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平成27年9月29日判決言渡
平成27年(行ケ)第10064号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成27年8月6日
判決
原告株式会社大貴
訴訟代理人弁護士松田純一
大坂憲正
訴訟代理人弁理士西村公芳
被告特許庁長官
指定代理人網谷麻里子
早川文宏
田中敬規
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が不服2014-15437号事件について平成27年2月24日にした
審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,商標登録出願に係る拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴
訟である。争点は,商標法4条1項11号該当性の有無である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成25年8月9日,指定商品を「第21類愛玩動物用排泄物処理材」
として(本願指定商品),商標「KamiNoSuna」(標準文字)の登録出
願をしたが(本願商標,商願2013-62693号),平成26年4月28日付け
で拒絶査定を受けたので,同年8月6日,これに対する不服審判請求をした(不服
2014-15437号)。
特許庁は,平成27年2月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審
決(本件審決)をし,その謄本は,同年3月9日に原告に送達された。
2本件審決の理由の要点
(1)引用商標(登録第1914369号商標)は,「紙の砂」の文字を表して
なり,昭和59年7月24日に商標登録出願,第19類「パルプ製動物糞尿処理材,
その他本類に属する商品」を指定商品として,同61年11月27日に設定登録さ
れ,その後,平成20年3月12日に指定商品を第21類「パルプ製動物糞尿処理
材」とする指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。
(2)本願商標は,「カミノスナ」の称呼を生じ,特定の意味合いを生ずるもの
ではなく一種の造語を表したものであって,特定の観念は生じない。
引用商標は,「カミノスナ」の称呼を生じ,特定の観念は生じない。
本願商標と引用商標を比較すると,両者は,外観において相違し,観念において
比較することができないものの,「カミノスナ」の称呼を同じくするものであり,さ
らに,本願商標及び引用商標の読み仮名を平仮名又は片仮名で表す場合には,両者
の文字列が同一のものとなることをも併せ考慮すれば,両商標は類似の商標である。
また,本願の指定商品と引用商標の指定商品は,ともに動物用の排泄物を処理す
る材料であると認められるから,同一又は類似の商品である。
したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。
第3原告主張の審決取消事由
1本願商標と引用商標との類否判断の誤り(取消事由)
(1)本願商標と引用商標とは,以下のとおり,少なくとも外観及び観念におい
て著しく相違しており,本願指定商品が称呼のみで取引される性質のものではない
という取引実情の下で,商品の出所に誤認混同が生じるおそれはない。
まず,本願商標と引用商標との間には,共通の文字がなく,文字数も異なり,外
観において著しく相違している。
次に,本願商標は,特定の観念を想起させるものではないのに対し,引用商標は,
本願指定商品との関係で「紙を原材料とするペット用トイレ砂」との観念を想起さ
せるものであるからから,両商標は,観念において著しく相違している。本願商標
中の「No」は「Yes」の対義語で,否定の意味を表す英語の成語として認識さ
れるのが通常であり,日本語の「の」をローマ字で表したものであると需要者が看
取することは容易ではない。仮に,需要者が「Kami」「No」「Suna」の欧
文字の各々が日本語をローマ字で表したものと看取できたとしても,「KamiN
oSuna」に相応する日本語は,「紙の砂」以外にも,「神の砂」「髪の砂」「カ
ミノスナ」などがあり,とりわけ「神の砂」は本願商標に相応する日本語として有
