弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
     1 本件控訴を棄却する。
     2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人ら
(1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人らは,控訴人株式会社家庭薬新聞社に対し,連帯して金1150万円及
びこれに対する平成10年8月26日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
  (3) 被控訴人らは,家庭薬新聞の第1面に原判決別紙(三)記載の謝罪広告を同記
載の掲載条件で1回掲載せよ。
  (4) 被控訴人らの請求を棄却する。
  (5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
  (6) (2)につき仮執行宣言
 2 被控訴人ら
   主文同旨
第2 事案の概要
 1原審平成10年(ワ)第242号事件(以下「本件甲事件」という。)は,家庭薬新聞を
発刊する控訴人会社が行った,薬品会社に対する薬日新聞への広告掲載停止要
請並びに家庭薬新聞の虚偽の記事の掲載により,損害を被ったと主張する薬日新
聞を発刊する被控訴人会社とその取締役兼編集長である被控訴人Aが,控訴人
会社とその代表取締役である控訴人Bに対して,民法709条,723条及び不正競
争防止法3条,7条に基づき,次のような請求をした事案である。
  (1) 被控訴人会社の請求
① 控訴人両名に対し,損害金2582万円と遅延損害金の連帯しての支払
② 控訴人会社に対し,虚偽の陳述の告知・流布の差止め
③ 控訴人会社に対し,謝罪広告の掲載
(2) 被控訴人Aの請求
① 控訴人両名に対し,損害金372万円と遅延損害金の連帯しての支払
② 控訴人会社に対し,謝罪広告の掲載
 2 原審平成10年(ワ)第309号事件(以下「本件乙事件」という。)は,薬日新聞の記
事により名誉を毀損されたと主張する控訴人会社が,民法709条,723条に基づ
き,①被控訴人両名に対し損害金1150万円と遅延損害金の連帯しての支払,②
被控訴人両名に対し謝罪広告の掲載,の各請求をした事案である。
 3 原審は,本件甲事件について,被控訴人会社の請求のうち,①につき2110万円
とこれに対する遅延損害金(平成10年4月10日から年5分)の連帯しての支払,
③につき原判決別紙(一)記載の謝罪広告の家庭薬新聞への掲載,を各認容し,被
控訴人Aの請求のうち,①につき55万円とこれに対する遅延損害金(平成10年5
月8日から年5分)の連帯しての支払を認容したが,被控訴人らのその余の請求を
棄却し,本件乙事件については,控訴人会社の請求を全て棄却した。そこで,これ
を不服とする控訴人らが本件控訴に及んだ。
 4 当事者間に争いのない事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,原判
決中の「不正競争防止法二条一項一一号」とあるのを「不正競争防止法2条1項1
3号」と改め,原判決34頁11行目,35頁1行目,3行目,8行目に「甲」とあるのを
「C」と改めるほかは,原判決「第二 事案の概要」の一ないし六に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,本件甲事件は,原判決の認容した限度で被控訴人らの請求は理由
があり,本件乙事件については,控訴人会社の請求は理由がないと判断するもの
であり,その理由は,次のとおり訂正するほかは,原判決「第三 当裁判所の判
断」の一ないし七に記載のとおりであるから,これを引用する。当審において新たに
取り調べた証拠(甲第24ないし第26号証,乙第23ないし第25号証)を加えて検
討しても,上記認定・判断を左右しない。
(1) 原判決中の「不正競争防止法二条一項一一号」とあるのを「不正競争防止法2
条1項13号」と改める。
(2) 原判決48頁5行目,9行目,11行目,57頁8行目,9行目,10行目,62頁1
0行目,70頁6行目,9行目に「甲」とあるのを「C」と改める。
(3) 原判決53頁4行目から54頁5行目までを,次のとおり改める。
「ところで,甲第9号証の1ないし3,乙第12号証及び原審における控訴人Bの
本人尋問の結果によれば,控訴人Bは,C及びその代理人弁護士に対する取
材などから,Cが東京都知事に対してした配置販売業許可申請書の備考欄に
「営業の区域:東京都一円の事業所所在地」と記載され,また,同人がこれが
