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平成11年(ワ)第13242号 意匠権物品製造・販売差止等請求事件
平成13年6月26日口頭弁論終結
判        決
 原      告株式会社ブレスト工業研究所
 訴訟代理人弁護士元木祐司
訴訟復代理人弁護士 上野 保
 同補佐人弁理士中村政美
 被      告カナフジ電工株式会社
 訴訟代理人弁護士服部昌明
 同池田和郎
同柏田芳徳
同吉田幸宗
主         文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙物件目録記載の製品を,製造し、販売してはならない。
2 被告は,前項の製品及び半製品,その金型及び同製品が掲載されたカタログ
を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,155万5635円及びこれに対する平成11年6月
24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行宣言
第2 事案の概要
 本件は,後記意匠権を有する原告が,被告の製造・販売する製品は,原告の意匠
権を侵害していると主張して,被告の製品の製造等の差止め,製品等の廃棄及び損
害賠償を求めている事案である。
 1 争いのない事実等
  (1) 原告は,次の意匠権を有している(本判決末尾添付の意匠公報参照。以
下,下記アの意匠権の意匠を「本件登録意匠1」といい,下記イの意匠権の意匠を
「本件登録意匠2」といい,特に区別して用いないときは,これらを「本件登録意
匠」と総称する。)。
ア 登録意匠番号第998342号
 意匠       本判決末尾添付の意匠公報のとおり
 意匠に係る物品 ラック用カバー
出願年月日 平成5年3月16日
 登録年月日 平成9年8月22日
イ 登録意匠番号第998343号
 意匠       本判決末尾添付の意匠公報のとおり
 意匠に係る物品 ラック用カバー
出願年月日 平成5年3月16日
 登録年月日 平成9年8月22日
(2) 被告は,別紙図面記載の製品(以下「被告製品1-1」のようにいい,被
告製品1-1ないし9を併せて「被告製品1」と,被告製品2-1ないし9を併せ
て「被告製品2」ということがある。また,特に区別して用いないときは,これら
を「被告製品」と総称する。)を,業として製造・販売している。
 2 争点
  (1) 被告製品1-1ないし9が本件登録意匠1に,被告製品2-1ないし9が
本件登録意匠2に,それぞれ類似するかどうか(争点1)
(2) 被告の先使用の抗弁の成否(争点2)
(3) 原告の損害(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点1(被告製品1が本件登録意匠1に,被告製品2が本件登録意匠2に,
それぞれ類似するかどうか)について
  (1) 原告の主張
ア 本件登録意匠の構成
(ア) 本件登録意匠1は,
a 一対の直線的なラックが直角に連結されているラックの直角コーナ
ー部において,平面ほぼ正方形状とみなせるラックの隅部を覆う基部と,ラックの
隅部に連続するラックの直線部を僅かに覆う一対の平面ほぼ長方形状の突出部とを
備えた平面ほぼL字状(ただし,図面は,Lの字と上下逆に記載されている。以下
「L字状」と表現する。)を呈するカバー基板を形成し,このカバー基板の突出部
先端にほぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ連設し,カバー基板の重継片部分を除く
外周縁には,ほぼ細長帯板状の垂下側片を下方に垂設し,カバー基板及び重継片
を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させ,かなり傾斜の緩い山型屋
根状としてあることを特徴とする。
b 具体的な構成態様にあっては,
① カバー基板は,ラックの隅部を覆う基部に対して,隅部に連続す
る突出部がほぼ1/2弱(面積比)で,カバー基板の頂部高さは,カバー基板におけ
る基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/13で,ラック用カバー全体からみてかなり
低いこと
② 垂下側片は,ラックの親桁外側に配され,その垂下長さが,カバ
ー基板における基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/30で,ラック用カバー全体か
らみてかなり短いこと
③ 重継片は,基部及び突出部の上面より僅か上方に位置して,他の
ラック用カバー端部の上側に重なるようになり,重継片の突出長さは,基部の一辺
(ラックの幅)の幅のほぼ1/30で,ラック用カバー全体からみてかなり短いこと
 などを特徴とする。
(イ) 本件登録意匠2は,
a 平面ほぼT字状を呈するカバー基板を形成し,このカバー基板の連
結端部先端にほぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ連設し,カバー基板の重継片部分
を除く外周縁には,ほぼ細長帯板状の垂下側片を下方に垂設し,カバー基板及び重
継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させ,かなり傾斜の緩い山
型屋根状としてあることを特徴とする。
b 具体的な構成態様にあっては,
