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平成22年(わ)第76号,同第77号
主文
被告人株式会社Aを罰金1億1000万円に,被告人株式会社Bを罰金300
0万円に,被告人Cを懲役1年6月に処する。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人株式会社A(以下「被告会社A」という。)は,山梨県都留市a(平成1
7年4月1日以前は同市b)に本店を置き,太陽光発電用シリコンウェハーの製
造,販売等を目的とする株式会社,被告人C(以下「被告人」という。)は,
被告会社Aの実質的経営者として同会社の業務全般を統括していたもの,分離
前の相被告人D(以下「D」という。)は,株式会社E(以下「E」という。)の
経営者を自称していたものであるが,
1被告人は,Dと共謀の上,被告会社Aの業務に関し,法人税を免れようと
企て,Eに対する架空の主要材料費を計上したほか,機械の取得価額を水増
しして製造原価を過大に計上するなどの方法により所得を秘匿した上,平成
16年9月1日から平成17年8月31日までの事業年度における被告会
社Aの実際の所得金額が3億8801万6760円であったにもかかわら
ず,平成17年10月31日,山梨県大月市御太刀二丁目8番10号所轄大
月税務署において,同税務署長に対し,所得金額が813万7143円で,
これに対する法人税額が143万4500円である旨の虚偽の法人税確定
申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,
被告会社Aの上記事業年度における正規の法人税1億1575万8400
円と上記申告税額との差額1億1432万3900円を免れた
2被告人は,被告会社Aの業務に関し,法人税を免れようと企て,売上の一
部を除外したほか,機械の取得価額を水増しして製造原価を過大に計上する
などの方法により所得を秘匿した上,平成17年9月1日から平成18年8
月31日までの事業年度における被告会社Aの実際の所得金額が10億1
73万2091円であったにもかかわらず,平成18年10月31日,前記
大月税務署において,同税務署長に対し,所得金額が4億3287万801
7円で,これに対する法人税額が1億2804万2700円である旨の虚偽
の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正
の行為により,被告会社Aの上記事業年度における正規の法人税2億998
6万5900円と上記申告税額との差額1億7182万3200円を免れ

3被告人は,被告会社Aの業務に関し,法人税を免れようと企て,売上の一
部を除外したほか,期末仕掛品棚卸高を除外して製造原価を過大に計上する
などの方法により所得を秘匿した上,平成18年9月1日から平成19年8
月31日までの事業年度における被告会社Aの実際の所得金額が14億9
953万8356円であったにもかかわらず,平成19年10月30日,前
記大月税務署において,同税務署長に対し,所得金額が7億5592万75
81円で,これに対する法人税額が2億2557万8600円である旨の虚
偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不
正の行為により,被告会社Aの上記事業年度における正規の法人税4億48
66万1900円と上記申告税額との差額2億2308万3300円を免
れた
第2被告人株式会社B(以下「被告会社B」という。)は,同県笛吹市c(平成19
年5月31日以前は同市d)に本店を置き,太陽光発電用シリコンインゴットの
製造,販売等を目的とする株式会社,被告人は,被告会社Bの実質的経営者と
して同会社の業務全般を統括していたもの,Dは,Eの経営者を自称していた
ものであるが,被告人は,Dと共謀の上,被告会社Bの業務に関し,法人税を
免れようと企て,Eに対する架空の主要材料費を計上するなどの方法により所
得を秘匿した上,
1平成18年6月1日から平成19年5月31日までの事業年度における被
告会社Bの実際の所得金額が6713万3995円であったにもかかわら
ず,平成19年7月31日,同県山梨市上神内川738番地所轄山梨税務署
において,同税務署長に対し,所得金額が2885万7752円で,これに
対する法人税額が799万800円である旨の虚偽の法人税確定申告書を
提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,被告会
社Bの上記事業年度における正規の法人税1947万3600円と上記申
告税額との差額1148万2800円を免れた
2平成19年6月1日から平成20年5月31日までの事業年度における被
告会社Bの実際の所得金額が19億5218万2486円であったにもか
かわらず,平成20年7月31日,前記山梨税務署において,同税務署長に
対し,所得金額が12億7642万5602円で,これに対する法人税額が
3億8206万7000円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そ
のまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,被告会社Bの上記
事業年度における正規の法人税5億8479万4100円と上記申告税額
との差額2億272万7100円を免れた
ものである。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
