弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人道工隆三、同長義孝、同木村保男の上告理由第一点について。
 しかし、本件土地がa緑地計画地域内にあるからといつて、緑地拡張のためなる
契約文言を記載することがありえないわけではない(「緑地拡張」の文言が当然に
緑地計画地域の拡張を意味するとはいえない。)。
 原判決が右文言の記載を認めたからといつて、原判決に所論のような理由そごの
違法があるとはいえない。
 同第二点について。
 本件土地の売買にさいし、契約書に「緑地拡張のため」と記載し、かつ、表面の
理由をも同趣旨に変更したという事実があつたとしても、右事実で本件土地がもと
もとa緑地計画内に存せず、あらたな緑地計画の拡張によりはじめて売買の目的と
なつたということがいえないことは、第一点において判断したとおりである。
 論旨は、結局、原判決を正解しないことに基づくか、または、原審の専権に属す
る証拠の取捨、選択を非難するに帰し、採用しがたい。
 同第三点について。
 しかし、原判決挙示の証拠によると、原判決の認定した事実を容認しえないわけ
ではない。そして、右事実によると、本件土地は表面上は緑地拡張のためとするが
これを軍の用地とすべき予定のものたることを契約の内容条件として本件土地を上
告人に売り渡したが、その後判明するところによると、本件土地が軍のため使用さ
るべき事情はなく、しかも、被上告人において当時そのことを知つていたならば本
件土地の売買契約をする意思はなかつたというのであるから、軍用地として使用さ
るべきことが本件土地の売買契約の動機として相手方たる上告人に表示されている
と認めるのが相当であり(当小法廷判決昭和二七年(オ)第九三八号同二九年一一
月二六日民集八巻一一号二〇八七頁参照)、しかも、原判決の前記認定事実のもと
においては、重要なる事実につき被上告人において錯誤があつたものということが
できる。それゆえ、右錯誤により本件土地の売買は無効であるとした原判決の判断
は、当審もこれを是認しえないわけではない(所論のなかには、錯誤は単に主観的
評価のみならず客観的評価をもすべきである旨の論旨もあるが、原判決がこの点を
も考慮したうえ判断をしていることは、その判文および一件記録に徴するとこれを
認めることができる。)。
 所論は、結局採用しがたい。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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