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平成26年7月16日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官
平成25年(行ケ)第10331号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成26年6月18日
判決
原告株式会社データ・テック
訴訟代理人弁理士鈴木正剛
同藤掛宗則
被告カヤバ工業株式会社
訴訟代理人弁護士松本司
同井上裕史
同佐合俊彦
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2011-800136号事件について,平成25年10月2
8日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
本件特許
原告は,平成11年10月12日,発明の名称を「移動体の操作傾向解析
方法,運行管理システム及びその構成装置,記録媒体」とする特許出願(特
願平11-290354号。優先日平成10年10月12日)をし,平成1
3年9月7日,設定の登録(特許第3229297号)を受けた(甲9。登
録時の請求項の数は20。以下,この特許を「本件特許」という。)。
本件無効審判請求までの経緯
ア特許異議の申立て
原告は,平成14年5月20日に本件特許につき特許異議の申立てがさ
れたため,同年10月25日,原告は請求項の数を16に減らすなどの
訂正請求をし,特許庁は,平成15年1月21日,訂正請求を認めて本
件特許を維持する旨の決定をした(甲14。以下,同時点の明細書を
「本件基準明細書」という。)。
イ第一次無効審判請求
被告は,平成23年1月28日,新規性欠如,進歩性欠如を理由に,
上記訂正後の請求項9,15の発明に係る特許につき無効審判を請求し
たが(無効2011-800013号),同年7月11日,特許庁から
請求不成立審決を受け,知的財産高等裁判所に出訴したが(平成23年
(行ケ)第10265号),平成24年4月9日,請求棄却判決を受け
(甲11),同判決は確定した。
ウ本件無効審判請求等
被告は,平成23年8月4日,上記イの無効審判請求の無効理由に
おける主引用例とは異なる主引用例に基づき,新規性,進歩性欠如を理
由に,上記訂正後の請求項9,15の発明に係る特許につき本件無効審
判を請求し,特許庁に無効2011-800136号事件として係属し
た。
原告は,同年9月16日,本件基準明細書における特許請求の範囲の
請求項9,11,15の記載及び発明の詳細な説明の記載の一部を改め
る訂正請求をし,特許庁は,平成24年2月27日,訂正を認め,本件
審判請求は成り立たない旨の審決をした(甲13)。
そこで,被告が,知的財産高等裁判所に訴えを提起したところ(平成
24年(行ケ)第10129号),平成24年10月17日,同審決を
取り消す旨の判決(以下「前訴判決」という。)がされ,平成25年3月
12日に確定した。
なお,この間,原告は,被告に対し,本件特許権の侵害を理由とする
差止請求,損害賠償請求等を求める訴訟を提起したが,第一審の東京地
方裁判所(平成22年(ワ)第40331号)は,平成23年11月3
0日,請求項9,15の発明に係る特許は,特許無効審判により無効と
すべきものであるなどと判示して,原告の請求を全部棄却し,知的財産
高等裁判所(平成23年(ネ)第10087号)も,平成25年3月5
日,原告の控訴を棄却し,同判決は確定した。
原告は,平成25年4月15日,本件基準明細書における特許請求
の範囲の請求項9,11,15の記載及び発明の詳細な説明の記載の一
部を改める訂正請求をし(以下「本件訂正請求」という。),特許庁は,
同年10月28日,請求項9,15に係る訂正を認めるなどした上で,
本件特許の請求項9,15に係る発明についての特許を無効とする旨の
審決(以下「本件審決」という。)をし,同年11月8日,その謄本が原
告に送達された。
原告は,平成25年12月9日,本件審決の取消しを求める本件訴
訟を提起した。
2特許請求の範囲の記載
本件訂正請求前(前訴判決時)の特許請求の範囲の請求項9,15の記載
は次のとおりである。
【請求項9】
「移動体の挙動を検出するセンサ部と,前記挙動を特定挙動と判定して当
該特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集
条件に従って前記センサ部で検出された当該移動体の挙動において前記特定
挙動の発生の有無を判定し,前記移動体の操作傾向の解析が可能となるよう
に,前記特定挙動の発生に応じて前記収集条件に適合する挙動に関わる情報
を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し,前記記録媒体は,前記移動
体の識別情報,前記移動体の操作者の識別情報,前記移動体の挙動環境の少
なくとも1つに従って分類される分類毎に作成されたカード状記録媒体であ
り,このカード状記録媒体に少なくとも前記収集条件が設定されている,デ
ータレコーダ。」
【請求項15】
「移動体の挙動を特定挙動と判定して当該特定挙動の発生前後の挙動に関
わる情報を所定時間分収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する
処理,前記設定された収集条件に適合する挙動に関わる情報が記録された前
記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,読み出した情報から当該移動
体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行させるためのディジ
タル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体。」
本件訂正請求後の特許請求の範囲の請求項9,15の記載は,次のとおり
である(以下,請求項9に係る発明を「訂正発明1」,請求項15に係る発
明を「訂正発明2」といい,これらを併せて「本件発明」という。なお,下
線を付した範囲が訂正部分である。)
【請求項9(訂正発明1)】
「移動体の挙動を検出するセンサ部と,前記挙動を前記移動体の操作傾向
を解析するためにその特徴が操作者毎に定められた挙動である特定挙動と判
定して当該特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するた
めの収集条件に従い,前記センサ部で検出された当該移動体の挙動において
前記特定挙動の発生の有無を判定し,前記移動体の操作傾向の解析が可能と
なるように,前記特定挙動の発生に応じて前記収集条件に適合する挙動に関
わる情報を前記移動体の操作者用の記録媒体に記録する記録手段とを有し,
前記記録媒体は,前記操作者の識別情報又は前記移動体の挙動環境に従って
分類される分類毎に作成されたカード状記録媒体であり,このカード状記録
媒体に少なくとも前記収集条件が設定されている,データレコーダ。」
【請求項15(訂正発明2)】
「移動体の挙動を当該移動体の操作傾向を解析するためにその特微が操作
者毎に定められた挙動である特定挙動と判定して当該特定挙動の発生前後の
挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を前記移動体の操作
者用の記録媒体に設定する処理,前記設定された収集条件に適合する挙動に
関わる情報が記録された前記記録媒体からその記録情報を読み出す処理,読
み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置
に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な
記録媒体。」
3本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりであり,要するに,訂正
発明1及び2は,引用例である下記アの甲3に記載された発明(以下,「甲
3発明」という。),引用例である下記イの甲1に記載された発明(以下
「甲1発明」という。),引用例である下記ウの甲2に記載された発明(以
下「甲2発明」という。),及び下記エないしコの周知技術に基づいて当業
者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規
定により特許を受けることができないものであり,本件発明についての特許
は無効とすべきものである,などというものである。

ア甲3:特開昭62-144295号公報
イ甲1:実願平3-26831号(実開平4-123472号)のマイク
ロフィルム
ウ甲2:特開平6-223249号公報
エ甲4:特開平10-24784号公報
オ甲5:特開平10-177663号公報
カ甲6の1:特開平5-150314号公報
キ甲6の2:特開平5-258144号公報
ク甲6の3:特開平6-4733号公報
ケ甲6の4:特開平6-300773号公報
コ甲6の5:特開平10-63905号公報
対比
本件審決が認定した甲3発明,甲1発明,甲2発明,訂正発明1と甲3発
明との一致点及び相違点1ないし3並びに訂正発明2と甲3発明との一致点
及び相違点4ないし6は,次のとおりである。
ア甲3発明
「スピードの出し過ぎや急発進・急制動を判定して,車輌を利用するド
ライバーの運転状態を管理する車輌運転管理システムであって,車輌に
搭載された運転データ記録装置2と,運転データ記憶部1aとドライバ
ーの識別コードが書き込まれた識別データ記憶部1bとを有し,運転デ
ータ記録装置2によって運転データが書込まれるICカード1と,給油
所等に設置される磁気テープ読取式データ処理装置4と,管理事務所に
設置される管理データ処理装置3から構成され,運転データ記録装置2
には車速を検出する検出部5が接続され,運転データ記録装置2の演算
