弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1A税務署長が平成16年3月30日付けで原告に対してした平成15年7月
分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分(た
だし,いずれも平成17年6月28日付け審査裁決により一部取り消された後
のもの)をいずれも取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文1項と同旨
第2事案の概要
本件は,原告の使用人であったBら6名がその執行役に就任するに当たり,原告
が,同人らに対してその就業規則及び退職金規程に基づく退職金として合計
6341万円(以下「本件各金員」という)を支払い,その支払の際,本件各金。
員に係る所得は所得税法30条1項にいう「退職所得」に該当するとして所得税を
源泉徴収し,これを国に納付したところ,A税務署長が上記所得は同法28条1項
にいう「給与所得」に該当するとして,原告に対し,納税告知及び不納付加算税賦
課決定をしたことから,原告が,上記各処分(いずれも平成17年6月28日付け
審査裁決により一部取り消された後のもの)の各取消しを求めた取消訴訟である。
1法令の定め
()所得税法1
ア所得税法28条1項は,給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並
びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいうと規定する。
イ同法30条1項は,退職所得とは,退職手当,一時恩給その他の退職により
一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下「退職手当等」という)。
に係る所得をいう旨規定する。
同法は,退職所得の金額は,その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除
額を控除した残額の2分の1に相当する金額とする(同法30条2項)とともに,
上記退職所得控除額は,政令で定める勤続年数に応じて増加することとして(同条
),。,3項課税対象額が一般の給与所得に比較して少なくなるようにしているまた
同法は,税額の計算についても,他の所得と分離して累進税率を適用することとし
て(同法22条1項,同法201条,退職手当等に係る税負担の軽減を図ってい)
る。
()所得税基本通達2
所得税基本通達(昭和45年直審(所)第30号)30−1は「退職手当等と,
は,本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので,退職したことに基
因して一時に支払われることとなった給与をいう。したがって,退職に際し又は退
職後に使用者等から支払われる給与で,その支払金額の計算基準等からみて,他の
引き続き勤務している者に支払われる賞与等と同性質であるものは,退職手当等に
該当しないことに留意する」とし,同通達30−2は「引き続き勤務する役員又。,
は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち,次に掲げるもので
その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎と
なった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは,30−1にかかわ
らず,退職手当等とする」とするところ,同通達30−2が引き続き勤務する者。
に支払われる給与で退職手当等とするものとして掲げるものは,別紙1のとおりで
ある。同通達30−2の2は,使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者
に限る)からいわゆる執行役員に就任した者に対しその就任前の勤続期間に係る。
退職手当等として一時に支払われる給与(当該給与が支払われた後に支払われる退
職手当等の計算上当該給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の
下に支払われるものに限る)のうち,例えば,①執行役員との契約は,委任契。
約又はこれに類するもの(雇用契約又はこれに類するものは含まない)であり,。
,,かつ執行役員退任後の使用人としての再雇用が保障されているものではないこと
②執行役員に対する報酬,福利厚生,服務規律等は役員に準じたものであり,執
行役員は,その任務に反する行為又は執行役員に関する規程に反する行為により使
用者に生じた損害について賠償する責任を負うこと,のいずれにも該当する執行役
員制度の下で支払われるものは,退職手当等に該当するとし,注として,上記例示
以外の執行役員制度の下で支払われるものであっても,個々の事例の内容から判断
して,使用人から執行役員への就任につき,勤務関係の性質,内容,労働条件等に
おいて重大な変動があって,形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる
従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があると認められる場
合には,退職手当等に該当することに留意するとする。
2前提事実
以下の各事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠(特記しない限り,各枝
番を含む)によって容易に認定することができる。。
()原告について1
原告は,昭和37年に設立された,各種製品の企画,販売及び輸出入に関する業
務等を行うことを目的とする,資本金の額34億3500万円の株式会社である。
(甲1)
()Bらの執行役就任2
原告は,平成15年6月26日の株主総会決議に基づき,平成17年法律第87
号による廃止前の株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法
特例法」という)1条の2第3項にいう「委員会等設置会社」に移行した。。
原告の取締役会は,同日,原告の使用人であったB,C,D,E,F及びGの6
(,「」。)()名併せて以下Bらというを執行役商法特例法21条の5第1項4号
に選任し,Bらは,同日,原告の執行役に就任した。
(甲1,甲2)
()原告による本件各金員の支払等3
ア原告の就業規則49条(甲23)は,社員の退職金は,別に定める退職金規
程により支給する旨規定し,これを受けて定められた退職金規程(甲4。以下「本
件退職金規程」という)の定めは,別紙2のとおりである。。
原告は,平成15年7月31日,Bらに対し,本件退職金規程に基づいて算出し
た退職金合計6341万円(本件各金員)を支払うこととし,その際,Bらから,
本件各金員に係る所得は所得税法30条1項にいう「退職所得」に該当するとして
合計20万4100円の源泉所得税を徴収し,同年8月11日,これを国に納付し
た。Bらに対する退職金の額及び原告が源泉徴収して国に納付した源泉所得税の内
訳等は,下記のとおりである。

勤続年数退職金の額源泉所得税の額
B26年1282万7000円3万1300円
C26年1282万7000円3万1300円
D25年1205万6000円2万7800円
E25年1142万5000円0円
F20年869万5000円3万4700円
G10年558万0000円7万9000円
合計6341万0000円20万4100円
イ(ア)平成15年6月26日当時の原告の「役員の定年および退職慰労金等に
ついての内規(乙1。以下「本件内規」という)第3章の主な規定は,別紙3の」。
とおりであり,これによれば,使用人から役員に就任した場合,その際に使用人と
(),,しての退職金本件退職金規程に基づく退職金を支給した上で役員退任時には
本件内規に基づき,原告におけるすべての在職年数(使用人としての勤続年数及び
