弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

判決言渡平成21年2月26日
平成20年(行ケ)第10319号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成21年2月19日
判決
原告株式会社HDT
原告X
両名訴訟代理人弁護士稲元富保
被告特許庁長官
指定代理人小牧修
同服部秀男
同岩崎伸二
同酒井福造
主文
1原告らの請求を棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2005−6854号事件について平成20年7月14日にし
た審決を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,株式会社ヒューネット(訴外会社)及び原告Xが,発明の名称を
「ネマティック液晶の高速化駆動方法」とする後記特許の出願をし,平成17
年1月20日付けで手続補正をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不
服として審判請求をしたが,その後訴外会社から会社分割の方法により出願人
たる地位を承継した原告株式会社HDT(旧商号株式会社ヒューネット・デ
ィスプレイテクノロジー)と原告Xが,特許庁から請求不成立の審決を受けた
ことから,その取消しを求めた事案である。
2争点は,上記補正後の請求項1(本願発明)が下記刊行物に記載された発明
と同一であるか(特許法29条1項3号),である。

・特表平8−500915号公報(発明の名称「マトリックス表示システム
および,このようなシステムの動作方法」,出願人フィリップスエレクト
ロニクスネムローゼフェンノートシャップ,公表日平成8年1月30
日。甲1。以下「引用例」といい,そこに記載された発明を「引用発
明」という。)
第3当事者の主張
1請求の原因
(1)特許庁における手続の経緯
訴外会社及び原告Xは,平成8年8月6日に出願した特許出願(原々々出
願,特願平8−221827号)から分割し平成14年7月25日にした特
許出願(原々出願,特願2002−217332号)からさらに分割して平
成16年5月24日にした特許出願(原出願,特願2004−153424
号)からの分割出願として,平成16年8月24日に,名称を「ネマティッ
ク液晶の高速化駆動方法」とする発明について特許出願(特願2004−2
43984号,請求項の数1。甲2,以下「本願」という。公開特許公報は
特開2005−10803号)をし,その後平成17年1月20日付けで補
正(以下「本件補正」という。甲3)をしたが,拒絶査定を受けたので,平
成17年4月15日付けで不服の審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2005−6854号事件として審理し,その
間,訴外会社から原告株式会社HDT(当時の商号は「株式会社ヒューネッ
ト・ディスプレイテクノロジー」,後に平成19年4月9日付けで現商号へ
変更)が会社分割の方法により出願人たる地位を承継し,平成18年10月
30日付けで特許庁へその旨の届出をした(甲4)が,特許庁は,平成20
年7月14日,「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をし,その謄
本は平成20年7月29日原告らに送達された。
(2)発明の内容
本件補正後の請求項1の内容は,次のとおりである(以下「本願発明」と
いう。)。
「【請求項1】
ネマティック液晶に印加する電圧を,画像データに応じた第1の電圧と,
前記画像データと関係のない一定の期間継続する一定の第2の電圧に所定の
期間内で変化させるステップと,
前記ネマティック液晶に前記第1の電圧を印加して前記ネマティック液晶
の光透過率を前記画像データに応じた値とし,前記ネマティック液晶に前記
第2の電圧を印加して前記画像データに応じた値に変化した前記光透過率を
変化前の元の値に前記所定の期間内で戻すステップとを含むことを特徴とす
るネマティック液晶の高速化駆動方法。」
(3)審決の内容
ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願
発明は前記引用例に記載された発明と同一であるから特許法29条1項3
号により特許を受けることができない,というものである。
イなお,審決が認定する引用発明の内容は,次のとおりである。
「少なくとも実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに駆動可
能な画素の行および列の配列を有するアクティブマトリックスアドレス液
晶表示パネルと,前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの
一方の側に配置されて前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネ
ルを照明することにより前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パ
ネルの他方の側に可視表示出力を生成するための光源と,駆動手段であっ
てこれに供給される所定のフィールドおよびライン速度を有するTV信号
に従って前記画素を駆動することができる当該駆動手段とを具えるマトリ
ックス表示システムの動作方法において,
前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルは,時間軸で行毎
に駆動されて完全な表示画像を構成するものであり,1行が一度にアドレ
スされると,アドレスされた行の全ての画素が,TV信号の表示フィール
ドの表示情報の電圧レベルに従って充電され,画素に供給された電荷が,
画素が再びアドレスされるまで蓄積されるようにするものであって,画素
の一部を形成する各々の透明画素電極と行および列アドレス導線とを支え
る透明プレートと,この透明プレートと平行に,且つ分離して,パネルの
全ての画素に共通の電極を構成する透明導電層がその上に形成された他の
透明プレートと,この2枚の透明プレートの間に配置されたツイストネマ
ティック液晶材料と,向かい合った透明プレートに設けられた偏光層とを
備えており,
前記ツイストネマティック液晶材料が,画素を通過した光を,その両端
間に印加された電圧に従って変調させることにより,各画素は,パネルを
通過した光を,その各々の画素の両端間に印加された電圧に従って変化さ
せ,ほとんど透過しない,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,すなわ
ち白のレベルまで変動する,複数の透過レベルを形成し,
順次の表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されており,前記
配列の画素が,前記順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔におい
て,ほぼ非透過表示状態に駆動され,
前記供給されたTV信号の表示フィールドの表示情報が,TV信号フィ
ールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で前記アクティブマト
リックスアドレス液晶表示パネルに書き込まれるのに続いて,選択信号が
行駆動回路によって各行アドレス導線に順番に再び供給されることによ
り,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に前記画素の配
列が再びアドレスされ,この期間が続いている間,画素がほぼ非透過(黒
い)状態に駆動されるように選択される予め定めた基準電圧Vが列アドB
レス導線の各々に印加され,
表示情報アドレス期間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動するこ
とは,必要な休止期間をもたらし,それだけで十分であって,前記光源
が,パネルを連続して照明するように用意されており,
前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,
ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されるマトリックス表示システムの
動作方法。」
(4)審決の取消事由
しかしながら,審決には,以下のとおり誤りがあるから,違法なものとし
て取り消されるべきである。
ア本願発明は,「…前記ネマティック液晶に前記第1の電圧を印加して前
記ネマティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とし,前記ネ
マティック液晶に前記第2の電圧を印加して前記画像データに応じた値に
変化した前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内で戻す」こと
を構成要件とするものであるから,本願発明は,所定の期間内において,
画像データに応じた第1の電圧の印加を開始したタイミングにおける透過
率が,画像データに応じた第1電圧の印加によって変化した後,第2の電
圧を印加することで,再度画像データに応じた第1の電圧の印加を開始し
たタイミングにおける透過率に戻ることを構成要件としている。
一方,引用発明は,審決が認定するとおり,「前記供給されたTV信号
の表示フィールドの表示情報が,TV信号フィールド周期の半分から成る
表示情報アドレス期間内で…液晶表示パネルに書き込まれるのに続いて,
…TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に…画素がほぼ非
B透過(黒い)状態に駆動されるように選択される予め定めた基準電圧V
が列アドレス導線の各々に印加され」(12頁下7行∼13頁1行)るも
のである。
そうすると,本願発明と引用発明とを対比する上では,引用発明が,1
TV信号フィールド周期(所定の期間)において,画像データに応じた電
圧の印加を開始したタイミングにおける透過率(元の透過率)が,画像デ
ータに応じた電圧の印加で変化し,基準電圧Vが印加されることで画像B
データに応じた電圧の印加を開始したタイミングにおける元の透過率に戻
るものと認められるか否かを検討する必要がある。
イネマティック液晶においては,本願明細書(甲2,【0012】)及び
本願の【図1】(甲2)並びに引用例(甲1,7頁8行∼13行)にも記
載されているように,画像データに応じた電圧を液晶(画素)に印加した
とき,液晶の光透過率は,画像データに応じて変化することになるが,電
圧を印加した後,当該印加電圧に応じた透過率になるまでには所要の時間
を要し,印加電圧の変化に対する透過率の変化には遅れ(応答遅れ)があ
る。
したがって,引用発明において,1TV信号フィールド周期の残りの半
分からなる期間が続いている間,画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動さ
れるように基準電圧Vが印加されることと,当該画素の透過率が画像デB
ータに応じた電圧の印加開始タイミングにおける透過率(元の透過率)に
戻ることとの間には一義的な関係は存在しない。引用発明においては,単
に,画像データに応じた電圧が印加された後,画素がほぼ非透過(黒い)
状態に駆動されるように基準電圧Vが印加される,ということだけで,B
「透過率が所定の期間(1TV信号フィールド周期)内で戻る」とまで認
定することはできない。
仮に,「予め定めた基準電圧Vを印加する期間」が画像データに応じB
た電圧の印加で変化した光透過率を「元に戻すようにする期間」であると
認定できるとしても,予め定めた基準電圧Vを印加することで透過率がB
元に戻るか否かは応答速度を当然に考慮しなければならない以上,「所定
の期間内で元に戻す」とまでは認められない。
ウ引用例においては,画像データに応じた電圧を印加する期間は1TV信
号フィールド期間の半分であり,画素に印加された画像データに応じた電
圧による電荷は,予め定めた基準電圧Vを印加するタイミング(画素がB
再びアドレスされるタイミング)まで蓄積された状態にあるので,画素の
透過率が基準電圧Vに応じて変化を開始するタイミングは,再びアドレB
スされる期間であることになる。
したがって,引用発明において,画像が変化することで画像データに応
じた電圧も変化するので,このような変化する画像データに応じた電圧を
1TV信号フィールド期間の半分で印加し,その後,基準電圧Vを印加B
した場合の透過率の変化は,透過率変化の応答性を一定とすれば,例えば
下記の【参考図1】に示すようになる。
【参考図1】
ここでは,画像が変化することで,画像データに応じた電圧がV1(光
