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平成30年5月24日判決言渡
平成27年(行ウ)第16号怠る事実の違法確認等請求事件(住民訴訟)
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用及び補助参加によって生じた訴訟費用は原告ら5
の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告が,P1,P2,P3,P4,P5,P6株式会社,株式会社P7及び
被告補助参加人に対し,各自5594万4000円の支払請求を怠ることが違10
法であることを確認する。
2被告は,P1,P2,P3,P4,P5,P6株式会社,株式会社P7及び
被告補助参加人に対し,各自5594万4000円及びこれに対する平成27
年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
第2事案の概要等15
1事案の概要
本件は,α市の住民である原告らが,α市の執行機関である被告を相手に,
地方自治法242条の2第1項3号及び4号に基づき,
(1)α市の実施したα市立市民会館(以下「市民会館」という。)別館2階ホ
ール増築他建築工事に係る事後審査型制限付一般競争入札(以下「本件入札」20
という。)において,本件入札に参加したP6株式会社(以下「P6」という。),
株式会社P7(以下「P7」という。),被告補助参加人(以下「補助参加人」
といい,上記2社と併せて「P6ほか2社」という。)がP6を受注予定者と
する談合を行ったため,適正な競争入札が行われた場合の代金額に比して高
額の請負契約(以下「本件原契約」という。)が締結され,α市がその差額に25
相当する5594万4000円の損害を被ったことにより,P6ほか2社に
対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,被
告がその行使を違法に怠っているとして,被告がP6ほか2社に対してそれ
ぞれ上記損害賠償請求をしないことが違法であることを確認するとともに,
「怠る事実の相手方」であるP6ほか2社に対し,それぞれ上記損害賠償金
及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するよう求め,5
(2)α市長であるP1,副市長であるP2,α市職員であるP3及びP4(P
2及びP3と併せて「P2ら」という。)がP6ほか2社による談合を知り,
あるいは知り得たにもかかわらず,本件入札を実施し,その結果,適正な一
般競争入札が行われた場合の代金額に比して高額の本件原契約が締結され,
α市がその差額に相当する5594万4000円の損害を被ったことにより,10
P1及びP2らに対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているに
もかかわらず,被告がその行使を違法に怠っているとして,被告がP1及び
P2らに対してそれぞれ上記損害賠償請求をしないことが違法であることを
確認するとともに,「怠る事実の相手方」であるP1及びP2らに対し,それ
ぞれ上記損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するよう求め,15
(3)P1,P2ら及びα市職員であるP5が追加で工事が必要となることを隠
して,本件入札を行い,議会の議決を得て,本件原契約を締結したという一
連の不法行為により,高額な本件原契約及びそれを変更する契約(以下「本
件変更契約」という。)が締結され,α市が5594万4000円の損害を被
ったことにより,P1,P2ら及びP5に対して,不法行為に基づく損害賠20
償請求権を有しているにもかかわらず,被告がその行使を違法に怠っている
として,被告がP1,P2ら及びP5に対してそれぞれ上記損害賠償請求を
しないことが違法であることを確認するとともに,「怠る事実の相手方」であ
るP1,P2ら及びP5に対し,それぞれ上記損害賠償金及びこれに対する
遅延損害金の支払を請求するよう求めた,25
住民訴訟の事案である。
2前提事実(当事者間に争いがない事実,証拠(書証番号は特記しない限り枝
番号を含む。)により容易に認定することができる事実及び当裁判所に顕著な事
実)
(1)当事者等
ア原告らは,いずれもα市の住民である。5
イ被告は,α市の執行機関たる市長である。
P1は,平成24年5月にα市長に就任し,現在に至るまでその職にあ
る。
ウP2,P3及びP4は,本件原契約及び本件変更契約締結の当時,それ
ぞれα市の副市長,総務部長及び総務部総括次長の職にあり,P5は,α10
市F部建築営繕課(以下「建築営繕課」という。)の職員であった(甲25,
乙26)。
エP6ほか2社は,いずれもα市内に本店を有する建設会社である(甲2
0,乙15,弁論の全趣旨)。なお,P7は,P1の父が設立した会社で
あり,P1は平成24年3月20日まで同社の代表取締役を務め,同日以15
降現在に至るまで,同人の妹が同社の代表取締役を務めている(甲5)。
(2)本件原契約及び本件変更契約に至る経緯等
ア市民会館は,α市β町地内にあり,本館と別館とで構成される。市民会
館別館2階には,約400人を収容できるホール(以下「本件ホール」と
いう。)があった。20
イα市は,本件ホールの改築及び新ホールの増築等の工事(以下「本件工
事」という。)を行うことを計画し,平成25年11月6日,株式会社P8
(以下「P8」という。)との間で,本件工事の設計業務の委託を内容とす
る業務委託契約を締結した(乙14)。
市民会館は,いわゆる既存不適格建築物(建築基準法3条2項参照)で25
あったため,本件工事を実施し市民会館を増改築する場合には,同法86
条の7等の規定により緩和される場合を除き,同法3条3項3号又は4号
により,同法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定(以下「建築関係
法令」という。)の適用(遡及適用)を受けることとなるものであった。そ
こで,α市は,P8に対し,本件工事の実施により建築関係法令が適用さ
れることとなる範囲(以下「遡及適用範囲」という。)について,大阪府建5
築主事との間で事前協議を行うよう指示した(乙26)。
ウ建築営繕課は,平成26年3月下旬,P8を通じて大阪府建築主事から,
本館部分につき,以下のAからEまでに係る工事をするよう指示を受ける
とともに,同工事をしなければ建築確認をすることができない旨の見解を
示された(乙25,26)。10
A.排煙区画の既存部遡及
B.堅穴区画部の遮煙性能確保の既存部遡及
C.昇降機設備の耐震性確保
D.昇降機設備の戸開走行防止対策
E.屋上防火水槽の改修15
エP8は,平成26年4月,α市に対し,協議先を大阪府建築主事から大
阪府の指定確認検査機関である株式会社日本確認検査センター(以下「日
確検」という。)に変更したい旨を申し出て,α市はこれを了承した(乙2
5,26)。
オα市は,本件入札に関し,α市事後審査型制限付一般競争入札実施要領20
(以下「本件実施要領」という。甲1の4。)を作成し,平成26年4月2
5日,入札公告を実施した。
本件実施要領には,概ね以下の記載がある。
(ア)競争入札に付すべき事項等は,以下のとおりである(本件実施要領
1項)。なお,下記c記載の工事には,排煙区画の既存部遡及に係る工事25
(上記ウのA。以下「排煙区画工事」という。)が含まれている。
a工事名称
市民会館2階ホール増築他建築工事
b工事場所
α市β町地内
c工事概要5
2階ホール増築工事,2階ホール既設改修工事,外溝工事
d工期
議会の議決の翌日から平成26年11月28日まで
e予定価格及び最低制限価格
予定価格:2億0736万円(税込金額)10
1億9200万円(税抜金額)
最低制限価格:1億5502万7520円(税込金額)
1億4354万4000円(税抜金額)
(イ)本件入札の入札参加資格要件では,地方自治法234条2項,地方
自治法施行令167条の5及びα市事後審査型制限付一般競争入札制15
度に関する要綱(平成9年要綱第9号,以下「本件要綱」という。甲3,
乙28。)4条の規定等に基づき,登録の住所(本店)がα市内の者(以
下「市内業者」という。)は,経営事項審査結果通知書(審査基準日が
平成24年10月23日以降のもの)の建設工事の種類「建築一式」の
総合評定値(以下「総合評定値」という。)が700点以上であること20
(JVを除く。),登録の住所(支店又は営業所)がα市内の者は,総合
評定値が900点以上であること(JVを除く。),登録の住所がα市外
の者(以下「市外業者」という。)は,総合評定値が1200点以上で
あること(JVを除く。)とされ,また過去10年間に建築工事で予定
価格の50パーセント以上の国又は地方公共団体の元請けとしての施25
工実績があることなどの要件が課されていた(本件実施要領2項)。
(ウ)入札参加希望者は,入札書と共に価格内訳書を提出する必要がある
(本件実施要領11項)。
(エ)契約の締結については,落札決定後に仮契約を締結して,α市議会
の議決を得たときに本契約の効力が生ずるものとされた(本件実施要領
17項,本件原契約に係る建設工事請負契約書(甲9,10)53条)。5
カα市は,平成26年5月22日,本件入札を実施し,P6は,予定価格
と同額である1億9200万円(税抜金額)で応札して,落札した。
本件入札に参加申請したのは,P6の他に株式会社P9,P7及び補助
参加人の4社であり,このうち株式会社P9は施工実績の要件を満たさな
いとして参加が否定され,またP7は入札価格を2億2164万円(税抜10
金額),補助参加人は入札価格を2億4500万円(税抜金額)といずれも
予定価格を上回る金額で応札したため,失格となった。(以上につき,甲1
4,20)
キα市は,平成26年5月23日,建築基準法6条の規定に基づく建築確