力な候補となるのであるから,需要者が本願商標を「紙の砂」を欧文字で表したも
のとの認識に至るのは容易ではなく,直接的に何らかの意味を表すものではなく,
せいぜい「カミノスナ」という音を表すにすぎない。
さらに,本願商標は,特定の観念を想起させるものではないため,単調な音の羅
列として「カ・ミ・ノ・ス・ナ」と称呼される。これに対して,引用商標は,「紙を
原材料とするペット用トイレ砂」という観念を想起させるものであるから,助詞の
「の」に比べて,「紙」及び「砂」の部分が強調され,かつ,それぞれに相応したア
クセントで称呼される。したがって,本願商標と引用商標とは,聴者に与える称呼
の全体的印象が大きく相違するため,相紛らわしいものではない。
しかも,本願指定商品は,その流通ルートが店頭販売及び通信販売であるが,需
要者はパッケージを見てそこに付された商標を視覚的に認識するのであって,称呼
のみで取引されるものではない。また,需要者は,商品を購入するに当たって,消
臭・脱臭性,固まり性,廃棄の利便性等の品質を重視している。したがって,本願
指定商品は,称呼のみで取引される性質のものではない。
(2)引用商標である「紙の砂」は,本願指定商品との関係で識別力を有してお
らず,出所表示機能を果たすものではないから,かかる引用商標との間で出所につ
いて誤認混同を生じる余地がない。
2本件審決は,本願商標と引用商標との類否判断を誤ったものであり,取り消
されるべきである。
第4被告の反論
本願商標は,「KamiNoSuna」の欧文字からなるものであり,本願の
指定商品に係る取引において,紙を原材料とする「猫砂」(猫用のトイレに敷設され
る砂)が広く製造,販売されていることからすると,「紙の砂」ほどの意味合いを容
易に認識させるものである。
また,本願商標は「KamiNoSuna」の欧文字のみからなるものであ
り,引用商標は「紙の砂」の文字のみからなるものであるから,本願商標と引用商
標との相違は,欧文字(ローマ字)で表すか又は日本語で表すかの差異にすぎない
ものである。
そして,本願指定商品を取扱う業界においては,標章を欧文字(ローマ字)と日
本語で表すことが一般に広く行われていることからすると,本願商標について,欧
文字(ローマ字)で表されていることが需要者に強い印象を与えるものではないと
いえる。
そうだとすれば,本願商標と引用商標とは,欧文字(ローマ字)で表すか又は日
本語で表すかの差異であって,その外観上の印象は強いものではなく,「カミノスナ」
の称呼を同一とし,「紙の砂」ほどの意味合いを認識させる点においても共通するも
のであるから,本願商標と引用商標とは,外観における相違を考慮してもなお,商
品の出所について誤認,混同を生ずるおそれがある商標というべきである。
したがって,原告の上記主張は,失当である。
第5当裁判所の判断
1(1)本願商標
本願商標は,「KamiNoSuna」の欧文字を標準文字で表してなるとこ
ろ,該欧文字は,その文字構成に照らし,「Kami」,「No」及び「Suna」の
3語を組み合わせてなるものと容易に認識されるものである。この構成からして,
それぞれ,日本語の音をローマ字表記(綴り)したものと認識されるところ,「Ka
mi」は「紙」,「神」又は「髪」を想起し,「Suna」は「砂」を想起し,「No」
は両者をつなぐ意味での各助詞の「の」を意味するものと考えられる。
ところで,本願指定商品である第21類「愛玩動物用排泄物処理材」は,原告も
主張するとおり,愛玩動物の排泄物を処理するために用いられるものであって,こ
のうち,猫用のトイレに敷設される砂は,一般に「猫砂」と称されており,紙,ベ
ントナイト,木(おがくず)等の原材料を砂のような粒子状に加工してなるものが
広く製造,販売されている(甲5,6)。
そうすると,本願商標をその指定商品,とりわけ「猫砂」と称される商品に使用
した場合,これに接する取引者,需要者は,これを構成する「Kami」,「No」
及び「Suna」の欧文字部分から,それぞれ,商品の原材料の一つとして用いら
れている「紙」の語,格助詞の「の」及び商品の性状を比喩的に表した「砂」の語
を容易に連想,想起し,その構成全体をもって,「紙の砂」の日本語の音を欧文字を
用いてローマ字表記してなるものと理解,認識するといえる。
してみれば,本願商標は,その構成文字に相応して,「カミノスナ」の称呼を生じ,