透過率50%に対応するもの),V2(光透過率90%に対応するもの)
等と変化する場合を例にしている。この参考図からも分かるように,引用
B発明においては,液晶の応答性を一定とすると,透過率は,基準電圧V
を印加しても,1TV信号フィールド周期(所定の周期)の終わりで様々
な値になるのであって,引用発明が「ほぼ非透過(黒い)状態に駆動」さ
れているとしても,画像データに応じた電圧の印加開始タイミングの透過
率に「所定の期間内で元に戻す」,すなわち所定の期間内で毎回同じ透過
率に戻すことにはならない。
エ引用例(甲1)には,①「表示パネルの第1および第2アドレス期間
(図4におけるfおよびf´の各々)の相対的な持続時間も,ある程度変
化させることができる。…例えばおのおのがTVフィールド周期の1/3
及び2/3,またはその逆となるように異ならせることができる。」(2
3頁8行∼13行),②「さらに,画素の非透過状態への駆動は,間隔の
開始時に始める必要はない。代わりに,図4に示すようなより短い予め定
めた遅延時間を,画素をこの必要な状態に設定する前に,時間間隔の開始
時に挿入してもよい。…この遅延時間dの終了時は,図4中に破線で示さ
れるように,照明期間の終了時と一致させて選んでもよい。画素をこの間
隔の残りの部分内でこの状態にするには,より速い走査速度を必要とす
る。」(23頁20行∼27行)と記載されている。
このように,引用発明では,基準電圧Vを印加する期間を短くするこB
とも,長くすることもできると認識している。基準電圧Vを印加する期B
間を短くすれば,液晶の応答性上,予め定めた基準電圧Vを印加してもB
透過率が戻る可能性が少なくなるにもかかわらず,そのような選択は任意
であるとしている。しかも,上記②には「画素をこの間隔の残りの部分内
でこの状態にするには,より速い走査速度を必要とする」と記載されてい
て,遅延時間を挿入する場合には,走査速度を速く,すなわち周期を短く
していることからすれば,なおさら,予め定めた基準電圧Vを印加してB
も透過率が元の透過率(当該1TV信号フィールド周期における画像デー
タに応じた電圧の印加開始タイミングの透過率)に戻る可能性が少なくな
る。
オ以上のとおり,引用例には,ほぼ非透過(黒い)状態に駆動するように
する基準電圧Vを印加することについては記載されているものの,当該B
基準電圧Vを印加することで,1TV信号フィールド周期内で,画像デB
ータに応じた電圧の印加開始タイミング時の透過率(元の透過率)に戻る
ことについては記載されていないし,画像データに応じた電圧の印加開始
タイミングの透過率と予め定めた基準電圧Vの印加期間との関係についB
ても何ら記載も示唆もされていない。
カしたがって,引用発明には,本願発明の特徴的要件である「前記ネマテ
ィック液晶に前記第1の電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率
を前記画像データに応じた値とし,前記ネマティック液晶に前記第2の電
圧を印加して前記画像データに応じた値に変化した前記光透過率を変化前
の元の値に前記所定の期間内で戻す」という技術的思想が存しない。
審決が,本願発明と引用発明とは,「前記ネマティック液晶に前記第1
の電圧を印加し,前記ネマティック液晶に前記第2の電圧を印加して,前
記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内で戻す」との事項を備え
ている点で一致する,と認定している点は誤っており,この誤った認定を
前提として引用発明と本願発明とは同一であると認定したのであるから,
このような認定は誤りである。
キなお,被告は,引用発明が「黒の透過レベルを形成する」ことから,
「光透過率を変化前の元の値にTV信号フィールド周期の期間内に戻す」
ものといえると主張している。
引用発明の技術的意義は,被告が主張するように,「順次の表示情報ア
ドレス期間の間の時間間隔において画素をほぼ非透過,すなわち黒に駆動
することによって,順次の表示フィールドの見る人への表示の間に『暗い
』期間すなわち休止期間を見る人に表示し,得られる表示出力が,CRT
ディスプレイから得られる出力に近似するようにして,見る人に知覚され
る動いている物の解像度が改善されるようにした」との点にあるところ,
CRTディスプレイの出力は電子線が蛍光体に当たって発光してから残光
特性により徐々に輝度が下がっていくこと,さらに1走査期間後の輝度レ
ベルが電子線の当たった瞬間の輝度に応じて変化することが周知事項であ
ることを考慮すると,「動いている物の解像度が改善される」ためには,
暗い期間の輝度レベルは各フィールド毎に異なっていても改善には十分で
あり,「暗い」期間すなわち休止期間の輝度は低いものの,画像データに
応じて変化し,各フィールド毎に常に一定のレベルとなるものではない。
一方,引用例(甲1)には,引用発明について,例えば,「少なくとも
実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに駆動可能な光変調用画
素の行および列のアレイと,前記表示パネルを照明して表示出力を生じる
手段と,駆動手段であってこれに供給される所定のフィールドおよびライ
ン速度を有するビデオ信号に従って前記画素を駆動することができる当該
駆動手段とを具えるマトリックス表示システムであって,前記駆動手段が
前記画素の行を順次駆動でき,前記供給されたビデオ信号の表示フィール
ドの表示情報が,ビデオ信号のフィールド周期よりかなり短い表示情報ア
ドレス期間中に前記表示パネル内に書き込まれ,順次の表示情報アドレス
期間がある時間間隔だけ分離されているマトリックス表示システムにおい
て,前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間
が,ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されるようにマトリックスシス
テムを動作できるようにしたことを特徴とする。」(特許請求の範囲請求
項1。請求項16も同旨),「請求項16に記載の方法において,前記照
明手段による前記表示パネルの照明を,前記時間間隔の少なくとも一部の
間に表示出力が生成されるように制御し,前記アドレス期間の少なくとも
一部の間に表示出力がほぼ生成されないように制御することを特徴とする
方法。」(特許請求の範囲請求項17)などと記載されている。したがっ
て,引用発明は,基本的に「ほぼ表示出力が生じない」期間としての「休
止期間」を設けることで,CRTディスプレイから得られる出力に近似さ
せようとするものであり,「ほぼ表示出力が生じない期間」における液晶
の透過率が1フレーム期間内で元の値に戻っていることまで要件としてい
るものではない。むしろ,引用発明は,「CRTディスプレイから得られ
る出力に近似するようにしている」ことからすれば,「所定の期間(1フ
レーム期間)内で毎回同じ透過率に戻す」のではなく,「所定の期間(1
フレーム期間)内で画像データに応じて透過率は変化し一定の値には戻ら
ない」ように,つまり「ほぼ表示出力を生じない」ように駆動している発
明であると認められる。
したがって,被告の上記主張は失当である。
被告は,原告らが示した【参考図1】に対して,【参考図2】,【参考
図3】において透過率が元の透過率に戻っている状態を示しているが,こ
れは,被告の主張を前提とするもので,液晶の応答遅れとの関係について
何ら記載されていない引用例を前提とするものではなく,失当である。
2請求原因に対する認否
請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,(4)は争う。
3被告の反論
(1)原告らは,引用発明においては,単に,画像データに応じた電圧が印加
Bされた後,画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動されるように基準電圧V
が印加される,ということだけで,「透過率が所定の期間(1TV信号フィ
ールド周期)内で戻る」,すなわち,「所定の期間内で元に戻す」とまでは
認定できないと主張するが,以下のとおり,失当である。
ア引用発明は,以下の構成を含むものといえる。
①マトリックス表示システムは,「少なくとも実質的に透過状態と少な
くともほぼ非透過状態とに駆動可能な画素の行および列の配列を有する
アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネル」と,「駆動手段であ
ってこれに供給される所定のフィールドおよびライン速度を有するTV
信号に従って前記画素を駆動することができる当該駆動手段」とを備え
る。
②前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルは,1行が一度
にアドレスされると,アドレスされた行の全ての画素が,TV信号の表
示フィールドの表示情報の電圧レベルに従って充電され,画素に供給さ
れた電荷が,画素が再びアドレスされるまで蓄積されるようにする。
③前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルが備えるツイス
トネマティック液晶材料が,画素を通過した光を,その両端間に印加さ
れた電圧に従って変調させることにより,各画素は,パネルを通過した
光を,その各々の画素の両端間に印加された電圧に従って変化させ,ほ
とんど透過しない,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,すなわち白
のレベルまで変動する,複数の透過レベルを形成する。
④順次の表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されており,前
記配列の画素が,前記順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔にお
いて,ほぼ非透過表示状態に駆動される。
具体的には,前記供給されたTV信号の表示フィールドの表示情報
が,TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で
前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルに書き込まれるの
に続いて,選択信号が行駆動回路によって各行アドレス導線に順番に再
び供給されることにより,TV信号フィールド周期の残りの半分から成
る期間内に前記画素の配列が再びアドレスされ,この期間が続いている
間,画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動されるように選択される予め
定めた基準電圧Vが列アドレス導線の各々に印加される。B
⑤表示情報アドレス期間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動する
ことは,必要な休止期間をもたらし,それだけで十分であって,前記光
源が,パネルを連続して照明するように用意されている。
⑥前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間
が,ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離される。
イまた,引用発明の技術的意義に関し,以下のことがいえる。
①例えばLCディスプレイやCRTのような,動いている像のデータを
伝達するのに有効な種々の表示技術において,動いている像の時間の次
元は量子化されているので,連続する運動は存在せず,種々の時点にお
ける動いている物の空間上の位置を与える像の連続が得られる。時間内
に変化した順次の像の表示によって生じる種々の形式の見かけの運動の
うち,いわゆるベータ運動(Betamovement)すなわちみかけの空間的運
動が,表示像中で知覚されるボケに関する最も適切なものである。特に
順次の表示間の休止期間の持続時間が,運動を知覚する上で重要なパラ
メータである。
②CRTディスプレイにおいては,明確な休止期間が順次の刺激の間に
存在し,目の刺激は休止期間の間には存在せず,目は順次の提示の間の
休止期間内に,物の新たな予想される位置に移動することができるた
め,動きは大変効果的に知覚される。対照的に,従来のように駆動され
るアクティブマトリックスアドレスLCディスプレイパネルの画素は,
画像情報を,完全な(フィールド)周期の間,次にアドレスされるまで
保持し,表示する。したがって,画像情報の順次の表示の間に,休止期
間がほとんど存在せず,画素が再アドレスされるときに,動いている物
の空間上の位置における突然の変化が生じるが,見る人の目は,動いて