役員としての勤続年数)を基礎として算出された退職慰労金から上記既払額(使用
人としての退職金額)を控除することとされていた(本件内規3章3条()。6)
(イ)原告においては,本件各金員の支払後,報酬委員会規程(甲10)が策定
され(平成17年6月24日施行,同規程10条1項1号は,取締役及び執行役)
(役員)の退職慰労金の額は,退任時の報酬月額に在任年数と役位係数を乗じて算
出した額を限度とするとし,同項5号は,使用人から役員に就任した場合は,社員
としての退職金を支給し,役員退職慰労金については,同項1号の算出により支給
するとし,執行役就任前における使用人であった勤続期間の通算を行わないことと
している。
(甲4,甲5,甲10,甲23,乙1,弁論の全趣旨)
()本件訴えに至る経緯4
アA税務署長は,平成16年3月30日付けで,原告に対し,本件各金員に係
る所得は所得税法28条1項にいう「給与所得」に該当するとして,原告の平成1
5年7月分の給与所得の源泉徴収に係る所得税について,納税告知(納税告知額2
007万0520円及び不納付加算税賦課決定不納付加算税額200万7000)(
円)をした。
イ原告は,平成16年5月20日,A税務署長に対し,上記納税告知及び不納
付加算税賦課決定について異議申立てをしたが,A税務署長は,同年8月6日付け
で,これを棄却する旨の決定をした。
ウ原告は,平成16年9月2日,国税不服審判所長に対し,上記異議決定につ
き,審査請求をした。国税不服審判所長は,平成17年6月28日付けで,原告に
対し,本件各金員に係る所得は給与所得に該当するが,上記納税告知及び不納付加
算税賦課決定における税額の計算には誤りがあったとして,納税告知額を1157
万7836円(その内訳は,B245万7692円,C264万2228円,D2
26万7128円,E219万1440円,F138万9028円,G63万03
20円不納付加算税額を115万7000円とする旨の一部取消裁決をした同),(
裁決によって一部取り消された後の上記納税告知及び不納付加算税賦課決定を,そ
れぞれ,以下「本件納税告知「本件賦課決定」といい,両者を併せて,以下「本」,
件各処分」という。。)
エ原告は,平成17年12月15日,当庁に対し,本件訴えを提起した。
(甲6から8まで,顕著な事実)
3争点及び当事者の主張
本件における争点は,本件各金員に係る所得が所得税法30条1項にいう「退職
所得」に該当しないかどうかであり,この点に関する当事者の主張は,以下のとお
りである。
(被告の主張)
()退職所得該当性の判断基準について1
ア退職所得について,所得税の課税上,他の給与所得と異なる優遇措置が講ぜ
られているのは,一般に,退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される
金員は,その内容において,退職者が長期間特定の事業所等において勤務してきた
ことに対する報償及び同期間中の就労に対する対価の一部分の累積たる性質をもつ
とともに,その機能において,受給者の退職後の生活を保障し,多くの場合いわゆ
る老後の生活の糧となるものであって,他の一般の給与所得と同様に一率に累進税
率による課税の対象とし,一時に高額の所得税を課すこととしたのでは,公正を欠
き,かつ社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから,このような
結果を避ける趣旨に出たものと解される。そして,退職所得該当性については,そ
の名称にかかわりなく,退職所得の意義について規定した所得税法30条1項の規
定の文理及び退職所得に対する優遇課税についての上記立法趣旨に照らし,これを
決するのが相当である。
イそこで,このような観点から考察すると,まず,ある金員が上記規定にいう
「退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというため
には,それが,①退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付さ
れること,②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部
の後払の性質を有すること,③一時金として支払われること,との要件を備える
ことが必要であると解される(最高裁昭和53年(行ツ)第72号同58年9月9
日第二小法廷判決・民集37巻7号962頁。そして,退職所得優遇制度の趣旨)
等に照らせば,①にいう「退職」とは,民法上の雇用契約の終了といった私法上の
法律関係に即した観念として理解すべきではなく,社会通念上,一般に「退職」と
して理解される,実質的にその事業所等との勤務関係を終了するという実態を備え
たものでなければならないと解すべきである(所得税基本通達30−1参照。)
ウ(ア)次に,上記規定にいう「これらの性質を有する給与」に当たるというた
,,,めにはそれが形式的には上記①から③までの要件のすべてを備えていなくても
実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し,課税上,上記「退職により
一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることが必要であ
り(前掲最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決,具体的には,当該金員が定)
年延長又は退職年金制度の採用等の合理的な理由による退職金支給制度の実質的改
変により精算の必要があって支給されるものであるとか,あるいは,当該勤務関係
の性質,内容,労働条件等において重大な変動があって,形式的には継続している
勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事
実関係があることを要すると解すべきである(最高裁昭和54年(行ツ)第35号
同58年12月6日第三小法廷判決・裁判集民事140号589頁)。
退職所得が,本来は給与所得として課税されるものであるのに,退職手当等の金
員の性質及び機能に照らし,税負担の軽減という優遇措置を特別に講ぜられている
ものであることからすれば,退職所得は,本来,退職(すなわち,当該事業所との
勤務関係の終了)という実態を伴わなければならないのであって,退職せず,引き
続き在職するにもかかわらず,退職と同一に取り扱うことが相当といえる場合とい
うのは,限定的に解釈されなければならない。そうとすれば,引き続き在職するな
どして勤務関係が継続している者に対して支給される金員が退職所得に該当するか
どうかの判定に当たっては,それが()退職の事実があったと同様の事情の下,i
に支給され,かつ()本来の退職者が受けるべき退職金(退職者が特定の事業,ii
所等において勤務したことに対する報償及びその期間の就労に対する対価の一括後
払としての性質,つまりそれまでの勤務の精算金的性質を有する金員)と同様の算
出方法によって算出されたか(すなわち精算支給であるか)といった,退職手当等
として当然の性質を有しているか否かの検討を行わなければならない。
この点,打切り支給(所得税基本通達30−2柱書にいう「その給与が支払われ
た後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一
切加味しない条件の下に支払われる」ことをいう。以下同じ)でなければ,清算。
金的性質を有するとはいえず,したがってまた,実質的に退職があったのと同視す
ることもできないから,打切り支給でない給与は,上記「これらの性質を有する給
与」には当たらない。そして,退職の事実がないのに退職所得としての優遇措置を
受けられること及び公平な課税の観点からして,打切り支給であることは明確でな
ければならず,打切り支給である旨は,社内の明文の規定により定められているこ
