3項,44条ただし書等及び憲法の直接選挙の要請に違
反するとはいえない。
 4 また,【要旨2】政党等にあらかじめ候補者の氏名及び当選人となるべき順
位を定めた名簿を届け出させた上,選挙人が政党等を選択して投票し,各政党等の
得票数の多寡に応じて当該名簿の順位に従って当選人を決定する方式は,投票の結
果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において,選挙人が候補者個
人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。複数の重複立候補者の比例
代表選挙における当選人となるべき順位が名簿において同一のものとされた場合に
は,その者の間では当選人となるべき順位が小選挙区選挙の結果を待たないと確定
しないことになる(公選法95条の2第3項)が,結局のところ当選人となるべき
順位は投票の結果によって決定されるのであるから,このことをもって比例代表選
挙が直接選挙に当たらないということはできず,憲法43条,15条に違反すると
はいえない。
 5 論旨は,比例代表選挙の各選挙区の定数と同各選挙区内の小選挙区選挙の定
数との合計数でみるならば,選挙区間に議員1人当たりの人口等の較差があり,逆
転現象も生じており,憲法に違反すると主張するが,このような比較に合理性がな
いことは明らかであるし,比例代表選挙の無効を求める訴訟において小選挙区選挙
の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできないというほかはない。そして,比
例代表選挙についてみれば,投票価値の平等を損なうところがあるとは認められず
,その選挙区割りに憲法に違反するところがあるとはいえない。したがって,公選
法13条2項,別表第二の規定が憲法14条,43条,44条等に違反するとは認
められない。
 6 以上は,最高裁平成11年(行ツ)第8号同年11月10日大法廷判決・民
集53巻8号1577頁の趣旨とするところであり,又はその趣旨に徴して明らか
なところである。
 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,すべて
採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 奥田昌道 裁判官 濱田
邦夫)

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