1被告会社A
罰条
判示第1の1,2の各行為
いずれも平成22年法律第6号附則146条により平成1
9年法律第6号による改正前の法人税法164条1項,1
59条1項,平成22年法律第6号による改正前の法人税
法159条2項(情状による)
判示第1の3の行為
平成22年法律第6号附則146条により同法による改正
前の法人税法164条1項,159条1項,2項(情状に
よる)
併合罪の処理刑法45条前段,48条2項
2被告会社B
罰条
判示第2の1の行為
平成22年法律第6号附則146条により平成19年法律
第6号による改正前の法人税法164条1項,159条1
項,平成22年法律第6号による改正前の法人税法159
条2項(情状による)
判示第2の2の行為
平成22年法律第6号附則146条により同法による改正
前の法人税法164条1項,159条1項,2項(情状に
よる)
併合罪の処理刑法45条前段,48条2項
3被告人
罰条
判示第1の1,第2の1の各行為
いずれも刑法60条,平成22年法律第6号附則146条
により平成19年法律第6号による改正前の法人税法1
59条1項
判示第1の2の行為
平成22年法律第6号附則146条により平成19年法律
第6号による改正前の法人税法159条1項
判示第1の3の行為
平成22年法律第6号附則146条により同法による改正
前の法人税法159条1項
判示第2の2の行為
刑法60条,平成22年法律第6号附則146条により同
法による改正前の法人税法159条1項
刑種の選択
判示各罪いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示
第1の3の罪の刑に法定の加重)
(量刑の理由)
本件は,被告会社A及び被告会社Bの実質的経営者である被告人が,①Dと共謀
の上,Dが経営者であると自称していたEに対する架空の主要材料費を計上するな
どの方法により,被告会社Aについては1事業年度の,被告会社Bについては2事
業年度の所得を秘匿して法人税をそれぞれ免れ(判示第1の1,第2の1,2),②
被告会社Aについて,2事業年度にわたり,売上の一部を除外したほか,製造原価
を過大に計上するなどの方法により所得を秘匿して,法人税を免れた(判示第1の
2,3)事案である。
本件各犯行によるほ脱税額は,被告会社Aについては3期通算で5億923万4
00円,被告会社Bについては2期通算で2億1420万9900円,2社合計で
7億2344万300円と高額であり,ほ脱率は,被告会社Aは通算約58パーセ
ント,被告会社Bについても通算約35パーセントといずれも高率とまではいえな
いものの,上記ほ脱税額に鑑みれば,本件各犯行の結果は重大である。
犯行態様をみると,両被告会社の実質的なワンマン経営者であった被告人は,脱
税方法を考案し,脱税のために従業員に指示を出すなどして,被告会社Aについて
は,被告会社Bに対する売上を除外したほか,架空の主要材料費を計上したり,機
械の取得価額を水増しして減価償却費を過大に計上したりし,被告会社Bについて
も,架空の主要材料費を計上したほか,架空の役員報酬を支払うなど,様々な方法
により所得を秘匿して両被告会社の法人税を免れた。特に主要材料費の架空計上に
関し,被告人は,知人のDに報酬を与えてEの架空の請求書や納品書を提供させ,
その架空取引への支払として出金された数億円もの金銭をDを通じて裏金として還
流させていたものであり,本件各犯行の態様は巧妙かつ悪質である。Dと共謀して
行った犯行においては,Dを犯行に誘い込んでおり,主犯者である。
被告人は,過去に自身が経営していた別の会社を倒産させてしまったこともあり,
いつか来る不景気に備え,両被告会社の資金に余裕があるうちに裏金を作っておこ
うなどと考え,本件各犯行に及んだ旨供述するが,納税義務を無視した身勝手な考
えというほかなく,犯行動機は厳しい非難に値する。
以上の事情からすると,両被告会社及び被告人の刑事責任は重いと言わなければ
ならない。
他方,本件では,青色申告の承認取消益が,被告会社Aにおいてはほ脱税額全体
の約64パーセントを,被告会社Bにおいてはほ脱税額全体の約75パーセントを
占めていること,両被告会社が法人税等の本税について修正申告をし,これを完納
していること,両被告会社が,監査法人による内部管理体制の調査を受け,提案さ
れた改善策の実施に努めるとともに,コンプライアンス委員会を設置するなどして,
脱税の再発防止に向けた体制作りを進めていること,被告人が,本件各犯行を認め,
2600万円の贖罪寄付をするなどして反省の態度を示していること,被告人には,
道路交通法違反の罰金前科が1犯あるのみであることなど被告人及び両被告会社に
とって酌むべき事情が認められる。
しかしながら,これら被告人らのために酌むべき事情を最大限考慮しても,上記
の結果の重さ,犯行態様の悪質さ,被告人の立場や犯行において果たした役割等に
鑑みると,被告人に対しては,懲役刑の執行を猶予することはできず,主文の実刑
に処するのが相当であり,両被告会社についても,主文の罰金刑に処するのが相当
であると判断した。
(求刑被告会社Aにつき,罰金1億3100万円,被告会社Bにつき,罰金40
00万円,被告人につき,懲役2年6月)
平成22年12月1日
甲府地方裁判所刑事部
裁判長裁判官深沢茂之
裁判官小笠原義泰
裁判官鈴木悠

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