とを要するというべきである。したがって,当該支払の時点において,打切り支給
である旨が就業規則等に明記されている場合(以下「打切り支給明記要件」ともい
う)でなければ「これらの性質を有する給与」に当たらないと解すべきである。。,
これを,使用人として勤務した後に執行役として勤務した場合についてふえんす
ると,打切り支給においては,使用人として勤務した期間で退職金を算出して精算
支給し,その後の執行役として勤務した期間は,使用人として勤務した期間を加味
することなく,執行役として勤務した期間のみで退職(慰労)金を算出することに
なる。すなわち,この場合の退職(慰労)金は,もともと原告との間で使用人等と
しての勤務関係がなかった執行役が退任する場合に支払うものと同様の算出方法と
なる。打切り支給では,雇用関係終了時と委任関係終了時に,それぞれ精算支給す
るから,雇用関係部分と委任関係部分とを明確に分離して退職金を算出するという
点において,雇用関係から委任関係に移行したという私法上の形式に沿った支給が
されることとなるため,勤務関係の法形式のみならず,算出方法においても退職と
同視し得る事実関係が存在することとなる。つまり,打切り支給であれば,雇用契
約終了時に実質的に退職があったのと同視することができるのである。
したがって,上記のとおり,少なくとも,引き続き在職するなどして勤務関係が
,,継続している場合に雇用契約の終了に伴う退職金を本来の退職金と同視するには
使用人としての雇用契約終了時点で,打切り支給が明記されていることを要件とす
べきである。
所得税基本通達30−2も,以上と同様の考え方を採っており,判例上もその合
理性が認められている。
(イ)この点について,原告は,打切り支給明記要件は,将来における事実を現
在の事情によって推認するものであるという特殊性を有するのみならず,その将来
事実を推認する根拠として脆弱であるとして,打切り支給明記要件は不可欠の要件
ではないといった趣旨の主張をする。しかしながら,勤務関係が継続しているにも
かかわらず「これらの性質を有する給与」として,退職所得に係る優遇措置を受,
けるためには,これを享受し得る退職金としての実質を備えていることが必要であ
,,りそのことを認定するためには精算性が認められなければならないのであるから
勤務関係が継続する場合の「退職金」名目の一時金を所得税法30条1項の退職金
の性質を有する給与と認めるために打切り支給を要件とすることは不当ではない
し,法的安定性及び課税の公平を図る上でも打切り支給明記要件により当該一時金
が退職金としての清算金的一括後払の性質を有していることが明確にされているこ
とが確認できることが必要である。また,規程が将来変更されるかもしれないから
といって,打切り支給を要件とすることの根拠が脆弱であるとする理由にはならな
。,,,いすなわち打切り支給明記要件は将来事実を推認しようとするものではなく
その金員が支給される時点において,一括後払金としての本来の退職金が有する精
算金的性質を有しているか否かの判定のために必要不可欠な要件なのである。
また,原告は,社内規則の整備の有無によって使用人が不利益を受ける旨主張す
る。しかしながら,打切り支給を明記した規定がないとしても,使用人から役員に
就任した際には一時金を支給せず,役員退任時に使用人期間分と役員期間分を合わ
せたところの退職金を支給すれば,その退職金の全額について,優遇措置を受ける
ことができる上,そのこと自体は何ら困難ではないのであるから,原告の上記批判
は当たらないというべきである。そもそも,会社の規定が整備されていないことや
その支給時期及び支給方法の選択により「退職金」の支払と同視し得る状況が整,
わないままに一時金を支給し,このことにより使用人が不利益を被ることになると
しても,その結果を避けるために法解釈を緩めたり拡大したりすることは,課税の
公平に照らしても適切ではなく,原告の上記主張は失当である。
「,」()本件各金員が退職手当一時恩給その他の退職により一時に受ける給与2
に該当しないこと
ア「退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるとい
うために,事業所等との勤務関係からの離脱という「退職」の実態がなければなら
ないことは前述のとおりであるところ,Bらと原告との関係についてはBらが執行
役に就任したことに伴い,雇用関係から委任関係に変わったというにすぎないので
あり,Bらと原告の勤務関係は継続しているのであるから,本件各金員は,退職す
なわち原告との勤務関係の終了という事実によって初めて給付されたものであると
は到底いえない。
イこれに対して,原告は,本件各金員が,前記()イ①の要件を満たす旨の主1
張として,商法特例法上の執行役の地位,権限等について述べた上で「閉鎖的な,
中小企業」との比較を行うが,これらはいずれも抽象的な主張にとどまっており,
①の要件該当性の主張として失当である。そもそも,Bらは,執行役就任前に既に
いわゆる執行役員として原告における重要な役職にあったのであり,執行役就任の
前後でBらの役職名,給与等に変化は認められないのであるから,原告の上記主張
には説得力がない。
,,,()なお本件内規によれば役員に対する退職慰労金は原告退職時役員退任時
に,原告におけるすべての在職年数(使用人としての勤続年数及び役員としての勤
続年数)を基礎として算出される仕組みとなっていることに照らせば,原告自身,
雇用関係から委任関係に身分関係が変動したとしても,原告を「退職」したとは認
識しておらず,雇用関係に変更があったとしても勤務関係は継続するという認識に
立っているものと解される(使用人が役員に就任する場合,このように認識される
のが社会通念上も一般的であり,原告における上記取扱いは,正に社会通念に沿っ
たものであるといえる。。)
ウ以上により,本件各金員は,前記()イ①の要件を満たさず,所得税法301
条1項にいう「退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に該当
しない。
()本件各金員が「これらの性質を有する給与」に該当しないこと3
ア本件各金員支給時に存在した原告の規程は,本件退職金規程及び本件内規で
,,,(),あり同内規によれば役員に対する退職慰労金は原告退職時役員退任時に
原告におけるすべての在職年数(使用人としての勤続年数及び役員としての勤続年
数)を基礎として長期勤続優遇の支給率を適用した上で,特別加算も行って算出さ
れる仕組みとなっている。このように,原告においては,雇用関係のみで退職した
者と雇用関係から委任関係に変わった者とでは,退職金の精算時点及び算出方法が
相違するところ,雇用関係終了時に支払われる金員は,雇用関係のみで退職した者
については,勤務期間全体に対応する精算金であるのに対し,雇用関係から委任関
係に変わる者については,今後も勤務を続け,いずれ勤務関係を終了したときに,
勤務期間全体に対応した精算金が算出されることを前提とした,それより以前の途
中段階での一時金であるということができる。そうとすると,両者の計算方法が同
じであるとしても,その金員の性質は明らかに異なり,本件退職金規程が規定する
退職金は,原告を実質的に退職することなく引き続き役員として勤務する者につい
ては,精算金的性質を有していないことが明白である。
以上によれば,本件退職金規程に基づき支払われた本件各金員が,所得税法30
条1項にいう「これらの性質を有する給与」に該当するということはできない。
イなお,この点について,原告は,本件内規において「役員」が「取締役また
は監査役」と定義付けられていたことのみに依拠して,内規は執行役には適用(準
用)されないから打切り支給か否かは不明であったと主張する。しかしながら,原
告においては,委員会等設置会社への移行に伴い,執行役が取締役の職務の一部を
担うことになり,新たに設けた報酬委員会規程で「役員」の定義を「取締役及び執