① カバー基板は,ラックの分岐部を覆う基部に対して,分岐部に連
続するラックの直線部を覆う突出部がほぼ1/2弱(面積比)で,カバー基板の頂部
高さは,カバー基板における基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/13で,ラック用
カバー全体からみてかなり低いこと
② 垂下側片は,ラックの親桁外側に配され,その垂下長さが,カバ
ー基板における基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/30で,ラック用カバー全体か
らみてかなり短いこと
③ 重継片は,基部及び連結端部の上面より僅か上方に位置して,他
のラック用カバー端部の上側に重なるようになり,重継片の突出長さは,基部の一
辺(ラックの幅)の幅のほぼ1/30で,ラック用カバー全体からみてかなり短いこ

などを特徴とする。
イ 被告製品の構成は,以下のとおりである。
(ア) 被告製品1について
被告製品1-1(製品番号KVRL-200)は,ラックの上部に装
着されるラック用カバーで,ラックの幅が約200mmのものに対応し,しかも,
一対の直線的なラックが直角に連結されているラックの直角コーナー部において,
平面ほぼ正方形状とみなせるラックの隅部を覆う基部と,ラックの隅部に連続する
ラックの直線部をわずかに覆う一対の平面ほぼ長方形状の突出部とを備えた平面ほ
ぼL字状を呈するカバー基板を形成し,このカバー基板の突出部先端にほぼ細長帯
板状の重継片をそれぞれ連設し,カバー基板の重継片部分を除く外周縁には,ほぼ
細長帯板状の垂下側片を下方に垂設し,カバー基板及び重継片を,ラックの幅方向
中央部分にほぼ沿うように隆起させ,かなり傾斜の緩い山型屋根状としたもので,
別紙図面1-1のとおりのものである。
被告製品1-2ないし9(製品番号KVRL-300,400,50
0,600,700,800,1000,1200)の構成は,それぞれラックの
幅が約300,400,500,600,700,800,1000,1200m
mのものに対応する点を除き,被告製品1-1と同様である。その図面は,別紙図
面1-2ないし9である。
(イ) 被告製品2について
被告製品2-1(製品番号KVRT-200)は,ラックの上部に装
着されるラック用カバーで,ラックの幅が約200mmのものに対応し,しかも,
平面ほぼT字状を呈するカバー基板を形成し,このカバー基板の連結端部先端にほ
ぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ連設し,カバー基板の重継片部分を除く外周縁に
は,ほぼ細長帯板状の垂下側片を下方に垂設し,カバー基板及び重継片を,ラック
の幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させ,かなり傾斜の緩い山型屋根状とした
もので,別紙図面2-1のとおりのものである。
被告製品2-2ないし9(製品番号KVRT-300,400,50
0,600,700,800,1000,1200)の構成は,それぞれラックの
幅が約300,400,500,600,700,800,1000,1200m
mのものに対応する点を除き,被告製品2-1と同様である。その図面は,別紙図
面2-2ないし9である。
ウ 本件登録意匠と被告製品の意匠との形態の要旨の比較
(ア)本件登録意匠1と被告製品1の意匠との形態の要旨の比較
被告製品1の意匠と,本件登録意匠1とは,本件登録意匠1全体の基
調を表出している基本的な構成態様(カバー基板を平面ほぼL字状とし,カバー基板
の突出部先端にほぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ連設し,カバー基板の重継片部
分を除く外周縁に,ほぼ細長帯板状の垂下側片を下方に垂設し,カバー基板及び重
継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させ,かなり傾斜の緩い山
型屋根状としたこと)が共通であり,両意匠の類否の判断に大きな影響を与えてい
る。一方,頂部高さや,垂下側片の垂下長さや,重継片の突出長さなどの差異は,
どれもカバー基板全体の寸法からすればかなり小さいものであることから,特段顕
著な相違といえず,これが類否の判断に与える影響は微弱である。また,カバー基
板において,ラックの隅部を覆う基部に対する突出部の面積比率の差異は,どれも
カバー基板全体が平面上ほぼL字状を呈することからすれば,特段顕著な相違とい
えず,これが類否の判断に与える影響は微弱である。すなわち,被告の前記製品の
意匠は,具体的な構成態様において適合するラックの幅に対応させたことによる単
なる設計変更的なわずかな差異が存在するだけである。したがって,被告製品1の
意匠は,本件登録意匠1及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであり,本件
登録意匠2の意匠権を侵害する。
(イ) 本件登録意匠2と被告製品2の意匠との形態の要旨の比較
被告製品2の意匠と,本件登録意匠2とは,本件登録意匠2全体の基
調を表出している基本的な構成態様(カバー基板を平面ほぼT字状とし,このカバー
基板の連結端部先端にほぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ連設し,カバー基板の重