部20は,安全スピード判定手段13,スピード変化率算出手段11,
粗雑運転判定手段12等を備え,車速データが基準スピードを超えるか
否かを判定するとともに,車速データから算出された速度変化率と予め
設定された基準変化率を比較して急速発進及び急制動を判定し,これら
の運転データがICカード1に書き込まれて管理データ処理装置3側で
読み出しを行うことができるようにし,管理データ処理装置3の演算部
30は,安全スピード運転評価手段33,粗雑運転評価手段32等を備
え,安全スピード判定手段13で判定された基準スピード以上のスピー
ドを出した回数をカウントしてポイントを算出するとともに,粗雑運転
判定手段12で判定された急速発進及び急制動の回数をカウントしてポ
イントを算出し,さらに,ドライバーがガソリンスタンドで給油すると
きは,給油所にある磁気テープ読取式データ処理装置4にICカード1
から識別コードを読取らせ,給油量等のデータと一体化して記録させ,
磁気テープ読取式データ処理装置4で処理したデータがドライバーの識
別コードに基づいて管理データ処理装置3で統合的にデータ処理される
車輌運転管理システム。」
イ甲1発明
「運転者の操作(運転)傾向を把握するために車両の加速及び減速を分
類(ランク分け)する基準となる加速ランクデータ及び減速ランクデー
タを,装置に挿入,接続されたICメモリカードに記録し,かつICメ
モリカードから読み込んだ加速ランクデータ及び減速ランクデータをC
PUのRAMに格納して,上記分類に用いる車両運行データ収集装
置。」
ウ甲2発明
「自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュー
タ装置及び着脱可能なRAMカード(20)を用いて,前方間隔,警告閾
値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメー
タを設定する発明すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変
更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更さ
れたパラメータをERAに適用する発明。」
エ訂正発明1と甲3発明の対比
一致点
「移動体の挙動を検出するセンサ部と,前記センサ部で検出された当
該移動体の挙動において特定挙動の発生の有無を判定し,前記移動体の
操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて挙動
に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し,前記記録
媒体は,前記操作者の識別情報又は前記移動体の挙動環境に従って分類
される分類毎に作成されたカード状記録媒体であるデータレコーダ。」
相違点1
「訂正発明1は,特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間
分収集するための収集条件に適合する挙動の情報をカード状記録媒体に
記録するものであり,かつ,該収集条件が該カード状記録媒体に設定さ
れているのに対して,甲3発明は,そのようなものでない点。」
相違点2
「訂正発明1は,特定挙動について,移動体の操作傾向を解析するた
めにその特徴が操作者毎に定められた挙動である特定挙動であるのに対
し,甲3発明ではそのような特定がされていない点。」
相違点3
「訂正発明1は,挙動に関わる情報を記録媒体に記録する記録手段が,
移動体の操作者用の記録媒体に記録するものであるが,甲3発明では,
記録媒体について,移動体の操作者用の記録媒体と特定されていない
点。」
オ訂正発明2と甲3発明との対比
一致点
「移動体の挙動を特定挙動と判定して当該挙動に関わる情報が記録さ
れた記録媒体からその記録情報を読み出す処理,読み出した情報から当
該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行させるた
めのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒
体。」
相違点4
「訂正発明2は,特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間
分収集するための収集条件を記録媒体に設定する処理をコンピュータ装
置に実行させるものであるのに対し,甲3発明は,そのようなものでな
い点。」
相違点5
「訂正発明2は,特定挙動について,移動体の操作傾向を解析するた
めにその特徴が操作者毎に定められた挙動である特定挙動であるのに対
し,甲3発明ではそのような特定がされていない点。」
相違点6
「訂正発明2は,挙動に関わる情報を記録媒体に設定する処理が,移
動体の操作者用の記録媒体に設定するものであるが,甲3発明では,記
録媒体について,移動体の操作者用の記録媒体と特定されていない
点。」
第3当事者の主張
1原告の主張
取消事由1(甲3発明に基づく訂正発明1の容易想到性の判断誤り)につ
いて
ア一致点及び相違点の認定誤りについて
本件審決は,訂正発明1と甲3発明の一致点として,「特定挙動の発
生の有無を判定」などの「特定挙動」を挙げた上,相違点1について,
「訂正発明1は,甲3発明に『特定挙動』の発生前後の車両の挙動に係
る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する甲1発明と,『特定
挙動』に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車
両の挙動に係る情報収集をする周知技術(甲4,5,6の1~5)を適
用することにより,本件優先日当時,当業者において,甲3発明と訂正
発明1の相違点1に係る構成(『特定挙動』発生前後の車両の挙動に係
る情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報を記
録媒体に記録,設定する構成)に容易に想到することができたというべ
きである」などと判断した。
しかしながら,訂正発明1における「特定挙動」は,「移動体の操作
傾向を解析するためにその特徴が操作者毎に定められた挙動」であり,
運転者に固有となる操作傾向の把握を可能にするという意義を有するも
のである一方で,甲3には,このような意味での「特定挙動」は記載さ
れていないのであるから,「特定挙動」は一致点とはなり得ない。
また,相違点1における「特定挙動」が「移動体の操作傾向を解析す
るためにその特徴が操作者毎に定められた挙動」であれば,甲1には,
そのような特定挙動に関わる情報を収集する条件を記録媒体に記録,設
定することは記載されていないから,本件審決が甲1発明を適用して,
当業者は相違点1に係る構成に容易に想到することができたと判断した
ことは,論理が破綻しているといえ,このような認定誤りは,特に相違
点1の判断に重大な影響を及ぼす。
以上からすれば,本件審決における訂正発明1と甲3発明との一致点
及び相違点の認定は誤りであり,その結果,本件審決は訂正発明1の進
歩性の判断を誤ったものである。
イ相違点2の容易想到性の判断誤りについて
本件審決は,①相違点2に係る構成における「特定挙動」についての
「移動体の操作傾向を解析するため」との限定について,甲3発明も,
スピードの出し過ぎや急発進・急制動を判定するもので,訂正発明1に
おける「移動体の操作傾向の解析が可能となる」との要件を備え,その
「スピードの出し過ぎや急発進・急制動」が,訂正発明1の「特定挙
動」に相当するものであるから,甲3発明の「特定挙動」も「移動体の
操作傾向を解析するため」との限定を備えていること,②甲2発明は,
自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ
装置及び着脱可能なRAMカードを用いて,前方間隔,閾値その他のパ
ラメータを設定する発明,すなわちRAMカードに記録されているパラ
メータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,
その後変更されたパラメータをERAに適用することと,これらのパラ
メータを操作者毎に設定することを内容とするものであること,③甲2
発明と甲3発明とは技術分野が共通することなどから,甲3発明に甲2
発明を適用して,相違点2に係る訂正発明1の構成のように特定挙動の
特徴を操作者毎に定められた挙動とすることは当業者が容易に想到する
ことができたと判断した。
しかしながら,本件審決は,相違点2として「移動体の操作傾向を解析
するためにその特徴が操作者毎に定められた挙動である特定挙動」を認
定しているにもかかわらず,その判断過程において「移動体の操作傾向
を解析するために」との限定を除外して「その特徴が操作者毎に定めら
れた挙動」に対して容易想到性の判断をしたものであって誤りである。
また,甲2発明に記載されているパラメータは車両の操作傾向を解析す
るためにその特徴が定められるものではないから,甲2発明から「移動
体の操作傾向を解析するために操作者毎に定められた挙動」に関するパ
ラメータを導出して甲3発明に適用することは困難である。
そして,下記の阻害要因の存在及び解決すべき技術的課題の相違に鑑み
れば,甲3発明において「基準スピード」あるいは「基準変化率」の大
きさ(挙動の特徴)を定める際に、甲2発明を適用してそれらの基準値
をドライバー毎に定めることはできないのであって,甲3発明に甲2発
明を適用して,相違点2に係る訂正発明1の構成とすること(特定挙動
の特徴を操作者毎に定められた挙動とすること)は当業者が容易に想到
することはできない。
阻害要因の存在
甲3発明は,社有自動車,社用供与自動車等の運転状態について,ス
ピードの出し過ぎや急発進・急制動かどうかについてはドライバーの自
