弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審の未決勾留日数中九〇日を被告人国方の本刑に算入する」
との部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 大阪高等検察庁検事長代理次席検事岡正毅の上告趣意は末尾添付の別紙記載のと
おりである。
 職権により調査するに、記録によれば被告人は本件につき、起訴前である昭和三
六年七月二五日勾留状の執行を受けて以来、第一審並びに原審を通じ勾留を継続さ
れているものであるが、これよりさき、被告人は昭和三〇年四月一二日高松地方裁
判所において強盗殺人罪により懲役五年以上八年以下(未決勾留二〇〇日通算)に
処せられ、右判決は、同月二七日確定し即日右刑の執行を受け、その後昭和三四年
九月一五日仮出獄を許されたが、本件窃盗被告事件のため、昭和三六年九月五日右
仮出獄を取消されたため、翌九月六日より残刑の執行(その満期予定日は昭和三九
年九月一三日)を受け、以来受刑中であるところ、被告人は昭和三六年一〇月二〇
日言渡された本件第一審判決に対し同月三一日控訴を申立て、原審はこれに対し同
三七年四月一〇日控訴を棄却すると共に第二審における未決勾留日数中九〇日を被
告人国方の本刑に算入する旨の判決を言渡したものであることを明認できる。
 してみれば、被告人が前記残刑の執行を受けるに至つた昭和三六年九月六日以降
被告人は、前示勾留と右確定刑とを重複執行されていたことが明らかであり、右の
ように刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは不当に被告人に利
益を与えることとなり違法であるといわねばならない(昭和二九年(あ)第三八九
号同三二年一二月二五日大法廷判決、集一一巻一四号三三七七頁、昭和三三年(あ)
第一五一四号同年一一月七日二小法廷判決、集一二巻一五号三五〇四頁参照)。従
つて、原判決中前記未決勾留日数を算入した部分は結局刑法二一条の適用を誤つた
違法があり刑訴四一一条一号により破棄を免れない。
 よつて、同四一三条但書により原判決中「当審の未決勾留日数中九〇日を被告人
国方の本刑に算入する」との部分を破棄することとし、その余の部分に対する上告
は、上告趣意として何らの主張がなく、従つてその理由がないことに帰するから、
同四一四条、三九六条によりこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の点につき同一
八一条一項但書を適用して主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 上田次郎出席
  昭和三七年一〇月五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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