認申請書を日確検に提出したところ,日確検は,同月26日,遡及適用範15
囲について上記ウのBからEまでの範囲(以下「本件遡及適用部分」とい
う。)であり,それらの部分について,本件工事と併せて工事が必要との見
解を示した。
クP2らは,本件工事に係る工事請負仮契約締結案についてP1に上程し,
平成26年5月29日,P1は同仮契約締結を認める旨の決裁をした(甲20
8)。これを受けて,α市はP6との間で,請負金額を2億0736万円
(税込金額)とする仮契約を締結した(甲9,10)。
ケP8は,日確検との間で協議を継続した結果,平成26年6月23日,
本件工事と同時に,本件遡及適用部分の工事(以下「本件追加工事」とい
う。)を実施することで協議を終了し,同追加工事の図面及び内訳書等を25
建築営繕課に提出した。本件追加工事に係る費用は,見積額7236万円
(税込金額)とされた。(以上につき,乙25,26)
コα市議会は,平成26年6月25日午前10時からの平成26年6月α
市議会定例月議会(以下「本件議会」という。)において,本件原契約締
結の議案を審議・可決し,これにより,本件原契約の効力が発生した。P
1,P2及びP3は,地方自治法121条により本件議会に出席したが,5
本件追加工事が必要であることについての説明をしていない。(以上につ
き,甲9~11,22)
P2,P4及びP5は,同日午後2時から2時34分まで開催された議
会運営委員会において,本件工事について建築確認を受けるためには,本
件追加工事が必要であり,早急に本件追加工事にかかる費用に対する補正10
予算案の決議が必要である旨の説明をし,同委員会は,同年7月8日から
同月10日までの間,特別議会を開催することを決した(甲23)。
サα市は,P6に対し,本件追加工事についても同社に発注することを打
診し,同社の内諾等が得られたことから,平成26年7月8日,特別議会
に対し,本件追加工事に伴う請負契約の変更及び補正予算の計上に係る各15
議案を提出した。同特別議会は,同月9日,いずれの議案も可決した。(以
上につき,乙23)
シP2らは,本件工事に係る設計変更及び本件変更契約締結について,P
1に上程し,平成26年7月10日及び16日,P1はいずれも認める旨
の決裁をした(甲12,13)。20
これを受けて,α市は,同月22日,P6との間で,請負金額を723
6万円(税込金額)増額する本件変更契約を締結した(甲4)。
ス日確検は,平成26年7月24日,α市に対し,本件工事及び本件追加
工事に係る建築確認をして,確認済証を交付した(甲26)。
(3)本件訴訟に至る経緯25
ア原告らは,平成26年10月27日,α市監査委員に対し,住民監査請
求を行ったところ,同監査委員は,同年12月22日付けで,同監査請求
には理由がないとしてこれを棄却し,原告らにその旨通知した(甲1,2
の1)。
さらに,同監査委員は,同日付けで,α市長宛ての「要望書」と題する
書面を作成した。同要望書には,予定価格を公表しているにもかかわらず5
これを上回る価格で入札するケースの出現は,市の発注価格の妥当性に疑
義が生じ兼ねないため,少なくとも設計額の算出から実際の入札までに相
当な期間が経過しているものについては,発注価格の妥当性を再確認する
とともに,必要に応じて増額等の修正の措置を行われたい旨,また,本件
追加工事については早い時期に必要性を把握して当初設計に含んでおくべ10
きものであり,設計変更で計上することは適切とはいえず,このような事
後における多額の契約変更は,入札の公平性や妥当性を阻害する可能性が
ある旨の記載がある(甲2の2)。
イ原告らは,平成27年1月16日,前記事案の概要(1)の各請求及び同(2)
の各請求について本件訴えを提起し,その後,平成29年2月22日付け15
訴えの変更申立書をもって,同(3)の各請求のうちP1及びP2らに係るも
のを追加し,さらに,同年10月10日付け訴えの変更申立書をもって,
同(3)の各請求のうちP5に係るものを追加した(顕著な事実)。
なお,前記事案の概要(3)の各請求(本件追加工事の存在を隠して本件入
札から本件原契約締結に至るまでの一連の行為をしたP1,P2ら及びP20
5に対する不法行為に基づく損害賠償請求権についての各請求)は,いず
れも,原告らがα市監査委員から監査結果の通知を受けた日から30日を
経過した後に追加されたものであるが,これらの請求は,本件原契約の締
結に関与した執行機関又は職員に対する不法行為に基づく損害賠償請求
権に係る請求であるという点において,前記事案の概要(2)の各請求(談合25
を知りあるいは知り得たのに本件原契約を締結したP1及びP2らに対
する不法行為に基づく損害賠償請求権についての各請求)と同一であると
いえることなどからすれば,同(3)の各請求に係る訴えは,当初の訴え提起
の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところが
ないと解すべき特段の事情があるということができ,適法な訴えであると
いうことができる。5
3争点
(1)談合をしたP6ほか2社に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行
使を怠る事実について
アP6ほか2社による談合の有無(争点①)
イ談合によりα市に生じた損害の有無及びその額(争点②)10
(2)談合を知りあるいは知り得たのに本件原契約を締結したP1及びP2ら
に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実について
アP6ほか2社による談合の有無(争点①)
イP1及びP2らが談合を知りあるいは知り得たか否か(争点③)
ウ談合によりα市に生じた損害の有無及びその額(争点②)15
(3)本件追加工事の存在を隠して,本件入札から本件原契約締結に至るまでの
一連の行為をしたP1,P2ら及びP5に対する不法行為に基づく損害賠償
請求権の行使を怠る事実について
ア本件原契約に本件追加工事を含めずに本件入札を行い,議会の議決を得
て同契約を締結した行為の違法性の有無(争点④)20
イ本件原契約によりα市に生じた損害の有無及びその額(争点⑤)
4争点に関する当事者の主張
(1)争点①(P6ほか2社による談合の有無)について
(原告らの主張)
ア入札談合について25
入札談合は,主観的な合意・共同が立証されなければ談合がないという
ことはなく,入札の状況,入札参加者の状況,入札者の面識と面談可能性,
実際の入札からその存在を推認することができる。
イ本件入札の状況,入札参加者の状況,面識の有無等について
(ア)α市は,本件入札において,入札参加資格要件のうち総合評定値に
つき,市内業者と市外業者とで500点もの点差を設定するなど,他の5
市に比べても市外業者が参入困難な競争性を欠く制度を用いていた。被
告は,本件入札の入札参加対象業者は,市内業者が5社,市外(府内)
業者が86社もあったことから競争性が担保されていた旨主張するが,
実際に本件入札に参加したのは市内業者であるP6ほか2社のみであり,
互いに面識,交流の深い市内業者であったことからすると,実質的競争10
性が担保されていたとはいえない。
(イ)また,α市では,平成19年6月頃から突如工事費内訳書の提出を
求めることを止め,価格内訳書の提出に変更し,本件入札においても価
格内訳書の提出で足りるとされていたことから(甲1の4),ますます談
合を容易にする条件ができていたといえる。15
ウ実際の入札及び近時のP6ほか2社による入札状況について
(ア)談合は,受注予定者以外の者が,受注予定者に競争を望まないこと
を前提にしたカルテルであるから,落札価格を決める権限を委ねられた
受注予定者は,予定価格の範囲内で可能な限りそれに近い,つまり最も
利益を得られる価格で入札する。そのため,談合が存在する場合には,20
落札率が90パーセント台後半に張り付くことになるところ(甲19),
本件入札においてもP6が予定価格の100パーセントで落札している。
そして,P1がα市長に就任した平成24年5月以降にα市で行われ
た事後審査型制限付一般競争入札(落札者がJVのものは除く。)は6つ
あるが,6ついずれもP6ほか2社の全て又はいずれかの業者が参加し25
ており,そのうち同3社が落札した工事は5つで,そのいずれもが予定
価格の93パーセントを超える高値で落札されている。同月以前に行わ
れたα市の事後審査型制限付一般競争入札の落札率が60パーセント台
であったことからすると,対照的である(甲17)。
そうすると,本件入札も,P7及び補助参加人が入札前に公表されて
いた予定価格を超える入札をしてあえて失格となり,それによりP6が5
予定価格の100パーセントで落札したのであるから,本件入札は,競
争制限された入札方法のもとで繰り返し行われてきた談合の一環であっ
たといえる。
(イ)また,談合がなかったのであれば,予定価格を超える入札をしたP
7及び補助参加人は,必ず積算根拠を示すことができるはずであるのに10
合理的な説明もないのであるから,本件入札は談合によって行われたも
のと考えざるを得ない。
エ行政のゆがみが談合を推認させること
(ア)α市は,本件追加工事に係る費用の増額という意図的に明白な事実
を反映しない予定価格を設定して本件入札を実施し,本件原契約を締結15
したものであり,このような行政のゆがみは,談合行為という意図的な
行為の介在なくしては説明し得ない。
(イ)また,本件要綱8条では,入札者の数が3者に満たない場合は,入
札の執行を中止するものとする旨定め,入札の競争性を担保することに
より行政の公正を図っているものと解されるところ,本件入札では,参20
加したP6以外の2社は,予定価格を上回る金額で入札した結果,失格
となり,P6のみが有効な入札をしたのであるから,入札者の数は実質
的には1者であり,入札の競争性を担保した上記要綱8条の趣旨に反す
る。そのため,α市は,他市がこのような入札を有効とせず,再入札を