覚に任され,客観的に評価することが困難であったという課題を解決す
るために,ドライバーが管理水準以上のスピードで走行した事実(回数
や距離)あるいは急速発進,急制動の事実(回数)を記録することによ
って,客観的にドライバーの運転を把握して,安全運転の励行や粗雑運
転の防止を図る発明であり,甲3発明でいう「管理水準」は,予め定め
た基準値(基準スピード及び基準変化率)で,ドライバーの運転により
生じたスピード等がこの基準値を超えたかどうか(粗雑運転を行ったか
どうか)の基準となるものである。
この点について,仮に甲3発明において,各種パラメータについての
上記基準値が運転能力などのドライバー個人の事情を考慮して個別に定
められると解すると,同じスピード等であっても,管理データ処理装置
において,あるドライバーの運転は粗雑運転と判定され,他のドライバ
ーの運転が粗雑運転と判定されない場合があることになり,スピードの
出し過ぎかどうかをドライバーの自覚に任せた場合と変わらなくなり,
管理者側で各ドライバーの運転状態を客観的に評価することができなく
なって,甲3発明が解決しようとする課題を解決できなくなる。
したがって,甲3発明において「スピードの出し過ぎや急発進・急制
動」か否かを判定することが「操作傾向を解析するため」といえるとし
ても,そのような挙動が発生したと判定するための基準値を定めるにあ
たっては,ドライバー個人の事情が排除されると解される。
これに対し,甲2発明は,RAMカード等を用いて車両の挙動に関す
る情報を収集,記録するもので,RAMカードに設定される各種パラメ
ータは,車両を「個人化」するなどのドライバー個人の意向を強く表す
ものである(甲2・段落【0047】)。
したがって,仮に甲2発明を甲3発明に適用して,データを収集・記
録するためのパラメータ(管理水準のスピード,発進,制動)の基準値
を,ドライバー毎に定められるとすると,上記のとおり,甲3発明にお
いて収集・記録されるデータがドライバーの自覚に任せたものと変わら
ないものとなり,甲3発明が解決しようとする問題点の解決にならなく
なってしまう。
以上からすれば,甲3発明は,運転操作の各種パラメータの基準値を
定める際にドライバー個人の事情を排除する一方で,甲2発明は,運転
操作の各種パラメータにおいてドライバー個人の事情を反映させようと
するものであるから,甲2発明を甲3発明に適用するに当たっては,阻
害要因が存在する。
技術的課題の相違
上記のとおり,甲3発明は,運転者の操作(運転)傾向を分析する
上でより有用,効果的な情報を収集,記録するための手段を提供するた
めのものであるが,運転能力などのドライバー個人の事情を考慮したパ
ラメータにより運行データを収集・記録し,その運行データを利用して
ドライバーに固有となる操作傾向を解析ないし把握することを技術的課
題としているとまでいうことはできず,記録する挙動の特徴を運転者毎
に定めることを示唆する記載もない。
一方,甲2発明は,RAMカードを用いて上記のパラメータに関する
ドライバーの意向を車両に組み込むことにより当該車両を「特別化」あ
るいは「個人化」することは記載されているが(甲2・段落【004
3】,【0047】),収集・記録された運行データを,運転者の交通
事故につながりやすい操作(運転)傾向を解析するために利用すること
については記載されていない。
そうすると,甲2発明も,運転能力などのドライバーの事情を考慮し
たパラメータにより運行データを収集・記録し,それに基づいてドライ
バーに固有となる操作傾向を解析することを技術的課題とするとまでは
いうことができない。
以上からすれば,甲3発明と甲2発明は,いずれも運転能力などのド
ライバー個人の事情を考慮したパラメータにより運行データを収集・記
録し,その運行データを利用してドライバーに固有となる操作傾向を解
析ないし把握することを技術的課題としているとまでいうことはできず,
技術的課題が相違する。
ウ相違点3の容易想到性の判断誤りについて
本件審決は,甲2発明のRAMカードはドライバー個人用のRAM
カードであること,甲2発明を甲3発明に適用することの動機付けが
あることなどから,甲3発明に甲2発明を適用して,相違点3に係る
訂正発明1の構成のようにすることは,当業者が容易に想到すること
ができたと判断した。
しかしながら,上記アのとおり,甲2発明及び甲3発明のいずれも
運転能力などのドライバー(運転者)の事情を考慮したパラメータに
より運行データを収集・記録し,その運行データを用いて運転者に固
有となる操作傾向を解析することを技術的課題とするものでない。
また,訂正発明1における「前記移動体の操作者用の(カード状)
記録媒体」には,「移動体の操作傾向を解析するためにその特徴が操
作者毎に定められた挙動」に関わる情報を収集するための「収集条
件」が設定され,かつ,「収集条件」に適合する挙動に関わる情報が
記録されることになるところ,甲2発明において使用する個人用のR
AMカードに設定されるパラメータが上記の「収集条件」に対応し,
かつ,その「収集条件」に適合する挙動に関わる情報がそのRAMカ
ードに記録されることを示唆する記載は,甲2には見当たらない。
したがって,相違点3に関して,甲3発明に甲2発明を適用した本
件審決の判断には誤りがある。
取消事由2(甲3発明に基づく訂正発明2の容易想到性の判断誤り)につ
いて
ア一致点及び相違点の認定誤りについて
本件審決は,訂正発明2と甲3発明の一致点についても「特定挙動」
「特定挙動」は一致点とはな
り得ず,その認定誤りは特に相違点4の判断に重大な影響を及ぼす。
したがって,本件審決における訂正発明2と甲3発明との一致点及び
相違点の認定は誤りであり,その結果,本件審決は訂正発明2の進歩性
の判断を誤ったものである。
イ相違点5及び同6の容易想到性の判断誤りについて
本件審決は,相違点5及び同6は実質的に相違点2及び同3と同一であ
るとし,相違点2及び同3に関する判断と同様の理由に基づき,甲3発
明に甲2発明を適用して相違点5及び同6に係る訂正発明2の構成のよ
うにすることは,当業者が容易に想到することができたものと判断した。
しかしながら,甲3発明に甲2発明を適用して相違点2及び同3に係る
訂正発明1の構成を想到することが困難であることは,前記の
とおりである。
したがって,甲3発明に甲2発明を適用して相違点5及び同6に係る訂
正発明2の構成を想到することも困難であり,これを容易に想到できる
とした本件審決の相違点5及び同6に関する判断には誤りがある。
まとめ
以上からすれば,甲3発明に基づいて本件発明をすることは容易想到であ
るとした本件審決には誤りがあり,取り消されるべきである。
2被告の主張
取消事由1(甲3発明に基づく訂正発明1の容易想到性の判断誤り)に対
して
ア一致点及び相違点の認定について
原告は,訂正発明1における「特定挙動」は,「移動体の操作傾向を
解析するためにその特徴が操作者毎に定められた挙動」であり,甲3に
は,このような意味での「特定挙動」は記載されていないのであるから,
「特定挙動」は一致点とはならない旨主張する。
しかしながら,本件審決は,訂正発明1と甲3発明との相違点として,
「訂正発明1は,特定挙動について,移動体の操作傾向を解析するため
にその特徴が操作者毎に定められた挙動である特定挙動であるのに対し,
甲3発明ではそのような特定がされていない点。」(相違点2)を認定
している。
したがって,原告が主張する点は,本件審決において,審理の対象と
され,判断されているから,原告の主張は理由がない。
イ相違点2及び同3の容易想到性の判断誤りに対して
原告は,甲3発明はパラメータを定める際にドライバー個人の事情が
排除される一方で,甲2発明は,パラメータがドライバー個人の意向を
表すものであるので,甲2発明を甲3発明に適用するに当たっては,阻
害要因が存在する旨主張する。
しかしながら,甲3には,基準値を画一に定めなければならない旨の
記載はなく,甲3発明に甲2発明を適用しても,「ドライバーの運転管
理データを得る」という甲3発明の目的を何ら減殺することはない。
また,甲3には,「一日を前記タイムレコーダのデータ処理装置42
から入力された当該日付の勤務時間データを基に該勤務時間帯(公用)
と,それに前後する一定時間帯(通勤時間帯となる準公用)と,それら
以外の時間帯からなる私用時間帯(私用)に区分し,各区分毎に走行距
離を算出する構成としてもよい」(甲3・5頁左下欄5行ないし11
行)との記載があり,ドライバーの運転管理データを得るにあたり,目
的に応じて個人(私用)のデータを取得する技術思想が開示されている
のである。
したがって,甲2に記載された「量販車あるいはバス」など運転車両
により区分して,それぞれのドライバーの閾値を個別に設定し,それぞ
れのドライバーの運転管理データを得ることは,甲3発明に示唆されて
いる事項であるといえる。
以上からすれば,甲3発明については,ドライバー個人の事情が排除
されているわけではなく,甲3発明に甲2発明を適用することについて
阻害事由はないから,原告の主張は理由がない。
取消事由2(甲3発明に基づく訂正発明2の容易想到性の判断誤り)に
対して
訂正発明2と甲3発明との相違点とし
て,「訂正発明2は,特定挙動について,移動体の操作傾向を解析するた
めにその特徴が操作者毎に定められた挙動である特定挙動であるのに対し,
甲3発明ではそのような特定がされていない点。」(相違点5)を認定し
ているので,原告が主張する点は審理の対象とされ,判断されている。
また,相違点5及び同6は,実質的に相違点2及び同3と同一であるか
ら,とおり原告の主張には理由がない。
以上からすれば,本件審決は相当であって,取消事由はない。
第4当裁判所の判断
1取消事由1(甲3発明に基づく訂正発明1の容易想到性の判断誤り)につ
いて
一致点及び相違点の判断誤りについて
ア本件発明について
