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平成30年6月28日判決言渡
平成30年(行ウ)第23号情報公開請求却下処分取消請求事件
主文
1本件訴えを却下する。
2訴訟費用は被告の負担とする。5
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
(1)処分行政庁が平成29年9月25日付けで原告に対してしたA議員の平成
28年度政務活動費収支報告書に添付された家賃・人件費に関する領収書の10
写しに係る公文書開示請求を却下するとの処分を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2被告の本案前の答弁
(1)主文第1項と同旨
(2)訴訟費用は原告の負担とする。15
第2事案の概要
本件は,原告が,処分行政庁に対し,東京都議会情報公開条例(以下「都議
会情報公開条例」という。)に基づき,「2016年度政務活動費収支報告書
に添付された領収書の写し。ただしA議員のもの。家賃および人件費に関する
もの。政務活動費の支出額がわかる部分(台紙)を含む。」につき写しの交付20
の方法による開示の請求(以下「本件開示請求」といい,本件開示請求におい
て開示を求めた上記公文書のことを「本件請求対象文書」という。)をしたと
ころ,処分行政庁から平成29年9月25日付けで本件開示請求を却下すると
の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分は違法であ
ると主張して,その取消しを求める事案である。25
なお,処分行政庁は,本件訴訟係属中の平成30年4月24日付けで本件処
分を変更し,本件請求対象文書につき一部を開示する旨の決定(以下「本件一
部開示決定」という。)を行った。
1関係法令等の定め
関係法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」に記載のとおりである(な
お,同別紙中で定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いるものと5
する。)。
2前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1)本件処分に至る経緯等
原告は,平成29年9月12日,処分行政庁に対し,都議会情報公開条例
に基づき本件請求対象文書の開示を請求した(本件開示請求)。これに対し,10
処分行政庁は,同月25日付けで,本件請求対象文書は,政務活動費交付条
例16条3項によりその写しの閲覧及び写しの交付が請求できるものである
として,都議会情報公開条例20条1項を根拠に,本件開示請求を却下する
との処分(本件処分)をした。
なお,A議員の平成28年度政務活動費収支報告書に添付された事務所家15
賃・人件費の領収書の写しについては,政務活動費交付条例16条3項後段
に基づきその一部(人件費については領収書の金額及び支払先,台紙の内訳
部分等,事務所家賃については領収書及び台紙の支払先等)を非開示とした
状態で閲覧に供されている。
(2)原告は,平成30年1月24日,本件処分の取消しを求めて,本件訴えを20
提起した(顕著な事実)。
(3)被告は,平成30年3月15日の本件第1回口頭弁論期日において陳述さ
れた答弁書において,原告の請求の棄却を求め,本件処分に違法はないとの
主張をした(顕著な事実)。
(4)処分行政庁は,平成30年4月24日付けで,本件処分を変更し,本件請25
求対象文書につき,都議会情報公開条例7条1号の規定により一部(人件費
及び事務所費の支払先,領収書の氏名等)を非開示とし,その余の部分を開
示する旨の本件一部開示決定をした(乙3)。
原告は,同月27日,本件一部開示決定に係る通知書を受け取った(弁論
の全趣旨)。
(5)被告は,平成30年5月8日の本件第2回口頭弁論期日において陳述され5
た準備書面において,本件一部開示決定がなされたことを理由に,本件訴え
の却下を求める旨の答弁をした(顕著な事実)。
3被告の本案前の主張
処分行政庁は,前記前提事実(4)のとおり,平成30年4月24日付けで本件
処分を変更し,本件一部開示決定をした。したがって,本件訴えは,存在しな10
い処分の取消しを求めるものであって,不適法である。
4訴訟費用の負担についての原告の主張
(1)訴訟費用の負担について
被告は,本件処分が違法であることを容易に知り得たにもかかわらず,本
件第1回口頭弁論期日において,全面的に争う旨の答弁を行い,原告の訴訟15
遂行を余儀なくさせた。違法な本件処分の是正がなされたのは本件処分から
約7か月が経過してからであり,処分行政庁は速やかな是正を怠った。処分
行政庁は,本件訴訟の中で本件処分の違法性を認めざるを得なくなったこと
から,敗訴を避けるために,本件第2回口頭弁論期日を目前にして,本件一
部開示決定をしたものと推認される。20
原告が本件訴訟を提起しなければ,本件処分の是正はなされなかったので
あるから,本件の訴訟費用は,被告の負担とすべきである。
(2)本件処分が違法であること
ア都議会情報公開条例20条1項は,他の条例によって閲覧や写しの交付
が制度化されている公文書について,制度の二重化を避けることを目的と25
する規定であるが,本件請求対象文書は,東京都議会事務局が保管する領
収書の写しであって,政務活動費交付条例によって一部を非開示とした状
態で閲覧に供されている公文書と同一のものではない。すなわち,情報公