求めているように,本件入札を中止すべきであった。それにもかかわら25
ず,P1及びP2らが本件入札を有効なものとして続行したことは,談
合に基づく本件入札への同人らによる不正加担のあらわれである。
オ被告の主張には理由がないこと
(ア)被告及び補助参加人は,予定価格が実勢価格を下回り,両者の価格
が乖離することは特異ではないとして,本件入札においてP7及び補助
参加人が予定価格を超える金額で応札した理由を説明するが,「公共建築5
工事の円滑な施工確保に係る当面の取組について」(平成26年総行行第
12号,国営計第102号,国土入企第24号,乙8)によると,予定
価格が実勢価格を下回りやすいなどの状況が発生するのは,予定価格の
設定が入札の数か月以上前となる場合であって,入札公告日と入札日と
の間に1か月ほどしかなかった本件入札は,前提を異にする。10
また,予算決算及び会計令80条2項や「公共工事の入札及び契約の
適正化を図るための措置に関する指針」(平成23年8月9日閣議決定,
甲21)16頁において,地方公共団体の長は,公共工事の入札の予定
価格の設定に当たっては,最新の実勢価格を適正に反映させなければな
らないなどと定めていることからすると,α市長が法令に従って予定価15
格を設定している限り,その予定価格は実勢価格を反映した価格のはず
であるから,被告及び補助参加人の主張は全く根拠を欠くものである。
(イ)さらに,被告は,γ市やδ市の例を挙げ,予定価格を超える金額で
の応札が特段異例ではないなどと主張するが,δ市の例(乙4)では,
不調となった入札において,予定価格を超える金額での応札があったか20
どうか明らかでなく,またγ市の例(乙1)においても,2社が入札を
辞退し,残り1社が予定価格を超える金額で入札したことから,入札そ
のものが不調に終わっている点で本件入札とは異なる。被告の主張は,
予定価格を超える金額での応札及び落札した1社が予定価格の100パ
ーセントで応札するという本件入札の異常性を無視するものであり,か25
かる異常性を否定する理由にはならない。
(被告の主張)
ア入札参加資格要件について
原告らは,本件入札の入札参加資格要件では,市外の業者に極めて高い
総合評定値を設定しており,その結果,実質的に限られた市内業者のみが
入札に参加することになる旨主張するが,事後審査型制限付一般競争入札5
は,国や地方公共団体において採用されている一般的なものであり,また
上記資格要件における総合評定値の設定も当該契約の目的,内容に照らし
それに相応する業者の資力,信用,技術,経験等の経営状況,発注工事の
業務遂行能力,市内業者の育成等を総合考慮して設定されたもので,一般
的に認められる合理的なものである。そして,本件入札において入札参加10
資格要件を満たすものは市内業者5社の他にも市外業者86社いたこと
に鑑みると,本件入札につき,市内業者3社しか入札に参加しなかったこ
とから競争性が確保されていないと断ずるのは失当である。
イ予定価格と同額あるいはそれを上回る価格での入札が不自然ではないこ
と15
原告らは,法令により定められた予定価格が実勢価格を下回ることはな
い旨主張するが,γ市では予定価格約74億円に対し約24億円も上回る
応札があり,他の応札参加予定者が全て辞退するという異常事態が発生し
たことなどからもうかがわれるように,地方公共団体の算定した予定価格
が実態にそぐわないものとなっているということは,現時点での建設業界20
ではままあることである。また,近畿の自治体による公共工事では,東日
本大震災の復興工事や全国での公共事業拡大等で人件費や資材価格が急
騰し,採算が厳しい工事の入札が敬遠されていたこと,上記γ市の例の他
にもδ市立総合体育館建設工事の一般競争入札の例(乙4)のように,予
定価格を超える事例が生じていたことからすると,本件入札における予定25
価格をオーバーした応札も必ずしも異常なものとはいえず,違法な談合と
関連付けるのは皮相的であって失当である。
さらに,予定価格の100パーセントでの入札は,これを下回る入札業
者がいるのであれば,落札を諦めるということが充分考えられるのである
から,これをもって談合という指摘は的を射たものではない。
ウ本件変更契約締結に至る経緯にやむを得ない事情があること5
原告らは,行政のゆがみが談合の存在を推認させるなどと主張するが,
大阪府との事前調整段階での不手際,見通しの甘さは否めないとしても,
本件変更契約は不測の事態に対するやむを得ざる対応によるものであっ
て違法なものではない。
(補助参加人の主張)10
ア補助参加人が本件入札の入札価格を積算した時点では,補助参加人内部
で人員や資力の不足が発生しており,また一般的にも鉄骨資材や人件費等
が高騰していたことから,本件入札における予定価格では,補助参加人に
とり到底利益を確保し得ず,まして予定価格を下回った価格で応札するこ
とは不可能な状況であることが判明した。15
そのため,入札価格がたとい予定価格を上回る金額であったとしても,
補助参加人が営利企業として適切な利益を見込んだ見積価格にて応札す
ることはむしろ当然であり,加えて,近年の公共工事における予定価格が
人件費の高騰等を合理的に見込んでおらず,不当に建設会社の利益を圧迫
しており,入札参加者が提示する入札価格は,このような建設業者の意向20
を表明し得る唯一の手段であることからすれば,補助参加人が辞退せずに
本件入札へ参加したことには合理的な理由がある。したがって,談合の上
わざと失格になりP6に落札させた事実はない。
イ原告らは,予定価格を超える金額での入札が特異な入札であるかのごと
く主張するが,予定価格を超える金額での入札は一般的に行われているほ25
か,補助参加人も他市で行っているのであって(丙1~4),予定価格が実
勢価格と乖離することは特異なことではない。また,原告らが主張するよ
うに,殊更に補助参加人が提示した入札価格の積算根拠を示さなければな
らないものではない。
ウ原告らの主張は,本件入札について,P6ほか2社のみが意思を通じれ
ば談合が成立することを前提とするものであるが,原告ら自身,本件入札5
参加資格を有する業者が市内で5社,市外で86社に上ることを認めてお
り,この状況下で,そもそも上記3社のみで談合が成立することはあり得
ない。
(2)争点②(談合によりα市に生じた損害の有無及びその額)について
(原告らの主張)10
本件入札において,P6ほか2社による談合がなければ,請負金額を予定
価格の20%以下に抑えることが可能であったのであるから(甲7参照),P
6ほか2社の談合によりα市が被った損害は,予定価格の20パーセントで
ある5594万4000円を下らない。
(被告の主張)15
争う。
(3)争点③(P1及びP2らが談合を知りあるいは知り得たか否か)について
(原告らの主張)
上記(1)(原告らの主張)のとおり,本件入札は,P1がα市長に就任した
後,繰り返し行われてきた談合の一環である。そして,P1及びP2らは,20
談合を知りあるいは知り得たにもかかわらず,誠実管理執行義務を怠り,本
件原契約を締結している以上,共同不法行為が成立する。
(被告の主張)
上記(1)(被告の主張)のとおり,本件入札には談合が存在しないことから,
原告らの主張は前提を欠く。25
(4)争点④(本件原契約に本件追加工事を含めずに本件入札を行い,議会の議
決を得て同契約を締結した行為の違法性の有無)について
(原告らの主張)
ア本件変更契約を本件原契約からあえて分離し,本件原契約のみを競争入
札した行為について
(ア)α市は,平成26年3月下旬の時点において,大阪府建築主事から5
建築確認申請を通すためには本館も改修する必要性があることを指摘さ
れていたことからすると,本件入札の予定価格に,本館改修のための工
事(追加工事)にかかる費用を増額することを当然考慮しなければなら
なかった。それにもかかわらず,α市は,追加工事の見積もりを出さず,
建築確認を受けられない違法な本件原契約の工事のみを取り出し,本件10
入札の予定価格を設定し,同入札を行っている。
本件入札を実施した後に,本件追加工事を実施するため本件原契約が
変更されるに至り,その変更によって請負代金額は7236万円(当初
の工事請負契約額の34.9パーセントに相当)も増額し,本件入札の
公平性を害したことは,α市監査委員がα市長宛てに提出した要望書(甲15
2の2)の中で指摘するとおりである。
(イ)被告は,後発的に日確検から指摘があり,本件追加工事をする必要
性が生じた旨主張するが,P1が本件原契約の設計変更に係る決裁をし
た時期は,本件議会における議決により,本件原契約の効力が発生した
日からわずか15日後であったこと,また本件追加工事は建築関係法令20
に適合させることを内容とすることからすると,本件追加工事の必要性
は,本件原契約締結前から当然明らかであり,P1,P2ら及びP5に
おいてその旨認識していたはずである。
それにもかかわらず,同人らは当初設計に含まれるべき工事内容を設
計金額に計上しなかったのであり,被告の主張する日確検からの後発的25
な指摘は,本件追加工事を含めずに本件入札を行ったことの合理的理由
とはならない。
(ウ)仮に本件入札の実施時点において,未だ本件追加工事が現に必要と
なることを認識していなかったとしても,上記のとおり,建築営繕課は,
大阪府建築主事から,建築確認をするためには市民会館の本館について
も防災対策を目的とする工事が必要である旨指摘されていたこと,また5
別館にある本件ホールと一体として本館を利用する場合,本館だけが防
災対策の工事が不要であり遡及適用を受けない,あるいはその遡及適用
範囲が縮減されることはおよそ考えられない取扱いであること,さらに
は,P5は二級建築士の資格を持ち,建築関係法令の遡及適用に関し専
門的知識と経験を有していたことからすれば,P5は,本件遡及適用部10
分について工事対象としないまま建築確認を受けられる可能性が著しく
