弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を高松高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人横田總の上告理由について
 一(一) 憲法九四条は、「地方公共団体は、……法律の範囲内で条例を制定する
ことができる。」と定め、また、地方自治法一四条一項も、「普通地方公共団体は、
法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することが
できる。」と定めている。これは、条例制定権の根拠であるとともに、その範囲と
限界を定めたものである。したがつて、普通地方公共団体は、法令の明文の規定又
はその趣旨に反する条例を制定することは許されず、そのような法令の明文の現定
又はその趣旨に反する条例は、たとえ制定されても、条例としての効力を有しない
ものといわなければならない。
 (二) 河川の管理について一般的な定めをした法律としては河川法があり、同法
は、河川を、その公共性の強弱の度合に応じて、同法の適用がある一級河川及び二
級河川(いわゆる適用河川)、同法の準用があるいわゆる準用河川並びに同法の適
用も準用もないいわゆる普通河川に区分している。一級河川とは、国土保全上又は
国民経済上特に重要な水系で政令で指定したものに係る河川で建設大臣が指定した
ものをいい(同法四条一項)、二級河川とは、右政令で指定された水系以外の水系
で公共の利害に重要な関係があるものに係る河川で都道府県知事が指定したものを
いい(同法五条一項)、準用河川とは、一級河川叉は二級河川以外の河川で市町村
長が指定したものをいい(同法一〇〇条)、普通河川とは、これらの指定を受けて
いない河川をいうのであるが、普通河川であつても、これを河川法の適用又は準用
の対象とすることを必要とする事情が生じた場合には、いつでも適用河川又は準用
河川として指定することにより同法の適用又は準用の対象とすることができる仕組
みとなつている。このように、河川の管理について一般的な定めをした法律として
河川法が存在すること、しかも、同法の適用も準用もない普通河川であつても、同
法の定めるところと同程度の河川管理を行う必要が生じたときは、いつでも適用河
川又は準用河川として指定することにより同法の適用又は準用の対象とする途が開
かれていることにかんがみると、河川法は、普通河川については、適用河川又は準
用河川に対する管理以上に強力な河川管理は施さない趣旨であると解されるから、
普通地方公共団体が条例をもつて普通河川の管理に関する定めをするについても(
普通地方公共団体がこのような定めをすることができることは、地方自治法二条二
項、同条三項二号、一四条一項により明らかである。)、河川法が適用河川等につ
いて定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し、許さ
れないものといわなければならない。
 ところで、河川法三条は、同法による河川管理の対象となる「河川」に含まれる
堤防、護岸等の「河川管理施設」は、それが河川管理者以外の者の設置したもので
あるときは、当該施設を「河川管理施設」とすることについて、河川管理者が権原
に基づき当該施設を管理する者の同意を得たものに限るものとしている。これは、
河川管理者以外の者が設置した施設をそれが「河川管理施設」としての実体を備え
ているということだけで直ちに一方的に河川管理権に服せしめ、右施設を権原に基
づき管理している者の権利を制限することは、財産権を保障した憲法二九条との関
係で問題があることを考慮したことによるものと解される。このような河川法の規
定及び趣旨に照らして考えれば、普通地方公共団体が、条例により、普通河川につ
き河川管理者以外の者が設置した堤防、護岸等の施設をその設置者等権原に基づき
当該施設を管理する者の同意の有無にかかわらず河川管理権に服せしめることは、
同法に違反し、許されないものといわざるをえない。
 (三) 右の見地に立つて本件をみるのに、高知市普通河川等管理条例(以下「本
件条例」という。)二条は、「この条例において「普通河川等」とは、河川法(昭
和三十九年法律第百六十七号)の適用又は準用を受けない公共の用に供せられる河
川、沼、ため池、ほり、水路及びみぞで市長の指定する区域をいい、公共の安全を
保持し又は公共の利益を増進するためこれらに設けられた堤防、護岸、水制、床留
め、水門、閘門、樋管等の施設を含むものとする。」と定めている。右規定は、一
見、堤防、護岸等の施設は、「普通河川等」の管理者である高知市長以外の者が設
置したものであつても、権原に基づきこれを管理する者の同意の有無にかかわらず、
当然に「普通河川等」に含まれるものとして、高知市長による河川管理の対象にな
るものとしているように解されないでもないが、もし右規定がそのような趣旨のも
のであるとすれば、それが河川法に違反するものであることは、先に述べたとおり
である。しかしながら、条例の規定は可能な限り法律と調和しうるように合理的に
解釈されるべきものであつて、この見地から前示の河川法の趣旨に即しこれと調和
しうるよう本件条例の右規定を解釈すれば、右規定にいう「普通河川等」に含まれ
る堤防、護岸等の施設とは、河川管理者が設置したもの、又は河川管理者以外の者
が設置したものであるときは河川管理者において当該施設を河川管理の対象とする
ことについて右設置者等権原に基づき当該施設を管理する者の同意を得たものをい
うものと解するのが相当であり、同条例の規定中にかかる解釈を妨げるようなもの
は見当らない。したがつて、係争の堤防、護岸等の施設が右「普通河川等」に含ま
れる堤防、護岸等の施設にあたるというためには、当該施設が河川管理者の設置し
たものであるかどうか、もし河川管理者以外の者の設置したものであるとすれば、
当該施設を河川管理の対象とすることについて、河川管理者が当該施設を権原に基
づき管理している者の同意を得たかどうかを確定しなければならないものというべ
く、原判決が、右の点を確定することなく、本件土地は本件条例二条にいう「護岸」
にあたり、本件河川の管理者である被上告人高知市長による河川管理の対象になる
と判断したのは、右規定の解釈適用を誤つたものといわなければならない。そして、
原判決の右違法は、その結論に影響を及ぼすことが明らかである。
 二 また、本件条例二条にいう「護岸」とは、河岸又は堤防を保護する工作物を
いうものと解するのが相当であつて、護岸によつて保護される河岸又は堤防とは区
別されなければならない。
 これを本件についてみるのに、原審の確定した事実によれば、本件土地は石垣と
これを支える背後地とからなるというのであるから、右石垣部分が本件条例二条に
いう「護岸」にあたることは明らかであるが、右背後地部分は、右石垣によつて保
護されるべき河岸であつて、右「護岸」にあたらないと解するのが相当である。そ
れゆえ、本件土地は全体として右「護岸」にあたるとした原判決には、この点にお
いても、右規定の解釈適用を誤つた違法があるものといわなければならず、その違
法は、判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
 三 よつて、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻す
こととし、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    戸   田       弘
            裁判官    中   村   治   朗

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