いる物の新たな空間上の位置を提示される一方,古い位置に焦点が合っ
たままである。次に見る人の目は新たな位置に移動し,これが生じてい
る間,物はその間ずっと表示されている。これは,目が動きを追ってい
る間,網膜上の像の動きになる。この違いは,CRTディスプレイに比
較して従来のLCディスプレイに,速度に依存するボケが残る原因であ
ると考えられる。
③引用発明は,順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において画
素をほぼ非透過,すなわち黒に駆動することによって,順次の表示フィ
ールドの見る人への表示の間に「暗い」期間すなわち休止期間を見る人
に表示し,得られる表示出力が,CRTディスプレイから得られる出力
に近似するようにして,見る人に知覚される動いている物の解像度が改
善されるようにしたものである。
④すなわち,引用発明において,上記ア④ないし⑥の構成を採ることの
技術的意義は,上記③の点にあるものということができる。
ウ上記ア①ないし③によれば,引用発明は,TV信号の表示フィールドの
表示情報の電圧レベルに従って,各画素を,パネルを通過した光が,ほと
んど透過しない,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,すなわち白のレ
ベルまで変動する,複数の透過レベルを形成するように駆動するものとい
える。
加えて,上記イ③④のとおり,上記ア④ないし⑥の構成を採ることの技
術的意義が,順次の表示フィールドの見る人への表示の間に「暗い」期間
すなわち休止期間を見る人に表示し,得られる表示出力が,CRTディス
プレイから得られる出力に近似するようにした点にあることに照らせば,
上記ア④における,「前記配列の画素が,前記順次の表示情報アドレス期
間の間の時間間隔において,ほぼ非透過表示状態に駆動される。」,「T
V信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に前記画素の配列が再
びアドレスされ,この期間が続いている間,画素がほぼ非透過(黒い)状
態に駆動されるように選択される予め定めた基準電圧V」でいう,「画B
素が,…ほぼ非透過表示状態に駆動される」,「画素がほぼ非透過(黒
い)状態に駆動される」についても,画素が黒の透過レベルを形成するよ
うに駆動されることを意味するものであって,上記ア⑤⑥でいう,「画素
を黒い状態に駆動する」,「ほぼ表示出力が生じない」とは,画素が黒の
透過レベルを形成することを意味することは,明らかである。
審決が,「引用発明では,…『ほぼ表示出力が生じない』とは,…画素
が黒の透過レベルを形成していることを意味すると解することが相当であ
る。」(14頁14行∼24行)と説示したのは,上記の趣旨をいうもの
である。
エここで,上記ア⑤及び⑥のとおり,引用発明が,「表示情報アドレス期
間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動することは,必要な休止期間
をもたらし」,「前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる
順次の期間が,ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離される」,すなわ
ち,「表示情報アドレス期間の間の時間間隔中に画素が黒の透過レベルを
形成することは,必要な休止期間をもたらし」,「前記表示パネルの表示
フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,画素が黒の透過レベルを
形成する期間だけ分離される」ものであることを踏まえると,原告らが主
張するように,印加電圧の変化に対する透過率の変化に遅れ(応答遅れ)
があるとしても,引用発明において,画素が,表示情報アドレス期間の間
の時間間隔中に黒の透過レベルを形成することは,明らかである。
審決が,「引用発明では,…画素が『時間間隔』内で黒の透過レベルに
到達するものと認められる。」(14頁25行∼下6行)と説示したの
は,上記の趣旨をいうものである。
オTV信号の表示フィールドの表示情報は画素をある透過レベルを形成す
るように駆動するためのものであるから,上記ア④によれば,引用発明
は,画素の透過率を変化させるためのTV信号の表示フィールドの表示情
報が,TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で
前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルに書き込まれ,それ
に続いて,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に前記画
素の配列が再びアドレスされ,この期間が続いている間,画素がほぼ非透
過(黒い)状態に駆動されるものであって,順次の表示情報アドレス期間
がある時間間隔だけ分離されているものである。したがって,引用発明
は,「表示情報アドレス期間」と表示情報アドレス期間の間の「時間間
隔」が交互に存在するものである。そして,「変化前の透過率」とは,表
示情報アドレス期間の直前の「時間間隔」における透過率に当たるとこ
ろ,上記エのとおり,引用発明は,画素が,表示情報アドレス期間の間の
時間間隔中に黒の透過レベルを形成するものであるから,表示情報アドレ
ス期間の直前の「時間間隔」における透過率も「黒の透過レベルを形成す
る」ものであって,「光透過率を変化前の元の値にTV信号フィールド周
期の期間内に戻す」ものといえる。
ここで,「TV信号フィールド周期」は本願発明の「所定の期間」に相
当し,引用発明が,本願発明の「ネマティック液晶に印加する電圧を,画
像データに応じた第1の電圧と,前記画像データと関係のない一定の期間
継続する一定の第2の電圧に所定の期間内で変化させるステップ」を備え
ている(審決14頁10行∼13行)ことに照らせば,引用発明は,本願
発明でいう「前記ネマティック液晶に前記第1の電圧を印加し,前記ネマ
ティック液晶に前記第2の電圧を印加して,前記光透過率を変化前の元の
値に前記所定の期間内で戻す」との構成を備えているといえる。
したがって,審決が,「…本願発明と引用発明とは,『前記ネマティッ
ク液晶に前記第1の電圧を印加し,前記ネマティック液晶に前記第2の電
圧を印加して,前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内で戻す
』との事項を備えている点で一致するといえる。」(14頁下3行∼15
頁1行)と認定したことに,誤りはない。
そして,上記エのとおり,基準電圧Vを印加する際の液晶の透過率のB
応答遅れを考慮しても,引用発明において,画素が,表示情報アドレス期
間の間の時間間隔中に黒の透過レベルを形成することは,明らかであっ
て,上記認定を左右しない。
(2)原告らは,【参考図1】に基づいて,「引用発明において,画像が変化
することで画像データに応じた電圧も変化するので,このような変化する画
像データに応じた電圧を1TV信号フィールド期間の半分で印加し,その
後,基準電圧Vを印加した場合の透過率の変化は,透過率変化の応答性をB
一定とすれば,例えば参考図に示すようになる。」と主張するが,以下のと
おり,【参考図1】は引用発明に基づいた図ではないことが明らかであるか
ら,この【参考図1】に基づいた原告らの主張は失当である。
ア引用発明は「TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に前
記画素の配列が再びアドレスされ,この期間が続いている間,画素がほぼ
非透過(黒い)状態に駆動されるように選択される予め定めた基準電圧V
が列アドレス導線の各々に印加され,…前記表示パネルの表示フィールB
ドが見る人に与えられる順次の期間が,ほぼ表示出力が生じない期間だけ
分離される」ものであって,上記「ほぼ表示出力が生じない」とは,画素
が黒の透過レベルを形成していることを意味する(上記(1)ウ)のである
から,引用発明において,「供給されたTV信号の表示フィールドの表示
情報が,TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内
でアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルに書き込まれるのに続
いて,選択信号が行駆動回路によって各行アドレス導線に順番に再び供給
されることにより,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内
に前記画素の配列が再びアドレスされ,この期間が続いている間,画素が
ほぼ非透過(黒い)状態に駆動されるように選択される予め定めた基準電
圧Vが列アドレス導線の各々に印加され」た場合の透過率の変化は,概B
略下記【参考図2】のようになる。
ここでは,駆動手段に供給されたTV信号の表示フィールドのある画素
に対応する表示情報が「白,白,黒,白」と変化することで,その画素の
ネマティック液晶材料の両端間に印加された電圧が,「V2(「白のレベ
ル」の光透過率に対応するもの),V2,V(「黒のレベル」の光透過B
率に対応するもの),V2」と変化する場合の引用発明を例にしている。
イ審決が認定したとおり,引用発明は,順次の表示情報アドレス期間(【
参考図2】のf(A))の間の時間間隔(【参考図2】のf’)中に画素を
黒い状態に駆動するだけで十分必要な休止期間をもたらすものであるか
ら,上記【参考図2】からも分かるように,液晶の透過率の応答遅れを考
慮しても,基準電圧Vを印加すると,光透過率は,1TV信号フィールB
ド周期(所定の周期)の終わりで黒レベルの値になる。すなわち,引用発
明は,「ほぼ非透過(黒い)状態に駆動」し,画像データ(白,黒)に応
じた電圧(V2,V)の印加開始タイミングの透過率(「黒のレベル」B
の光透過率)に「所定の期間内で元に戻す」ものである。
ウなお,このことは,原告らが主張するように,画像が変化することで,
画像データに応じた電圧がV1(光透過率50%に対応するもの),V2
(光透過率90%に対応するもの)等と変化する場合であっても変わるこ
とはない。すなわち,【参考図2】において,V2よりも低い電圧であっ
て,光透過率50%に対応する電圧であるV1が印加されたときの光透過
率は,白と黒の間の値(以下「グレー」という。)になるが,時間間隔
(f’)において光透過率がグレーから黒に変化する速度(【参考図2】
においては傾き)は,白から黒に変化する速度と同程度であるから,白か
ら黒に変化するのに要する時間よりも短い時間でグレーから黒に変化する
ことになる(下記【参考図3】参照)。したがって,画像が変化すること
で,画像データに応じた電圧がV1,V2等と変化する場合であっても,
引用発明によれば,「ほぼ非透過(黒い)状態に駆動」し,画像データ
(白,グレー,黒)に応じた電圧(V2,V1,V)の印加開始タイミB
ングの透過率(「黒のレベル」の光透過率)に「所定の期間内で元に戻
す」ことになる。
エ以上のとおり,原告らの【参考図1】を用いた主張は,引用発明が「前
記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,ほぼ
表示出力が生じない期間だけ分離される」ものであることを捨象するもの
であって,引用発明に基づくものでないから,失当である。
(3)原告らは,引用例(甲1)の記載に基づいて,「引用発明では,基準電
圧Vを印加する期間を短くすれば,液晶の応答性上,予め定めた基準電圧B
Vを印加しても透過率が戻る可能性が少なくなるにもかかわらず,そのよB
うな選択は任意であるとしており,しかも,引用例の記載からすれば,遅延
時間を挿入する場合には,走査速度を速く,即ち周期を短くするとしている
ことからすれば,なおさら,予め定めた基準電圧Vを印加しても透過率がB
元の透過率に戻る可能性が少なくなる」旨主張する。
しかし,審決が認定した引用発明において,基準電圧Vを印加する期間B
は,「TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内」で「画素の配
列が再びアドレスされ」てから「この期間が続いている間」であり,順次の
表示情報アドレス期間(f(A))の間の時間間隔(f’)中に画素を黒い状
態に駆動するだけで十分必要な休止期間をもたらことができるような,液晶
の応答性に見合った期間であることが明らかであるから,引用発明は,時間
間隔(f’)中に画素を黒い状態に駆動するだけでは十分必要な休止期間を
もたらすことができなくなるほど,基準電圧Vを印加する期間を短くするB
ものではない。
したがって,原告らのこの主張は,引用発明に基づかない主張であって,