低いことを当然に知っていたし,また知り得た。それにもかかわらず,
遡及適用範囲の縮減を見込めるという甘い見通しのもとに,本件追加工
事が発生する可能性について,関係部署であるα市市民生活部生活安全
課(以下「生活安全課」という。)及び同市総務部契約課(以下「契約課」15
という。)に適時に報告する義務(α市事務分掌条例施行規則(平成7年
規則第7号)15条3項7号)を怠り,建築関係法令に反する違法な本
件入札が実施されるのを漫然と放置しており,公務員の法令遵守義務(地
方公務員法32条)に違反している。
そもそも,入札対象となる工事は,建築確認が得られて初めてその内20
容が確定するものであるから,本件工事のように,建築関係法令に適合
するか疑義のある工事については,入札がやり直しとなることを避ける
ため,建築確認申請をして,建築関係法令に適合することの見通しが付
いた段階で,入札を実施しなければならないはずである。
(エ)加えて,生活安全課は,市民会館の安全性に責任を持ち,建築関係25
法令に適合する安全な建物を市民に利用させる事務を,また契約課は,
建築関係法令に適合しない違法な工事を入札対象としない事務を分担し
ていること,さらには,α市長は,自らが決裁者となる工事が法令に適
合することを当然に前提とすべきことからすれば,上記関係部署が法令
に適合するよう他の部署と連携することを怠り,漫然と違法な本件工事
のみを取り出して本件入札を実施したことは,P1及び上記各部署の法5
令遵守に対する意識の低さの表れといえる。
イ本件原契約締結について議会の議決を得たとはいえないこと
α市は,本件原契約締結に係る議決を得る以前の平成26年6月23日
には,既に本件遡及適用部分について工事が必要であることを認識し,そ
れに伴い新たに7236万円が必要であるとの積算が出ていたにもかか10
わらず,P1,P2ら及びP5は,本件追加工事の存在及び工事代金の増
額を秘して,本件議会における適正な審議を妨害し,同月25日に本件原
契約締結に係る議決を得ており,地方自治法96条1項5号,α市の議会
の議決に付すべき契約および財産の取得または処分に関する条例(昭和3
9年条例第7号,以下「本件条例」という。甲24。)2条に違反する行15
為をしている。
ウ小括
以上のとおり,P1,P2ら及びP5は,本件追加工事を秘して本件入
札を実施することで,同入札の公平性を阻害した上,本件議会における適
正な審議を妨害し,地方自治法96条1項5号,本件条例2条に違反する20
行為をしており,これらの一連の行為の違法性は明らかである。
(被告の主張)
ア本件原契約及び本件変更契約に至る経緯について
(ア)市民会館は,昭和46年に開館し,各種講演会,研修会,美術展示
等で連日多くの市民らに利用されていたが,本件ホールについて,天井25
が全体的に低いなどの苦情が寄せられ,また老朽化によりドアを閉めて
も会場外に音が漏れ,同ホールの収容人数を超える来場者がロビーに溢
れるようなイベントが年に数回行われるという状況であった。
そのため,α市は,市民の苦情への対応のため本件工事を実施するこ
ととし,同工事を終え,市民会館をオープンする時期については,市民
会館が最も多く利用されるのが例年11月から翌年2月までであること,5
特に利用者が年末年始に他の施設を利用しなければならない不便さの回
避,工事中の騒音等による会議室への影響の短期化等の必要性から,平
成26年12月を目指すこととした。
(イ)P8は,平成25年12月の段階より,建築営繕課の指示を受け,
大阪府建築主事と遡及適用範囲について協議を開始したが,協議の内容10
は,主として,別館2階のホールの増改築等工事に伴い,別館部分を現
行建築基準法に適合させるための改修についてであった。
(ウ)建築営繕課は,平成26年3月下旬,前記前提事実(2)ウのとおり,
P8を通じて,大阪府建築主事から本館部分について多岐にわたる遡及
適用範囲についての指示を受けたことから,同範囲を減縮させるために15
迅速に協議を進め,より速い応答を求める必要があると判断し,同年4
月頃,P8の協議先を大阪府建築主事から日確検へと変更した。
(エ)日確検は,P8が日確検に対しセカンドオピニオンを求めた平成2
6年4月の時点では,大阪府建築主事からの指摘事項(前記前提事実(2)
ウ)に係る本館部分の改修について不要であるとの見解を示しており20
(乙25),P8は,同月21日,α市に遡及適用範囲は排煙区画工事
以外にないとの設計内訳書(乙27)を渡した。α市は,同月25日,
本件工事の入札公告をし,その際,入札予定価格に,排煙区画工事に係
る既設のサッシ改修及びオペレーター装置付の工事価格のみ反映した。
(オ)α市は,平成26年5月23日,建築確認申請書を日確検に提出し25
たところ,日確検は,従前の見解と異なり,遡及適用範囲について本件
遡及適用部分も含まれるとの見解を示した。
(カ)P8は,日確検との折衝によって遡及適用範囲を縮減できるとの望
みから,日確検と継続的に協議をしたが,平成26年6月23日,本件
遡及適用部分に係る工事(本件追加工事)を実施することで協議を終了
し,本件追加工事に関する費用を7236万円(税込金額)と見積もり,5
α市に最終設計を提出した。
(キ)α市は,本件追加工事について,既に工事施工中のP6に発注する
のが相当であると判断し,契約課は,平成26年7月8日,特別議会に
本件変更契約締結等に係る議案を提出し,同月9日には議会の議決を,
同月16日にはα市長による決裁を得た上で,同月22日,P6との間10
で本件変更契約を締結した(甲13)。
イ本件追加工事を含めずに本件入札を行い,本件原契約を締結したことに
合理性があること
原告らは,建築関係法令に適合しない違法な工事のみを取り出して,本
件入札を強行したなどと主張するが,上記アのとおり,市民会館の設計業15
務の担当部署である建築営繕課は,平成26年4月21日にP8から遡及
適用範囲は排煙区画工事以外にないことを示した設計内訳書(乙27)を
受け取り,これを契約課に渡したにすぎないのであるから,P1,P2ら
及びP5が本件入札の期日までに本件追加工事が発生することを予見す
ることは困難で,同期日を中止せず,落札業者を決定したことにはやむを20
得ない事由がある。
ウ本件原契約締結に係る議会の議決は有効に成立していること
(ア)原告らは,本件追加工事の存在を秘して本件議会における適正な審
議を妨害し,本件原契約締結に係る議決を得た旨主張するが,建築営繕
課及びP8は,日確検との折衝によって遡及適用範囲を縮減できると考25
え,協議を重ねてきたのであり,本件追加工事の内容及び金額が確定し
たのは,本件議会の直前である平成26年6月23日であった。
(イ)そして,本件追加工事を実施するには,予算を確保する必要がある
ところ,支出負担行為として,①一般競争入札によって締結した本件原
契約を変更する方法,②当初の設計とは異なる附帯工事を行うとして随
意契約で行う方法,③本件契約とは別契約として入札を実施する方法等5
を検討した結果,本件追加工事の建築の積算額が7236万円で本件原
契約の請負代金に対し34パーセントあまりの増額となることからする
と,②の方法では本件条例の規定からも,議会軽視の批判が生じる可能
性があること,③の方法では同一敷地内で同一時期に複数の業者が入る
ことになり,安全面あるいは工事の効率面から難点があること,安全性10
を確保しつつ円滑に2つの工事を進めれば,平成26年12月のオープ
ンに間に合うこと,当初の入札では3社からしか応札がなく,そのうち
2社が予定価格を超えていたことなどを考慮して,①の当初の本件原契
約を変更する方法を採ったのである。
(ウ)そもそも,本件議会における議案は,適法な本件入札に基づき締結15
された仮契約について,本契約としての効力を生じさせるためのもので
あるから,この議案の審議に当たっては,入札が実施された後に判明し
た本件追加工事,つまり本件変更契約締結の必要性に関しては説明する
必要がなかったために,説明していないだけである(本件変更契約の必
要性に関しては,平成26年7月8日に開催された特別議会で議決を得20
ている。)。
(エ)そうすると,P1,P2ら及びP5は,本件追加工事の存在を秘し
て,本件原契約締結に係る議決を得たものではなく,地方自治法96条
1項5号,本件条例2条に違反せず,何ら不法行為は成立しない。
(5)争点⑤(本件原契約によりα市に生じた損害の有無及びその額)について25
(原告らの主張)
アP1,P2ら及びP5が当初から本件原契約と本件変更契約に関する工
事費用とを一体とする予定価格を設定し,当該予定価格をもとに一般競争
入札を実施していれば,P6ほか2社以外の業者の参入を促し,より競争
性の確保された入札を実施することができたはずである。したがって,適
正な競争入札を実施した場合と適正な競争入札を回避した本件入札との5
差額が損害額となる。
イまた,P1,P2ら及びP5が,本件議会における適正な審議を妨害し
たことにより,本件原契約締結について議会の議決を経たということはで
きず,本件原契約は違法無効であるのに,α市に違法無効な同契約に基づ
く財政支出をさせている。これにより,α市が被った損害は,本件原契約10
及び本件変更契約の全額となるが,既に本件工事及び本件追加工事は完了
していることから,結局,損害額は,本件原契約及び本件変更契約を一体
とする予定価格をもとに適正な競争を実施した場合の契約金額との差額と
なる。
ウそうすると,これらの不法行為によりα市が被った損害額は,予定価格15
の20パーセントである5594万4000円を下らない。
(被告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実20
前記前提事実,証拠(乙25,26,証人P5のほか,各項掲記のもの)及
び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1)α市各部署の役割