本件発明の特許請求の範囲は,前記第2の2に記載のとおりであるとこ
ろ,平成25年4月15日付けの本件訂正請求時の訂正明細書(甲10,
以下「本件明細書」という。)には,おおむね次の記載がある(図面に
ついては,別紙1の本件明細書図面目録を参照。)。
発明の属する技術分野
本発明は,例えば車両や鉄道等の移動体の挙動を表す運行データの管
理システムに係り,特に,運転者の操作傾向の解析に適したデータレコ
ーダ及びこれを利用した運行管理システムに関する。(段落【000
1】)
従来の技術
車両その他の移動体の挙動に関わる測定データを記録するデータレ
コーダ及びこのデータレコーダに記録された測定データの解析を行う
挙動解析装置を有する運行管理システムが知られている。この種の運
行管理システムにおいて,車両の挙動に関わる測定データを検出して
記録するデータレコーダは,セーフティレコーダとも呼ばれ,角速度
計,加速度計,GPSレシーバから成るセンサ部と,このセンサ部で
検出された測定データを記録するためのレコーダ部とから構成される。
測定データは,具体的には,ロール,ピッチ,ヨーの角速度データ,
二次元または三次元の加速度データ,緯度・経度・速度・方位を表す
GPSデータ等である。(段落【0002】)
レコーダ部に記録された測定データは,挙動解析装置で集計され,
解析される。挙動解析装置はコンピュータ装置によって実現されるも
ので,測定データのうち,角速度データから旋回角速度を求め,加速
度データから発進加速度及びブレーキ加速度を求め,さらに,GPS
データから車両の現在位置,時間,運行速度を求める機能を有してい
る。(段落【0003】)
発明が解決しようとする課題
従来のデータレコーダは,例えば車両に一つ固定的に取り付けられ,
しかも記録される測定データは,運転者が誰かにかかわらない。これは,
従来のデータレコーダが,事故等が発生した場合に,その車両の挙動を
事後的に解析して事故等の発生原因を究明するためのものであったこと
による。そのため,利用範囲が著しく制限されてしまい,一般の運転者
向けに普及させることが困難であった。(段落【0004】)
また,従来は,車両の挙動に際して発生する測定データをすべて記録
しているため,データレコード側では,記録を繰り返し行うとはいえ,
所定期間内での記録のために多大な記録領域を確保しておかなければな
らず,これらを峻別する解析装置側でも重い処理が必要となる問題があ
った。(段落【0005】)
さらに,従来のこの種の運行管理システムでは,運転者による操作傾
向を把握して事故等の発生を未然に防止するための情報を生成するとい
う観点は存在しなかった。例えば自動車においては,交通事故発生の約
7割は交差点等,運転者に複合操作が要求される箇所で発生している。
すなわち,運転動作としては,アクセルまたはブレーキの操作を行うと
ともに,ハンドルの操作も行う必要のある箇所である。従来では,この
ような交通事故発生率の高い箇所での運転操作に対して,危険を認識す
る工夫が十分ではなかった。(段落【0006】)
そこで本発明は,車両等の移動体の操作傾向を適切に把握することが
できる,移動体の操作傾向解析技術を提供することを主たる課題とする。
(段落【0007】)
課題を解決するための手段
上記課題を解決するため,本発明は,移動体の操作傾向解析方法,こ
の方法の実施に適した移動体の運行管理システム,データレコーダ,挙
動解析装置,及び操作傾向解析のための処理をコンピュータ上で実行す
る上で好適となる記録媒体を提供する。(段落【0008】)
本発明の移動体の操作傾向解析方法は,移動体の特定挙動を示す挙動
条件に従って,実際に検出された当該移動体の挙動における前記特定挙
動の発生の有無を判定し,前記特定挙動の発生事実に応じて当該移動体
の特定挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録し,この記録媒体に記
録された情報をもとに当該移動体の操作傾向を解析することを特徴とす
る。(段落【0009】)
本発明の移動体の運行管理システムは,所定の収集条件を満足した移
動体の挙動を検出して該挙動が検出されたときはその挙動の発生前後に
わたって前記移動体の挙動を所定の記録媒体に記録する手段を備えたデ
ータレコーダと,前記収集条件を設定する条件設定手段と,記録された
情報に基づいて当該移動体の操作傾向を解析する解析手段とを有し,前
記データレコーダが,前記条件設定手段で設定した収集条件に適合する
挙動に関わる情報のみをその挙動別に前記記録媒体に記録するように構
成されるシステムである。(段落【0011】)
また,前記条件設定手段は,前記移動体の操作者の識別情報,前記移
動体の挙動環境,前記操作者の挙動履歴の少なくとも1つに従って前記
収集条件を設定するように,あるいは,互いに異なった移動体操作要因
に従う複合的な収集条件を設定するように構成される。(段落【001
3】)
発明の実施の形態
以下,本発明を,車両の操作傾向や危険挙動の事実を検出して運転者
に提示する運行管理システムに適用した場合の実施の形態を説明する。
(段落【0022】)
a第1実施形態
図1は,第1実施形態による運行管理システムの構成図である。
この運行管理システム1は,車両に取り付けられるデータレコーダ
10と,メモリカード20と,メモリカード20に運転者の固有情報
や,車両の挙動の特徴を認識するための条件パターンを設定するとと
もに,これらの設定情報に基づいてメモリカード20に記録された情
報を読み込んで車両の挙動内容を解析する挙動解析装置30とを有し
ている。(段落【0023】)
データレコーダ10は,センサ部11,カード収容機構12,レコ
ーダ部13を含んで構成される。
センサ部11は,車両における三次元軸線回り(ロール,ピッチ,
ヨー)の角速度データを検出するための角速度計111x,111y,
111z,車両の前後左右方向の加速度データ(アクセル加速度,ブ
レーキ加速度,旋回加速度等)を検出する加速度計112x,112
y,車両の現在の緯度・経度・速度・方位等を表すGPSデータを受
信するGPSレシーバ113,車両計器等から車速パルスを取得する
パルス取得機構114を有している。(段落【0024】)
カード収容機構12は,メモリカード20を離脱自在に収容してレ
コーダ部13との間のデータの読み出しや書き込みを支援するもので
ある。(段落【0027】)
レコーダ部13は,CPUとメモリとを含み,CPUがメモリの一
部に記録された所定のプログラムを読み込んで実行することにより形
成される,前処理部131,イベント抽出部132,データ読取部
133,データ記録部134の機能ブロック,及びカウンタの機能を
具備して構成される。(段落【0028】)
前処理部131は,センサ部11から出力される角速度データに含
まれるオフセット成分及びドリフト成分の除去処理を行う。また,角
速度データ及び加速度データから成る慣性データとGPSデータとの
マッチング処理を行う。つまりGPSデータは慣性データに対して2
秒程度の遅れがあるので,2秒前の慣性データとのマッチング処理を
行う。(段落【0029】)
データ読取部133は,メモリカード20に設定された条件パター
ン,すなわち,車両の特徴的な挙動,例えば危険挙動の事実(以下,
「イベント」)が発生したと認識するための一つの閾値または複数の
閾値の組み合わせ又は例えば交差点旋回等の挙動パターンを認識して
イベント抽出部132へ伝えるものである。(段落【0030】)
イベント抽出部132は,センサ部11から出力され,前処理部1
31でオフセット成分等が除去されたデータから,イベント毎の条件
パターンに適合する測定データ(角速度データ,加速度データ,GP
Sデータ,車速パルス等:以下,「イベントデータ」)を抽出し,そ
のイベントデータ及びその種別データ(条件パターンの識別データ),
イベント発生日時(GPSデータ),イベント発生場所(GPSデー
タ),各イベントの記録数(設定による),イベント発生後の走行距
離(例えば,急ブレーキをかけた後の走行距離:車速パルスが1パル
ス発生したら所定の車速パルスのスケールファクタ分だけカウントす
る。(段落【0031】)
データ記録部134は,これらのデータをファイル化してメモリカ
ード20に記録する。また,イグニッションON/OFF,データレ
コーダ10の電源ON/OFFのほか,GPS通信正常・異常等が発
生したときは,その発生時間,発生内容(何時,何処で,何が起こっ
たか)を予め定めたビットパターンで記録できるようになっている。
(段落【0033】)
イベント抽出部132において認識されるイベント毎の条件パター
ンは,例えば,図2,図3に示すものである。図2は急発進の場合の
条件パターン,図3は交差点における条件パターンであり,それぞれ
「リターンON」はイベント認識,「リターンOFF」は非認識を表
す。(段落【0034】)
メモリカード20は,不揮発性メモリ領域であるEEPROM及び
ROMとCPUとを有する可搬性のICチップ搭載カード又はフラッ
シュROM等,不揮発性メモリである。ROMにはプログラムコード
が記録されており,EEPROMには上記条件パターンを含む各種設
定情報と,レコーダ部13からのイベントデータに関わる情報及び暗
号情報が記録されるようになっている。但し,メモリ制御機能がデー
タレコーダ10及び挙動解析装置30で実現される場合は,メモリカ
ード20側で常にメモリ制御機能(CPU,ROM)を用意しておく
必要はない。(段落【0035】)
挙動解析装置30は,例えば図4のように構成される。
ここでは,メモリカード20を収容してデータ記録及び読み出しを
行うカードリーダライタ31と,各種設定情報や解析結果を確認する
ための表示装置32と,初期情報や上記条件パターン等を入力するた
めのデータ入力装置33と,これらの装置との間のインターフェース