開制度が二重になるという問題は発生していないのであるから,処分行政
庁が都議会情報公開条例20条1項を適用して本件開示請求を却下したこ
とは誤りである。5
イ都議会情報公開条例20条1項の規定は,行政機関の保有する情報の公
開に関する法律(以下「情報公開法」という。)15条にならって制定さ
れたものであるから,同条と異なる解釈をすべき理由はない。
同条1項は,「行政機関の長は,他の法令の規定により,何人にも開示
請求に係る行政文書が前条第1項本文に規定する方法と同一の方法で開示10
することとされている場合(開示の期間が定められている場合にあっては,
当該期間内に限る。)には,同項本文の規定にかかわらず,当該行政文書
については,当該同一の方法による開示を行わない。ただし,当該他の法
令の規定に一定の場合には開示をしない旨の定めがあるときは,この限り
でない。」と定めている。情報公開法15条1項ただし書の趣旨は,一定15
の場合に開示をしない旨の定めがあるときは,情報公開法に基づき開示請
求した場合の範囲と必ずしも同一にならないため,同条の調整対象としな
いというものであるから,都議会情報公開条例20条1項の規定もこれと
同様に解するべきである。
したがって,政務活動費交付条例が16条3項後段において一定の場合20
には全部開示をしなくてもよいと定めている以上,都議会情報公開条例2
0条1項を適用して本件開示請求を却下することはできない。
ウ政務活動費交付条例には,前記のとおり,領収書を閲覧に供する際,一
部の情報を非開示にできるとする規定がある。一方で,同条例及び関連規
則・規程に,非開示部分の開示を求めて不服申立てや訴訟で争うことがで25
きる旨教示するための規定は存在しない。実際にも,そのような教示は行
われていない。政務活動費交付条例による閲覧制度が,不服申立てや訴訟
手続を想定したものでないことは明らかである。
政務活動費の使途に係る領収書の中に公開されていない情報があるにも
かかわらず,公開を求めることができず,かつ不服申立てや訴訟をする手
段がないとする合理的理由は存在しないから,本件請求対象文書は,都議5
会情報公開条例による開示の対象となるというべきである。
5原告の主張に対する被告の反論
(1)本件請求対象文書は,政務活動費交付条例10条2項の規定に基づいて提
出され,同条例16条1項に基づき保存されているものであるから,原告は,
同条3項前段の規定に基づいて閲覧請求をすることができる。したがって,10
本件請求対象文書は,情報公開制度が二重となることを避けることを目的と
した都議会情報公開条例20条1項により開示できないものであることは明
らかであって,同条項により本件開示請求を却下した本件処分は適法である。
(2)政務活動費交付条例16条3項後段は,都議会情報公開条例7条各号に掲
げる情報が記録されている場合に当該情報が記録されている部分を除いた部15
分につき閲覧に供するものとすると定めているが,これは同条項前段に基づ
く閲覧請求があった場合に議長が執るべき措置を定めたものであり,閲覧請
求をする権利を制限するものではない。
上記措置につき不服申立てや訴訟で争うことができるか否かは,条例で定
められるものではなく,行政不服審査法や行政事件訴訟法に基づいて決せら20
れるべきものであるから,上記措置に対して不服申立てや訴訟もできないと
いうのは誤解である。
第3当裁判所の判断
1本案前の主張について
前記前提事実(4)のとおり,処分行政庁は,都議会情報公開条例20条1項の25
規定により本件開示請求を却下した本件処分を変更し,同条例7条1号の規定
により一部を非開示とし,その余の部分を開示するとの本件一部開示決定を行
ったのであるから,これにより本件処分の法的効果は消滅したといえる。そう
すると,本件訴えは,訴えの利益を欠くに至ったというべきであるから,本件
訴えは不適法であり,却下を免れない。
2訴訟費用の負担について5
本件訴えは,前記のとおり,現時点においては訴えの利益を欠くに至ったも
のの,その提起の時点はもとより,本件一部開示決定がなされるまでは,適法
な訴えであったことは明らかである。そして,本件訴えは,その提起後に処分
行政庁が本件一部開示決定をしたことにより,原告の本件請求が認容されて本
件処分が取り消され,再度本件開示請求に対する処分がされた場合と同様の状10
況になり,その目的を達し,事後的にその訴えの利益が消滅したものである。
しかるところ,本件一部開示決定は,被告が本件において主張する本件請求対
象文書が都議会情報公開条例20条1項により開示できないものである旨の都
議会情報公開条例の解釈とは異なる解釈に基づいて行ったものといわざるを得
ない。そのほか,本件記録に現れた一切の事情をみても,本件訴えが不適法な15
ものになったことについて,原告に責められるべき点は見当たらない。
以上の事情に鑑みれば,原告が本件訴えを提起したこと及びこれに引き続く
訴訟行為は,原告の「権利の伸張若しくは防御に必要であった行為」(民訴法
62条)というべきであり,本件の訴訟費用は,被告に負担させるのが相当で
ある。20
第4結論
よって,本件訴えは不適法であるから却下することとし,訴訟費用の負担に
つき,行政事件訴訟法7条,民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部25
裁判長裁判官林俊之
裁判官小川弘持5
裁判官三貫納有子

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