α市には,地方自治法158条1項の規定に基づき,市長の権限に属する
事務を分掌させるため,内部組織として10の組織が設置されているところ25
(α市事務分掌条例1条),そのうち総務部に属する契約課は,請負契約(工
事及び製造に係るものに限る。)に関すること等を(α市事務分掌条例施行規
則11条4項),市民生活部に属する生活安全課は,市民会館に関すること等
を(同規則12条2項),街づくり部に属する建築営繕課は,市有建築物及び
その他建築物の設計,施工及び監督に関すること等を(同規則15条7項)
掌る(乙5,6)。5
(2)本件入札に至るまでの経緯
ア市民会館は,昭和46年竣工時から40年以上経過したことにより老朽
化しており,また特に本件ホールについては,市民から天井が低いなどの
苦情が寄せられていたことから,生活安全課は,平成25年10月2日,
本件工事が必要と考え,建築営繕課に対し,本件工事に係る設計業務を依10
頼した。
その際,本件工事を終え,市民会館をオープンする時期については,市
民からの苦情に早期に対応すること,また年末年始に利用する市民が多い
ことなどを理由に,平成26年12月を目指すこととした。
イ建築営繕課のP5らは,本件工事の設計業務は一級建築士が行う必要が15
あることから,P8に同業務を委託することを決し,平成25年12月頃,
P8に対して,本件ホールを改築するとともに,別館の東側に新ホールを
増築すること及び同増改築に伴う遡及適用範囲について,大阪府建築主事
と事前協議を行うよう指示し,P8は,同建築主事と事前協議を開始した。
ウP8は,平成26年2月20日,建築営繕課に対し,大阪府建築主事と20
協議したところ,日影規制の関係で,市民会館の東側に新ホールを増築す
ることはできない旨指摘を受けたことを報告した。
建築営繕課は,上記報告を受け,新ホールを市民会館の南側に増築する
ことを検討し,生活安全課の了承も得られたことから,P8に対し,市民
会館の南側に増築する内容の設計等をするよう指示した。25
エ建築営繕課は,平成26年3月下旬,P8を通じて大阪府建築主事から,
前記前提事実(2)ウ記載のAからEまでの箇所を工事するよう指示を受け
るとともに,それらの工事を行わない限り,建築確認をすることができな
い旨の見解を示された。なお,本件遡及適用部分(上記B~E)は,市民
会館のうち本館部分に係る工事である(甲26,乙21(7頁),26(別
紙),弁論の全趣旨)。5
建築営繕課は,P8から,遡及適用範囲の協議には図面の作成等に多く
の時間を要し,同年12月のオープンに間に合うか懸念されるため,より
迅速に協議を進める必要があるとして,日確検に意見を仰ぎたい旨の申入
れを受けたことから,同申入れを了承し,同年4月頃,協議先を大阪府建
築主事から日確検へと変更した。10
オ日確検は,P8に意見を求められた平成26年4月の時点では,本件遡
及適用部分の改修は不要であるとの見解を示し(乙25),P8は,同月2
1日,建築営繕課に対し,遡及適用範囲は排煙区画工事以外にないとの設
計内訳書(乙27)を渡した。
カ契約課は,上記オの設計内訳書を踏まえて予定価格等を設定し,平成215
6年4月23日,本件入札の入札参加資格要件等についてα市事後審査型
制限付一般競争入札資格審査会の審査に付し,同月25日,本件入札を公
告した。公告された予定価格(1億9200万円(税抜金額))及び最低制
限価格(1億4354万4000円(税抜金額))には,排煙区画工事(前
記前提事実(2)ウのA)の工事価格のみ反映された。20
(3)本件入札
アα市は,平成26年5月22日,本件工事を事後審査型一般競争入札に
付した(本件入札)。本件入札の入札参加資格要件等は,前記前提事実(2)
オ記載のとおりである。
イ本件入札には,P6ほか2社及び株式会社P9が参加申請したところ,25
株式会社P9は施工実績の要件を満たさず参加が否定され,またP7及び
補助参加人はいずれも予定価格を上回る金額で応札したため,失格となっ
た。その結果,予定価格と同額である1億9200万円(税抜金額)で応
札したP6が,本件入札を落札した。
(4)本件原契約及び本件変更契約に至る経緯
アP8は,平成26年5月23日,建築確認申請書を日確検に提出したと5
ころ,日確検は,同月26日頃,従前の見解と異なり,遡及適用範囲につ
いて本件遡及適用部分も含む旨の見解を示した。
イ建築営繕課のP5らは,P8と日確検との折衝によって遡及適用範囲を
縮減することを期待し,上記アの日確検の見解を契約課に連絡することな
く,日確検からの更なる回答を待った。10
ウP2らは,本件工事に係る工事請負仮契約締結案についてP1に上程し,
平成26年5月29日,P1は同仮契約締結を認める旨の決裁をした。こ
れを受けて,α市はP6との間で,請負金額を2億0736万円(税込金
額)とする仮契約を締結した。(以上につき,甲8~10)
エP8は,日確検から改めて遡及適用範囲につき本件遡及適用部分を含む15
旨の見解を示されたことから,平成26年6月23日,その旨建築営繕課
に報告するとともに,本件追加工事の図面及び設計内訳書を提出して,日
確検との協議を終了した。上記設計内訳書には,本件追加工事に係る費用
について見積額7236万円(税込金額)と記載されていた。
それを受けて,建築営繕課は,生活安全課に対し,遡及適用範囲を縮減20
することはできず,本件追加工事が必要になる旨報告した。
オα市議会は,平成26年6月25日午前10時からの本件議会において,
本件原契約締結の議案を審議・可決し,これにより,本件原契約の効力が
発生した。P1,P2及びP3は,地方自治法121条により本件議会に
出席したが,本件追加工事が必要であることについての説明をしていない。25
(以上につき,甲9~11,22)
P2,P4及びP5は,同日午後2時から2時34分まで開催された議
会運営委員会において,本件工事について建築確認を受けるためには,本
件追加工事が必要であり,早急に本件追加工事にかかる費用に対する補正
予算案の決議が必要である旨の説明をし,同委員会は,同年7月8日から
同月10日までの間,特別議会を開催することを決した(甲23)。5
カα市は,平成26年7月8日,本件変更契約締結及び補正予算の計上に
ついて,上記特別議会に各議案を提出し,同特別議会は,同月9日,いず
れの議案も可決した。
キP1は,平成26年7月10日及び16日,本件工事に係る設計変更及
び本件変更契約締結について,いずれも認める旨決裁し,これを受けて,α10
市は,同月22日,P6との間で,請負金額を7236万円(税込金額)
増額する本件変更契約を締結した(甲12,13)。
ク日確検は,平成26年7月24日,α市に対し,本件工事及び本件追加
工事に係る建築確認をして,確認済証を交付した(甲26)。
(5)α市における近時の入札状況15
平成22年5月18日から平成27年11月17日までの間にα市で実施
された予定価格5000万円以上の入札のうち,事後審査型制限付一般競争
入札の形式で行われたものは,本件入札を除いて下記アからセまでの14件
であった。なお,下記アからカまではP1のα市長就任前に行われた入札で
あり,下記キからセまではその就任後に行われた入札である。また,下記ア20
からセまでの落札者に引き続く括弧書きに記載されているのは,落札者の平
成27年10月末日現在の総合評定値及びその順位(市内業者については市
内の順位と全体の順位)である。(以上につき,甲16,17)
アG小学校校舎大規模改造建築工事に係る入札
入札日平成22年5月18日25
落札価格3億1600万円(落札率71.6%)
落札者P10株式会社(1237点,全体85位)
参加者数11社
イH中学校校舎大規模改造建築工事に係る入札
入札日平成22年8月3日
落札価格9134万円(落札率66.6%)5
落札者株式会社P11(1443点,全体52位)
参加者数6社(P7,補助参加人を含む。)
ウ(仮称)I小学校跡地活用建築工事に係る入札
入札日平成22年11月9日
落札価格3億4700万円(落札率60.1%)10
落札者株式会社P12(1503点,全体46位)
参加者数15社
エK中学校大規模改造建築工事に係る入札
入札日平成23年5月17日
落札価格3億9500万円(落札率71.7%)15
落札者P13株式会社(総合評定値なし)
参加者数8社
オL小学校老朽改修建築工事に係る入札
入札日平成23年5月17日
落札価格2億1100万円(落札率63.9%)20
落札者株式会社P14(1310点,全体74位)
参加者数4社(P7を含む。)
カM小学校大規模改造建築工事に係る入札
入札日平成23年5月17日
落札価格2億0700万円(落札率69.7%)25
落札者P7(869点,市内3位・全体178位)
参加者数3社(P7を含む。)
キN幼稚園大規模改造建築工事に係る入札
入札日平成25年6月25日
落札価格1億0900万円(落札率97.3%)
落札者P6(928点,市内2位・全体157位)5
参加者数3社(P6及び補助参加人を含む。)
クO配水場ポンプ室築造工事に係る入札
入札日平成25年10月2日
落札価格1億4135万円(落札率94.9%)
落札者P7(869点,市内3位・全体178位)10
参加者数4社(全て市内の会社であり,P6及びP7を含む。)
ケP小学校跡地活用建築工事に係る入札
入札日平成26年11月14日
落札価格7億5584万5000円(落札率88.5%)
落札者P7(869点,市内3位・全体178位)及びP15株15
式会社(1201点,全体96位)によるJV
参加者数4JV(P6及び補助参加人によるJVを含む。)
コM小学校プール改築等建築工事に係る入札
入札日平成27年7月30日
落札価格1億3000万円(落札率99.8%)20
落札者P16株式会社(706点,市内7位・全体218位)
参加者数4社(全て市内の会社であり,P6を含む。)
サG小学校屋内運動場改修等建築工事に係る入札
入札日平成27年10月22日