行役とし同規程10条取締役と執行役とを同様に取り扱っているしたがっ」(),。
て,役員に対する退職金の計算方法等を変更した上記報酬委員会規程が平成17年
6月24日に施行されるまでは,役員たる執行役にも本件内規が準用されるのがむ
しろ自然である。
また,本件内規が執行役に準用されないとしても,本件各金員の支払時点におい
て打切り支給である旨が就業規則等に明記されていなかった以上本件各金員がこ,「
れらの性質を有する給与」に該当することはない。
()本件各処分の適法性4
ア本件納税告知について
,。,以上のとおり本件各金員に係る所得は退職所得には該当しないそうとすれば
本件各金員に係る所得は,所得税法28条1項にいう「給与所得(賞与に係る所」
得)に該当するというべきである(法人税法35条4項参照。)
そうであるところ,Bらは,原告に対し,平成15年分給与所得者の扶養控除等
申告書(所得税法194条1項,2項)を提出していた。また,Bらが受け取った
本件各金員は,いずれも前月中の通常の給与の額の10倍を超えている。
以上の事実関係によれば,本件各金員は,給与所得者の扶養控除等申告書の提出
があり,賞与の金額が前月中の通常の給与等の10倍を超える場合(所得税法18
6条2項1号)に該当するから,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得
税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成11年法律第8号。ただし,平成
17年法律第21号による改正前のもの)の「別表第一(平成11年4月1日以後
の給与所得の源泉徴収税額表(月額表」の甲欄を適用することになる。そこで,))
この税額表を適用し,源泉徴収税額を計算すると,別紙4のとおり,差引き納付す
べき源泉徴収税額は,源泉徴収すべき税額1178万1936円から原告が納付し
た金額20万4100円を控除した金額である1157万7836円となる。
したがって,同金額でされた本件納税告知は,適法である。
イ本件賦課決定について
本件納税告知に係る税額ただし1万円未満の端数を切り捨てたもの1157(,)
万円に100分の10の割合を乗じて計算した金額(国税通則法67条1項,同法
118条3項)は,115万7000円であるから,同金額でされた本件賦課決定
は,適法である。
(原告の主張)
「,」()本件各金員が退職手当一時恩給その他の退職により一時に受ける給与1
に該当すること
ア被告は,本件各金員が前掲最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決が示す
「退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」の要件のうち,①
退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されることとの要件を
欠くと主張する。しかしながら,Bらと原告との間の勤務関係は,平成15年6月
26日,雇用契約の合意解約によって終了しているところ,本件各金員は,正に,
この勤務関係の終了によって初めて給付されたものである。
確かに,Bらは,同日以降,執行役として原告の業務に従事しているが,以下の
とおり,この事実をもってBらと原告との間の同日以前の勤務関係が同日以降も継
続しているとみることはできず,同日前後におけるBらの地位は,実質的な変動を
来している。
(ア)原告と執行役との間の契約関係について
委員会等設置会社において会社の業務執行は,執行役の権限であるとともに,会
社の業務の決定についても大幅に執行役に委任されることが想定されており(商法
特例法21条の12,同法21条の7第3項,原告においても,現に広範な権限)
(())。,が執行役に委任されている執行役会規程甲99条()・同別紙1すなわち1
執行役は,通常の株式会社における取締役と同様の地位にあるということができ,
,,「」()。税法上も執行役は取締役等とともに役員に含まれる法人税法2条15号
執行役と会社との間の契約関係については,雇用契約ではなく,取締役と同様,
委任契約(商法特例法21条の14第7項4号,商法(平成17年法律第87号に
よる改正前のもの。以下同じ)254条3項,民法643条)である。したがっ。
て,雇用契約終了の前後におけるBらと原告との関係は,その契約関係からして根
本的に異なっている。
(イ)原告における役員のあり方について
Bらが執行役に就任したのは,平成15年6月26日であるところ,同年3月3
1日における原告の従業員数は原告単体では373名関係会社を含めれば631,,
名であるのに対し,委員会等設置会社移行時点における執行役の員数は11名,取
締役を含む役員の員数は15名である。なお,執行役11名のうち,1名は取締役
との兼任,4名は取締役から執行役に就任した者であり,委員会等設置会社移行時
に従業員から執行役に就任した者はBら6名にすぎない。
原告における役員就任の困難性についてみると,B及びCの同期入社社員(昭和
53年入社)52名のうち,役員に就任した者は,B及びCを含む4名(役員就任
率約7.7パーセント,D及びEの同期入社社員(昭和54年入社)30名のう)
ち,役員に就任した者はD及びEの2名(役員就任率約6.7パーセント,Fの)
同期入社社員(昭和59年入社)63名のうち,役員に就任した者はFのみである
(役員就任率約1.6パーセント。)
原告の役員構成をみると,まず,原告が委員会等設置会社に移行する直前の平成
14年度の役員13名(取締役9名,監査役4名)の構成は,社外役員が2名,株
式会社H銀行又はR連合会(以下「R」という)から出向の上で原告の役員に就。
。(,,任した者が5名を占める平成15年度の役員15名取締役5名執行役11名
うち1名は取締役及び執行役の兼務)の構成は,社外役員が2名,H銀行又はRか
ら出向の上で原告の役員に就任した者が2名である。また,平成14年度の役員1
3名のうち,上記の社外役員及び出向者,さらには創業者一族2名を除き,従業員
,(,,)から役員に就任した者は4名であるがうち3名I取締役J取締役K監査役
は約18年,その他の1名(L取締役)は約25年の従業員期間を経た上で役員に
就任している。
以上のとおり,原告における役員は,閉鎖的な中小企業とは異なり,従業員と同
視し得るものではなく,従業員からの役員への就任には,長年の従業員としての勤
続期間を経た上で,多数の従業員の中から選抜される必要があり,そのような観点
からすれば,Bらの執行役就任をもって従業員としての勤務の延長と評価すること
の不当性は明らかである。
(ウ)会社に対する責任について
執行役は,会社に対し,善管注意義務(商法特例法21条の14第7項4号,商
法254条3項,民法644条)及び忠実義務(商法特例法21条の14第7項5
号,商法254条の3)を負っており,使用人よりも高度の責任を負担している。
そして,執行役は,株主代表訴訟等を通じて厳しく経営責任を追及される危険性も
ある(商法特例法21条の25第2項,商法267条。)
しかも,原告は,5420名もの株主数を有する上に,その株式がM証券取引所
及びN証券取引所に上場されていることから,いかなる者が原告の株主となるか分
からない。したがって,原告の役員にとって株主代表訴訟が提起される危険は,抽
象的なものではなく,現実的かつ重大なものである。
(エ)賃金,報酬について
使用人であったときのBらの賃金については,原告の就業規則に基づく年俸制給
与規程が適用され,その賃金に関しては,Bらは,就業規則の不利益変更禁止の法
理による労働法上の保護を享受していた。
これに対し個人別の執行役の報酬は報酬委員会の専決事項であることから商,,(
法特例法21条の8第3項,同法21条の11第1項,執行役就任後におけるB)
らの報酬は,報酬委員会において決定され,上記のような労働法上の保護を享受す