認められなければ,訴訟も辞さないとの姿勢で都の担当者と折衝したところ,
都知事から薬事法24条1項の配置販売業の許可がなされたとの事実を確認し
て,平成10年3月5日の家庭薬新聞に,東京都が配置販売業者に事業所配
置を認めた旨の記事(事業所配置記事)を掲載したことが認められる。しかしな
がら,薬事法30条1項は,「配置販売業の許可は,配置しようとする区域をそ
の区域に含む都道府県ごとに,その都道府県知事が,厚生大臣の定める基準
に従い品目を指定して与える。」と規定しているのであり,当該許可で定めるこ
とのできるのは,営業区域と医薬品の品目だけであって,配置する場所の種別
(家庭,事業所,学校など)を個々的に規制することは認められておらず,現
に,乙第13号証によれば,Cが都知事より平成10年2月13日付けで受けた
医薬品販売業許可書には,事業所配置を認めたことを窺わせるような記述は
全くないことが認められる。弁論の全趣旨によれば,これまで都道府県が医薬
品の配置販売に事業所配置を認めてこなかったのは,主管庁である厚生省の
事業所,学校への医薬品の配置は薬事法上認められないとの行政解釈(昭和
38年11月26日薬事第93号厚生省薬務局薬務課長通知)に従っていたから
であることが認められる。したがって,行政庁が法律に反する処分(許可)をす
ることは許されないから,仮にCに対する都知事の許可が事業所配置を認める
趣旨でなされたものであるとすれば,東京都は上記の行政解釈と異なる解釈を
採用したということになり,そうなれば,東京都においては,Cに限らず,都知事
から許可を受けていた既存の販売業者全員についても,事業所配置が認めら
れることとなる。しかし,前記認定(引用した原判決)のとおり,東京都は,平成
10年3月5日の家庭薬新聞の報道を受けて,衛生局薬務部薬務課長の名をも
って,全国の道府県薬務主管課長宛に,同月9日と10日の2回にわたって,東
京都は事業所向けの配置販売は厚生省の通知に基づき従来どおり認めてお
らず,家庭薬新聞の報道は誤報である旨の事務連絡文書を送付し,甲第12号
証によれば,控訴人会社に対しても,同月10日付けで同じく衛生局薬務部薬
務課長の名をもって,同趣旨の文書を送付し,記事の訂正を求めたことが認め
られる。
 以上のことからすると,事業所配置が認められるか否かは,薬事法がそれを
許容しているかどうかによって定まることであって,都道府県知事は,それを個
々的に許すかどうかの裁量権限を有するものではなく,Cが東京都に提出した
申請書の備考欄に営業の区域として事業所所在地と記載したことは,薬事法の
規定の趣旨からすれば,法的には無意味なものであり,かつ,東京都が従来の
事業所配置は薬事法上許されないとの行政解釈を変更したものでないことは明
らかである。そして,家庭薬新聞は,主として医薬品配置販売業関係者を購読
対象とするいわゆる業界新聞であり,甲第9号証の1ないし3,第11,第12号証
によれば,控訴人らは,事業所配置がこれまで認められなかった理由,根拠を
十分承知していたことが認められる。そうであるとすれば,控訴人らは,前記記
事の訂正を求める東京都衛生局薬務部薬務課長からの文書を受け取った時点
で,当該記事が誤報であったことを認識したと推認される。控訴人Bが,原審の
本人尋問において,Cに対する都知事の許可が「こそっと出されたもので,公的
ではない。」旨の不自然な供述をしていることも,これを裏付けるものである。控
訴人らは,当審においても,東京都が事業所配置を認めた旨の前記記事は誤
報ではない旨強弁し,乙第23号証(控訴人Bの陳述書)を提出するが,それは,
事業所所在地を営業の区域とする申請書に基づいて都知事がCに許可を与え
たことを理由とし,都知事が事業所配置を認めるかどうかの裁量権限を有するこ
とを前提にするものであって,失当である。」
2 控訴人らの当審における主張は,原審の主張の繰り返しか,結論に影響しない事
実の主張に過ぎず,採用の限りでない。
 3 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし
て,主文のとおり判決する。
         名古屋高等裁判所金沢支部第1部
              裁判長裁判官   川   崎   和   夫
                 裁判官   榊   原   信   次
                 裁判官   入   江       猛

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