「紙の砂」すなわち,紙を材料とする砂粒の意味合いを認識させるものである。
(2)引用商標
引用商標は,「紙の砂」の文字を横書きしてなるものであるから,「カミノスナ」
の称呼を生じ,「紙の砂」の意味合いを認識させるものである。
(3)対比等
本願商標と引用商標とを比較すると,本願商標は,「KamiNoSuna」
の欧文字を標準文字で表してなるものであるのに対し,引用商標は,「紙の砂」の文
字を横書きしてなるものであるから,両商標は,外観において,相違するものであ
る。
しかしながら,本願商標は,上記のとおり,取引者,需要者をして,「紙の砂」の
音を欧文字を用いてローマ字表記してなるものと理解,認識されるものであり,引
用商標との比較において,「カミノスナ」の称呼を同一とし,「紙の砂」の意味合い
を認識させる点においても共通するものである。
したがって,本願商標と引用商標とは,外観においては相違するものの,「カミノ
スナ」の称呼及び「紙の砂」の意味合いにおいて同一のものであるから,これらを
総合勘案すれば,両商標をそれぞれ同一又は類似する商品に使用したときは,その
商品の出所について相紛れるおそれがあるというべきである。
2原告は,本願商標と引用商標とは,少なくとも外観及び観念において著しく
相違しており,本願指定商品が称呼のみで取引される性質のものではないという取
引実情の下で,商品の出所に誤認混同が生じるおそれはない,と主張する。
しかしながら,本願商標のうち,中央の「No」がそれのみでは「Yes」の対
義語と認識されることがあるとしても,その前後の「Kami」及び「Suna」
は,通常,それに対応する何らかの外国語を表したものではなく,「カミ」及び「ス
ナ」の音をもつ日本語を欧文字によりローマ字表記したものと認識され,そこから,
「No」は「カミ」と「スナ」をつなぐ意味をもつ,日本語の「ノ」のローマ字表
記であると認識される。そして,前記のとおり,本願指定商品に係る取引において,
紙を原材料とする猫砂が広く製造,販売されていることからすると,本願商標は,
「紙の砂」の意味合いを容易に認識させるものである。
また,引用商標は,「紙の砂」の文字のみからなるものであり,本願商標は,「K
amiNoSuna」の欧文字のみからなるものであるから,引用商標と本願
商標とは,日本語とその音を欧文字によりローマ字表記したものと解され,当然,
称呼は同一である。なお,本願商標は,「紙の砂」の意味合いを容易に認識させるも
のであるから,強弱のアクセントにも特段の差異は認められない。
そして,本願指定商品が称呼のみで取引される性質のものではないとしても,前
記のとおり,本願指定商品を取扱う業界においては,標章を欧文字(ローマ字表記
を含む。)と日本語で表すことが一般に広く行われていることからすると,本願商標
について,欧文字で表されていることが需要者に強い印象を与えるものではないと
いえる。
そうとすれば,本願商標と引用商標とは,欧文字を用いたローマ字表記かそれに
対応する日本語かの差異であって,その外観上の印象の相違は強いものではなく,
「カミノスナ」の称呼を同一とし,「紙の砂」の意味合いを認識させる点においても
共通するものであるから,本願商標と引用商標とは,外観における相違を考慮して
もなお,商品の出所について誤認,混同を生ずるおそれがある商標というべきであ
る。
したがって,原告の上記主張は,失当である。
3また,原告は,引用商標の「紙の砂」は,本願指定商品との関係で識別力を
有しておらず,出所表示機能を果たすものではないから,かかる引用商標との間で
出所について誤認混同を生じる余地がない,と主張する。
しかしながら,本願指定商品である愛玩動物用排泄物処理材のうち,猫を対象と
する砂粒状の処理材に限定しても,紙以外に,ベントナイト,木,シリカゲル,お
から及び鉱物等が用いられており(甲5ないし8,枝番号の書証を含む。),引用商
標が本願指定商品全般に対して識別力を有していないということはできない。
したがって,原告の上記主張は,失当である。
4よって,原告の請求には理由がない。
第6結論
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清水節
裁判官
片岡早苗
裁判官
新谷貴昭

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