失当である。
なお,原告らは「走査速度を速く」するとは,すなわち「周期を短く」す
ることであるとして主張するが,引用例(甲1)の23頁26行∼28行に
「画素をこの間隔の残りの部分内でこの状態にするには,より速い走査速度
を必要とする。これは行駆動回路をより高いクロック速度によって動作する
ことによって達成することができる。」と記載されているとおり,ここでい
う「速い走査速度」は,TV信号フィールド周期,表示情報アドレス期間
(f(A))となる周期,時間間隔(f’)となる周期などの周期を短くする
ことをいうのではなく,アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルに
おいて,1行を一度にアドレスし,時間軸で行毎に駆動して完全な表示画像
を構成するため,各行アドレス導線に順番に選択信号を供給する行駆動回路
による走査速度を,より高いクロック速度で行駆動回路を動作させることに
よって速くすることをいうものであるから,原告らの上記主張は引用例の記
載を誤解して主張するものである。
(4)原告らは,「画像データに応じた電圧の印加開始タイミングの透過率と
予め定めた基準電圧Vの印加期間との関係についても何ら記載も示唆もさB
Bれていない」旨主張しているが,上記のとおり,引用発明は,基準電圧V
が印加されることで,画素が,「時間間隔」内で黒の透過レベル(画像デー
タに応じた電圧の印加を開始したタイミングにおける元の透過率)に到達す
る(戻る)ものであることが明らかであるから,原告らのこの主張も失当で
ある。
(5)原告らは,「引用発明には,本願発明の特徴的要件である『前記ネマテ
ィック液晶に前記第1の電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率を
前記画像データに応じた値とし,…前記第2の電圧を印加して前記画像デー
タに応じた値に変化した前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内
で戻す』という技術的思想が存しない」旨主張する。
しかし,上記のとおり,本願発明と引用発明とは,「前記ネマティック液
晶に前記第1の電圧を印加し,前記ネマティック液晶に前記第2の電圧を印
加して,前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内で戻す」との事
項を備えている点で一致する,とした審決の認定に誤りはなく,かつ,引用
発明は,第1の電圧を印加することによりネマティック液晶の光透過率の値
は「画像データに応じた値」になるものであるから,引用発明は「前記ネマ
ティック液晶に前記第1の電圧を印加して前記ネマティック液晶の光透過率
を前記画像データに応じた値とし,…前記第2の電圧を印加して前記画像デ
ータに応じた値に変化した前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間
内で戻す」という技術的思想を有するものであることは明らかである。した
がって,原告らのこの主張も失当である。
第4当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審
決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。
2本願発明の意義について
(1)本願の本件補正後の特許請求の範囲「請求項1」は,前記第3,1(2)の
とおりである。
(2)本願明細書(特許願添付の明細書[甲2]を手続補正書[甲3]によっ
て補正したもの)には,次の記載がある。
ア技術分野
「本発明は液晶の高速化駆動方法,殊にネマティック液晶の高速化駆動
方法に関するものである。」(段落【0001】)
イ背景技術
「透明電極を有する2枚の透明な平板の間にネマティック液晶を挟ん
で,2枚の偏光板の間に置くと,前記2つの透明電極に印加する電圧に応
じて,前記2枚の偏光板を通る光の透過率が変化することが知られてい
る。」(段落【0002】)
「この原理を用いた液晶表示装置は,厚さが薄く,電力消費が少ないな
どの特徴を備え,腕時計や電子式卓上計算器をはじめとして広く使われて
いる。」(段落【0003】)
「また,近年ではカラーフィルタと組み合わせて,ノートパソコンや小
型の液晶テレビなどのカラー表示ディスプレイ装置に使われている。」
(段落【0004】)
「また,カラーフィルタと組み合わせて,カラー表示を可能とした液晶
表示装置においては,赤,緑,青の3色のドットを組み合わせてカラー表
示を行っているが,このカラーフィルタは非常に高価で,パネルに張り合
わせる作業も高い精度が要求される。」(段落【0005】)
「さらに,白黒の液晶表示パネルと同等の解像度を出すためには,3倍
のドット数が必要となるため,通常の液晶パネルでは,水平方向の駆動回
路の数が3倍となってしまい,コストがかかるとともに,パネルと駆動回
路の接続点数も3倍となるため,接続作業も困難になってしまう。」(段
落【0006】)
「従って,液晶パネルを使ってカラー表示をする方法として,カラーフ
ィルタを使う方式は,コスト的には高価になる要素が多く,安価に製造す
ることが困難であった。」(段落【0007】)
ウ発明の開示
(ア)発明が解決しようとする課題
「そこで,カラーフィルタを使用しないカラー液晶表示装置として,
例えば特開平1−179914号公報記載の様に,白黒液晶パネルと3
色バックライトを組み合わせてカラー表示を行う方法が提案されてお
り,カラーフィルタ方式に較べ,安価に高精細のカラー表示を実現出来
る可能性があるが,従来の液晶駆動方法では,液晶を高速に駆動するこ
とが困難で実用化に至っていない。」(段落【0008】)
「また,従来の液晶表示装置では,液晶の応答速度が遅いため,テレ
ビなどの動画再生をする場合や,パソコンなどのマウスカーソルを高速
で動かした場合などでは,ブラウン管を使用したディスプレイに較べ,
性能的に劣っていた。」(段落【0009】)
「本発明が解決しようとする課題は,駆動方法の変更により,従来か
ら用いられているTN型やSTN型のネマティック液晶の応答速度を速
め,前述の3色バックライトによるカラー化や,動画再生においてブラ
ウン管を使用したディスプレイと同等以上の性能を得ることを可能とす
ることであり,即ち,応答速度が速いネマティック液晶の高速化駆動方
法を提供するものである。」(段落【0010】)
(イ)課題を解決するための手段
「本発明は,上記課題を解決するため,ネマティック液晶に印加する
電圧を,画像データに応じた第1の電圧と,前記画像データと関係のな
い一定の期間継続する一定の第2の電圧に所定の期間内で変化させるス
テップと,前記ネマティック液晶に前記第1の電圧を印加して前記ネマ
ティック液晶の光透過率を前記画像データに応じた値とし,前記ネマテ
ィック液晶に前記第2の電圧を印加して前記画像データに応じた値に変
化した前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内で戻すステッ
プとを含むことを特徴とするネマティック液晶の高速化駆動方法を提供
する。
また,本発明は,上記課題を解決するため,コモン電極とセグメント
電極とに挟まれたネマティック液晶を2枚の偏光板の間に置いた液晶表
示装置において,前記コモン電極に選択パルスを印加する手段と,前記
選択パルスに応じて,表示すべき画像データに応じた電圧を前記セグメ
ント電極に印加する手段を備え,前記コモン電極の前記選択パルスが印
加されていない期間に,前記セグメント電極に,前記画像データに応じ
た電圧と異なる電圧を印加することを特徴とするネマティック液晶の高
速化駆動方法を提供する。
また,本発明は,上記課題を解決するため,コモン電極とセグメント
電極とに挟まれたネマティック液晶を2枚の偏光板の間に置いた液晶表
示装置において,前記コモン電極に選択パルスを印加する手段と,前記
選択パルスに応じて,表示すべき画像データに応じた電圧を前記セグメ
ント電極に印加する手段と,前記セグメント電極に前記画像データに関
係なく所定の電圧を印加する手段を備え,前記コモン電極に前記選択パ
ルスを印加する周期に合わせて,前記セグメント電極に印加する電圧を
切り替えることを特徴とするネマティック液晶の高速化駆動方法を提供
する。
すなわち,前記の課題を解決するためになされた本発明は,従来の液
晶の駆動回路と異なるタイミングで液晶に電圧を印加することにより,
液晶の応答速度を速めることを特徴とするものである。
前記液晶に印加される電圧の極性が,前記コモン電極に前記選択パル
スを印加した場合に反転する様に,前記コモン電極および前記セグメン
ト電極に印加する電圧を設定してもよい。」(甲3,段落【0011
】)
「通常のネマティック液晶の電気光学特性は図1の様になっており,
図1における印加電圧は極性に関係なく,実効値が問題となる。」(段
落【0012】)
「近年STN液晶パネルでTFT液晶パネル並の画質を実現する駆動
方法として,複数の走査線を同時に選択するアクティブ駆動法が提案さ
れている。」(段落【0013】)
「このアクティブ駆動方法は同時に複数の走査線を選択することによ
り,1フレーム期間中の走査線の選択回数を増やすことにより,コント
ラスト比と応答速度を改善しており,ネマティック液晶の光透過率が印
加電圧の実効値により決まるという特性を使うという点においては従来
の駆動方式と変わりはなかった。」(段落【0014】)
「従来,ネマティック液晶の応答速度は数十ミリセカンドから数百ミ
リセカンドかかっており,3色バックライトによるカラー化を実現でき
る応答速度を得ることは困難だと思われていた。」(段落【0015
】)
「本発明人は,3色バックライトによるカラー化を実現できる応答速
度を持つ液晶パネルを開発するために,ネマティック液晶の印加電圧波
形と光透過率の動的な特性の測定を行ったところ,印加電圧の波形によ
っては,印加電圧が変化した時に,光透過率が高速に変化する状態が存
在することがわかった。」(段落【0016】)
「この光透過率が高速に変化する状態を,繰り返し発生させることに
より,従来の駆動方法に較べて応答速度が遥かに速く,コントラスト比
のよい特性を得ることが可能となった。」(段落【0017】)
(ウ)発明の効果
「以上のように本発明においては,液晶パネルに画像を描きその画像
が完全に消えるまでが,1フレーム期間中に行われるため,非常に高速
な応答速度が得られ,動画再生に最適な方式である。」(段落【001
8】)
「さらに,この駆動方式をTFT方式の液晶パネルに応用することに
より,TFT方式の液晶パネルの動作速度を改善することも可能であ
る。」(段落【0019】)
「従来のアクティブ駆動方法では駆動に必要な電圧の種類が多く,コ
ントローラも複雑になるため,駆動回路が高価格になってしまうのに対
して,本発明では,駆動に必要な電圧の種類が少なく,駆動タイミング
も簡単であるため,従来の単純マトリックス駆動方式の駆動回路と同等
のコストで実現できる。」(段落【0020】)
「さらにまた,本発明は液晶パネルに画像を描きその画像が完全に消
えるまでが,1フレーム期間中に行われる方式であるため,3色バック
ライトを使用したカラー表示方法に最適の方法であり,高性能でしかも
低価格なカラー表示ディスプレイを実現できる。」(段落【0021
】)
(エ)発明を実施するための最良の形態
「しかしながら,ごく一般的なTN型の液晶材料を用い,ギャップを
5∼6μmとそれほど薄くないパネルを用いても,図2の様に光透過率
が変化しており,光透過率がコモン電圧の変化に応じて変化を開始し元
にの光透過率に戻るまでに要する時間は,15∼20mSと非常に高速
に動作している。」(段落【0029】)
「ここで,図2の様に光透過率が高速に変化する特性がもっとも顕著
に出るのは,Vcom0がVseg0より低く,Vcom1がVseg
1より高い場合であり,すなわちコモン電極が選択されている期間は,
コモン電極が選択されていない期間に対して,印加されている電圧の極
性が反転している場合である。」(段落【0030】)
「また,図2において,コモン電圧の選択周期を半分にし,1フレー
ム期間の中でセグメント電圧がVseg0の時に必ずコモン電極を選択
するようにした場合でも,光透過率の変化の様子にはそれほど差は発生
しない。」(段落【0031】)
「ただし,図2に示した本発明の実施の形態においては,黒を表示す
る場合のセグメント電圧を1フレーム期間でVseg0に固定している
が,黒を表示する場合にはコモン電極が非選択の期間のセグメント電圧
をVseg1にした方が黒はよくなるが,前述のように選択周期を半分
にすると,セグメント電圧がVseg1の時にコモン電極が選択される