継片部分を除く外周縁に,ほぼ細長帯板状の垂下側片を下方に垂設し,カバー基板
及び重継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させ,かなり傾斜の
緩い山型屋根状としたこと)が共通であり,両意匠の類否の判断に大きな影響を与え
ている。一方,頂部高さや,垂下側片の垂下長さや,重継片の突出長さ等の差異
は,どれもカバー基板全体の寸法からすればかなり小さいものであることから,特
段顕著な相違といえず,これが類否の判断に与える影響は微弱である。
また,カバー基板において,ラックの分岐部を覆う基部に対する連結
端部の面積比率の差異は,どれもカバー基板全体が平面ほぼT字状を呈することか
らすれば,特段顕著な相違といえず,これが類否の判断に与える影響は微弱であ
る。すなわち,被告の前記製品の意匠は,具体的な構成態様において適合するラッ
クの幅に対応させたことによる単なる設計変更的なわずかな差異が存在するだけで
ある。したがって,被告製品2の意匠は,本件登録意匠2及びこれに類似する意匠
の範囲に属するものであり,本件登録意匠2の意匠権を侵害する。
(2) 被告の主張
ア 基本的構成態様について
意匠の類否においては,新種物品でない限り基本的構成態様が類似して
いるだけでは類似でなく,また基本的構成態様に相違点が多い場合には類似でない
というべきである。
(ア) 類似点
原告は,本件登録意匠及び被告製品の基本的構成態様として,L字
型,T字型とも,①山型屋根状,②垂下側片,③重継片の存在を主張する。しか
し,ラックカバーという新規性のないありふれた物品であることからすれば,基本
的構成態様が類似しているのは当然で,これらは意匠類否判断の要部とならない。
公知意匠は看者の新たな注意を喚起するものではないから,その他の類似点の存在
を要するというべきである。
(イ) 相違点
相違点として,第1に,山型屋根状と原告は主張するが,本件登録意
匠1及び2は,頂部稜線が断続している。これに対し,被告製品1は,基部におい
て,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させられた頂部稜線が45度の
角度によって斜交接続されているという山型屋根状であるし,被告製品2は,基部
において,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように隆起させられた三方からの頂
部稜線が各45度の角度によって斜交接続されY字型を形成しているという山型屋
根状である。
第2に,垂下側片について,被告製品1のそれは内周縁が直角である
のに対し,本件登録意匠1は内周縁において円弧状を形成し,かつ,その部分は断
続している。また,被告製品2のそれは一直線になっている2つの連結端部の内側
角部(被告製品1と同様にいえば内周縁部分)が直角であるのに対し,本件登録意
匠2はこれと対応する内側角部において円弧状を形成し,かつ,その部分は断続し
ているものである。
第3に,重継片については,本件登録意匠1及び2がいずれもカバー
基板と一体をなした連続構造であるのに対し,被告製品1及び2のそれはカバー基
板と一体をなさず,別構造物を鋲打ちして連設したもので,「重継部」というべき
ものである。
以上の点からすれば,美観として混同を生じないことは明らかである。
イ 具体的構成態様について
具体的構成態様のうち,当該意匠を特徴付ける部分が要部となる。被
告製品1にあっては,基部と突出部の比率は当該意匠を特徴付ける部分(美観)とい
うべきである。被告製品2においても同様であり,T型で交差する縦と横の比率
が,当該意匠を特徴付ける部分というべきである。
原告は,被告製品1-1ないし9,同2-1ないし9の差異が存する
のに,それぞれ数値比較を示しつつも,単なる設計変更的なわずかな差異が存在す
るだけとするが,これではL,T型をした基本的構成態様を有するラックカバーで
あれば,すべて類似意匠ということになるのであって,道具概念として意味を持た
ない。
ウ 公知意匠との関係
(ア) 公知先登録意匠として,登録第795698号が存在する。この
意匠は直線状で頂部平坦化屋根蓋を備えた「空調機器用配管カバー」である。この
公知先登録意匠では,その平坦化区域が広幅で,その区域内を縦方向へ2本の細い
突条が走るように形成されている。
 同登録意匠の類似意匠として,L字型態様を包含することを示した
類似4が存在する。この類似意匠は,L字型態様をも包含することが「コーナー用
配管カバーを取り付けたときの参考斜視図」という写真に示されている。
 上記の公知先登録意匠は垂下側部を備えるが,重継部は図示されて
いない。しかし,意匠の説明欄に「この意匠は正面図において左右にのみ連続する
ものである。」と記載されており,単体では用いられず,連続状態で用いられるこ
とから,実際には重継部が付与されている。
 これによれば,L字型配管用ダクトは上記登録意匠の類似範囲に属
するということができる。
(イ) 先願先登録意匠として,登録第988756号が存在する。この
意匠は頂部平坦化直線状屋根蓋付き「配管用ダクト」である。
 上記登録意匠の類似意匠として,類似2が存在する。この類似意匠
は頂部稜線を持つ直線状山型屋根付き「配管用ダクト」である。
 登録第988756号の意匠は垂下側部及び重継部を備えることが
その図面に示されている。その類似意匠である類似2も同様に垂下側部及び重継部
を備える。
 これによれば,頂部稜線屋根蓋付き直線状配管用ダクトは頂部平坦