となる入出力制御部34を装備した据え置き型のコンピュータ装置を
用いて挙動解析装置30を構成する場合の例を挙げている。(段落
【0036】)
挙動解析装置30は,また,コンピュータ装置のCPUが所定の記
録媒体に記録されたディジタル情報を読み込んで,そのコンピュータ
装置のオペレーティングシステム(OS)と共に実行することにより
(協働実行)形成される,初期情報設定部35,条件設定部36,解
析処理部37の機能ブロックを具備している。(段落【0037】)
初期情報設定部35は,メモリカード20を初めて使用するときに,
個人情報,データレコーダ10に関する情報,及び,データレコーダ
10を搭載させる車両に関する情報等をそのメモリカード20に設定
するものである。
個人情報は,そのメモリカード20を保有する運転手の名称等であ
り,データレコーダ10に関する情報は,データレコーダ10を識別
するためのレコーダ番号,そのデータレコーダ10のロット番号等で
ある。
車両に関する情報は,データレコーダ10を取り付ける車両の車両
番号,車種,車速パルス,車速パルスのスケールファクタ等である。
これらの初期情報は,解析対象となる車両やそれを運転する運転者
を識別したり,データレコーダ10の精度等を挙動解析に加味するた
めに使用される。(段落【0038】)
条件設定部36は,各種条件パターンをメモリカード20に設定す
るものである。この条件設定部36及び初期情報設定部35では,運
転者の便宜を図るため,所定の埋め込み式ダイヤログウインドウを有
する設定用インターフェース画面を表示装置32に表示させ,運転者
が,データ入力装置33でこれらのダイヤログウインドウの該当領域
に該当データを埋め込み入力することによって各種設定情報を設定で
きるようになっている。(段落【0039】)
解析処理部37は,メモリカード20に記録されたイベントデータ
等から車両の挙動内容と運転者による操作傾向(癖等)を解析するも
のである。
具体的には,メモリカード20に記録されたイベントデータ及びそ
れに関わる情報を,運行単位,例えば1日単位に読み取って集計し,
これをグラフ処理することで,個々のイベントの発生日時,発生場所,
運行単位での発生傾向,発生頻度等を表示装置32に表示して視覚的
に把握できるようにしている。(段落【0040】)
次に,上記のように構成される運行管理システム1における運用形
態を説明する。
⒜メモリカード20の用意
新規の運転者の場合は,挙動解析装置30でその運転者用のメ
モリカード20を作成する。この場合は,運転者が,カードリー
ダライタ31に新しいメモリカードを装着し,表示装置32に,
図5に例示する初期情報設定画面を表示させ,データ入力装置2
3を通じて該当データを入力する。次いで,図6に例示する特徴
的な挙動設定画面を表示させ,所要のデータを入力する。これら
の設定データをメモリカード20に記録させる。新規の運転者で
ない場合も,閾値や詳細条件を変える場合は,挙動解析装置30
でその内容を新たに設定する。(段落【0043】)
⒝データレコーダ10によるイベントデータ等の記録
メモリカード20を,車両に取り付けられたデータレコーダ10
のカード収容機構12に装着し,運転を開始する。
車両が動き始めると,データレコーダ10のセンサ部11は,そ
の挙動を逐次測定し,その出力データをレコーダ部13に送る。レ
コーダ部13は,上述のようにして設定された条件パターンに適合
するイベントデータ及びそれに関わる情報のみを抽出し,これをメ
モリカード20に記録する。(段落【0044】)
⒞イベントデータ等の解析
運転終了後,データレコーダ10から抜き取ったメモリカード2
0を挙動解析装置30のカードリーダライタ31に挿入し,表示装
置32に解析処理のメニュー画面を表示させる。運転者がメニュー
画面を通じて特定の処理項目を選択した場合は,該当するサブルー
チンが自動起動し,メモリカード20から読み取った情報の分類処
理,統計処理,表示処理等が行われる。表示処理では,図7に示さ
れるような運転評価グラフを含んだ解析結果が表示装置32に表示
される。(段落【0045】)
このように,本実施形態の運行管理システム1では,初期情報や
条件パターンを運転者毎にメモリカード20に設定しておき,条件
パターンに適合するイベントが発生したときに,そのイベントに関
わる情報のみをそのメモリカード20に記録するようにしたので,
資源の有効活用を図りつつ,運転者毎の運転評価や操作傾向を解析
することが可能になる。
そのため,従来のように事故等が発生した場合のみならず,事故
等の発生の有無に関わらない利用形態,例えば安全運転のための技
術向上過程を確認したり,特徴的な挙動を確認して事故等の未然防
止を図ったりすることが可能になる。(段落【0046】)
b第3実施形態
次に,第3実施形態について説明する。
第3実施形態では,図8(a)に示されるように,挙動解析装置3
0において,移動体の特定の挙動に関わる情報を収集するためのデー
タ収集条件がメモリカード20に設定されるようにする。(段落【0
048】)
データ収集条件には,例えば,図8(b)に示されるように,1秒
間の間に変化する角速度が10°を越えた場合等が挙げられる。この
ような条件が満足された場合,特定挙動が発生したと判断され,発生
前後の所定時間(例えば,前後30秒)の測定データがメモリカード
20に記録される。(段落【0049】)
また,解析対象となる特定挙動の発生を判断するタイミングとして
は,
⒜停止状態から発進したとき
⒝交差点におけるカーブ走行発生時
⒞特定地点を通過したとき
⒟所定のしきい値以上の角速度,加速度,速度等が発生したとき
等が挙げられ,このタイミング前後の所定時間だけ測定データを収集
するように設定することができる。なお,固定された時間に限られず,
所定の条件を満足している時間だけ測定データを収集するように設定
しても良い。(段落【0050】)
次に,条件パターンの設定に関する手法をより詳細に説明する。第
3実施形態の条件パターンの形状や解析される危険度は,車両が運行
する環境,すなわち挙動環境によっても異なる。挙動環境には,車両
が運行する地方,地域,時間帯等が含まれる。(段落【0066】)
また,運転者の運転能力にも個人差があるため,解析結果の統計等
の挙動履歴があればこれを用いるようにしても良い。すなわち,運転
能力,事故歴によって数値や条件パターンを変更することにより,運
転者が同じような運転を行っても解析結果が異なることになる。(段
落【0068】)
また,収集条件と,前述した挙動環境や挙動履歴を組み合わせるこ
とにより各種応用が可能となる。例えば,高速道路を使用する長距離
トラックの運転手を対象運転者とし,アクセルやブレーキ動作を検証
したい場合には速度が70km/H以上で0.1G以上を収集条件と
して測定データを収集して解析するようにできる。また,対象運転者
を同様にして,数値は小さくとも急なハンドル操作を認識するために
角速度の微分値を収集するように収集条件として設定することにより,
居眠り運転防止のための対策を立てることができる。(段落【007
0】)
c変形例
次に,前述した各実施形態の変形例を説明する。
ここでは,収集条件に該当した挙動が発生した場合その発生から前
後30秒の測定データを収集するとともに,収集条件に該当しない場
合の1分間毎に統計データを収集し,収集された1分間の統計データ
の収集・解析例について説明する。前後30秒の測定データを収集す
る手法については種々の手法が考えられるが,最も簡単な手法として
は,少なくとも1分以上の測定データを記録できる容量をもつ不揮発
性メモリにエンドレスに測定データを記録し,イベントが発生したと
きに(角速度や加速度の急峻なデータを検出することで判る),その
後30秒経過後に測定データの記録を停止させることで実現が可能で
ある。(段落【0071】)
この変形例によれば,危険な挙動や,特定の挙動に関わる測定デー
タが収集され,解析されるだけではなく,運転者による移動体操作全
般にわたった測定データを収集して解析することができる。
なお,この変形例では,収集条件を満足しない場合に1分間毎に測
定データが記録されているがこれに限らない。収集条件を満足しない
場合に不規則に測定データを記録するようにしても良い。(段落【0
079】)
発明の効果
以上の説明から明らかなように,本発明によれば,移動体の操作傾向
を操作者毎に効率的に解析することができる。(段落【0085】)
イ甲3発明について
甲3には,おおむね次の記載がある(図面については,別紙2の甲3図
面目録を参照。)。
産業上の利用分野
この発明は,車輌を利用するドライバーの運転状態を管理するシステ
ムに係り,特に安全スピード及び粗雑運転を判別し,走行距離を用途
(時間帯)別に区分して把握することができる車輌運転管理システムに
関する。
従来の技術
ドライバーが乗用自動車やその他の車輌を運転する場合におけるスピ
ードの出し過ぎや急発進・急制動の有無ないしその回数,あるいは用途
別(私用,公用,通勤等)の走行距離の管理は,従来ドライバーの自覚
に任されており,客観的に評価することは困難であった。
特に使用する車輌が社有自動車あるいは社用供与自動車等の場合にお
いては,管理区分ないし責任を明確にする必要性が高く,信頼性のある
運転管理システムが望まれている。
発明が解決しようとする問題点
この発明は上記事情に鑑みて創案されたものであってその第1の課題
は,スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無ないしその回数を予め
設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公
用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシ
ステムを提供するにある。
この発明の第2の課題は上記課題に加えて,他のデータ処理装置から
入力されるデータと共に統合的にドライバーの運転管理データを得るシ
ステムを提供するにある。(2頁左下欄9行ないし右下欄17行)
問題点を解決するための手段
a上記第1の課題を解決するために,第1図の機能ブロック図で示す
ごとく,
⒜車輌に搭載されて車輌の走行速度を検出する検出部5を接続する
と共に時計機能6を有して管理データを演算処理する演算部20を
備えた運転データ記録装置2と,
該運転データ記録装置2の演算部20により得られた管理データ
を外部記憶体1に書込む書込部10A又はデータ通信を行うデータ
通信部10Bと,
管理者側に設けられて上記外部記憶体1又はデータ通信部10B
を介して入力されたデータを処理する管理データ処理装置3とから
なる車輌運転管理システムにして,
⒝検出部5から入力された車速データを基にその車速データが予
め設定されている基準値を超えているか否かを判定する安全スピ
ード判定手段13を設ける,
⒞上記検出部5から入力された車速データを基にスピード変化率
算出手段11で変化率を算出し,得られた変化率が予め設定され
ている基準値を超えているか否かを判定する粗雑運転判定手段1
2を設ける,
⒟上記車速データを基に走行距離算出手段14で走行距離を算出
し,得られた走行距離を時計機能6により所定の時間帯毎に区分
する用途別走行距離算出手段15を設ける,
⒠上記各判定結果を基に運転者毎の運転評価を行う運転評価手段
31を設ける,
という技術手段を講じている。
bまた,この第2の課題を達成するために第2図の機能ブロック図で
示すごとく,
⒜車輌に搭載されて車輌の走行速度を検出する検出部5を接続する
と共に時計機能6を有して管理データを演算処理する演算部20を
備えた運転データ記録装置2と,
該運転データ記録装置2の演算部20により得られた管理データ
を外部記憶体1に書込む書込部10Aと,
事業ないし販売地点に設定され上記外部記憶体1を介してデータ
処理可能なデータ処理装置4と,
管理者側に設けられて上記外部記憶体1を介して入力されたデー
タを処理する管理データ処理装置3とからなる車輌運転管理システ
ムにして,
⒝検出部5から入力された車速データを基にその車速データが予
め設定されている基準値を超えているか否かを判定する安全スピ
ード判定手段13を設ける,
⒞上記検出部5から入力された車速データを基にスピード変化率
算出手段11で変化率を算出し,得られた変化率が予め設定され
ている基準値を超えているか否かを判定する粗雑運転判定手段1
2を設ける,
⒟上記車速データを基に走行距離算出手段14で走行距離を算出
し,得られた走行距離を時計機能により所定の時間帯毎に区分す
る用途別走行距離算出手段15を設ける,
⒠上記各判定結果を基に運転者毎の運転評価を行う運転評価手段
31を設ける,
という技術手段を講じている。(2頁右下欄18行ないし3頁左下欄
18行)
作用
ここで運転データ記録装置2から管理データ処理装置3ヘデータを送
るには書込部10Aを介して外部記憶体1ヘデータをストアさせ(管理
データ処理装置3側でデータの読出しを行い)あるいはデータ通信部1
0Bを介してのデータ転送させること等により行うことができる。(3
頁右下欄16行ないし4頁左上欄1行)
実施例
以下に,この発明の車輌運転管理システムを社有自動車に適用し,外
部記憶体としてICカードを用いた好適実施例を第3図及び第4図に基
づいて説明する。
第3図は,車輌運転管理システムのハード構成を示す概略図であり,
車輌Vに搭載された運転データ記録装置2と,該運転データ記録装置2
により運転データが書込まれるICカード1と,事業ないし販売場所に
設置してあって該ICカード1の磁気ストライプの識別データ記憶部1
bから識別データを読取る磁気テープ読取式データ処理装置4と,管理
事務所等にある管理データ処理装置3とから構成されている。
また,前記ICカード1は,カードにCPUとICメモリが設けられ
た構成からなって,運転データを書込むための運転データ記憶部1aを
構成し,カードの外表面に取外けられた磁気ストライプが識別データを
記憶している識別データ記憶部1bとなる構成からなっている。
そして,識別データ記憶部lbには,本実施例の場合,オペレータの
識別コード(IDコード)が適宜書込手段によって予め書込まれている。
次に,運転データ記録装置2は,データ読取書込部2aを備えたマイ
クロコンピュータ構成からなっており,I/OポートとCPUと演算部
20とを有している。
この運転データ記録装置2には,車輌Vの駆動輪系ないし速度計に設
けられて所定のサンプリング間隔で車速を検出する検出部5がインター
フェースを介して接続されており,運転データ記録装置2に検出信号を
入力している。
該検出部5で検出されない運転データはマニュアル入力スイッチ2b
(本実施例では,入力データの種類を決定するロータリースイッチと,
その値を設定するデジタルスイッチとからなっている)により随時入力
することができる構成となっている。
また,運転データ記録装置2にはバッテリーバックアップされたクロ
ックジェネレータからなる時計機能6が設けられており,日時や時刻等
のクロック信号を演算部20に入力している。
次に,上記演算された運転データは,マニュアル入力スイッチ2bか
ら入力されたデータと共に運転データ記録装置2のデータ読取書込部1
0Aを介してICカード1の運転データ記憶部1aに書込まれる。
また,ドライバーが作業中に,例えばガソリンスタンドで給油する場
合には,給油所にある磁気テープ読取式データ処理装置41に上記IC
カード1の磁気ストライプからなる識別データ記憶部1bに記憶された
識別コードを読取らせ,給油量・料金等の処理データと一体化して記録
させる。この磁気テープ読取式データ処理装置4は,その他例えば,オ
ペレータの出勤状態のデータ管理を行うタイムレコーダ42や,高速道
路の使用料金の管理を行う料金記録装置43その他のデータ記録装置で
使用者(ドライバー)の識別を磁気カードに記録された識別データを読
み取って行う磁気テープ読取装置と一体化した構造のもの,いわゆる販
売時点情報管理システム(POS)のターミナルである。
このように,運転に関連してドライバーがICカード1を磁気カード
として用いて磁気テープ読取式データ処理装置4で処理したデータは,
ドライバーの識別コードに基づいて管理データ処理装置3で統合的にデ
ータ処理ないし記録される。(4頁左上欄7行ないし右下欄13行)
上記システムにおいて,運転データの管理は第4図で示す如き構成で
行われる。
即ち,検出部5から入力された車速データは,記録装置2の演算部2
0に入力される。
該演算部20では,車速データを安全スピード判定手段13に入力す
る。
この安全スピード判定手段13には,予め安全走行の励行として基準
スピードが設定されており,入力された車速データが上記基準スピード
を超えるか否かを判定する。
ここで,安全スピード判定手段13で判定する安全スピード基準値の
一例を示せば,例えば第1基準を時速80Km以上110Km未満,第
2基準を時速110Km以上に分けて判定する構成等である。
また,この車速データは,スピード変化率算出手段11に入力されて
一定時間における速度変化率が算出され,次いで粗雑運転判定手段12
でこの変化率が予め急速発進として設定されている基準変化率を超えて
いるか否か及び急制動として設定されている基準変化率を下回っている
か否かによって急速発進及び急制動が判定される。(5頁左上欄13行
ないし右上欄13行)
この運転評価手段31は,上記各データを基に運転評価を行うもので,
その一例を示せば,安全スピード運転評価手段33では,安全スピード
判定手段13で判定された基準スピード以上のスピードを出した回数を
カウントし所定係数との積をポイントとして算出する。
ここで,安全スピード基準値は第1基準を時速80Km以上110K
m未満とし,第2基準を時速110Km以上としており,安全スピード
運転評価手段31でそれぞれの基準値を超えた回数をカウントしその回
数とそれぞれの係数との積を算出する。
次に粗雑運転評価手段32では,粗雑運転判定手段12で判定された
急速発進及び急制動の回数がカウントされ,これに対応する所定係数と
の積をポイントとして算出する。(5頁右下欄1行ないし15行)
ここで,上記構成は運転データ記録装置2の演算部20と管理データ
処理装置3の演算部30とで行われるものであり,特にどちらの演算部
で処理されるかにつき本発明では限定されるものではないが,本実施例
では運転評価手段31以降が管理データ処理装置3の演算部30で処理
されている。(6頁左上欄15行ないし右上欄1行)
発明の効果
この発明は上記構成からなっているので,管理水準以上のスピード
で走行した事実(回数や距離)を記録し,また急速発進,急制動の事
実(回数)を記録することによって,客観的にドライバーの運転を把
握して,安全運転の励行や粗雑運転の防止を図ることができる。
また,用途別(時間帯別)の走行距離即ち使用実績の把握によって
私用/公用の使用区分の明確化を図ることができる。(6頁左下欄1
5行ないし右下欄4行)
ウ一致点及び相違点の認定誤りに対する判断
原告は,訂正発明1における「特定挙動」は,「移動体の操作傾向
を解析するためにその特徴が操作者毎に定められた挙動」であって,甲
3には,このような意味での「特定挙動」は記載されていないのである
から,「特定挙動」は一致点とはならない,相違点1における「特定挙
動」が「移動体の操作傾向を解析するためにその特徴が操作者毎に定め
られた挙動」であれば,甲1には,そのような特定挙動に関わる情報を
収集する条件を記録媒体に記録,設定することは記載されていないから,
本件審決が甲3発明に甲1発明を適用して,当業者は相違点1に係る構
成に容易に想到することができたと判断したことは,論理が破綻してい