落札価格1億2600万円(落札率94.0%)25
落札者P6(928点,市内2位・全体157位)
参加者数6社(P6及び補助参加人を含む。)
シQ小学校屋内運動場改修等建築工事に係る入札
入札日平成27年10月22日
落札価格1億2300万円(落札率93.8%)
落札者補助参加人(1106点,市内1位・全体117位)5
参加者数4社(補助参加人を含む。)
スR小学校屋内運動場改修等建築工事に係る入札
入札日平成27年10月22日
落札価格1億1998万円(落札率96.7%)
落札者株式会社P9(737点,市内5位・全体210位)10
参加者数3社
セS中学校屋内運動場改修等建築工事に係る入札
入札日平成27年11月17日
落札価格8340万円(落札率84.7%)
落札者株式会社P17(844点,全体187位)15
参加者数4社
2争点①(P6ほか2社による談合の有無)について
原告らは,①本件入札では,入札参加資格要件について,他市に比べ市外業
者が参加困難な競争性を欠く制度等を用いていたこと,その結果,実際に本件
入札に参加したのは互いに面識,交流の深い市内業者であるP6ほか2社であ20
ったこと,また本件入札では,入札に参加する際に価格内訳書を提出すれば足
りるとされ,工事費内訳書を提出する必要がなかったこと,②P1がα市長に
就任した後の事後審査型制限付一般競争入札のうち,P6ほか2社が落札した
5件の落札率が90パーセント台後半に張り付いていることからP6ほか2社
による恒常的な談合が推認されるところ,本件入札においても,P7及び補助25
参加人が入札前に公表されていた予定価格よりも上回る金額で応札をして失格
となり,P6が100パーセントで落札したこと,さらには③本件追加工事費
用を含めない予定価格を設定して本件入札を実施するなどの行政の歪みが存在
していたこと等の事情からすれば,本件入札に際し,P6ほか2社が談合して
いたことが推認される旨主張する。そこで,以下,原告ら主張の上記事情から
P6ほか2社による談合を推認することができるか,検討する。5
(1)①入札参加資格要件,入札参加者の面識の有無等について
ア入札参加資格要件
(ア)本件入札において採用された事後審査型制限付一般競争入札は,国
や他の地方公共団体が実施する入札においても採用されており(乙4の
4,16参照),入札後に落札候補者に限って参加資格を審査することに10
より,入札事務の簡素化のみならず,談合の未然の防止にも資するもの
とされている(乙16参照)。
そして,地方自治法等の法令は,普通地方公共団体が締結する公共工
事等の契約に関する入札について,機会均等,公正性,透明性及び経済
性(価格の有利性)の確保を図っているものと解されるが,契約の確実15
な履行の確保あるいは地元経済の活性化への寄与等を考慮して,必要か
つ合理的な範囲内で,登録の住所(本店あるいは支店又は営業所)が当
該普通地方公共団体内にあるか否かで入札参加資格要件に一定の差異を
設けることも許容しているものと解される(地方自治法施行令167条
の5の2参照)。20
(イ)本件入札における入札参加資格要件では,総合評定値について,市
外業者は,市内業者に比して,500点高い1200点を有している必
要がある旨定められていたところ,市内業者は,工事現場等への距離が
近く,現場に関する知識等を有しているなど契約の確実な履行を期待し
得ること,さらには,地元経済の活性化の見地から,入札参加資格要件25
につき合理的範囲内で市内業者を優遇する必要性があったことは否定し
得ない。加えて,本件入札の実施時において,総合評定値が1200点
以上の市外業者は86社存在し,総合評定値700点以上の市内業者5
社を大幅に上回っていたこと(乙15)などからすれば,総合評定値に
係る要件における市内業者と市外業者との上記差異は相当な範囲内のも
のといえる。5
原告らは,上記入札参加資格要件は,他市に比べても市外業者の参入
が困難な要件である旨主張するが,本件入札と同様,2億円以上2億5
000万円未満の予定価格で一般競争入札を行う場合,ε市,ζ市及び
δ市では,市外業者は一律に,原則として入札参加資格要件を有しない
(乙17)とされているのであるから,他市に比べ市外業者が参入困難10
な要件であるとは必ずしもいえない。
(ウ)その他原告らが主張する事情を検討しても,本件入札における入札
参加資格要件に不合理な点は認められず,同要件により本件入札の実質
的競争性が阻害されたとはいえない。
イ入札時の提出書類の定め15
本件実施要領11項では,入札時の提出書類について,入札書の他,価
格内訳書を掲げるのみで,積算根拠を示した工事内訳書の提出を求めてい
ない。しかし,入札参加者に対し,積算根拠を示した工事内訳書を提出さ
せることが談合等の不正の防止策になり得るとしても,入札時に積算根拠
を示した工事内訳書の提出を要さない入札において,およそ談合がされる20
とは到底いえず,本件入札においてもその一事をもって談合があったと推
認することはできない。
ウ入札参加者の面識の有無等
本件入札に参加したP6ほか2社は市内業者であることからすると,互
いに面識や交流があった可能性は否定し得ないものの,談合の事実を推認25
させるような特別に深い関係性を有していた事実を認めるに足りる証拠
はない。そもそも,上記アのとおり,本件入札の入札参加資格要件を満た
す者は,P6ほか2社及び市内業者2社の他に,市外業者も86社あった
のであるから,近年α市が実施した事後審査型制限付一般競争入札に市外
業者が参加することが減っていた事実が認められるとしても(上記認定事
実(5)),P6ほか2社において本件入札に市外業者が参加しないことを認5
識していたなどという事情が認められないにもかかわらず,深い関係性が
あったことの一事をもって,本件入札における談合の存在を推認すること
はできない。
(2)②P6ほか2社による従前の入札状況及び本件入札における入札状況に
ついて10
アP6ほか2社による従前の入札状況
(ア)α市が平成22年5月18日から平成27年11月17日までの
間に実施した事後審査型制限付一般競争入札の落札率をみると,P1が
α市長に就任した平成24年5月より前に実施された6件(上記認定事
実(5)ア~カ)については,いずれも70パーセント前後であるのに対15
し,就任後に実施された9件については,7件が90パーセントを超え,
残り2件についても85パーセント前後であり(上記認定事実(3)イ,
(5)キ~セ),落札率は,P1の市長就任後初めて事後審査型制限付一
般競争入札が行われた平成25年6月25日から顕著な高止まり傾向
を示している。特に,同年以降,P6ほか2社が単体で落札した事後審20
査型制限付一般競争入札5件(上記認定事実(3)イ,(5)キ,ク,サ,シ)
における落札率は93パーセントを超え,このような落札率の高止まり
は,P6ほか2社による恒常的な談合の存在をうかがわせる一事情とな
り得ると考えられる(甲19)。
しかしながら,証拠(乙1~4,8~11)によれば,平成25年頃25
以降,東日本大震災に係る復旧・復興事業等の影響で人件費や資材価格
が急騰したことによって,国又は地方公共団体が設定した予定価格が実
勢価格を下回り,あるいは入札参加資格者が今後の人件費や資材価格の
高騰のリスクを嫌うなどして,入札が不調(応札者がいない場合をいう。
以下同じ。)あるいは不落(全ての応札価格が予定価格を超過すること
をいう。以下同じ。)に終わる事態が生じるようになったこと,また平5
成26年に入り,α市の近隣市を含む近畿圏でも,上記と同様の理由に
より,入札の不調や不落が相次ぐようになった事実が認められる。
そうすると,α市における平成25年6月25日以降の落札率の高止
まりは,上記のような人件費及び資材価格の高騰が原因で生じたもので
あることも十分に考えられるから,上記落札率の高止まりの事実のみを10
もって,P6ほか2社による恒常的な談合の存在を推認することはでき
ない。
(イ)次に,平成22年5月18日から平成27年11月17日までの間
にα市で実施された事後審査型制限付一般競争入札の落札状況をみると,
市内業者が落札した件数は,平成23年以前に実施された6件について15
はうち1件にとどまっているが(上記認定事実(5)ア~カ。なお,同エの
落札者の本店所在地は証拠上明らかではない。),平成25年以降に実
施された9件についてはうち8件と大幅に増加している(上記認定事実
(3)イ,(5)キ~ス)。このような市内業者が落札する割合の増加は,一
見すると,市内業者による恒常的な談合,特に,上記8件のうち5件を20
単体で落札したP6ほか2社による談合の存在を疑わせるものである。
しかし,平成23年以前に実施された6件については,市外業者がそ
の全てに応札しているのに対し,平成25年以降に実施された8件につ
いては,市外業者が単体で応札したのは半数の4件にとどまっている(甲
17)ことからすれば,上記市内業者が落札する割合の変化は,市外業25
者の応札が減少したことによるものと考えられる。したがって,上記事
実から,P6ほか2社による恒常的な談合の存在を推認することはでき
ない。
(ウ)さらに,平成25年以降に市内の会社が単体で落札した入札の内訳
をみると,P6(市内2位)が落札したものが3件,補助参加人(市内
1位),P7(市内3位),株式会社P9(市内5位)及びP16株式5
会社(市内7位)が落札したものが各1件となっており,P6ほか2社
で上記7件のうち5件を占めているが(上記認定事実(3)イ,(5)キ,ク,
サ,シ),P6ほか2社は,α市における平成27年10月末日現在の
総合評定値の上位3社であるから(甲16),予定価格5000万円を
超える規模の入札において,その受注の大半を占めていたとしても直ち10
に不自然とはいえず,かかる事実をもってP6ほか2社による恒常的な
談合の存在を推認させるものではない。
したがって,本件入札がP6ほか2社による恒常的な談合の一環であ