ため白が表示されてしまう。」(段落【0032】)
「図5は,本発明の実施の形態において,セグメント電圧の変化の周
期のみを変更した場合の,光透過率の変化の様子を示しており,1フレ
ーム期間毎にセグメント電圧を変化させた場合には,1フレーム期間内
でセグメント電圧を変化させた場合に比べて光透過率の変化の速度がか
なり遅くなっていることがわかる。」(段落【0033】)
「従って,セグメント電圧を早い周期で変化させることにより,液晶
の光透過率が高速に変化する様になることがわかる。」(段落【003
4】)
「本発明の実施の形態において,コントラスト比の高い表示を行うた
めには,コモン電極にパルスが印加され,液晶の光透過率が瞬間的に変
化した後,光透過率が元の値に戻ってから,次のパルスを印加する方が
よい。」(段落【0035】)
「従って,本発明の実施の形態においては,フレーム周期を速くする
とコントラスト比が低くなり,一方,フレーム周期を遅くすればフリッ
カーが発生するなど,不具合が発生してしまう。」(段落【0036
】)
「本発明の実施の形態において,非選択時のセグメント電圧の変化の
周期が光透過率の変化の速度に大きく影響することは示したが,光透過
率が元の値に戻る時間は,液晶材料の特性,特に液晶材料の粘性などに
より大きく変化する。」(段落【0037】)
「従って,光透過率が元の値に戻る時間の短い液晶材料を選択するこ
とにより,フリッカーの発生を押さえながら,コントラスト比の高い表
示を行うことが可能となる。」(段落【0038】)
「また,光透過率が元の値に戻る時間が液晶材料の粘性などに大きく
影響を受けることから,液晶パネルの温度を上げることにより,液晶材
料を変更しなくてもコントラスト比の高い表示を行うことも可能であ
る。」(段落【0039】)
「尚,本発明の実施例では単純マトリックス方式の液晶パネルへの応
用例を示したが,単純マトリックス方式の液晶パネルを使用して,TF
T方式の液晶パネルよりも遥かに高速な応答速度を実現できる他,コン
トラスト比も同等に実現でき,視野角も良好であり,TFT方式の液晶
パネルと同等あるいはそれ以上の性能を実現できる。」(段落【004
0】)
「また,本発明は単純マトリックス方式の液晶パネルへの応用だけで
なく,単純マトリックス方式の液晶パネルを使用して,TFT方式の液
晶パネルよりも遥かに高速な応答速度を実現できる他,コントラスト比
も同等に実現でき,視野角も良好であり,TFT方式の液晶パネルと同
等あるいはそれ以上の性能を実現できる。」(段落【0041】)
(3)本願の【図1】及び【図2】(甲2)は,次のとおりである。
【図1】
【図2】
(4)上記(1)∼(3)によれば,本願発明は,「ネマティック液晶に印加する電圧
を,画像データに応じた第1の電圧と,前記画像データと関係のない一定の
期間継続する一定の第2の電圧に所定の期間内で変化させるステップと,前
記ネマティック液晶に前記第1の電圧を印加して前記ネマティック液晶の光
透過率を前記画像データに応じた値とし,前記ネマティック液晶に前記第2
の電圧を印加して前記画像データに応じた値に変化した前記光透過率を変化
前の元の値に前記所定の期間内で戻すステップとを含む」ものとすることに
よって,従来の駆動方法に較べて応答速度が速く,コントラスト比のよいネ
マティック液晶を実現するものであることが認められる。
3引用発明の意義について
(1)引用例(甲1)には,次の記載がある。
ア特許請求の範囲
「1.少なくとも実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに駆
動可能な光変調用画素の行および列のアレイと,前記表示パネルを照明し
て表示出力を生じる手段と,駆動手段であってこれに供給される所定のフ
ィールドおよびライン速度を有するビデオ信号に従って前記画素を駆動す
ることができる当該駆動手段とを具えるマトリックス表示システムであっ
て,前記駆動手段が前記画素の行を順次駆動でき,前記供給されたビデオ
信号の表示フィールドの表示情報が,ビデオ信号のフィールド周期よりか
なり短い表示情報アドレス期間中に前記表示パネル内に書き込まれ,順次
の表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されているマトリックス
表示システムにおいて,前記表示パネルの表示ィールド(判決注:「フィ
ールド」の誤記)が見る人に与えられる順次の期間が,ほぼ表示出力が生
じない期間だけ分離されるようにマトリックスシステムを動作できるよう
にしたことを特徴とする。」
「16.少なくとも実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに
駆動可能な光変調用画素の行および列のアレイと,前記表示パネルを照明
して表示出力を生じる手段と,駆動手段であってこれに供給される所定の
フィールドおよびライン速度を有するビデオ信号に従って前記画素を駆動
することができる当該駆動手段とを具えるマトリックス表示システムの動
作方法であって,前記画素の行が順次駆動され,前記供給されたビデオ信
号の表示フィールドの表示情報が,ビデオ信号のフィールド周期よりかな
り短い表示情報アドレス期間中に前記表示パネル内に書き込まれ,順次の
表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されるマトリックス表示シ
ステムの動作方法において,前記表示パネルの表示フィールドが見る人に
与えられる順次の期間が,ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されるこ
とを特徴とするマトリックス表示システムの動作方法。」
「17.請求項16に記載の方法において,前記照明手段による前記表
示パネルの照明を,前記時間間隔の少なくとも一部の間に表示出力が生成
されるように制御し,前記アドレス期間の少なくとも一部の間に表示出力
がほぼ生成されないように制御することを特徴とする方法。」
「21.請求項16に記載の方法において,前記配列の画素を,前記順
次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において,ほぼ非透過表示状態
に駆動することを特徴とする方法。」
「24.請求項16から23のいずれか1項に記載の方法において,前
記表示情報アドレス期間および時間間隔の持続時間が,各々,供給された
ビデオ信号のフィールド周期に相当することを特徴とする方法。
「25.請求項24に記載の方法において,前記アドレス期間および時
間間隔の持続時間が,各々,供給されたビデオ信号のフィールド期間のほ
ぼ半分てあることを特徴とする方法。」
イ発明の詳細な説明
(ア)「本発明は,マトリックス表示システム,特に,例えばTV画像を
表示するビデオ表示システムと,このようなシステムの動作方法に関す
るものである。
本発明は,光変調用画素の行および列アレイを有する表示パネルと,
前記表示パネルを照明する手段と,供給されたビデオ信号に従って前記
画素を駆動する駆動手段とを具え,行を個々のフィールド期間内に順次
に繰り返して走査することによって,前記画素が一行を一度に駆動され
る,例えば液晶表示システムであるマトリックス表示システムに関係す
る。
液晶素子のような光変化画素を有する表示パネルを具え,TV画像を
表示するビデオ表示システムは,よく知られている。大画面表示パネル
は一般に,各画素に結合して表示品質を改善する,例えばTFTまたは
薄膜ダイオードであるアクティブスイッチング装置を含む。動作時に,
表示パネルを光源によって絶えず照明し,画素が供給されたビデオ情報
に従って光を変調させ,表示出力を形成する。画素は,行および列アド
レス導線に接続され,入力ビデオ信号を標本化して得たビデオ情報デー
タ信号が列導線上の各画素に伝送されるように,選択信号により列導線
を走査することによって,一行を一度に順次駆動される。あるフィール
ド周期内にすべての行をアドレスした後,この動作を,順次のフィール
ド周期内で各行をアドレスして繰り返す。これらの既知のシステムにお
いて,走査の,従ってフィールドの周期は,入力ビデオ信号と,供給さ
れたビデオ信号の速度に相当する表示パネルのフィールド速度との信号
のタイミングによって決定される。例えば,PALTVの場合,各々
の画素の行は,64マイクロ秒のライン期間内か,20ミリ秒毎に1回
生じフィールド期間に等しい順次のライン期間の時間間隔内にアドレス
される。特にアクティブマトリックス表示装置の場合,画素は,電荷が
画素上に格納されるように効果的に分離されているので,画素によって
形成された表示効果は,画素がその後のフィールド周期内で次にアドレ
スされるまで十分に維持される。
例えばTFTまたはMIMとツイストネマチック液晶材料とを使用す
るアクティブマトリックスアドレスの使用は,例えばグレイスケール,
コントラストおよび輝度といった,ある程度満足すべきであるビデオ表
示に要求される条件の多くを実現する。見た目を満足させるために,表
示システムは,TVやコンピュータが生成した画像に見られる素早く動
く像に関して良好な表示品質を与えられるようにすべきである。この点
において,動いている像を表示している場合に生じるボケまたはスメア
リング現象に関しては特に改善が必要である。この現象は,暗い背景に
対して動いている明るい物に関して特に目立つ傾向がある。
駆動レベルの変化後に画素の透過率が安定するまでに要する時間は,
重要であるはずであり,典型的な表示パネルにおいて,パネルが供給さ
れたビデオ(PAL)信号のフィールド速度に等しい50Hzのフィー
ルド速度において駆動され,駆動レベルを例えば90%の透過率から1
0%の透過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するため
に数フィールドを占めるであろうことが分かっている。この点において
改善したアクティブマトリックス液晶ビデオ表示装置の駆動方法が,欧
州特許出願公開明細書第0487140号に記述されている。この方法
において,画素は,供給されたビデオ信号のフィールド速度より速いフ
ィールド速度において駆動される。例えば,供給されたビデオ信号が,
フィールド速度が各々50Hzおよび60HzのPALまたはNTSC
TV放送信号からなる場合,表示パネルのフィールド速度を100H
zおよび120Hzに各々増すことができる。これは,駆動(ビデオ)
レベルの変化後に画素の透過率が安定するまでに要する時間を明らかに
短縮させることが分かっている。
この方法は,スミアリング現象に関しては明らかな改善をもたらす
が,シャープネスの不足またはボケの形をとるある程度の好ましくない
視覚現象が,特に動いている物のエッジにおいて依然として生じる恐れ
があることが分かっている。
本発明の目的は,動いている像を表示している場合の表示品質を改善
したマトリックス表示システムと,動いている像を表示している場合の
好ましくない視覚現象の問題を軽減するのに役に立つマトリックス表示
システムの動作方法とを提供することである。」(6頁3行∼7頁下2
行)
(イ)「本発明の一実施例によれば,少なくとも実質的に透過状態と少な
くともほぼ非透過状態とに駆動可能な光変調用画素の行および列のアレ
イと,前記表示パネルを照明して表示出力を生じる手段と,駆動手段で
あってこれに供給される所定のフィールドおよびライン速度を有するビ
デオ信号に従って前記画素を駆動することができる当該駆動手段とを具
えるマトリックス表示システムであって,前記駆動手段が前記画素の行
を順次駆動でき,前記供給されたビデオ信号の表示フィールドの表示情
報が,ビデオ信号のフィールド周期よりかなり短い表示情報アドレス期
間中に前記表示パネル内に書き込まれ,順次の表示情報アドレス期間が
ある時間間隔だけ分離されているマトリックス表示システムにおいて,
前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,
ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されるようにマトリックスシステ
ムを動作できるようにしたことを特徴とするマトリックス表示システム
が与えられる。
本発明の他の実施例によれば,少なくとも実質的に透過状態と少なく
ともほぼ非透過状態とに駆動可能な光変調用画素の行および列のアレイ
と,前記表示パネルを照明して表示出力を生じる手段と,駆動手段であ
ってこれに供給される所定のフィールドおよびライン速度を有するビデ
オ信号に従って前記画素を駆動することができる当該駆動手段とを具え
るマトリックス表示システムの動作方法であって,前記画素の行が順次
駆動され,前記供給されたビデオ信号の表示フィールドの表示情報が,