化屋根蓋付き直線状配管用ダクトの類似範囲に属するということができる。
上記帰結の根拠となる山型屋根蓋付き直線状配管用ダクトは本件登
録意匠よりも後願であるが,本件登録意匠よりも先願先登録である本意匠の類似範
囲に山型屋根蓋付き配管用ダクトが属していることに相違はない。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)から,(イ)の山型屋根蓋付き直線状配管用ダク
トをL字型に変形した配管用ダクトは(ア)のL字型配管用ダクトに類似している
し,山型屋根については頂部稜線の形状いかんによって独自の保護を与えられるも
のではないということができる。
つまり,公知意匠に具現されているのと同様の形状は要部でないこ
と,類似意匠の存在は類否判断の範囲を限定することからすれば,本件登録意匠で
実現されたと原告の主張する①山型屋根状,②垂下側片及び③重継片の存在の基本
的構成態様については,意匠として保護されるべきものではなく,美観の混同判断
の基準となるべき要部に当たらない。
エ 全体観察について
以上の諸点を踏まえた全体観察は,特定部分の対比では不十分であっ
て,需要者がいかなる目的で物品を使用し,それゆえにどの点に美感を生じるの
か,という点から行われるべきである。
まず,本件物品はラックのカバーであって,一般消費者が通常購入す
るものでないので,ここでいう需要者とは,ビル事業者あるいは設備業者等で,技
術的機能に着目するものである。かかるラックカバーに意匠としての美観を認める
としても,技術的要請に基づくものは要部として扱われるべきではない。L型,T
型とも,ラックの接続部としての機能から当然導かれる形状であって,それ自体保
護される美観ではない。意匠としての保護を与えるのであれば,被告製品1では,
基部と突出部の面積比率が当該意匠を特徴付ける部分というべきであり,被告製品
2では,交差する縦と横の比率が当該意匠を特徴付ける部分というべきである。
山型屋根は,垂直力(圧迫)に対する強度補正のための技術的要請に基
づくもので,また水が上部に溜まることを防ぐ文字どおり「屋根」の意義を有し,
旧来様々な分野で用いられているものである。そこに意匠の特徴を見るならば,山
型屋根の形状の相違にこそ着目すべきであり,本件登録意匠と被告意匠の相違点に
ついてはア(イ)で述べたとおりである。
また,垂下側片は浸水防止及び内部の目隠しのための技術的要請に基
づくもので,旧来あらゆる分野で用いられているものである。そこに意匠の特徴を
見るならば,垂下側片の形状の相違にこそ着目すべきであり,被告製品1における
内周縁及び被告製品2における基板の2つの内側角部の内周縁の直交性及び連続性
(完全密封性を施した美観)に関し,本件意匠との相違としてア(イ)で述べたとおり
である。さらに重継片についても,ラックの接続部としての防水及び接続部の目隠
しの機能からして当然存在するものであるが,本件意匠がいずれもカバー基板と一
体をなした連続構造であるのに対し,被告のそれはカバー基板と一体でなく,別構
造物を鋲打ちして連設したもので,美観を異にするのである。
 2 争点(2)(先使用の抗弁)について
(1) 被告の主張
ア 原告の主張する基本的構成態様L型,T型とも,①山型屋根状,②垂下
側片及び③重継片の存在については,原告本件意匠出願時にはすでに被告において
使用している(乙2ないし4)。この撮影対象物品は商品化後のものであるが,先
使用の基準時は,この時点ではない。すなわち,正式図面を作成した時点において
「使用」というべきであるところ,通常,図面作成,加工・作成,取付けの後,配
線工事という流れをたどり,乙2ないし4のような写真を撮ることができるのは,
図面作成から3ないし4か月後である。したがって,少なくとも乙4の1は,本件
登録意匠出願前に「使用」していたということができる。
イ 甲6添付資料1ないし6の製図は,昭和62年8月27日作成(資料
1),平成5年2月1日ないし13日作成(資料2ないし6)であるから,原告が本件
登録意匠につき意匠登録出願した平成5年3月16日以前の「先使用」に当たる。
原告は,頂部稜線の形状,内縁部の形状,採寸からくる美観の相違を問わないと主
張するのであるから,原告の意匠の捉え方からすれば,本件登録意匠は,これら資
料の意匠と類似するものである。
ウ なお,原告は,先使用権につき,意匠登録前に使用した意匠と全く同じ
意匠しか保護しないと主張するようである。しかし,意匠法29条は先使用権を法
定実施権と規定するところ,同法28条2項の通常実施権は基本意匠及び類似意匠
の使用権を内容とする。また,関連周辺特許が別個独立の特許として扱われる特許
法と異なり,意匠法においては,基本意匠と類似意匠はいわば一体として扱われる
のであって,先使用権=通常実施権においても別異に解されるものでなく,先使用
に係る意匠の類似意匠もまた法的保護の対象となるというべきである。
(2) 原告の主張
 ア 被告の主張する乙2ないし4については,本件登録意匠出願時に被告が
これを使用していた客観的な証拠は,全くない。また,乙2ないし4は,被告製品
1及び2と同一性がない。
イ甲6添付資料1ないし6の製図についても,本件登録意匠の出願時に被
告がこれを使用していたという客観的な証拠は全くない。
ウ 仮に被告が先使用したとしても,善意の実施とは到底いえない。
以上より,先使用の抗弁は認められない。
 3 争点(3)(原告の損害)について