る旨の原告らの主張は,その前提を欠き,採用することはできない。
イ本件入札における入札状況15
(ア)原告らは,本件入札において,P7及び補助参加人が公示されてい
た予定価格をあえて上回る応札をしたこと,入札に参加した残り1社で
あるP6が予定価格の100パーセントで応札したことの異常性を指
摘し,これらの事実から本件入札における談合が推認される旨主張する。
しかし,上記アのとおり,本件入札当時,東日本大震災に係る復旧・20
復興事業等の影響で人件費や資材価格が急騰したことによって,入札の
不調あるいは不落が相次ぐ状況にあったことからすると,本件入札にお
いても,入札実施者の設定した予定価格が実勢価格を下回り,あるいは
資材価格の高騰等のリスクを見込んで入札参加希望者が積算した見積価
格が実勢価格を上回るなどして,予定価格あるいは見積価格と実勢価格25
との間に乖離が生じていた可能性も十分に考えられる。そして,補助参
加人は,このような場合,入札参加希望者において,入札への参加を辞
退せず,あえて予定価格を上回る金額で応札することは,公共工事にお
ける予定価格が人件費や資材価格の高騰等を合理的に見込んでいないこ
とを入札実施者に対し表明するという点において,一定の意義を有する
ものである旨主張するところ,この主張が特段不自然なものとはいえず,5
現に補助参加人がα市以外の市が実施した入札において,予定価格を上
回る金額で応札した例も認められるところである(丙1,3)。
さらに,入札参加希望者において,積算した見積価格が予定価格と拮
抗している場合,現実の応札を期待するものの,一方で収益性の確保を
図る必要があることから,予定価格と同額での落札を求め,それを下回10
る価格で入札に参加する者が出現したならば落札を断念するということ
も経済的見地から十分合理的といえるのであって,P6の落札率が10
0パーセントであることが明らかに不自然とはいえない。
(イ)原告らは,地方公共団体の長は,予算決算及び会計令80条2項等
に基づき,公共工事の入札の予定価格を設定するに当たっては,最新の15
実勢価格を適正に反映させているものと考えられること,また本件入札
においては,入札公告日と入札日との間が1か月ほどしかなく,予定価
格の設定後入札までに長期間経過していないことなどからすれば,予定
価格と実勢価格との間に乖離が生じることは考えられず,予定価格を上
回る金額での応札は異常である旨主張する。20
しかし,地方公共団体の長において,予定価格の設定に当たり,最新
の実勢価格を適正に反映するよう努めているとしても,人件費や資材価
格の急騰により,刊行物の掲載価格等が一部で実勢価格の上昇に追い付
かず,予定価格と実勢価格との間に乖離が生じる可能性は否定し得ない
(乙10参照)ところ,現に平成26年に入り近畿圏においても人件費25
等の急騰により入札の不調や不落が相次ぐようになったことは既に認
定説示したとおりである。また,予定価格に最新の実勢価格が反映され
ていたとしても,入札参加者が資材価格の更なる高騰等を予想して積算
した見積価格が実勢価格を上回る場合も否定し得ず,予定価格を上回る
金額での応札がおよそ不自然とはいえない。
(ウ)したがって,本件入札における入札状況から,P6ほか2社による5
談合を推認することはできない。
(3)③行政の歪みの存否等について
ア原告らは,本件入札における予定価格に,意図的に本件追加工事の価格
を反映させなかったことが談合を推認させる旨主張するが,上記認定事実
(2)カのとおり,契約課は,P8から提出された設計内訳書を踏まえて,予10
定価格を設定・公告したにすぎず,また,後記3(1)のとおり,契約課にと
どまらず,建築営繕課においても,本件入札の時点においては,遡及適用
範囲が排煙区画工事に止まらない具体的な可能性があることを把握して
いなかったのであるから,P1及びP2らが意図的に本件追加工事の価格
を予定価格に反映させなかったものとはいえない。したがって,原告らの15
主張はその前提を欠く。
イまた,原告らは,P1及びP2らにおいて,本件要綱8条の適用あるい
は同条の趣旨に鑑み本件入札を中止すべきであったのにそのまま執行した
ことは,同人らが談合に協力していたことを示すものであり,談合の存在
を推認させる事情である旨主張する。20
しかし,α市競争入札心得(甲15)11条1項では,予定価格が事前
に公表されている場合,それを超える入札をした者は失格となる旨定める
ものの,その者の参加まで遡って否定するとはしていないことからすれば,
本件入札における参加者は,P6ほか2社の3者であったと認められるの
であって,本件要綱8条の中止の要件には該当しない。25
また,本件要綱8条の趣旨は,原告らが主張するとおり,競争性の担保
や価格の有利性の確保等にあるものと考えられるところ,確かにP7及び
補助参加人が予定価格を上回る金額で応札したことにより,P6は,結果
として,本来一般競争入札が予定する価格競争をすることなく落札するに
至っている。しかし,かかる場合,再入札を実施したとしても,予定価格
を上げない限り,同じ結果になり,あるいは入札が不落に終わる可能性も5
見込まれるのであって,価格の有利性等の見地から入札をそのまま執行す
ることには十分合理性がある。したがって,α市が本件入札をそのまま執
行したことが本件要綱8条の趣旨に反するとはいえず,やはり本件入札を
中止すべき義務があったとはいえないのであるから,原告らの上記主張は
採用することができない。10
(4)小括
以上のとおり,原告らが主張する上記間接事実からP6ほか2社による談
合の存在を推認することはできず,その他に,P6ほか2社が本件入札にお
いて談合したことをうかがわせる事情はないから,P6ほか2社が本件入札
に際して談合したと認めることはできない。15
3争点④(本件原契約に本件追加工事を含めずに本件入札を行い,議会の議決
を得て同契約を締結した行為の違法性の有無)について
(1)本件追加工事を含めずに本件入札を行ったことについて
ア地方自治法234条1項及び2項は,普通地方公共団体の締結する契約
について,一般競争入札の方法を原則としているところ,これは,機会均20
等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得るた
めと解される。一般競争入札の方法により契約を締結した後に入札条件と
された契約の内容を変更することは,上記の趣旨に反するものであり,そ
れが当初から予想し得る軽微な範囲にとどまる場合等を除き,原則として
許されないものと解される。25
そうすると,契約の締結後にその内容を変更する必要があることを認識
している場合には,本来その変更すべき契約内容が確定した後に,新たな
条件の下で入札に付すべきものであって,変更内容が当初から予想し得る
軽微な範囲にとどまる場合,変更内容が確定する前に早期に契約を締結し
て履行に着手する必要がある場合や履行に着手した後でなければ変更内
容が確定しない場合に変更の可能性を示した上で入札に付すなど特段の5
事情がない限り,当該契約について不確定条件で入札を実施することは許
されないものと解するのが相当である。
イ(ア)そこで検討すると,上記認定事実によれば,本件入札の実施時点に
おいては,日確検が,遡及適用範囲につき排煙区画工事のみとなる見込
みである旨の見解を示していたのであり,また一級建築士のいる設計会10
社であるP8においても,日確検の上記見解を受けて,本件追加工事は
不要であることを前提として,同追加工事を含めない設計内訳書(乙2
7)を作成し,建築営繕課に提出していたというのであるから,P5も
証言するとおり,本件入札の実施時点においては,本件追加工事が必要
となると認識していたとは認められず,また,認識することができたと15
いうこともできない。
(イ)この点に関し,原告らは,本件追加工事は建築関係法令に適合させ
ることを内容としているのであるから,本件追加工事が必要となること
は明らかであった旨主張する。
確かに,普通地方公共団体が建築工事の施工を決定するに当たっては,20
同工事が法令に従ったものであるかどうかの審査を行うべきであって,
本件工事のように,建築基準法3条2項に定める建築後の法令の変更に
よって違反建築物と扱われない,いわゆる既存不適格建築物を増改築す
るに当たっては,当該増改築によって,同条3項3号又は4号により建
築関係法令の遡及適用を受けることとなるかについても十分に検討す25
べきといえる。
しかし,本件ホールは市民会館の別館にあるのに対し,本件遡及適用
部分は,いずれも市民会館の本館にあるのであって,別館を増改築する
ことにより,本館についてまで遡及適用が及ぶかについては必ずしも明
らかとはいい難く,このことは,現に日確検が,上記のとおり,本件入
札の実施時点では,遡及適用範囲について,排煙区画工事のみになる見5
込みである旨の見解を示していたことからも裏付けられる。したがって,
原告らの上記主張は採用することができない。
(ウ)また,原告らは,α市は本件入札の翌日である平成26年5月23
日には建築確認申請をしているところ,本件追加工事に係る補正予算に
ついて審理されたT会議において,α市街づくり部長が「増築改修部分10
と今回の既存不適格は一本の建築確認で申請しております。」と発言し
ていることからすれば,遅くとも本件入札の実施時には,本件追加工事
が必要となることを認識していた旨主張する。
しかし,上記認定事実(4)エによれば,P8が,遡及適用範囲に関す
る日確検の最終的見解を踏まえ作成した本件追加工事にかかる図面及15
び設計内訳書を建築営繕課に提出したのは同年6月23日であり,α市
の確認を経て,同市あるいはその代理人であるP8が日確検に上記図面
等を提出したのは早くても同日以降であったと考えられる。現に,建築
確認申請書(甲26)1頁目にある日確検による受付印は,同年7月2
4日付けとされており,同年5月23日付けとはされていない。20
また,原告らが指摘するT会議における街づくり部長の発言は,同会