ることはできなくなった原告の執行役の報酬は平成15年9月に策定された業。,「
績連動役員報酬制度実施要領」に基づき,報酬委員会が決定するところ,執行役と
しての経営実績が自己の報酬に直結する仕組みとなっており,Bらの報酬体系は,
使用人のときの賃金体系とは根本的に異なっている(その結果,Bらの平成14年
分の給与と平成15年分の給与とを比較すると,それぞれ現に減額されている)。
(オ)退職金について
Bらは,使用人のときは,就業規則に基づく本件退職金規程によって退職金の支
給を受けることができたところ,この点についても,就業規則の不利益変更禁止の
法理による労働法上の保護を享受していた。
これに対し,執行役の退職慰労金については,同規程の適用はなく,報酬委員会
,。の決定によるから上記のような労働法上の保護を享受することができなくなった
(カ)身分保障について
雇用契約終了前においては,Bらは,客観的に合理的な理由があり,かつ,社会
通念上相当として是認することができないかぎり,Bらの意思に反して,その定年
前にその地位を失わしめることはできないなどの身分保障がされていた。
これに対し,執行役の任期は,法律上1年と定められ(商法特例法21条の13
第3項,また,任期中であっても,取締役会の決議により,いつでも解任するこ)
とができる(同条6項)から,Bらの身分保障は極めて不安定なものとなった。
(キ)その他の差異について
Bらは,執行役への就任に伴い,雇用保険及び労災保険の被保険者としての資格
を喪失している。
また,原告の従業員については,O社員持株会への参加資格が認められており,
原告株式取得のための同会への資金拠出に際しては,原告から奨励金として拠出金
の5パーセント相当額及び事務代行手数料の合計額が支給される。他方,Bらは,
原告の執行役への就任を契機に自動的に上記持株会から退会し,持分残高に相当す
る株式等の払戻しを受けている。
イ被告は,使用人としての雇用契約の終了及び執行役への就任という一連の過
程を形式的な身分の変更にすぎない旨主張するところこれは役員への就任をもっ,,
て被雇用者としての社内昇格にすぎないとの考え方を基礎としているものと解され
る。確かに,閉鎖的な中小企業であれば,使用人が取締役に就任しても,形式的な
身分の変更にすぎない場合もあるかもしれない。しかしながら,上記のとおり,一
部上場の大企業である原告に上記のような考え方が妥当する余地はなく,原告の執
行役の地位と使用人の地位とを同視することは,社会通念に照らして非常識である
といわざるを得ない。
()本件各金員が,少なくとも「これらの性質を有する給与」に該当すること2
ア被告は,打切り支給である旨が就業規則等に明記されていることが「これら
の性質を有する給与」に該当するための絶対的要件である旨主張する。
しかしながら,長期間の就労にわたる対価及び受給者の退職後の生活保障の性質
を有する一時金について,一時に高額の所得税を課すことによる不公正かつ不当な
結果を避けるという所得税法が退職手当等について優遇措置を講じた趣旨からこ,「
れらの性質を有する給与」の要件として打切り支給が明記されていることを要件と
すべき理由は明らかでない。
むしろ,被告の上記主張によった方が,打切り支給明記要件を満たさない限り,
当該退職金がいかに長期間にわたる使用人としての勤続期間に対する対価であろう
が,その支給時における対象者の年齢がいかに高齢であろうが,その支給の前後に
おいて同人の実質的地位がいかに変動しようが,このような事情を考慮することな
く,打切り支給を明記した就業規則等がないとの一事をもって「これらの性質を有
する給与」該当性を否定することとなり,所得税法の上記趣旨を没却することとな
る。特に,本件のように,使用人としての退職金支給時には将来における執行役と
しての退職慰労金の算出に使用人勤続期間が加味されるか否かが不明であって,そ
の後に,執行役としての退職慰労金の算出に使用人勤続期間が加味されないことが
明記された場合には,上記立法趣旨を没却するのみならず,被告の強調する法的安
全性及び課税の公平をも害する極めて不当な結果を招来することとなる(なお,被
告は,本件各金員支払当時,本件内規は執行役にも準用されるべきものであったと
いった趣旨の主張をするが,委員会等設置会社制度においては,報酬委員会が取締
役及び執行役の退職慰労金に関する決定権限を有しているのであり,本件内規に報
酬委員会が拘束されることは,報酬委員会の存在意義を没却することになることか
らしても,本件内規は,委員会等設置会社移行前の原告における取締役及び監査役
のみを適用対象としており,同移行後の執行役を適用対象としていないと解するほ
かないから,本件各金員支払時において,執行役に対する退職慰労金が打切り支給
であるかどうかは不明であったといわざるを得ない。。)
,,,,そもそも打切り支給とは使用人が役員に就任した事案に則していえば将来
役員を退任した際に支給される退職慰労金が使用人としての勤続期間を加味して算
出されるか否かという将来事実を,使用人としての退職金支給時における事実に
よって推認しようとするものであるところ,打切り支給である旨を明記した社内規
則の有無という事実は,将来において支給される役員退職慰労金の算出方法を推認
する根拠としては極めて脆弱である。すなわち,役員退職慰労金に関する社内規則
の改廃及び変更は,会社の自由な判断にゆだねられている(役員の場合,使用人の
就業規則の場合と異なり,不利益変更は禁止されない)上,使用人が役員に就任。
した場合において当該役員が1年や2年の短期間で退任するとは限らず,10年,
20年といった長期にわたり役員に留任する事例も数多く見受けられるところ,
20年以上もの先において現行の社内規則どおりの運用が行なわれる保証はない。
このような意味において,被告が主張するところの打切り支給という要素は,将来
における事実を現在の事実によって推認するものであるという特殊性を有するのみ
ならず,その将来事実を推認する根拠として脆弱な性格を本質的にはらんでいる。
そうであるとすれば,打切り支給明記要件を満たさない限り「これらの性質を有,
する給与」に該当する余地はないとするほどに,上記のような性格を有する打切り
支給という要素に全面的に依拠することは,退職所得該当性に関する適正な判断を
妨げるものであり,到底首肯することができない。
イそうであるところ,雇用契約終了の前後においてBらの勤務関係に重大な変
動があったこと,本件各金員が,本件退職金規程に基づき,Bらの長期間の勤労に
対する対価として支払われたものであることなどに照らせば,本件各金員は,少な
くとも,所得税法30条1項にいう「これらの性質を有する給与」に該当するとい
うべきである。
なお,所得税基本通達30−2,同30−2の2の定めによれば,国税当局は,
使用人からいわゆる執行役員に就任した場合には,執行役員に就任した事実以外の
実質的要素を勘案の上,被告が主張する()の要件(退職の事実があったと同様i
の事情の下に支給されたこと)の有無を検討するのに対し,使用人から役員に就任
した場合には,使用人と役員の地位の差異にかんがみ,役員に就任した事実をもっ
て「退職の事実があったと同様の事情」を認めるという法律解釈をしていることが
うかがわれる。また,執行役員に就任した場合に「退職手当」該当性が認められる
ための4要件,すなわち,委任契約であること,退任後の使用人としての再雇用が
保障されているものではないこと,報酬等が役員に準じたものであること,任務違
背行為等について損害賠償責任を負担することは,執行役であれば当然に具備して
いる要件である。これらの点からすれば,使用人から執行役に就任した場合には,
閉鎖的な中小企業の場合などを除き,この事実自体をもって実質的な地位の変動が
あったと考えられるのであり,本件において,上記()の要件を否定するべき特i
段の事情はない。
()以上のとおり,本件各金員は「退職手当,一時恩給その他の退職により一3,
