弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       原判決を破棄し,本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人小坂志磨夫,同小池豊,同永井義久の上告受理申立て理由について
 1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 上告人及びD通信機株式会社(以下「訴外会社」という。)は,名称を「パチン
コ装置」とする発明(平成11年2月19日設定登録,特許第2888528号。
以下,同発明に係る特許を「本件特許」という。)に係る特許権の共有者である。
 Eは平成11年11月5日,Fは同月10日,それぞれ本件特許につき特許異議
の申立てをした。
 特許庁は,平成12年10月25日,上記異議申立てにつき,本件特許の請求項
1に係る特許を取り消す旨の決定をした。
 2 本件訴えは,上告人が単独で上記決定の取消しを請求するものであるところ
,原審は,次のとおり判断して,本件訴えを却下した。
 共有に係る特許権につき,特許異議の申立てに基づいてされた特許を取り消すべ
き旨の決定(以下「取消決定」という。)の取消しを求める訴えは,共有者全員の
有する1個の権利の存否を決めるものとして,合一に確定する必要があり,共有者
それぞれについて異なった内容で確定され得ると解する余地はないから,固有必要
的共同訴訟である。特許法は,特許を受ける権利又は特許権の共有者中に権利の取
得又は存続の意欲を失った者がいる場合には,1個の特許権全体について,その取
得又は存続ができなくともやむを得ないとしているから(特許法132条3項),
取消決定に対する取消訴訟の場合に同様の扱いをすることが不合理とはいえない。
 訴外会社に対しても,上告人に対するのと同時期に決定の謄本の送達がされたと
ころ,訴外会社が訴えを提起しておらず,出訴期間を経過したから,上告人のみの
提起に係る本件訴えは,不適法である。
 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
 特許を受ける権利が共有に係るときは,各共有者は,他の共有者と共同でなけれ
ば特許出願をすることができず(特許法38条),共有に係る特許を受ける権利に
ついて審判を請求するときは,共有者の全員が共同してしなければならないとされ
ているが(同法132条3項),これは,共有者の有する1個の権利について特許
を受けようとするには共有者全員の意思の合致を要求したものにほかならない。こ
れに対し,いったん特許権の設定登録がされた後は,特許権の共有者は,持分の譲
渡や専用実施権の設定等の処分については他の共有者の同意を必要とするものの,
他の共有者の同意を得ないで特許発明の実施をすることができる(同法73条)。
 ところで,いったん登録された特許権について特許の取消決定がされた場合に,
これに対する取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは,特許権が初
めから存在しなかったこととなり,特許発明の実施をする権利が遡及的に消滅する
ものとされている(同法114条3項)。したがって,【要旨】特許権の共有者の
1人は,共有に係る特許の取消決定がされたときは,特許権の消滅を防ぐ保存行為
として,単独で取消決定の取消訴訟を提起することができると解するのが相当であ
る(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・裁
判所時報1310号5頁〔編注:民集56巻2号348頁〕参照)。なお,特許法
132条3項の「特許権の共有者がその共有に係る権利について審判を請求すると
き」とは,特許権の存続期間の延長登録の拒絶査定に対する不服の審判(同法67
条の3第1項,121条)や訂正の審判(同法126条)等の場合を想定している
のであって,一般的に,特許権の共有の場合に常に共有者の全員が共同して行動し
なければならないことまで予定しているものとは解されない。
 特許権の共有者の1人が単独で取消決定の取消訴訟を提起することができると解
しても,合一確定の要請に反するものとはいえない。また,各共有者が共同して又
は各別に取消訴訟を提起した場合には,これらの訴訟は類似必要的共同訴訟に当た
るから,併合して審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。
 4 そうすると,本件訴えを不適法とした原審の判断には,判決に影響を及ぼす
ことが明らかな法令の違反がある。なお,最高裁昭和35年(オ)第684号同3
6年8月31日第一小法廷判決・民集15巻7号2040頁,最高裁昭和52年(
行ツ)第28号同55年1月18日第二小法廷判決・裁判集民事129号43頁及
び最高裁平成6年(行ツ)第83号同7年3月7日第三小法廷判決・民集49巻3
号944頁は,本件と事案を異にし適切でない。したがって,原判決を破棄し,本
案について審理させるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第二小法廷
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川
弘治 裁判官 亀山継夫)

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