ビデオ信号のフィールド周期よりかなり短い表示情報アドレス期間中に
前記表示パネル内に書き込まれ,順次の表示情報アドレス期間がある時
間間隔だけ分離されるマトリックス表示システムの動作方法において,
前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,
ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されることを特徴とするマトリッ
クス表示システムの動作方法が与えられる。
本発明によって,動いている像を表示している場合に知覚されるボケ
または細部の欠落の量は,大幅に減少する。ボケ現象は,画素の物理的
な応答特性に加えて,ある程度,精神的な視覚の規準のせいであること
が分かっている。本発明に従って動作される表示システムによって,動
いている像の知覚される解像度を改善する「暗い」期間が,パネルの順
次の表示フィールドの見る人への表示の間に挿入される。これは,明ら
かな動きを知覚する上で,ある精神的な視覚規準が,より満足させられ
るからである。明らかな動きは,多数のパラメータがある範囲内にある
場合にのみ知覚される。特に,動いている像の順次の表示間の暗い期間
によって生じる中断は,大変重要である。表示フィールドが供給された
ビデオ信号のフィールド周期に等しい持続時間であるような従来の駆動
設計において,中断期間は存在しなかった。実際には表示画像は,フィ
ールド周期の間保持されており,これは,動いている像が含まれる場
合,人間の視覚システムによってボケとして解釈される。本発明によっ
て表示画像に与えられる方法は,より現実の状況に近く,CRTの状況
に類似している。CRTにおいて,画素は,フィールド期間毎に一回ア
ドレスされ,短く高い強度のパルス列として光を放射する。これらのパ
ルス放射の持続時間は,表示フィールド期間に比べてかなり短いので,
順次の放射間に明らかな休止期間が存在する。この要因は,眼によって
知覚すべき動きを,CRTディスプレイ画像において大変効果的にす
る。画素の動作のサンプル・ホールド性質のために従来のように駆動さ
れる液晶表示パネルの時間的な動作の相違のために,眼が僅かに異なっ
た静止像の連続を動いている場面として知覚することができるという性
質に影響をおよぼす。本発明によって,動きの知覚は,表示画像内の動
いている物のエッジのボケが明らかに減少することによって,かなり改
善される。」(7頁下1行∼9頁17行)
(ウ)「本発明によるマトリックス表示システムの第2の好適な実施例に
おいて,駆動回路は,順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔にお
いて,画素の配列を,ほぼ非透過表示状態に駆動することができる。
本発明による方法の第2の好適な実施例において,順次の表示情報ア
ドレス期間の間の時間間隔において,画素の配列を,ほぼ非透過表示状
態に駆動する。
この第2の実施例において,順次の表示情報アドレス期間の間の時間
間隔において画素をほぼ非透過,すなわち黒に駆動することによって,
順次の表示フィールドの見る人への表示の間に上述した「暗い」期間が
挿入され,知覚される動いている物の解像度が改善される。
表示パネルを,動作中に絶えず照明してもよい。しかしながら好適に
は,照明手段を前記時間間隔の間,オフにするか,少なくとも比較的低
い光出力レベルに切り換える。すると前記暗い期間の暗さは強調され,
コントラストが改善される。表示パネルを,例え,照明手段を,前記時
間間隔の後の方の一部と次のアドレス期間の最初の部分とを具える期間
に対して照明手段をオフまたは少なくとも比較的低いレベルに切り換
え,従ってパネルの照明をアドレス期間の後の方の一部と前記時間間隔
の最初の部分とに限定し,パネルからの順次の表示間の有効な休止期間
をさらに増加させるのが好適であるとしても,アドレス期間の持続時間
の間照明してもよい。パネルの断続的な照明は,パネルの駆動に同期し
て照明に供給される光源をオンおよびオフに点滅させることによって行
うことができる。したがって,表示システムは,例えば,光源からの光
が暗い期間の間表示する目的に使用されないような,パネルが常に照明
されている状況と違って,光源からの光が必要なときのみ表示出力を形
成するのに使用されるような,エネルギーを有効に使用する方法におい
て動作する。これは,光源が出力消費の点で最も重要な構成要素である
液晶表示システムにおいて,特に重要な利点である。
前記時間間隔の間,好適には画素の配列の行を,画素を表示情報によ
ってアドレスしたのと同様な方法で行毎に,または行の組毎に,ほぼ非
透過状態に個々に順次駆動する。前記において,より便利にするため
に,同じ走査駆動回路を,アドレス期間および時間間隔の双方におい
て,画素の駆動に使用できると考えた。画素の第1行の駆動を,時間間
隔の開始にほぼ一致させてもよいし,代わりに,期間の開始後の予め定
めた遅延時間後に始めてもよい。後者の場合,照明手段のオフまたは低
レベル状態への切り換えを,遅延時間の終了にほぼ一致させてもよい。
この遅延時間は,パネルが照明され,行が次に「黒」に駆動される前に
表示情報によって表示出力が与えられている間の,画素の全ての行が必
要な表示情報によってアドレスされた後の短い休止期間から成る。
画素を非透過状態に駆動する時間間隔内に,代わりの方法,例えば,
配列中の画素をほぼ同時にこの状態に設定する方法を使用することも考
えられる。しかしながらこのような方法は,駆動回路を大幅に変更する
必要がある。
これらの好適な実施例の双方において,好適にはアドレス期間とそれ
に続く時間間隔とを合わせた期間を,供給されたビデオ信号のフィール
ド周期にほぼ相当させる。アドレス期間および時間間隔を,便利で簡単
にするために,各々ビデオ信号のフィールド周期のほぼ半分に相当する
持続時間にしてもよい。しかしながら好適には,2つの連続するアドレ
ス期間およびその2つの時間間隔を,ビデオ信号のフィールド周期の持
続時間に一致させれば,実際には同じ表示フィールドが1ビデオ信号フ
ィールド周期内で表示パネルによって連続して2回表示される。代わり
に,アドレス期間および時間間隔の組合せを,ビデオ信号フィールド周
期より長くすることもできる。例えば,アドレス期間および時間間隔の
組合せが2つのフィールド期間を占めるように時間間隔を選び,表示パ
ネルがビデオ信号の表示フィールドを一つ置きに表示し,より簡単な駆
動回路を使用できるようにすることができる。」(10頁下2行∼12
頁18行)
(エ)「表示システムの第1および第2実施例は,それらの構成要素の多
くが同様で,その動作が多くの類似点を共有しており,多くの点で類似
している。したがって,次のような一般的な記述を,双方の実施例に適
用することができる。
図1および2を参照して,本表示システムは,ビデオ,例えばTVや
画像を表示しようとするものであり,各行にn個の画素が水平に配置さ
れたm行から構成される画素の行および列の配列を有するアクティブマ
トリックスアドレス液晶表示パネル10を各々具える。
表示パネル10は,各画素12が開閉装置として動作するTFT11
に関連しており,且つ,行および列アドレス導線14および16の組の
交点に各々隣接して配置されている,従来型のTFT型パネルを具え
る。同じ行の画素に関連する全てのTFT11のゲート端子を,共通列
導線14(判決注:「共通行導線14」の誤記)に接続し,この導線に
は動作時に選択(ゲート)信号が供給される。さらに,同じ列の全ての
画素に関連するソース端子を共通列導線16に接続し,データ(ビデオ
情報)信号を供給する。TFTのドレイン端子を,画素の一部を形成
し,この画素を規定する各々の透明画素電極18に各々接続する。行お
よび列導線14および16と,TFT11および電極18とを,例えば
ガラスである透明プレート上に全て支える。このプレートと平行に,且
つ分離して,パネルの全ての画素に共通の電極を構成する透明導電層が
その上に形成された他の透明プレートがある。ツイストネマチック液晶
材料をこの2枚のプレートの間に配置し,この2枚のプレートの周囲を
適切に密封する。従来の方法においては,向かい合ったプレートに偏光
層を設ける。
パネル10を,開閉装置であるダイオードまたはMIMのような2端
子非線形装置を使用し,行および列アドレス導線の組が各々のプレート
上に設けられた既知の形式のものとしてもよい。
表示パネル10を,一方の側に配置した小型低圧蛍光灯を具える光源
19によって照明し,光源からパネルに入射する光を,画素12の透過
特性によって適切に変化させ,パネルの他方の側に可視表示出力を生成
する。液晶材料が,画素を通過した光を,その両端間に印加された電圧
に従って変調させると共に,各画素は,パネルを通過した光を,その各
々の画素の両端間に印加された電圧に従って変化させることができる。
画素は,印加された電圧のレベルに従って動作し,ほとんど透過しな
い,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,すなわち白のレベルまで変
動する,複数の透過レベルを形成する。標準的なやり方に従って,行導
線14を選択信号によって順次に走査してTFTの各行を順次にターン
オンさせ,ゲート信号と同期して画素の各行に対する列導線にデータ信
号を適切に供給することにより,パネルを時間軸で行毎に駆動し,完全
な表示画像を構成する。TVディスプレイの場合,画素の各行にTVラ
インの画像情報信号を供給する。1行を一度にアドレスすると,アドレ
スされた行の全てのTFT11は,選択信号の持続時間によって決定さ
れる行アドレス期間に対してスイッチオンされ,その間,キャパシタが
列導線16上のビデオ情報信号の電圧レベルに従って充電される。その
後,選択信号の終了によって,この行のTFTはターンオフし,それに
よって画素は導線16から絶縁され,画素に供給された電荷は,画素が
次のフィールド期間において再びアドレスされるまで蓄積されるように
する。
同期信号が同期セパレータ26から供給されるタイミング兼制御回路
21からの規則正しいタイミングパルスによって制御されるディジタル
シフトレジスタを具える行駆動回路20によって,行導線14には同じ
選択信号が順次に供給される。これらの同期信号は,入力端子25に供
給される画像およびタイミング情報を含むビデオ,例えばTV信号から
得られる。ビデオデータ(画像情報)信号を,1個またはそれ以上のシ
フトレジスタおよびサンプルホールド回路を具える列駆動回路22か
ら,列導線16に供給する。回路22に入力端子25に供給されたビデ
オ信号から得られるビデオデータ信号を,ビデオ処理回路24から供給
する。同期セパレータ26で入力ビデオ信号のタイミング情報から取り
出したタイミング信号は,行の走査と同期してタイミング兼制御回路2
1によって,回路22に供給され,パネル10のアドレス時に適切な直
並列変換を与える。回路20,21,22,24および26は,一般的
な従来の形式のものであるので,詳細には記述しない。簡単にするため
に列駆動回路22の極めて基本的な形を図1および2に示すが,当業者
には明らかなように,他の形式の回路を使用することができることに注
意されたい。
LC材料の電気機械的な劣化を避けるために,既知の習慣に従って画
素に供給される駆動信号の極性を周期的に反転する。しかし,簡単にす
るためにこれを達成する手段を図1および2に示していない。この極性
反転を,表示パネルのフィールドが完結した後毎に行うことができる。
選択信号を行導線にTVラインと同期して順次供給し,各選択信号が
TVライン周期T1と等しい,またはそれより短い周期を有する,例え
ば64マイクロ秒のTVライン周期を有する半解像度PAL標準TV表
示の場合,各行導線が20ミリ秒の間隔で選択信号を供給されるように
する従来の駆動方法とは異なり,表示パネル10を,入力ビデオ,TV
信号のライン速度より速いライン速度で駆動する。欧州特許出願公開明
細書第0487140号において,例えば供給されたTV信号の2倍速
いフィールド速度で表示パネルを駆動する,アクティブマトリックスL
Cディスプレイ装置の駆動方法が記述されている。この方法において,
表示パネルの画素を,1TV信号フィールド周期に等しい周期内で同じ
表示情報によって2回ロードする。これを達成するために,ビデオ信号
をフィールド記憶装置に供給し,供給されたTV信号のライン速度の2
倍の速度でパネルを走査して,その内容を1標準ビデオ周期の間に2回
連続して表示パネルに読み出す。これは,20ミリ秒のフィールド周期
と50Hzのフィールド速度とを有するPALTV表示信号の場合,
表示パネルのフィールド周期が10ミリ秒に短縮され,フィールド速度
が100Hzに変換されることを意味する。図1および2に示すシステ