  (1) 原告の主張
原告は,本件登録意匠を訴外ネグロス電工株式会社に実施許諾しており,
同社は,平成9年9月から平成11年5月までの21か月間に,本件登録意匠を使
用した製品を,材料店価格で1037万0900円に当たる数量,製造販売してい
る。その間の,被告による被告製品の販売額は,少なくともネグロス電工の上記販
売額の3割の311万1270円を下回らないものと推定される。
被告は,上記金額分の被告製品の製造販売により,少なくともその5割相
当の155万5635円の利益を得ているものであるから,原告は,意匠法39条
2項に基づき,155万5635円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平
成11年6月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
る。
(2) 被告の主張
上記主張は争う。
第4 当裁判所の判断
 1 争点1(被告製品1が本件登録意匠1に,被告製品2が本件登録意匠2に,
それぞれ類似するかどうか)について
  (1) 本件登録意匠の構成
ア 本件登録意匠1について
甲1(意匠公報)及び弁論の全趣旨によれば,本件登録意匠1は,屋外
に配設した冷媒管等を収納するラックに付するカバーに係るものであり,ラックと
その中に収納される冷媒管等が,90度の角度で屈曲する場合に,その角部に設置
するカバーであることが認められる。本件登録意匠1は,別紙説明図1記載のとお
りの各部分から構成されている。
(ア) その基本的構成は,次のとおりである。
① 平面上ほぼ正方形状とみなせるラックの隅部を覆う基部と,ラック
の隅部に連続するラックの直線部をわずかに覆う一対の平面上ほぼ長方形状の突出
部とから,平面上ほぼL字状を呈するカバー基板を形成している。
② このカバー基板の突出部先端に,ほぼ細長帯板状の重継片をそれぞ
れ連設している。
③ カバー基板の重継片部分を除く外周縁には,ほぼ細長帯板状の垂下
側片を下方に垂設している。
④ カバー基板及び重継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うよう
に隆起させており,かなり傾斜の緩い山型屋根状としてある。90度に交わる2つ
の突出部のそれぞれが山型屋根状となっており,そのそれぞれに頂部稜線が存する
が,この2本の頂部稜線は接することなく途切れている。
⑤ 90度に屈曲する部分の,外側角部は角型をしているが,内側角部
は丸められて円弧状となっている。そして,直線である内周縁部分とは断続する形
状となっている。この内側角部には,垂下側片は設けられていない。
(イ) 具体的な構成は,次のとおりである。
① カバー基板は,ラックの隅部を覆う基部に対して,隅部に連続する
突出部が面積比でほぼ1/2弱で,カバー基板の頂部高さは,カバー基板における
基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/13で,ラック用カバー全体からみてかなり低
い。
② 垂下側片は,ラックの親桁外側に配され,その垂下長さが,カバー
基板における基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/30で,ラック用カバー全体から
みてかなり短い。
③ 重継片は,基部及び突出部の上面よりわずかに上方に位置して,他
のラック用カバー端部の上側に重なるようになり,重継片の突出長さは,基部の一
辺(ラックの幅)の幅のほぼ1/30で,ラック用カバー全体からみてかなり短い。
イ本件登録意匠2について
甲2(意匠公報)及び弁論の全趣旨によれば,本件登録意匠2は,屋外
に配設した冷媒管等を収納するラックに付するカバーに係るもので,ラックとその
中に収納する冷媒管等が左右に各90度の角度で分岐する場合に,その分岐する箇
所に付するT字型のカバーであることが認められる。本件登録意匠2は,別紙説明
図2記載のとおりの各部分から構成されている。
(ア) その基本的構成は,次のとおりである。
① 平面上ほぼT字状を呈するカバー基板を形成している。
② このカバー基板の連結端部先端に,ほぼ細長帯板状の重継片をそれ
ぞれ連設している。
③ カバー基板の重継片部分を除く外周縁には,ほぼ細長帯板状の垂下
側片を下方に垂設している。
④ カバー基板及び重継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うよう
に隆起させ,かなり傾斜の緩い山型屋根状としてある。この山型屋根の頂部稜線
は,3つの連結端部のそれぞれの部分に存するが,一直線となっている2つの連結
端部は1本の頂部稜線で貫かれているのに対し,これと90度に交わる連結端部の
頂部稜線とは接することなく途切れている。
⑤ また,左右に分岐する部分の内側角部(本件登録意匠1同様に表現
すれば,内周縁部分)が丸められて円弧状となっており,直線である内周縁部分と
は断続する形状となっている。この部分には,垂下側片は設けられていない。
(イ) 具体的な構成としては,以下のとおりである。
① カバー基板は,ラックの分岐部を覆う基部に対して,分岐部に連続
するラックの直線部を覆う連結端部が面積比でほぼ1/2弱で,カバー基板の頂部
高さは,カバー基板における基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/13で,ラック用