時に受ける給与」又は「これらの性質を有する給与」に該当し,本件各金員に係る
所得は,退職所得に該当するから,これを給与所得であるとしてされた本件各処分
は,いずれも違法である。
第3当裁判所の判断
1「退職所得」の意義
前記法令の定め等記載のとおり,所得税法が,退職所得を「退職手当,一時恩給
その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与」に係る所得
をいうものとし,これについて所得税の課税上他の給与所得と異なる優遇措置を講
じているのは,一般に,退職手当等の名義で退職を原因として一時に支給される金
員は,その内容において,退職者が長期間特定の事業所等において勤務してきたこ
とに対する報償及び同期間中の就労に対する対価の一部分の累積としての性質をも
つとともに,その機能において,受給者の退職後の生活を保障し,多くの場合いわ
ゆる老後の生活の糧となるものであつて,他の一般の給与所得と同様に一律に累進
税率による課税の対象とし,一時に高額の所得税を課すこととしたのでは,公正を
欠き,かつ社会政策的にも妥当でない結果を生ずることになることから,このよう
な結果を避ける趣旨に出たものと解される。そうとすれば,従業員の退職に際して
退職手当又は退職金その他種々の名称のもとに支給される金員が同法30条1項に
いう「退職所得」に当たるかどうかについては,その名称にかかわりなく,退職所
得の意義について規定した前記同法30条1項の規定の文理及び退職所得に対する
優遇課税についての前記立法趣旨に照らし,これを決するのが相当である。このよ
うな観点から考察すると,ある金員が,同項にいう「退職手当,一時恩給その他の
退職により一時に受ける給与」に当たるというためには,それが,①退職すなわ
ち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること,②従来の継続的な
勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること,
③一時金として支払われること,との要件を備えることが必要であり,また,同
項にいう「これらの性質を有する給与」に当たるというためには,それが,形式的
には上記各要件のすべてを備えていなくても,実質的にみてこれらの要件の要求す
るところに適合し,課税上,上記「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱
うことを相当とするものであることを必要とすると解すべきである。
そうであるところ,上記①の要件を満たさず,継続的な勤務の中途で支給される
退職金名義の金員が,実質的にみて上記3つの要件の要求するところに適合し,課
税上,上記「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするも
のとして,上記「これらの性質を有する給与」に当たるというためには,当該金員
が定年延長又は退職年金制度の採用等の合理的な理由による退職金支給制度の実質
的改変により精算の必要があって支給されるものであるとか,あるいは,当該勤務
関係の性質,内容,労働条件等において重大な変動があって,形式的には継続して
いる勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別
の事実関係があることを要するものと解すべきである(前記最高裁第二小法廷判決
昭和58年9月9日,同第三小法廷判決昭和58年12月6日。)
2認定事実
前記前提事実に加え,証拠(甲1から5まで,甲16,甲17,甲19から26
まで,甲29,乙2,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められ
る。
()原告においては,委員会等設置会社移行に先立つ平成14年2月にいわゆ1
る執行役員制度が採用され,その際,Bらは原告の執行役員に就任したが,原告が
採用していた執行役員制度において,原告と執行役員との関係は雇用契約とされ,
執行役員の処遇等はその他の使用人と同様,就業規則に基づくものとされていた。
()原告の取締役会は,平成15年6月26日,原告が委員会等設置会社へ移2
,。,,行したことからBらを執行役に選任する旨の決議をしたこれを受けてBらは
同日,原告に対して執行役就任の承諾書を提出し,原告との間で従前の雇用契約を
合意解約して原告の執行役に就任した。
()原告は,平成15年当時,M証券取引所第一部及びN証券取引所第一部に3
株式を公開するいわゆる一部上場会社であり,資本金の額34億3500万円,年
商約944億円平成14年3月期実績従業員数373名同月末現在といっ(),()
た規模を有していた。
委員会等設置会社移行前後の原告の役員の構成等は別紙5のとおりであり,上記
移行直前の役員数は13名(取締役9名,監査役4名,上記移行直後の役員数は)
16名(取締役5名,執行役11名)であった。
Bら(ただし,いわゆる中途採用であるGを除く)と同じ時期(昭和52年度。
から昭和60年度)に原告に入社した使用人の数とそのうち役員に就任したものの
数及びその割合は,別紙6のとおりである。
()執行役就任時のBらの経歴等は,別紙7のとおりであり,Bらの職名,担4
当業務等は,執行役就任の前後で特段変動していない。
Bらは,執行役就任前は,原告の就業規則及びこれに基づく年俸制給与規程によ
り算出される額の賃金を支給されていた。これに対し,執行役としてのBらの報酬
は,報酬委員会が平成15年9月に策定した業績連動役員報酬制度実施要領に基づ
いて同委員会において決定されることとなった。同制度においては,執行役の報酬
の一部(年間標準報酬の30パーセント)が会社の業績(経常利益の増減)及び当
該執行役の目標達成状況に直接連動する仕組みが採用されている。
Bらの執行役就任前後の現実の給与(年額)の推移は,別紙8のとおりである。
()P公共職業安定所長は,雇用保険被保険者資格喪失届に基づき,Bらが雇5
用保険の被保険者の資格を喪失したことを確認し,平成15年7月2日付けで,そ
の旨を原告に通知した。
原告の就業規則56条は「会社は,社員の財産形成の一助とすることを目的と,
して,O社員持株会の会員に奨励金を支給する」と規定するところ,Bらは,執。
行役に就任したことから,同会規約17条2項の規定によって自動的に同会を退会
し,同規約18条の規定による残金の払戻しを受けた。
Bらは,執行役就任により,原告が契約する会社役員賠償責任保険の被保険者と
なった。なお,平成18年7月1日午後4時から平成19年7月1日午後4時まで
の期間に係る同保険契約において,契約期間中の総てん補限度額は10億円とされ
ている。
()前記前提事実のとおり,本件各金員の額は本件退職金規程の定めに基づい6
て算出されたところ,本件退職規程の定めは,別紙2のとおりである。これによれ
ば,同規程に基づく退職金は,勤続年数,職級,職位に応じて多額となる一方,退
職事由が会社(原告)にとって不都合な場合については,一定の減額がされること
となっている。また,本件退職金規程は,執行役を含む役員への就任による退職の
場合とそれ以外の事由による普通退職の場合とで退職金の支給率を区別して規定し
ていない。
3検討
()前記認定のとおり,Bらが使用人としての地位を喪失すると同時に執行役1
に就任していること,Bらが執行役就任前,既にいわゆる執行役員として本部長等
の原告における重要な職位に就いており,執行役就任の前後でBらの職名,担当業
務等に特段変動がみられないこと,Bらに支給された年間の給与額も大幅には変動
していないことなどに照らせば,その勤務関係の基礎を成す契約が雇用契約から委
任契約に変更され(商法特例法21条の14第7項4号,商法254条3項,民法
643条,Bらの法的身分に変動を生じたとしても,これによって直ちに原告と)
Bらとの間の勤務関係がいったん終了したとみるのは困難である。そうすると,本