ムの実施例の表示パネル10の画素は,ある程度幾つかの類似点を持っ
た方法で駆動される。再び図1および2を参照して,入力端子25から
ビデオ信号を,アナログディジタル変換器27および切り換えスイッチ
28を経て,TVフィールド全体に関するディジタル化されたビデオ信
号を保持する2個のディジタルフィールド記憶装置30および31の一
方に供給する。切り換えスイッチ28を回路21によって,TVフィー
ルド信号が記憶装置30および31に交互に記憶されるように動作す
る。一方の記憶装置,例えば記憶装置30がロードされている間,他方
の記憶装置31の内容を読み出し,同様に回路21によって制御される
切り換えスイッチ32と,ディジタルアナログ変換器33とを経て,ビ
デオ処理回路24に供給する。一方の記憶装置内に格納された信号を,
ライン毎に回路24に読み出し,各ラインの読み出しは,TVライン周
期の半分を要する。行駆動回路20は,TVフィールドに関するデータ
信号の供給に同期した従来の速度の2倍の速度において行導線を走査す
る。したがって,1TVフィールドに関するデータは,TV信号フィー
ルド周期の半分の周期内で表示パネルにロードされる。各行の画素がロ
ードされた後,非選択信号を個々の行導線に供給し,この行のTFTを
オフに保ち,したがって記憶された書き込み表示情報を有する画素を分
離する。ここまでは,図1および2のシステムの実施例の構成および動
作方法は,大体において等しい。しかしながら,これらの動作は以後異
なるので,これらの2つの実施例の動作を分けて記述する。」(13頁
9行∼16頁15行)
(オ)「ここで図2のシステムの実施例を考えると,画素を,TVフィー
ルド周期の他の半分内に同じ表示情報によって再びアドレスする欧州特
許出願公開明細書第0487140号に記述されている方法とは異な
り,上述したようなTV信号フィールド周期の半分から成る表示情報ア
ドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書
き込むのに続いて,画素の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半
分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動す
る。これを達成するために,TVフィールド期間の後半に等しいこの期
間の間に,間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によっ
て,選択信号を行駆動回路20によって各行導線に順番に再び供給す
る。この期間が続いている間,画素をほぼ非透過状態に駆動するように
選択される予め定めた基準電圧Vを列導線16の各々に印加する。基B
準電圧を,列駆動回路22の出力端子と列導線の組との間に接続され,
回路21によって供給される切り換え信号Sの制御のもとに,列導線を
行駆動回路(判決注:「列駆動回路」の誤記)の出力と基準電圧との間
で切り換える切り換え回路35によって印加する。行導線を,あらかじ
め,画素の行が時間間隔の終了時に最終行が完了するまで順番にほぼ非
透過状態に設定されるように,選択信号によって同じ速度において走査
する。したがって1TVフィールド周期において,2つの表示情報アド
レス期間,すなわち,画素を液晶表示状態に駆動する表示情報アドレス
期間と,それに続く,画素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔とが存
在する。
TVフィールド期間の終わりにおいて,再びTV信号のフィールド速
度の2倍の速度において,通常の2倍の速度における行導線の走査に同
期して次のTVフィールドを第1の記憶装置にロードしている間,次の
TVフィールドに関するデータ信号が他の記憶装置から回路24に読み
出されるように,切り換えスイッチ28および32を動作する。この次
のフィールドを表示パネル内にロードした後,以前のようにTVフィー
ルド周期の残りの後半内で,ほぼ非透過表示状態に再び駆動する。この
動作方法を,順次のTVフィールドに対して繰り返す。
したがって,表示パネルの動作は,各々がTV信号フィールド周期の
ほぼ半分,例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要と
し,一つ置きの期間は,画素が各々のTVフィールドに関する表示情報
によってロードされる間の第1の表示パネルフィールド期間を構成し,
それらの間の時間間隔は,配列の画素を黒い状態に駆動する間の第2の
表示パネルフィールド期間を構成する。これを図4に図式的に示し,こ
こでここでTは時間を表し,F(A)からF(D)は供給されたTV信
号VSの4つの連続するフィールド期間を示す。表示パネルの動作期間
の相対的なタイミングDPは,f(A)からf(C)が第1の表示パネ
ルフィールド(表示情報アドレス)期間を示し,期間f′がそれらの間
の第2の表示パネルアドレス期間を示す。
本実施例において,光源19による表示パネル10の照明を,パネル
が予め定めた期間において照明されないようなパネルの動作に合わせ
て,選択的に制御する。さらに特に,照明手段を,期間(f′)の後の
部分と,続く表示情報アドレス期間(例えばf(B))との間オフにす
る。したがって,パネルは,予め定めた第1の表示情報アドレス期間,
例えばf(A)の後の部分と,次の期間の始めの部分の間照明される。
パネルの照明は,その時の画素の表示状態の存在に依存して目に見える
表示出力を生成する。この選択的な照明を,Iが期間中の照明強度を示
し,Lが照明期間を示す図4にも示したように,期間f′およびf
(A),f(B),その他に同期した定期的な間隔において照明手段の
光源をオンとオフとで点滅させることによって行う。各期間Lの第1の
部分に関して,パネルの下部の画素は表示情報によってアドレスされて
おり,一方期間Lの後の部分の間,パネルの上部の画素は黒い状態に設
定されている。期間f′の始めの部分の間の照明は,より下の行の画素
が期間f(A),f(B),その他の終わりごろに表示状態に設定され
るのを考慮した動作を必要とする。図2に関して,光源19の動作を,
ユニット21から適切なタイミング信号を受けるスイッチング回路23
によって制御する。
したがって順次の表示出力は,一つ置きに暗いすなわち休止期間を見
る人に表示し,これらの期間の持続時間は,ほぼ同一で,パネル照明の
順次の期間にほぼ相当する。したがって得られる表示出力は,CRTデ
ィスプレイによって見る人に提供される種類の刺激に類似する。」(1
8頁7行∼20頁4行)
(カ)「ここで図1および図2の双方の表示システムの実施例において,
表示情報を与える方法と,表示パネルによって生成された動いている像
の見る人による認識とに理由を与える。運動は,時間に関する空間上の
位置の変化であり,通常の世界においては,時間は連続である。例えば
LCディスプレイやCRTのような,動いている像のデータを伝達する
のに有効な種々の表示技術において,ある形式の量子化を画像伝送処理
において行う。動いている像の時間の次元は量子化されているので,連
続する運動は存在せず,代わりに,種々の時点における動いている物の
空間上の位置を与える像の連続が得られる。この種の運動,いわゆる見
かけの運動は,観察者によって,あるぎこちなさを条件として,真の運
動と知覚されうる。時間内に変化した順次の像の表示によって生じる種
々の形式の見かけの運動のうち,いわゆるベータ運動(Betamovement)
すなわちみかけの空間的運動が,表示像中で知覚されるボケに関する最
も適切なものである。特に順次の表示間の休止期間の持続時間が,運動
を知覚する上で重要なパラメータであることを確かめた。
CRTディスプレイにおいて,電子ビームを走査することによる励起
に応答する画素からの光の放射の持続時間は,PAL表示に関して,一
般に2ミリ秒より短く,励起の周波数は50Hz,すなわち20ミリ秒
毎である。したがって,明確な休止期間が順次の刺激の間に存在し,こ
の理由のため,動きは大変効果的に知覚される。対照的に,従来のよう
に駆動されるアクティブマトリックスアドレスLCディスプレイパネル
の画素は,画像情報を,完全な(フィールド)周期の間,次にアドレス
されるまで保持し,表示する。したがって,画像情報の順次の表示の間
に,休止期間がほとんど存在しない。この違いは,CRTディスプレイ
に比較して従来のLCディスプレイに,速度に依存するボケが残る原因
であると考えられる。画素が再アドレスされるときに,動いている物の
空間上の位置における突然の変化が生じる。見る人の目は,動いている
物の新たな空間上の位置を提示される一方,古い位置に焦点が合ったま
まである。次に見る人の目は新たな位置に移動し,これが生じている
間,物はその間ずっと表示されている。これは,目が動きを追っている
間,網膜上の像の動きになる。他方では,CRTディスプレイにおい
て,目は順次の提示の間の休止期間内に,物の新たな予想される位置に
移動することができ,目の刺激は休止期間の間には存在しない。実際に
は,これは,点滅して動いている像を網膜の同じ位置上に受けるであろ
うということを意味する。表示特性の違いを,同じ動いている物を見た
場合の,現実の世界の状況F(C)と比較した,CRTと従来の方法で
駆動されるアクティブマトリックスLCディスプレイパネルとの時間に
対する動作を各々示すF(A)およびF(B)において図式的に説明す
る。これらの図において,TおよびPは,時間および位置を表し,Fお
よびMは各々,フィールド周期(PAL表示に関して20ミリ秒)およ
び,あるフィールドから次のフィールドへの移動である。
図5(A)に関して,CRTは見る人に,ここでは時間および位置に
おいて分離した動いている物を表す点によって示される離散した光出力
を提示する。従来の方法で駆動されるアクティブマトリックス表示を示
す図5(B)において,光出力は,実線で示したようにフィールド周期
の間保たれる。各フィールドの終わりにおいて,出力は,新たな位置に
すぐに移動する。
図5(D)は,上述した方法において駆動される図1および2の表示
パネル10の出力の時間的な動作を説明する。図5(B)と比較して,
動いている物を示す表示出力は,半分の時間のみ保たれる,すなわちt
がF/2以下であり,順次の表示出力間に期間tが存在し,tはF122
/2以上であることが分かる。したがって,この出力は,従来のように
駆動される表示パネルの出力より,図5(C)の現実の世界の場合によ
り似ており,そこからあまり逸脱しておらず,CRTディスプレイから
得られる出力に近似している。その結果,動いている物を見ている場合
に知覚されるボケは,従来のように駆動されるアクティブマトリックス
LCディスプレイパネルにおいて見られるものに比較して,明らかに減
少する。」(20頁5行∼21頁下4行)
(キ)「図2の表示システムの実施例に関して,さらに,光源を点灯して
パネルを照明する時間長を変化させてもよい。図4に示す実施例におい
て,照明点灯Lは,期間f(A),f(b),その他のほぼ1/3と,
期間f′のほぼ1/4とを使用する。点灯の間隔を,例えより短い間隔
の照明によってCRTディスプレイの動作により近くなるとしても,期
間f(A),f(b),その他のできるかぎり全てと,期間f′もこと
によるとより多く使用するように増加することができる。点灯の間隔
は,表示パネルからの合計の光出力を決定し,したがって好適には,用
いられる光源の輝度を考慮して選択し,この点に関して表示品質を最適
化する。反対に,ランプの輝度を,点灯の間隔を考慮して選択してもよ
い。
常にパネルの照明をある期間に限定する必要はない。表示情報アドレ
ス期間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動することは,必要な休
止期間をもたらし,それだけで十分である。この場合,光源を,パネル
を連続して照明するように用意することができる。
表示パネルの第1および第2アドレス期間(図4におけるfおよび
f′の各々)の相対的な持続時間も,ある程度変化させることができ
る。上述したように,これらの期間の各々は,TV信号のフィールド周
期(F)のほぼ半分に相当する。しかしながら,パネルアドレス期間
fおよびf′を,例え複雑な駆動になるとしても,例えばおのおのがT
Vフィールド周期の1/3および2/3,またはその逆となるように異
ならせることができる。
特に本実施例において,画素の行を,時間間隔内に,時間間隔の開始
および終了の各々によって,第1および最終行をほぼ同時に設定するこ
とによって行を交互に走査することによって非透過状態に設定する。し
かしながら,画素をこの状態に駆動する他の方法を使用することもでき