るなどと主張する。
そこで検討するに,まず,本件基準明細書からすると,訂正発明1
における「特定挙動」は,本件訂正請求前(前訴判決時)には「所定の
収集条件を満足した移動体の挙動」(段落【0011】)を意味してい
たと解されるが,前記第2,2のとおり,本件訂正請求によって,
「特定挙動」とは「移動体の操作傾向を解析するためにその特徴が操作
者毎に定められた挙動」と規定されたものである。したがって,本件審
決がこれと異なる意味で「特定挙動」という用語を用いて一致点及び相
違点を認定したことは適切とはいえず,誤りというべきである。
しかしながら,上記誤りは,一致点及び相違点の認定において用いた
「特定挙動」との表現を,「一定の挙動」など別の表現に置き換えるべ
きであるというものであって,そのことが直ちに審決の結論を左右する
ような誤りではない。
そして,甲3発明はスピードの出し過ぎや急発進・急制動を判定して
車両を利用するドライバーの運転状態を管理する車両管理システムであ
るところ,本件審決は,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動」とい
った移動体の一定の挙動を,甲3発明における「特定挙動」(一定の挙
動という意味で用いている。以下,このような意味で用いる場合には
「特定挙動(一定の挙動)」という。)と評価して一致点を認定したも
のである。また,本件訂正請求前においては,訂正発明1と甲3発明と
の相違点として,相違点1が存在していたところ,本件訂正請求によっ
て特定挙動(一定の挙動)の意味が,上記のとおり限定されたものであ
って,このような意味の限定は,相違点1との関係でみれば,訂正請求
前に相違点1として挙げられていた「訂正発明1は,特定挙動(一定の
挙動)の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集
条件に適合する挙動の情報をカード状記録媒体に記録するものであり,
かつ,該収集条件が該カード状記録媒体に設定されているのに対して,
甲3発明は,そのようなものでない点。」の「収集条件」のうちの一つ
が特定されたという意味に解することができる。そうすると,「特定挙
動」が上記のとおり規定されたことによって,従来からの相違点を維持
しつつ,明示的に特定された条件を個別の相違点である相違点2として
取り上げることもできるというべきである。
以上からすると,相違点2があることを前提として,「特定挙動(一
定の挙動)」という概念を用いて一致点及び相違点1を認定し,相違点
1及び同2のそれぞれについて容易想到性を判断した本件審決の認定,
判断に誤りはないというべきである。
したがって,原告の一致点及び相違点の認定誤りの主張には理由が
ない。
相違点2の容易想到性の判断誤りについて
ア甲2発明について
甲2には,おおむね次の記載がある(図面については,別紙3の甲2図
面目録を参照。)。
特許請求の範囲
【請求項1】
少なくともひとつのデータ生成手段を有する自動車用イベント記録装
置であって,
前記データ生成手段はそれぞれ環境または自動車の操作パラメータを
探知して対応のデータ値を生成するものであり,⒜データを記憶するた
めの不揮発性のメモリ手段と,このメモリ手段からデータを伝送しメモ
リ手段へ格納するためにデータを受信する第1のインターフェース手段
とを含む,着脱自在なデータ格納カードと,⒝着脱自在に前記データ格
納カードを受け取るために自動車に搭載され,前記データ格納カードの
第1のインターフェース手段との間でデータの送受信を行うための第2
のインターフェース手段を有するインターフェースアダプタと,⒞前記
インターフェースアダプタと前記少なくともひとつのデータ生成手段と
に接続され,このデータ生成手段からデータ値を受信し,受信したデー
タ値をデータ格納カードに記憶するためにインターフェースアダプタを
介して送信するための制御手段と,
を有することを特徴とする自動車操作イベントの記録装置。
【請求項12】
請求項1,2,もしくは3に記載のイベント記録装置において,
前記不揮発性のメモリ手段は,バッテリーバックアップおよびリフレ
ッシュ回路付きのダイナミックRAMと,バッテリーバックアップ付き
のスタティックRAMと,フラッシュメモリと,電気的に変更可能のR
OM,の中のいずれかひとつを含むことを特徴とするイベント記録装置。
産業上の利用分野
本発明は自動車レーダシステムに関し,詳しくは自動車レーダシステ
ムにおける操作的なイベント(事象)を記録するための装置および方法
に関する。(段落【0001】)
発明が解決しようとする課題
自動車事故復元の分野では,事故分析者は,横滑り形跡の長さや車両
の大きさ,周囲の物体の損傷度,事故発生時の道路状況などを測定する
ことによって最も可能性の高い事故発生状態を決定する。この事故再現
方法は時として非常に費用がかかったり不正確であった。それゆえ,自
動車にも事故記録ブラックボックスとして機能するシステムを備えるこ
とが望まれている。そのようなシステムは,車両および事故発生以前の
周囲環境に関する情報を記録しているのが好ましく,記録された情報は,
事故につながる事象を再現するために使用するために事故後の読み出し
が可能であるべきである。事故後の測定データとは異なり,このシステ
ムは実際の経過通りのデータを使用することによってより正確に事故の
復元を行うことができる。(段落【0005】)
また,事故復元に有用なデータの記録以外にも,自動車機能,操作状
態,環境データなどの標準的なデータも記録できることが望ましく,ド
ライバーの好みに合わせた装置配置や,許可されない者の運転を防止す
る認可機能,あるいは自動車電子制御システムやレーダシステム用の全
システムソフトウェアをグレードアップするための適宜な手段を備える
ことも望まれる。(段落【0006】)
本発明は,上記の目的を満たし,かつ先行技術を越える利点を有する
システムを提供するものである(段落【0007】)。
課題を解決するための手段および作用
本発明の良好な実施例は特に自動車レーダシステムと組み合わせて使
用され,自動車機能,操作状態,環境などに関する選択可能の情報を記
録する,着脱自在かつ外部読み出し可能の不揮発性固体メモリのイベン
ト記録装置(ERA:データ格納カード)を提供する。このERA(イ
ベント記録装置)は特に,事故分析に有効な情報を記録することができ
る。(段落【0008】)
実施例
本発明のERA(イベント記録装置)をレーダシステムと関連して使
用することによって,そのレーダで検出された通行路中の障害物に関す
る重要なデータを記録することが可能となる。この種の情報は事故再現
時において特に有用なものである。(段落【0013】)
図2は,本発明の実施例のERAシステムのより詳細なブロック図で
ある。RAMカード20は,インターフェースレセプタクル21を介し
てマイクロコントローラ22に接続される。(段落【0018】)
RAMカード20は,ひとつもしくは複数の不揮発性のメモリデバイ
スと,適切な制御/インターフェース回路構成とを含む。RAMカード
20は,例えばバッテリーバックアップおよびリフレッシュ回路付きの
ダイナミックRAM,バッテリーバックアップ付きのスタティックRA
M,フラッシュメモリデバイス,電気的に変更可能なROM,あるいは
当業者にとって周知のその他の固体不揮発性メモリを有する。(段落
【0022】)
操作時にRAMカード20がRAMカードレセプタクル21に挿入さ
れる。実施例では,選択されるデータは,通常は自動車が発進した後に
マイクロコントローラ22によって自動車センサ4aや信号処理モジュ
ール3から収集される。それらデータはマイクロコントローラ22によ
って周期的な間隔でRAMカード20に記憶されるが,時間や走行距離
からも検出され得る。(段落【0030】)
RAMカード20に収集されたデータを読み出すためには,RAMカ
ード20が自動車システムのインターフェースレセプタクルから取り外
され,パーソナルコンピュータに接続された同様のインターフェースに
挿入される。こうしてデータはコンピュータ上に表示され,あるいはフ
ロッピーディスクやコンピュータのハードドライブなど別のメモリデバ
イスに記憶される。(段落【0039】)
データがRAMカード20から読み出されたら,その情報がイベント
記録情報か,走行モニタ情報か,メンテナンス情報か,あるいはその他
の情報であるかにしたがって,多様な表形態でコンピュータに表示され
る。データの表示方法は設計事項に含まれる。(段落【0042】)
RAMカード20は取り外し可能であり,比較的安価であるので,量
販車やバスなどの特定乗物の各ドライバーは個人用のRAMカード20
を所有することができる。このように,本発明のイベント記録装置は,
特定のドライバーによる平均運転速度,ブレーキ/アクセル傾向,前方
間隔(レーダシステムによって検出される同車線のすぐ前の車までの距
離)等の指標を含む操作をモニタするのに用いられる。(段落【004
3】)
本発明のこの態様はまた,自動車の操作指標をドライバーの意向に合
わせて「特別化」あるいは「個人化」するのにも用いられる。例えば,
量販車あるいはバスなどのドライバーはRAMカード20を用いて,所
望の前方間隔,警告しきい値,自動車の電子制御システムを介してセッ
トされるその他のパラメータに関する各自の意向を車両に組み込むこと
ができる。(段落【0047】)
発明の効果
以上のように,本発明のイベント記録装置は,偶発事故などが記録を
停止するまでデータの記録を行い,事故後にRAMカード20を取り外
して,その事故に至るまでの事象をマッチインターフェースつきの標準
パーソナルコンピュータを使用して再生することが可能となる。このよ
うに本発明は,様々な標準自動車機能,操作状態,環境データと同様に,