カバー全体からみてかなり低い。
② 垂下側片は,ラックの親桁外側に配され,その垂下長さが,カバー
基板における基部の一辺(ラックの幅)のほぼ1/30で,ラック用カバー全体から
みてかなり短い。
③ 重継片は,基部及び突出部の上面よりわずかに上方に位置して,他
のラック用カバー端部の上側に重なるようになり,重継片の突出長さは,基部の一
辺(ラックの幅)の幅のほぼ1/30で,ラック用カバー全体からみてかなり短い。
(2) 被告製品の意匠の構成
被告製品の意匠の構成は,以下のとおりである。
ア 被告製品1について
前記争いのない事実に証拠(甲17,18)及び弁論の全趣旨を総合す
れば,以下の事実が認められる。
被告製品1は,本件登録意匠1同様に,屋外に配設した冷媒管等を収納
するラックに付するカバーに係るもので,ラックとその中に収納される冷媒管等
が,90度の角度で屈曲する場合に,その角部に設置するカバーである。被告製品
1は,ほぼL字状となっている。
被告製品1にはラックの幅が,200mmのものに対応する被告製品1
-1があり(製品番号KVRL-200),別紙図面1-1のとおりのものであ
る。以下,それぞれラックの幅が,約300,400,500,600,700,
800,1000,1200mmのものに対応する,被告製品1-2ないし9(製
品番号KVRL-300,400,500,600,700,800,1000,
1200)があり,それぞれ図面1-2ないし9のとおりである。
被告製品1は,別紙説明図3記載のとおりの各部分から構成されている
(説明図は被告製品1-1についてのみ作成したが,被告製品1-2ないし9の構
成も,ラックの幅を除き,これと同様である。)。
① 被告製品1は,平面上ほぼ正方形状とみなせるラックの隅部を覆う基
部と,ラックの隅部に連続するラックの直線部をわずかに覆う一対の平面上ほぼ長
方形状の突出部とから,平面上ほぼL字状を呈するカバー基板を形成している。
② このカバー基板の突出部先端にほぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ連
設している。この重継片は,カバー基板本体とは別の部品を,本体に貼り合わせた
ものである。
③ カバー基板の重継片部分を除く外周縁には,ほぼ細長帯板状の垂下側
片を下方に垂設している。
④ カバー基板及び重継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿うように
隆起させ,かなり傾斜の緩い山型屋根状としている。90度に交わる2つの突出部
のそれぞれが山型屋根状となっており,そのそれぞれに頂部稜線が存し,この2本
の頂部稜線は,基部の中央部分において,45度の角度で屈曲し,2つの突出部と
の関係ではそれぞれ45度の斜線となる稜線により接続している。
⑤ 90度に屈曲する部分の,外側角部と内側角部は,いずれも角型をし
ている。内側角部にも,垂下側片が設けられている。
イ 被告製品2について
前記争いのない事実に証拠(甲17,18)及び弁論の全趣旨を総合す
れば,以下の事実が認められる。
被告製品2は,本件登録意匠2と同様,屋外に配設した冷媒管等を収納
するラックに付するカバーに係るもので,ラックとその中に収納する冷媒管等が左
右に各90度ずつの角度で分岐する場合に,その分岐する箇所に付するT字型のカ
バーである。
被告製品2にはラックの幅が,200mmのものに対応する被告製品2
-1があり(製品番号KVRT-200),別紙図面2-1のとおりのものであ
る。以下,それぞれラックの幅が,約300,400,500,600,700,
800,1000,1200mmのものに対応する,被告製品2-2ないし9(製
品番号KVRT-300,400,500,600,700,800,1000,
1200)があり,それぞれ図面2-2ないし9のとおりである。
被告製品2は,別紙説明図4記載のとおりの各部分から構成されている
(説明図は被告製品2-1についてのみ作成したが,被告製品2-2ないし9の構
成も,ラックの幅を除き,これと同様である。)。
① 被告製品2は,平面上ほぼT字状を呈するカバー基板を形成してい
る。
② このカバー基板の連結端部先端にほぼ細長帯板状の重継片をそれぞれ
連設している。この重継片は,カバー基板本体とは別の部品を,本体に貼り合わせ
たものである。
③ カバー基板の重継片部分を除く外周縁には,ほぼ細長帯板状の垂下側
片を下方に垂設し,カバー基板及び重継片を,ラックの幅方向中央部分にほぼ沿う
ように隆起させ,かなり傾斜の緩い山型屋根状としている。この山型屋根の頂部稜
線は,3つの連結端部のそれぞれの部分に存するが,基部の中央部分において,T
字状の縦棒部分となる連結端部の頂部稜線が左右45度の2本の稜線に分かれ,そ
れぞれがT字状の横棒部分となる連結端部の頂部稜線と接続することにより,この
3本の頂部稜線はY字状に接続している。
④ また,左右に分岐する部分の内側角部は,角型をしている。内側角部
にも,垂下側片が設けられている。
(3) 本件登録意匠の要部
本件登録意匠の要部について検討する。 
ア 本件登録意匠のうち,本件登録意匠1においては,L字状の形状は,冷
媒管等及びこれを収納するラックが,L字状に90度に屈曲する箇所に付されるカ
バーであることからなる形状である。同様に,本件登録意匠2においては,T字状
の形状は,冷媒管等及びこれを収納するラックが,左右にT字状に各90度の角度