る。例えば,行を,連続した行の組を順番に,またはできるかぎりほぼ
全て同時に設定することができる。しかしながら,これらの後者の方法
は,行駆動回路20を変更する必要がある。
さらに,画素の非透過状態への駆動は,間隔の開始時に始める必要は
ない。代わりに,図4に示すようなより短い予め定めた遅延時間を,画
素をこの必要な状態に設定する前に,時間間隔の開始時に挿入してもよ
い。この遅延時間は,パネルが照明されている間の期間f(A),f
(b),その他における,全ての画素が表示状態に設定された後に続く
休止期間を構成する。この遅延時間dの終了時は,図4中に破線で示さ
れるように,照明期間の終了時と一致させて選んでもよい。画素をこの
間隔の残りの部分内でこの状態にするには,より速い走査速度を必要と
する。これは行駆動回路をより高いクロック速度によって動作すること
によって達成することができる。」(22頁下6行∼23頁下2行)
ウ【図4】は,次のとおりである。
(2)上記(1)によれば,引用例(甲1)には,審決が認定するとおり,次の発
明(引用発明)が記載されているものと認められる。
「少なくとも実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに駆動可能
な画素の行および列の配列を有するアクティブマトリックスアドレス液晶表
示パネルと,前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの一方の
側に配置されて前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルを照明
することにより前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの他方
の側に可視表示出力を生成するための光源と,駆動手段であってこれに供給
される所定のフィールドおよびライン速度を有するTV信号に従って前記画
素を駆動することができる当該駆動手段とを具えるマトリックス表示システ
ムの動作方法において,
前記アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルは,時間軸で行毎に
駆動されて完全な表示画像を構成するものであり,1行が一度にアドレスさ
れると,アドレスされた行の全ての画素が,TV信号の表示フィールドの表
示情報の電圧レベルに従って充電され,画素に供給された電荷が,画素が再
びアドレスされるまで蓄積されるようにするものであって,画素の一部を形
成する各々の透明画素電極と行および列アドレス導線とを支える透明プレー
トと,この透明プレートと平行に,且つ分離して,パネルの全ての画素に共
通の電極を構成する透明導電層がその上に形成された他の透明プレートと,
この2枚の透明プレートの間に配置されたツイストネマティック液晶材料
と,向かい合った透明プレートに設けられた偏光層とを備えており,
前記ツイストネマティック液晶材料が,画素を通過した光を,その両端間
に印加された電圧に従って変調させることにより,各画素は,パネルを通過
した光を,その各々の画素の両端間に印加された電圧に従って変化させ,ほ
とんど透過しない,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,すなわち白のレ
ベルまで変動する,複数の透過レベルを形成し,
順次の表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されており,前記配
列の画素が,前記順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において,ほ
ぼ非透過表示状態に駆動され,
前記供給されたTV信号の表示フィールドの表示情報が,TV信号フィー
ルド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で前記アクティブマトリッ
クスアドレス液晶表示パネルに書き込まれるのに続いて,選択信号が行駆動
回路によって各行アドレス導線に順番に再び供給されることにより,TV信
号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に前記画素の配列が再びアド
レスされ,この期間が続いている間,画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動
されるように選択される予め定めた基準電圧Vが列アドレス導線の各々にB
印加され,
表示情報アドレス期間の間の時間間隔中に画素を黒い状態に駆動すること
は,必要な休止期間をもたらし,それだけで十分であって,前記光源が,パ
ネルを連続して照明するように用意されており,
前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が,ほ
ぼ表示出力が生じない期間だけ分離されるマトリックス表示システムの動作
方法。」
4取消事由について
(1)前記2(2)ウ(イ)及び(3)のとおり,本願明細書(甲2,【0012】)及
び本願の【図1】(甲2)には,ネマティック液晶において,電圧を液晶
(画素)に印加したとき,電圧を印加した後,液晶の光透過率が当該印加電
圧に応じた透過率になるまでには一定の時間を要することが記載されてい
る。また,前記3(1)イ(ア)のとおり,引用例(甲1,7頁8行∼13行)
には,「駆動レベルの変化後に画素の透過率が安定するまでに要する時間
は,重要であるはずであり,典型的な表示パネルにおいて,パネルが供給さ
れたビデオ(PAL)信号のフィールド速度に等しい50Hzのフィールド
速度において駆動され,駆動レベルを例えば90%の透過率から10%の透
過率に変化させた場合,画素がその時の透過率に安定するために数フィール
ドを占めるであろうことが分かっている。」と記載されている。このよう
に,ネマティック液晶において,画像データに応じた電圧を液晶に印加した
とき,電圧を印加した後,液晶の光透過率が当該印加電圧に応じた透過率に
なるまでには一定の時間を要し,印加電圧の変化に対する透過率の変化には
遅れ(応答遅れ)があることが認められる。
引用発明においては,前記3(2)のとおり,TV信号の表示フィールドの
表示情報が,TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間
内でアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルに書き込まれるのに続
いて,1TV信号フィールド周期の残りの半分からなる期間が続いている
間,画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動されるように基準電圧Vが印加B
されることになるのであるが,当該画素の透過率が画像データに応じた電圧
の印加開始タイミングにおける透過率(元の透過率)に戻るかどうかは,上
記の「応答遅れ」を考慮しなければならず,「応答遅れ」によって元に戻ら
ないこともあり得るということができる。
しかし,基準電圧Vが印加されることによって画素の透過率が画像デーB
タに応じた電圧の印加開始タイミングにおける透過率(元の透過率)に戻れ
ば,画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動されることになるのであり,上記
の「応答遅れ」を考慮して,そのように設定することに格別の困難があると
も認められない。
そうすると,引用発明に接した当業者(その発明の属する技術の分野にお
ける通常の知識を有する者)は,「画素がほぼ非透過(黒い)状態に駆動さ
れるように基準電圧Vが印加される」ことから,基準電圧Vが印加されるBB
ことによって画素の透過率が画像データに応じた電圧の印加開始タイミング
における透過率(元の透過率)に戻るとの技術内容をも含まれているものと
認識するのが自然であり,引用発明にそのような技術内容が含まれていると
認めるのが相当である。
(2)原告らは,前記3(1)イ(キ)のとおり,引用例(甲1)に,①「表示パネ
ルの第1および第2アドレス期間(図4におけるfおよびf´の各々)の相
対的な持続時間も,ある程度変化させることができる。…例えばおのおのが
TVフィールド周期の1/3及び2/3,またはその逆となるように異なら
せることができる。」(23頁8行∼13行),②「さらに,画素の非透過
状態への駆動は,間隔の開始時に始める必要はない。代わりに,図4に示す
ような短い予め定めた遅延時間を,画素をこの必要な状態に設定する前に,
時間間隔の開始時に挿入してもよい。…この遅延時間dの終了時は,図4中
に破線で示されるように,照明期間の終了時と一致させて選んでもよい。画
素をこの間隔の残りの部分内でこの状態にするには,より速い走査速度を必
要とする。」(23頁20行∼27行)と記載されていることから,引用例
には,基準電圧Vを印加することで,1TV信号フィールド周期内で,画B
像データに応じた電圧の印加開始タイミング時の透過率(元の透過率)に戻
ることについては記載されていないと主張する。
しかし,上記①のとおり,引用例には,基準電圧Vを印加する期間を短B
くすることも,長くすることもできることが記載されている。そうすると,
引用発明においては,上記の「応答遅れ」を考慮して,基準電圧Vが印加B
されることによって画素の透過率が画像データに応じた電圧の印加開始タイ
ミングにおける透過率(元の透過率)に戻るように基準電圧Vを印加するB
期間を設定することができるから,上記①の記載は,上記(1)の認定を裏付
けるものであるということができ,これに反するものということはできな
い。
また,上記②における「画素をこの間隔の残りの部分内でこの状態にする
には,より速い走査速度を必要とする。」は,この後に,前記3(1)イ(キ)
のとおり,「これは行駆動回路をより高いクロック速度によって動作するこ
とによって達成することができる。」と記載されていることからすると,各
行アドレス導線に順番に選択信号を供給する行駆動回路による走査速度を,
より高いクロック速度で行駆動回路を動作させることによって速くすること
を意味すると認められる。もっとも,この「より速い走査速度を必要とす
る」場合には,遅延時間が設定されているため,その分だけ基準電圧VをB
印加する期間が短くなっているが,上記のとおり,基準電圧Vが印加されB
ることによって画素の透過率が画像データに応じた電圧の印加開始タイミン
グにおける透過率(元の透過率)に戻るように基準電圧Vを印加する期間B
を設定することができるから,上記②の記載も上記(1)の認定を左右するも
のではない。
(3)また,原告らは,引用発明は,「CRTディスプレイから得られる出力
に近似するようにして,見る人に知覚される動いている物の解像度が改善さ
れるようにした」ものであるところ,「CRTディスプレイから得られる出
力に近似するようにして,動いている物の解像度が改善される」ためには,
暗い期間の輝度レベルは各フィールド毎に異なっていても改善には十分であ
り,「暗い」期間すなわち休止期間の輝度は低いものの,画像データに応じ
て変化し,各フィールド毎に常に一定のレベルとなるものではないと主張す
る。
引用発明において,原告らが主張するように,必ずしも「暗い」期間すな
わち休止期間の透過率を画像データに応じた電圧の印加開始タイミング時の
透過率(元の透過率)とする必要がないとしても,基準電圧Vが印加されB
ることによって画素の透過率が画像データに応じた電圧の印加開始タイミン
グにおける透過率(元の透過率)に戻れば,画素がほぼ非透過(黒い)状態
に駆動されることになるのであるから,上記(1)で認定したように,引用発
明には,基準電圧Vが印加されることによって画素の透過率が画像データB
に応じた電圧の印加開始タイミングにおける透過率(元の透過率)に戻ると
の技術内容が含まれていると認められるのであり,原告らの上記主張も上記
(1)の認定を左右するものではない。
(4)したがって,審決が,本願発明と引用発明とは,「前記ネマティック液晶
に前記第1の電圧を印加し,前記ネマティック液晶に前記第2の電圧を印加
して,前記光透過率を変化前の元の値に前記所定の期間内で戻す」との事項
を備えている点で一致すると認定した点に誤りはなく,この認定を前提とし
て,引用発明と本願発明とは同一であると認定した点にも誤りはないから,
原告らの取消事由の主張は理由がない。
5結論
よって,原告らの請求を棄却することして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官森義之
裁判官澁谷勝海

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