事故復元においても非常に有効である。また,本発明のイベント記録装
置はドライバーの特定の好みに応じて配置可能であり,許可されない者
の運転を禁じる認可機能を随意に供えることもでき,さらに,自動車電
子制御システムあるいはレーダシステムのために全システムソフトウェ
アをグレードアップするための適切な手段を設けることもできる。(段
落【0052】)
イ相違点2の容易想到性の判断誤りに対する判断
まず,前記のとおり,甲3発明は,スピードの出し過ぎや急発
進・急制動を判定し,そのデータ(傾向を含むと考えられる。)を客観
的に把握するものであるところ,「スピードの出し過ぎや急発進・急制
動」が「特定挙動(一定の挙動)」に相当することからすると,甲3発
明の「特定挙動(一定の挙動)」は,移動体の操作傾向を解析するため
に設定されると認められる。また,甲3発明において車両に搭載される
運転データ記録装置は,検出部から入力された車速データについて,ス
ピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無ないしその回数を予め設定さ
れた基準値を基に自動判定する構成をとり得るものである。そして,こ
の基準値(パラメータ)は,適宜設定し,変更され得るものであること
からすると,当業者であれば,上記運転データ記録装置に,適宜,その
基準値を設定,変更するための手段を設けるものと認められる。
次に,甲2発明についてみると,前記のとおり,甲2には,「本
発明のこの態様はまた,自動車の操作指標をドライバーの意向に合わせ
て「特別化」あるいは「個人化」するのにも用いられる。例えば,量販
車あるいはバスなどのドライバーはRAMカード20を用いて,所望の
前方間隔,警告しきい値,自動車の電子制御システムを介してセットさ
れるその他のパラメータに関する各自の意向を車両に組み込むことがで
きる。」(段落【0047】)との記載があり,これは,「パラメー
タ」の変更を外部記録媒体(RAMカード20)を用いて行うこと,及
び「パラメータ」に関する各自の意向を車両に組み込むこと,すなわち,
「パラメータ」をドライバー(操作者)毎に設定して「個人化」に対応
することを予定していると認められる。
ここで,甲2発明は,外部媒体を用いて車両の挙動に関する情報を収
集,記録する装置に関するもので,甲3発明と技術分野が共通する。そ
うすると,甲3発明及び甲2発明に接した当業者であれば,甲2発明を
甲3発明に適用して,外部記録媒体を用いて基準値(パラメータ)を設
定,変更するようにする動機付けがあるというべきである。そして,そ
の際,パラメータをドライバー(操作者)毎に設定して「個人化」に対
応することも容易想到であると認められる。
以上からすると,甲3発明に甲2発明を適用して,相違点2に係る訂
正発明1の構成のように,特定挙動(一定の挙動)について,移動体の
操作傾向を解析するためにその挙動の特徴が操作者毎に定められた挙動
とすることは,当業者が容易に想到することができると判断した本件審
決の判断に誤りはない。
原告の主張について
a原告は,仮に甲3発明において,各種パラメータが運転能力などの
ドライバー個人の事情を考慮して個別に定められると解すると,同じ
スピード等であっても,管理データ処理装置において,あるドライバ
ーの運転は粗雑運転と判定され,他のドライバーの運転が粗雑運転と
判定されない場合があることになり,スピードの出し過ぎかどうかを
ドライバーの自覚に任せた場合と変わらなくなり,管理者側で各ドラ
イバーの運転状態を客観的に評価することができなくなって,甲3発
明が解決しようとする課題を解決できなくなることから,甲3発明に
ついては甲2発明を適用する阻害要因がある旨主張する。
しかしながら,前記の記載によれば,甲3発明は,
ドライバーが乗用自動車等を運転する場合におけるスピードの出し過
ぎや急発進・急制動の有無ないしその回数,あるいは用途別(私用,
公用,通勤等)の走行距離の管理は,従来ドライバーの自覚に任され
ており,客観的に評価することは困難であったこと,特に使用する車
両が社有自動車等の場合において,管理区分ないし責任を明確にする
必要性が高いことなどから,信頼性のある運転管理システムが必要で
あるという問題意識の下,「ドライバーの運転管理データを得るシス
テム」を提供するものであると認められ,甲3発明が提供するシステ
ムが,各人の年齢,経験あるいは技量といった個人的要素を常に排除
して,各ドライバーの運転状況を画一的な基準で評価するシステムに
限定する趣旨であると解することはできない。
そうすると,各パラメータをドライバーの個人事情を考慮して個別
に定めたとしても,ドライバー毎のパラメータの内容が明確になって
いれば,当該ドライバーの運転状況をデータから客観的に管理できる
のであって,同じスピード等の場合に,あるドライバーの運転は粗雑
運転と判定され,他のドライバーの運転が粗雑運転と判定されない場
合があるからといって,スピードの出し過ぎかどうかをドライバーの
自覚に任せた場合と変わらなくなるわけではなく,甲3発明が解決し
ようとする課題を解決できなくなるわけではない。
したがって,甲3発明については甲2発明を適用する阻害要因があ
るとの原告の主張は理由がない。
bまた,原告は,甲3発明と甲2発明では技術的課題が異なることか
ら,甲3発明に甲2発明を適用することはできない旨主張する。
しかしながら,前記で判示したとおり,甲3発明に甲2発明を適
用する動機付けがあると認められるから,原告の主張は理由がない。
cなお,その他,原告はるる主張するが,相違点2に関する容易想到
性に関する判断は前で判示したとおりであって,原告の主張は,
いずれも採用することはできない。
相違点3の容易想到性の判断誤りに対する判断
原告は,甲2発明及び甲3発明のいずれも,運転能力などのドライバー
(運転者)の事情を考慮したパラメータにより運行データを収集・記録し,
その運行データを用いて運転者に固有となる操作傾向を解析することを技術
的課題とするものでないことから,甲3発明に甲2発明を適用することはで
きない旨主張する。
しかしながら,甲2には,「各ドライバーは個人用のRAMカード20を
所有することができる。」(段落【0043】)との記載があり,甲2発明
は,RAMカードをドライバー個人用のものとすることを予定しているとい
える。そして,前記イで判示したとおり,甲3発明に甲2発明を適用する
動機付けがあることを考慮すれば,甲3発明に甲2発明を適用して,相違点
3に係る訂正発明1の構成のように,挙動に関わる情報を記録媒体に記録す
る手段が,移動体の操作者用の記録媒体に記録するものであるとすることは,
当業者が容易に想到することができたものと認められる。
よって,甲3発明に甲2発明を適用して,相違点3に係る訂正発明1の構
成のようにすることは,当業者が容易に想到することができると判断した本
件審決の判断に誤りはない。
なお,原告は,訂正発明1における「前記移動体の操作者用の(カード
状)記録媒体」には,「移動体の操作傾向を解析するためにその特徴が操作
者毎に定められた挙動」に関わる情報を収集するための「収集条件」が設定
され,かつ,「収集条件」に適合する挙動に関わる情報が記録されることに
なるところ,甲2発明において使用する個人用のRAMカードに設定される
パラメータが上記の「収集条件」に対応し,かつ,その「収集条件」に適合
する挙動に関わる情報がそのRAMカードに記録されることを示唆する記載
は,甲2には見当たらないなどと主張するが,これらの事情は前記認定判断
を左右するものではない。
したがって,原告の主張は理由がない。
2取消事由2(甲3発明に基づく訂正発明2の容易想到性の判断誤り)につい

一致点及び相違点の認定誤りについて
原告は,訂正発明2における「特定挙動」は,「移動体の操作傾向を解析
するためにその特徴が操作者毎に定められた挙動」であって,甲3には,こ
のような意味での「特定挙動」は記載されていないのであるから,「特定挙
動」は一致点とはならないなどと主張する。
しかしながら,と同様の理由から,本件審決が
一致点及び相違点4及び同5において,本件訂正請求によって規定された意
味と異なる意味で「特定挙動」という用語を用いたことは適切ではないが,
相違点5があることを前提として「特定挙動(一定の挙動)」という概念を
用いて一致点及び相違点4を認定し,相違点4及び同5のそれぞれについて
容易想到性を判断した本件審決の認定,判断に誤りはないというべきである。
したがって,原告の一致点及び相違点の認定誤りの主張には理由がない。
相違点5及び同6の容易想到性の判断誤りについて
また,原告は,本件審決の相違点2及び同3の判断が誤りであることを前
提として,相違点2及び同3と実質的に同一の相違点である相違点5及び同
6について,甲3発明に甲2発明を適用して相違点5及び同6に係る訂正発
で判示
したとおり,本件審決には相違点2及び同3の容易想到性の判断誤りはない
から,原告の主張は前提を欠き,その余の点について判断するまでもなく理
由がない。
3以上によれば,本件発明については,甲3発明,甲1発明,甲2発明及び周
知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであって,本件
審決の認定判断に誤りはない。
第5結論
以上の次第であるから,本件審決の結論は相当であって,原告の請求は理由
がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官富田善範
裁判官大鷹一郎
裁判官平田晃史
(別紙1)
本件明細書図面目録
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
(別紙2)
甲3図面目録
(別紙3)
甲2図面目録
【図2】

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