弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成25年(受)第78号不当利得返還請求事件
平成26年7月29日第三小法廷判決
主文
1原判決中,「38万4922円及びこれに対する平
成23年5月3日から支払済みまで年5分の割合に
よる金員」を超える金員の支払請求に関する部分を
破棄する。
2前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し
戻す。
理由
上告人の上告受理申立て理由について
1本件は,被上告人が,貸金業者であるA株式会社及び同社を吸収合併した上
告人(以下,合併の前後を問わず,単に「上告人」という。)との間で,指定され
た回数に応じて元本及び利息の合計支払額が毎月同額となるよう分割して返済する
方式(以下「元利均等分割返済方式」といい,約定の毎月の返済額を「約定分割返
済額」という。)によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約を締結したとこ
ろ,各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの。
以下同じ。)1条1項所定の制限を超えて利息として支払われた部分を元本に充当
すると過払金が発生しているなどと主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権
に基づき,過払金の返還等を求める事案である。
2原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)上告人は,平成12年9月29日,被上告人に対し,500万円を次の約
定で貸し付けた。
ア弁済方法約定分割返済額を7万7000円(初回のみ8万4000円)と
し,これを平成12年11月から平成17年10月まで毎月1日限り支払うととも
に,最終の支払回に残元本を一括して支払う。
イ利息年17.00%
ウ遅延損害金年29.20%
エ特約支払期日における支払を遅延したときには,通知及び催告を要せずに
期限の利益を失う。
(2)被上告人の上告人に対する支払状況は第1審判決別紙3の「取引日」欄及
び「入金額」欄記載のとおりであり,月によっては7万7000円を超える金額を
支払っていたものの,平成14年2月1日,同年4月1日及び平成17年2月4日
には何らの支払もしなかった。
(3)上告人は,被上告人が平成14年2月1日,同年4月1日及び平成17年
2月4日における元本及び利息の支払を遅滞し,期限の利益を喪失したから,これ
らの日の翌日から残元本全部に対する遅延損害金が発生したと主張して,過払金の
額を争っている。
3原審は,上記事実関係の下で,次のとおり判断して,被上告人の請求を一部
認容した。
平成13年12月13日までの支払のうち約定分割返済額である月額7万700
0円(初回のみ8万4000円)を超えて支払われた部分を合計すると,平成14
年2月1日までに支払うべき元本及び利息は支払済みとなる。また,同月14日ま
での支払のうち上記約定分割返済額を超えて支払われた部分を合計すると,同年4
月1日までに支払うべき元本及び利息は支払済みとなる。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結され
た場合において,借主から約定分割返済額を超過する額の支払がされたときには,
当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事
情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する
債務に充当されることはないと解するのが相当である。
しかるに,原審は,上記特段の事情の有無について審理判断しないまま,約定分
割返済額を超過する額の支払がされていたことをもって,将来発生する債務,すな
わち平成14年2月1日及び同年4月1日における元本だけではなく利息の支払を
もしていたことになる旨判断したものである。また,原審は,平成17年2月4日
にも期限の利益を喪失したとの上告人の主張については,判断を遺脱したものであ
る。
5以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法が
ある。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,不服申立ての範
囲である38万4922円及びこれに対する平成23年5月3日から支払済みまで
年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れない。
そして,上記の点等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審
に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官木内道
祥の補足意見がある。
裁判官木内道祥の補足意見は,次のとおりである。
原審は,平成14年2月1日支払期限分は平成13年12月13日までに,平成
14年4月1日支払期限分は同年2月14日までに,それぞれ支払済みであるとす
る(原判決が引用する第1審判決10頁)。その一方,原審は,「弁済金のうち制
限超過部分を順次元本等に充当すると,本判決別紙計算書2-①ないし③のとおり
となる」,「約定利率を前提に毎月支払うべき額を前倒しで支払っている」(原判
決14,15頁)とする。しかし,原判決別紙計算書2-①によると,弁済金は,
それぞれ,弁済された日にその日までに発生した制限利息にまず充当され,弁済金
からその充当額を控除した残額の全てはその時点の残元本に充当されている。それ
にもかかわらず,平成14年2月1日支払期限分,平成14年4月1日支払期限分
にそれぞれ含まれている利息に前倒しで充当されて支払済みであるとすることは,
弁済金を元本と利息に二重に充当していることになる。
利息への前倒しの充当をするのであれば,弁済された日における残元本への充当
額は,原判決別紙計算書2-①の残元本への充当額よりも利息への前倒し充当額に
相当する金額だけ少なくなり,その後の残元本は同計算書記載の金額より同額だけ
増加する。その後に発生する制限利息は同計算書記載の金額よりも多額となり,元
利合計額は増額する。期限の利益の喪失がない状態における最終的な過払金の額が
同計算書の金額よりも少ない額又はゼロとなることは自明である。
約定分割返済額を超過する支払がされた場合に,当該超過額を将来発生する利息
に充当することは,当該充当分を支払時点では残元本に充当しないことになるので
あるから,支払時点で残元本に充当する場合と比較すると,債務者の支払うべき
(制限利息による)元利合計額は増加する。超過弁済がされても,その後,債務者
がいつ期限の利益を喪失するかはその後の債務者の弁済状況によるのであるから,
当該超過額を将来利息に前倒し充当しなくても期限の利益を喪失しないまま弁済を
終えることもあれば,前倒し充当による期限の利益の喪失の回避が生ずる時期が約
定弁済期の終わりに近いこともありうる。前倒し充当を継続して行うと,弁済期の
到来した元本以外は将来利息の弁済だけに充当されることとなり,債務者は,弁済
時点の元本充当による利息の軽減という利益を享受することはできず,その不利益
が期限の利益の喪失による不利益を上回ることもありうる。
したがって,約定分割返済額の超過支払額を将来発生する利息に充当する当事者
間の合意がなされたか否かなどの特段の事情の有無を判断するについては,このよ
うな将来利息への前倒し充当がもたらす効果を考慮する必要がある。
(裁判長裁判官大谷剛彦裁判官岡部喜代子裁判官大橋正春裁判官
木内道祥)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