で分岐する箇所に付されるカバーであることからなる形状である。冷媒管等を建物
等に配管する場合に,これを90度に屈曲させたり,左右に各90度ずつの角度で
分岐させることがあるのは,配管工事上当然のことであり,これに伴って,そのよ
うな配管箇所に付するカバーが上記のような形状とならざるを得ないことも明らか
である。したがって,これらL字状及びT字状の形状は,冷媒管等のラックカバー
という物品の機能を果たすためには必然的なものであるから,この形状が本件登録
意匠の特徴的部分ということはできず,これを要部ということはできない。
イ また,冷媒管等を収納するラックのカバーという物品の性質上,単体で
使用するのでなく,ある程度の長さに連結して使用されることが当然に予定されて
いるものであり,これを連結するために,突出部(本件登録意匠1)又は連結端部
(本件登録意匠2)の先端に重継片部分を設置することも機能上要請される必然的
なことというべきである。そして,本件登録意匠において,その重継片部分は,そ
の形状,構造とも,美観に何らの特徴を有するものではないから,これらの部分が
本件登録意匠の特徴的部分ということはできず,これを要部ということはできな
い。
ウ さらに,ラックのカバーという物の性質上,屋外においてラック内に雨
水等が浸入することのないよう,またラックから外れることのないようにしたり目
隠しのために,細長帯板状の垂下側片を下方に垂設することも機能からくる必然的
なものというべきである。そして,本件登録意匠において,その垂下側片部分は,
その形状,長さとも,美観に何らの特徴を有するものではないから,本件登録意匠
の特徴的部分ということはできず,要部ということはできない。
エ(ア) 本件登録意匠は,そのいずれにおいても,傾斜の緩やかな山型屋根
状となっているが,山型屋根自体は,雨水等を下方へ流し,また,薄い板状の材料
からなる構造物に,垂直力に対する強度を付与する機能を実現するための構造の一
種というべきである。そして,山型屋根は,古くから,住宅や物置きその他の屋外
設置物の屋根として用いられてきたものであり,それ自体,ありふれたものであっ
て,特段新規なものではない。本件登録意匠においては,山型屋根が用いられてい
るが,屋外に設置されることがあり,また薄い金属板等で構成されるラック用カバ
ーにおいて,雨水を下方へ流すこと及び垂直力に対する一定の強度を付与するため
にこのような構造をとることは,当該機能を実現するための通常の構造というべき
であるから,この形状も本件登録意匠においても要部ということはできない。
(イ) もっとも,本件登録意匠1においては,90度に交わる2つの突出
部がそれぞれ山型屋根状をしているが,この頂部稜線が接することなく途切れてい
る。そして,この稜線が途切れた部分は平らになっている。この部分は,上記のよ
うにそのほとんどが機能必然的な構成からなる本件登録意匠1において,看者の注
意を引きやすい部分であるということができる。したがって,この部分が本件登録
意匠1の要部というべきである。
同様に,本件登録意匠2において,分岐部を覆う基部につながる3つ
の連結端部は,それぞれ山型屋根状をしているが,一直線となっている2つの連結
端部は1本の頂部稜線で貫かれているのに対し,これと90度に交わる連結端部の
頂部稜線とは接することなく途切れている。この部分は,上記のようにそのほとん
どが機能必然的な構成からなる本件登録意匠2において,看者の注意を引きやすい
部分であるということができる。したがって,この部分が本件登録意匠2の要部と
いうべきである。
(4) 類否の判断
 上記認定の本件登録意匠の要部を前提として,本件登録意匠と被告製品と
の類否について検討する。
ア 本件登録意匠1と被告製品1との類否(別紙比較対照図1参照)
前記のとおり,本件登録意匠1においては,90度に交わる2つの突出
部の山型屋根状の頂部稜線は接することなく途切れており,この稜線が途切れた部
分は平らになっている。これに対して,被告製品1においては,90度に交わる2
つの突出部の山型屋根状の頂部稜線は,基部の中央部分において,45度の角度で
屈曲し,45度の斜線となる稜線により接続しているものであって,この点は,看
者に大きく異なる印象を与えるというべきである(なお,本件登録意匠1の類似意
匠である甲26,29によれば,本件登録意匠1の要部は,2つの突出部の山型屋
根状の頂部稜線が屈曲することなく,それぞれ直進している点にあると解すること
もあるいは可能かもしれないが,本件登録意匠1の要部をそのように解したとして
も,被告製品は,2つの頂部稜線が基部の中央部分において45度の角度で屈曲し
ているものであるから,いずれにしても看者に大きく異なる印象を与えるものとい
うべきである。)。
ラック用カバーという製品が同一であること,L字状の形状をしている
こと,重継片を備えること(ただし,本件登録意匠1の重継片と,被告製品1のそ
れとは,カバー基板全体との面積比率,形状,構造等,相当異なっている。),細
長帯板状の垂下側片を下方に垂設すること及びその長さなどは,本件登録意匠1と
被告製品1とにおいて共通であるが,上記(3)において検討したように,これらは本
件登録意匠1の要部ということができないので,類否においては意味を持たない。
さらにいえば,被告製品1は1ないし9からなるところ,基部と突出部
の面積比率が,本件登録意匠1とほぼ同様であるものは,せいぜい被告製品1-5
ないし9のみであり,少なくとも被告製品1-1ないし4は,全体の形状が相当本