議に出席したP4が,「最終的にこの工事につきましては増設及び既存
部分を改修一体で建築確認申請の審査を受けています。」と述べている
こと(乙22・18頁)からも明らかなように,本件工事に関する建築
確認申請をした後に,本件追加工事に関する資料を追加したことによっ25
て,最終的には「一本」の建築確認申請となった旨の発言と認められる
のであって,街づくり部長の上記発言は,同年5月23日に,本件追加
工事についてまで建築確認申請をしたことの根拠となるものではない。
(エ)以上のとおり,本件入札の実施時点において,P1,P2ら及びP
5が,本件追加工事が必要となることを認識していた,又は認識するこ
とができたとは認められない。したがって,本件追加工事を含めずに本5
件入札を行ったことが違法であるとはいえず,この点について,P1,
P2ら及びP5が不法行為責任を負うことはない。
ウ原告らは,P5の証言によるとしても,P5は本件入札の実施以前に
おいて,本件追加工事が必要となる可能性については認識していたので
あるから,その旨関係部署に適時に報告すべきであったのに,遡及適用10
範囲の縮減を見込めるという甘い見通しの下に上記報告義務を怠り,建
築関係法令に反する違法な本件入札が実施されるのを漫然と放置したな
どとして,公務員の法令遵守義務(地方公務員法32条)に違反する旨
主張する。
しかし,上記イ(ア)記載のとおり,本件入札の実施時点においては,P15
8のみならず日確検においても,本件追加工事が不要となる見込みであ
る旨の見解を示していたのであるから,P5が今後の協議においても日
確検が上記見解を維持し,大阪府建築主事から指摘を受けた遡及適用範
囲の縮減が見込まれると考えたことについて特段不合理な点は認められ
ない。本件入札の実施時までに,P5が生活安全課や契約課に対し,本20
件追加工事の必要性に関する情報を提供することがより適切であったと
いえるとしても,P5において原告らが主張するような報告義務を負っ
ていたとまでいうことはできない。
エなお,上記のとおり,本件追加工事が必要となる可能性自体はあったの
であるから,α市としては,建築確認を得て遡及適用範囲が確定した後に,25
本件入札を実施するという選択肢もあり得たということができる。
しかし,建築確認を受けた後でなければ入札を実施することができない
というべき合理的な根拠は見いだし難く,むしろ建築確認を受けていない
段階でも,既存部分の取壊し工事等は行うことができるというのである
(証人P5)。そうすると,上記認定事実のとおり,市民会館は,本件ホ
ールを年末年始に利用する市民が多く,その時期の閉館は避ける必要があ5
ること等から,平成26年12月の開館を目指していた中で,本件入札の
実施を延期することによって,開館を遅らせるのを避けるため,日確検か
ら遡及適用範囲は排煙区画工事のみとなる見込みである旨の見解を示さ
れた段階で,同見解に沿う内容の設計図書の作成及び予定価格等の設定を
して,本件入札を実施したことが不合理であったとはいい難く,この点に10
つき裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したとはいえないというべき
である。
(2)本件追加工事の必要性を議会に報告しないまま,本件原契約締結に係る議
会の議決を得て同契約を締結したことについて
ア本件変更契約の締結を予定しながら本件原契約を締結したことの合理性15
について
(ア)上記認定事実(4)エ及びオによれば,本件議会において本件原契約締
結の議案を審議・可決した平成26年6月25日午前の時点では,既に
P8が本件追加工事を行うことで日確検との協議を終了し,その旨建築
営繕課に報告しており,また,P2,P4及びP5は,同日午後に開催20
された議会運営委員会に出席して,本件追加工事の必要性を報告したと
いうのであるから,本件議会の時点において,P5のみならずP1及び
P2らにおいても,本件工事の内容のままでは建築関係法令に適合しな
いため,同工事と同時に本件追加工事を実施する必要があることを認識
していたものと認められる。25
そうであるところ,α市は,本件追加工事を実施する方法として,本
件議会の議決を得て本件原契約の効力を発生させ,その上で再び議会の
議決を得て本件変更契約を締結する方法を選択したのであるが,本件変
更契約が,請負代金額を7236万円(当初の工事請負金額の34.9
パーセントに相当)増額し,工事内容にも少なくない範囲で変更を加え
るものであることからすれば,α市においては,漫然とP6との間で本5
件原契約を締結するのではなく,所要の変更を加えた上で,改めて入札
を実施すべきではなかったかなどの疑問も生じ得る。
(イ)しかし,被告の主張によれば,本件議会前の時点において,市民会
館を建築関係法令に適合した建築物とするために必要な本件追加工事を
実施するための方法としては,本件原契約の締結に係る本件議会の議決10
を得た後,同契約変更に係るα市議会の議決を経て,本件原契約を変更
するという現に採用された方法のほか,①本件追加工事のみ一般競争入
札を実施する方法及び②本件工事に係る工事請負仮契約を解除し,本件
追加工事を含めて改めて一般競争入札に付する方法等が考えられたとい
うのであるが,①については,本館と別館とが同一敷地内で互いに隣接15
し,内部は扉等でつながっているなど密接な関連性を有するため,別々
の業者に工事を行わせるのは不合理かつ非現実的であり,採用すること
ができない。また,②の方法については,新たに一般競争入札を実施す
るとなれば,市民会館を予定どおり平成26年12月に開館することが
できず,市民の年末年始の利用等に影響が出るのみならず,α市の都合20
で本件原契約(仮契約)を解除することになれば違約金等の発生も予想
され,また,本件入札では,入札参加者3社のうち2社が予定価格を1
5パーセントから25パーセント超える金額で応札していたこと及び資
材価格等が高騰していたこと等からすれば,本件追加工事を含めた一般
競争入札の不調・不落を防ぐためには,本件入札の予定価格に本件追加25
工事の費用(7236万円)を加えた金額を予定価格として設定するの
みでは足りず,より多額の予定価格の設定を余儀なくされる可能性も十
分に考えられたということができ,この方法も採用することが難しかっ
たものと認められる。
(ウ)そうすると,α市において,本件追加工事が必要であることが明ら
かになった後に,α市議会の議決を得て本件原契約を締結したことにも,5
相応の合理的理由があったものということができる。
なお,本件全証拠においても,本件変更契約の代金が,既存不適格部
分を関係法令に適合させるために必要な設計変更に応じて合理的に算出
された金額であることに疑いを生じさせるような事情は見当たらない。
イ本件議会において本件追加工事の必要性の報告ないし説明をしなかった10
ことについて
(ア)地方自治法96条1項5号は,その種類及び金額について政令で定
める基準に従い条例で定める契約(α市においては1億5000万円以
上の工事又は製造の請負契約。地方自治法施行令121条の2第1項,
本件条例2条参照。)を締結する場合,議会の議決に付さなければならな15
い旨規定するところ,その趣旨は,上記政令等で定める種類及び金額の
契約を締結することは普通地方公共団体にとり重要な経済行為に当たる
ものであるから,議会の議決を要することとして,住民の利益を保障す
るとともに,これらの事務の処理が住民の代表の意思に基づいて適正に
行われることを期することにあると解される。20
このような趣旨からすれば,議会の議決を要する契約の締結について
審議に必要な説明をするために議会に出席した普通地方公共団体の長又
はその補助職員が,当該審議に重要な事項を殊更に隠蔽するなどして議
会における審議を妨げたといえるような場合には,当該普通地方公共団
体に対する関係で不法行為が成立する余地があるものと考えられる。25
(イ)上記認定事実によれば,P1,P2及びP3は,本件議会に出席し
たにもかかわらず,同議会において,本件追加工事が必要である等の事
情を何ら説明しなかったというのであるが,既に認定・説示したところ
からすれば,本件追加工事を実施するためには,P6との間で本件原契
約を締結した上でこれを変更する方法によることが合理的であったとい
える上,本件追加工事は,別館部分の増改築に伴って法令上必要となる5
附随的なものであり,その内容等については,予算措置を含めて別に特
別議会で議決を求める予定であったことなどからすれば,本件議会に出
席したP1,P2及びP3が,本件議会はあくまで本件原契約の効力を
発生させるものと位置付け,同議会において,本件追加工事が必要とな
る旨の報告ないし説明をしなかったからといって,本件原契約の締結に10
ついての審議を妨げたということはできない。
(ウ)上記に加え,P2,P4及びP5は,本件原契約締結に係る議決を
得た後,同日中に議会運営委員会において本件追加工事が必要となる旨
報告し,本件追加工事に係る補正予算に加え,本件変更契約締結に関し
ても,α市議会の議決を得ていることからすれば,P1,P2ら及びP15
5において,およそ議会を軽視していたなどということもできない。
(3)小括
以上によれば,本件原契約締結に至るまでのP1,P2ら及びP5による
一連の行為が共同不法行為を構成するということはできない。
4結論20
よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理
由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官山田明25
裁判官森田亮
裁判官石川舞子

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
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