件各金員が「退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に該当す
るとまではいい難い。
()アそこで,上記「これらの性質を有する給与」に該当するかどうかについ2
て検討するに,一般に,使用人は,就業規則の不利益変更の原則禁止(最高裁昭和
40年(オ)第145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号34
59頁参照,解雇権の権利濫用法理による制限(労働基準法18条の2参照)等)
によってその身分や賃金等の労働者としての権利を保障され,雇用保険制度や労働
者災害補償保険制度等の福利厚生を享受することができるなど,労働法上の法的保
護を受けられるのに対し,執行役は,上記のような労働法上の保護は受けられず,
かえって,法律上任期が定められている(商法特例法21条の13第3項)上,い
(。,。)つでも取締役会の決議をもって解任され得る同条6項ただし同条7項参照
などその身分は保障されておらず,報酬の内容は報酬委員会の個人別の決定による
こととされている(商法特例法21条の8第3項,同法21条の11。さらに,)
執行役は,会社に対して善管注意義務(商法特例法21条の14第7項4号,商法
,)(,254条3項民法644条及び忠実義務商法特例法21条の14第7項5号
商法254条の3)を負い,そのため,任務懈怠の際には会社に対して損害賠償責
任を負う(商法特例法21条の17)とともに,株主代表訴訟の被告適格を有する
(商法特例法21条の25第2項,商法267条)など,その業務執行についての
責任追求を受ける危険を負っているということができる。
そうとすれば,会社の使用人がその執行役に就任する場合,会社の規模,性格,
実情等に照らし,当該身分関係の異動が形式上のものにすぎず,名目的,観念的な
ものといわざるを得ないような特別の事情のない限り,その勤務関係の基礎を成す
契約関係の法的性質自体が抜本的に変動し,その結果として,勤務関係の性質,内
容,労働条件等に重大な変動を生じるのが通常であるということができる(所得税
基本通達30−2()が使用人から役員になった者に対しその使用人であった勤続2
期間に係る退職手当等として支払われる給与を掲げているのも,これと同様の考え
方に基づくものと解される。。)
そして,前記認定のBらの執行役就任時における原告の会社としての性格及び規
模,原告における役員の位置付け及びその構成,従業員の役員への就任状況,給与
体系の変更内容,給与支給額の変動状況,Bらの執行役就任時に採られた各種手続
等にかんがみれば,Bらの身分関係の異動がその実質を有するものであることこと
は明らかである。
,,,したがってBらと原告との間の勤務関係についてはBらの執行役就任により
その性質,内容,労働条件等において重大な変動を生じたというべきであり,執行
役就任後の勤務関係は,実質的にみて,執行役就任前の勤務関係の単なる延長とみ
ることはできないというのが相当である。
イそうであるところ,前記認定の本件各金員の額の算出根拠である本件退職金
規程の規定する退職金算出方法並びにBらの執行役への就任時期及び就任までの従
業員としての勤続年数(なお,Gは創業者の一族である。別紙5)等によれば,本
件各金員は,執行役就任時点におけるそれまでの各勤続期間中の勤務に対する報償
ないしその間の労務の対価の一部分の累積としての性質を持つものとして,一括し
て支払われたものであり,その点において役員へ就任することなく原告を退職する
従業員に対して本件退職金規程に基づき支払われる退職金と何ら異なるところがな
いということができる。
また,前記認定のとおり,原告においては,就業規則において従業員には退職金
を支給する旨が規定され,これに基づいて定められた本件退職金規程の定めによっ
て退職金の額が具体的に算出されることとなっていたことからすれば,Bらの従業
員としての退職金債権は執行役就任の時点で具体的に生じていたと解されるのに対
し,執行役の退職慰労金は報酬委員会の個人別の決定によるものとされているので
あるから,執行役退任の際のBらに対する退職慰労金の有無及びその額は,本件内
規が原告の委員会等設置会社移行後の執行役に適用ないし準用されるか否かにかか
わらず,執行役就任時には法的には未確定であったといわざるを得ない。そして,
前記認定の原告の会社としての性格及び規模並びに執行役就任に伴う身分関係の変
動内容に照らせば,Bらの就業規則に基づく従業員としての退職金をその執行役就
任の時点で精算しておくことが,Bらの権利保障の観点から好ましいということが
できるとともに,原告にとっても,将来の紛争の予防の観点から好都合であったと
いうことができるから,本件各金員の支払について合理的必要性があったと認めら
れる。
ウ以上に述べたところを総合すると,本件各金員は,原告の従業員から執行役
への就任という単なる従前の勤務関係の延長とはみられない実質を有する新たな勤
務関係に入ったことに伴い,それまでの従業員としての継続的な勤務に対する報償
ないしその間の労務の対価を一括精算する趣旨の下に,一時金として支給されたも
のというべきであるから,課税上,上記「退職により一時に受ける給与」と同一に
,「」取り扱うのが相当であり所得税法30条1項にいうこれらの性質を有する給与
に当たるというべきである。
()これに対し,被告は,打切り支給でなければ退職手当等が本来有すべき精3
算金的性質を有しないから,打切り支給である旨が就業規則等に明記されていない
限り,上記「これらの性質を有する給与」には該当しないなどとして,本件各金員
は上記「これらの性質を有する給与」に該当しないと主張する。
確かに,前記1で説示したところからすれば,ある金員について,退職手当等と
して所得税の課税上の優遇措置を受けるためには,通常,勤務関係の終了ないし実
質的にこれと同視し得る事実があること,当該金員が従前の長期間にわたる勤務に
対する報償ないし従前の勤務期間中の給与の一部の一括後払としての性質を有する
ことが必要であるというべきである。そうであるところ,継続的な勤務の中途で支
給される金員の支払の際に打切り支給の条件が明示される場合,当該勤務関係の当
,,,事者は当該金員の支払により当該勤務関係にいったん区切りを付けるとともに
従前の勤務に対する評価を尽くし,従前の勤務期間中の給与をすべて精算する意図
を有していると認められるから,打切り支給明記要件は,継続的な勤務の中途で支
給される退職金名義の金員が上記「これらの性質を有する給与」に当たるかどうか
の判断の際の重要な要素となるということができる。所得税基本通達30−2が,
継続的な勤務の中途で支給される給与のうち,その()から()までに掲げるもので16
打切り支給であるものについて退職手当等として取り扱うこととしているのも,以
上のような理由によると解される。
しかしながら,継続的な勤務の中途で支給される金員であっても,当該金員支払
の前後において当該勤務関係の性質内容労働条件等において重大な変動があっ,,,
て,形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長と
はみられないなどの特別の事実関係があるときには,実質的に勤務関係の終了が
あったものと同視することができるのであって,このような場合には,事柄の性質
上,当該金員の支給に当たり打切り支給の条件が明示されることが多いと考えられ
るものの,打切り支給の条件が明示されないからといっておよそ勤務関係の終了と
同視する余地がないということはできない。
また,継続的な勤務の中途で支給される金員について打切り支給の条件が明示さ
れない場合であっても,その金額の算出方法等に照らし,当該金員が,従前の勤務
に対する当該支払時までの評価を尽くすとともに,従前の勤務期間中の給与をいっ
たん精算する趣旨のものであると認められる場合もあり得るのであって,このよう