件登録意匠1と異なっているということができる。これを設計変更的なわずかな差
異であるとする原告の主張は採用できない。したがって,そもそも被告製品1-1
ないし4は,本件登録意匠1とは全く異なる意匠というべきである。
以上によれば,被告製品1は,これを見る者にとって,本件意匠1と
は,美感上異なる印象を与えるものというべきである。
イ 本件登録意匠2と被告製品2との類否(別紙比較対照図2参照)
同様に,本件登録意匠2の要部と被告製品2との類否について検討す
る。
  前記のとおり,本件登録意匠2においては,3つの連結端部の山型屋根
状の頂部稜線は,一直線となっている2つの突出部は1本の頂部稜線で貫かれてい
るが,これと90度に交わる連結端部の頂部稜線とは接することなく途切れてい
る。これに対して,被告製品2においては,3つの連結端部の山型屋根の頂部稜線
は,基部の中央部分において,T字状の縦棒部分となる連結端部の頂部稜線が左右
45度の2本の稜線に分かれ,それぞれがT字状の横棒部分となる連結端部の頂部
稜線と接続することにより,Y字状に接続しているものであって,この点は,看者
に大きく異なる印象を与えるというべきである(なお,本件登録意匠2の類似意匠
である甲27,28によれば,本件登録意匠1の要部は,3つの連結端部の山型屋
根状の頂部稜線が屈曲することなく,それぞれ直進している点にあると解すること
もあるいは可能かもしれないが,本件登録意匠2の要部をそのように解したとして
も,被告製品は,3つの頂部稜線が基部の中央部分において45度の角度で屈曲し
Y字状に接続しているものであるから,いずれにしても看者に大きく異なる印象を
与えるものというべきである。)。
ラック用カバーという製品が同一であること,T字状の形状をしている
こと,重継片を備えること(ただし,本件登録意匠2の重継片と,被告製品2のそ
れとは,カバー基板全体との面積比率,形状,構造等,相当異なっている。),細
長帯板状の垂下側片を下方に垂設すること及びその長さなどは,本件登録意匠2と
被告製品2とにおいて共通であるといえるが,上記(3)において検討したように,こ
れらは本件登録意匠2の要部ということができないので,類否においては意味を持
たない。
さらに,被告製品1同様,被告製品2には1ないし9があるところ,基
部と連結端部の面積比率が本件登録意匠2とほぼ同様であるものは,せいぜい被告
製品2-5ないし9のみであり,少なくとも被告製品2-1ないし4は,全体の形
状が本件登録意匠2と相当異なっているということができる。これを設計変更的な
わずかな差異であるとする原告の主張は採用できない。したがって,そもそも被告
製品2-1ないし4は,全く異なった意匠というべきである。
以上によれば,被告製品2は,これを見る者にとって,本件意匠2と
は,美感上異なる印象を与えるものというべきである。
 (5) 小括
  以上によれば,被告製品1は本件登録意匠1に,被告製品2は本件登録意匠
2に,いずれも類似しないものと解するのが相当である。
 2 結論
そうすると,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求は,いず
れも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官    三  村  量  一
裁判官村  越 啓悦
裁判官  青  木  孝  之
物  件  目  録
 1-1 被告が製造するラック用カバーで,別紙図面1-1に記載した物
  -2 同じく別紙図面1-2に記載した物
  -3 同じく別紙図面1-3に記載した物
  -4 同じく別紙図面1-4に記載した物
  -5 同じく別紙図面1-5に記載した物
  -6 同じく別紙図面1-6に記載した物
  -7 同じく別紙図面1-7に記載した物
  -8 同じく別紙図面1-8に記載した物
  -9 同じく別紙図面1-9に記載した物
2-1 被告が製造するラック用カバーで,別紙図面2-1に記載した物
  -2 同じく別紙図面2-2に記載した物
  -3 同じく別紙図面2-3に記載した物
  -4 同じく別紙図面2-4に記載した物
  -5 同じく別紙図面2-5に記載した物
  -6 同じく別紙図面2-6に記載した物
  -7 同じく別紙図面2-7に記載した物
  -8 同じく別紙図面2-8に記載した物
  -9 同じく別紙図面2-9に記載した物
別紙図面
 1-11-21-31-41-5
 1-61-71-81-9
別紙図面
 2-12-22-32-42-5
 2-62-72-82-9
別紙 説明図1
別紙 説明図2
別紙 説明図3
別紙 説明図4
別紙 比較対照図1
別紙 比較対照図2

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従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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経験不問です。

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履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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