な場合には,当該金員は,従前の長期間にわたる勤務に対する報償ないし従前の勤
務期間中の労務の対価の一括後払としての性質を有するということができる。この
点について,被告は,継続的な勤務の中途で支給される給与で打切り支給でないも
のは,その者が今後も勤務を続け,いずれ勤務関係を終了した時に勤務期間全体に
対応した精算金退職金が支給されることを前提とする中途段階での一時金であっ()
て,所得税法が特別に優遇措置を講ずることとした退職手当等としての性質を有し
ないといった趣旨の主張をする。確かに,打切り支給明記要件を満たさない金員が
継続的な勤務の中途で支払われた場合,後に当該勤務関係が確定的に終了した時点
で,当該金員の計算の基礎となった勤続期間が再度加味されて退職手当等が支給さ
れる可能性があるから,その意味では,当該金員は,継続する勤務関係の中途段階
での一時金にすぎないということもできる。しかしながら,そのような場合であっ
ても,一般的な退職金算出方法に従ってその金額が算出されたようなときは,当該
勤務関係の当事者は,当該金員の支給時点において可能な限度で,従前の勤務に対
する功労についての評価を尽くすとともに,従前の勤務期間中の労務の対価を一括
精算する目的を有するのが通常と考えられるから,その限りにおいては上記のよう
な清算金的性質を有するものということができ,したがって,打切り支給明記要件
を欠く場合にはおよそ清算金的性質を有しないということはできない。
そもそも,継続的な勤務の中途で支給する場合をも含めて従業員等の退職金制度
をどのように設計するかは,使用者の裁量にゆだねられているのであって,具体的
に設計された制度の下において継続的な勤務の中途で支給される退職金名義の金員
が実質的にみて課税上「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相
当とするものであるか否かについては,当該退職金制度の内容及びその運用等に即
して個別具体的に検討すべきものである。前記のとおり,打切り支給の条件が明示
される場合には,当該金員を当該従業員等の当該支給時点までの継続的な勤務に対
する功労についての評価を尽くした上その間の労務の対価をその時点で一括精算す
る趣旨のものとして支給するものとするのが通常であると考えられる上,継続的な
勤務の中途でそのような趣旨の金員が支給されるような場合は,その支給時点にお
いて当該勤務関係の性質,内容,労働条件等において重大な変動があって,形式的
には継続しているその後の勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とは
みられないような関係にある場合が多いと考えられる。しかしながら,継続的な勤
務の中途で上記のようなそれまでの継続的な勤務に対する精算の趣旨で退職金名義
の金員の支給を受けた従業員等に対してその者がその勤務関係を確定的に終了した
時点において退職金名義の金員を支給する場合において,上記変動後の継続的な勤
務に対する功労を評価するに当たりその者が上記変動前の勤続期間を有することを
有利にしんしゃくすることは,それ自体何ら不合理ではなく,もとより上記精算の
趣旨で一時金を中途支給することと矛盾するものでもない。また,上記精算の趣旨
で従業員等に対して一時金を中途支給した上,その者が確定的に勤務関係を終了す
る時点でその者の上記支給後の継続的な勤務について上記精算の趣旨で退職金名義
の金員を支給するに当たり,便宜上,その金額の計算方法として本件内規のように
その者の上記中途支給前のものをも含めた全勤続期間をその計算の基礎とした上中
途支給に係る金額を控除する方式によること(すなわち,そのような計算方法によ
り算出される金額の退職金でもって当該従業員等の上記中途支給後の継続的な勤務
に対する報償ないしその間の労務の対価の一括精算を行うものとすること)ももと
より可能である。そうであるとすれば,退職金制度においてこのような算定方法が
定められているからといって,当該制度の下において当該従業員等に対しその者の
勤務関係の確定的終了時に支給される金員がその時点においてその者の全勤続期間
についての功労を評価しその給与のすべてを精算する趣旨のものであり,中途支給
の金員はその一部の前払にすぎないと直ちに断ずることはできないのであって,当
該中途支給の金員が上記精算の趣旨で支給されるものとして「退職により一時に受
ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであるか否かについては,当該
中途支給の前後における勤務関係の性質,内容,労働条件等における重大な変動の
有無,当該変動に当たり変動前の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の
対価を一括精算する合理的必要性の有無等をしんしゃくした上で当該退職金制度の
規定内容やその具体的運用状況等に即して個別具体的に検討し判断すべきである。
以上認定説示したとおり,Bらについては執行役への就任の前後でその勤務関係
の性質,内容,労働条件等において重大な変動があったと認められる上,執行役へ
の就任の時点でBらのそれまでの継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の
対価を一括精算することについて合理的な必要性も認められるのであって,本件退
職金規程において執行役を含む役員への就任による退職の場合とそれ以外の事由に
よる普通退職の場合とで退職金の支給率を区別して規定していないことなどをも併
せ考えると,本件各金員の支給に当たり打切り支給の条件が明示されていなかった
としても,本件各金員は,Bらが執行役への就任という従前の勤務関係の延長とは
みられない実質を有する新たな勤務関係に入ったことに伴い,その時点でBらのそ
れまでの継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価を一括精算する趣旨
,,,,で支給されたものと認めるに十分でありそうである以上本件各金員は課税上
「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うのが相当というべきである(な
お,Bらが執行役に就任した時点において原告の報酬委員会により本件内規を執行
役を含む役員が受ける個人別の退職慰労金の内容に関する方針を定めたものとする
旨の決定が明示的にされていたことを認めるに足りる証拠はなく,後に役員に対す
る退職慰労金決定基準等を含めた報酬委員会規程が定められている経緯にかんがみ
ても,Bらの執行役就任時点において本件内規が商法特例法21条の11第1項に
基づく報酬の内容の決定に関する方針を定めたものとしての効力を有していたと認
めることはできない。。)
被告は,所得税基本通達30−2は,上記「これらの性質を有する給与」に該当
するためには,打切り支給でなければならない旨を定めたものであり,その合理性
は判例上も是認されているといった趣旨の主張をする。しかしながら,同通達の趣
旨は前述のとおりであって,同通達が打切り支給でない給与を退職所得として取り
扱うことを禁じる趣旨のものとまで解されないことは,既に説示したところから明
らかであるから,被告の前記主張は前提を欠く。
()以上により,本件各金員に係る所得は,所得税法30条1項にいう「退職4
所得」に該当するというべきであるから,これを所得税法28条1項にいう「給与
所得」に該当するとしてされた本件各処分は,いずれも,その余の点について判断
するまでもなく,違法である。
4結論
よって,原告の請求は,理由があるから,これを認容することとし,主文のとお
り判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官西川知一郎
裁判官岡田幸人
裁判官森田亮

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