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平成11年(ワ)第14222号 特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日 平成13年6月13日
              判       決  
原      告     株式会社ジンテック
訴訟代理人弁護士 中 島   敏
補佐人弁理士   原 島 典 孝
被      告ひまわり情報株式会社
訴訟代理人弁護士     石 嵜 信 憲
同山 中 健 児
同森 本 慎 吾
同     丸 尾 拓 養
同林   康 司
復代理人弁護士福 井 紫 乃
同吉 池 信 也
              主       文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1被告は,別紙物件目録1及び2記載の装置を製造し,譲渡し,貸し渡し,譲
渡若しくは貸し渡しの申出をし,又は使用してはならない。
2 被告は,前項の装置及びこれに使用するソフトウエアを廃棄せよ。
3被告は原告に対し,金5000万円を支払え。
第2事案の概要
 本件は,原告が被告に対し,別紙物件目録1及び2記載の装置(以下「被告
装置1及び2」という。)を製造譲渡等している被告の行為が原告の有する特許権
を侵害するとして,製造行為等の差止め等と損害賠償の支払を求めた事案である。
1 前提となる事実(当事者間に争いはない。)
(1) 原告の有する特許権
  原告は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲第1
項の発明を「本件発明」という。)を有する。
 発明の名称   電話番号リストのクリーニング装置およびクリーニン
グ方法
 出願日 平成8年6月25日
 登録日 平成10年7月10日
 登録番号 特許第2801969号
 特許請求の範囲別紙「特許公報」写しの該当欄記載のとおり(以下同
公報掲載の明細書を「本件明細書」という。)。
(2)本件発明の構成要件
本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
A パソコンのようなコンピュータを用いて構成された電話番号リストのク
リーニング装置であって,
B ISDNに接続されてITU-T勧告Q.931に規定された回線交換
呼の制御手順を発信端末として実行する,
C クリーニング処理しようとする電話番号リストから順番に電話番号を読
み取り,その電話番号を着番号とし,伝達能力として非制限ディジタル情報を指定
した「呼設定」メッセージを網に送出する,
D 送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられて網から「呼出」メ
ッセージまたは「応答」メッセージが転送されてきた場合に,直ちに網に「切断」
メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行するとともに,当該「呼設定」メ
ッセージの前記電話番号を有効番号と判定する,
E 送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられずに網から「切断」
メッセージが転送されてきた場合に,直ちに切断復旧シーケンスを実行するととも
に,網からの「切断」メッセージに付帯した情報要素の理由表示をピックアップ
し,その理由表示の内容に応じて当該「呼設定」メッセージの前記電話番号を有効
番号として扱うか無効番号として扱うかを判定する,
F 有効番号と判定した電話番号と無効番号と判定した電話番号とを区別し
た新たなリストを作成する。
(3) 被告の行為
 被告は,被告装置2を業として製造,譲渡及び使用している(なお,被告
は,被告装置1について,現在,製造,販売を行っていないとして,この点を争
う。)。
2争点
(1) 被告各装置の構成
(原告の主張)
 被告装置1及び2の構成は,別紙物件目録1及び2記載のとおりである
(争いのある部分には下線を付した。)。
(被告の反論)
ア 被告装置1の構成中,dは以下のとおりである(争いのある部分に下線
を付した。)。その余の構成は認める。
d 「呼設定」メッセージの送出後一定時間内に網から「切断」メッセー
ジが転送されない場合,網に「切断」メッセージを送出して切断復旧シーケンスを
実行する。
イ 被告装置2の構成中,c,d,e,fは,以下のとおりである(争いの
ある部分に下線を付した。)。その余の構成は認める。
c ・・・伝達能力として音声を指定した「呼設定」メッセージを作成し
て網に送出する。
d 送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられ,網から本体に
「呼出」メッセージまたは「応答」メッセージ及び経過表示メッセージが転送され
てきた場合,本体は網に「切断」メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行
する。また,送出した「呼設定」メッセージが受け付けられた後一定時間内に網か
ら何らの「切断」メッセージも転送されない場合,網に「切断」メッセージを送出
して切断復旧シーケンスを実行する。
e 送出した「呼設定」メッセージが受け付けられ,網から「切断」メッ
セージが転送されてきた場合,切断復旧シーケンスを実行し,「切断」メッセージ
に付帯する情報要素の理由表示番号をピックアップする。
f ・・・上記のステータスとは,前記dの場合には網から呼出メッセー
ジまたは応答メッセージ及び経過表示メッセージが転送されてきた場合には・・・
(2)被告装置1の本件発明の構成要件充足性
(原告の主張)
被告装置1は,以下のとおり,本件発明の構成要件をすべて充足する。
ア構成要件Dの充足性について
(ア)「送出した『呼設定』メッセージの呼が受け付けられて網から『呼
出』メッセージまたは『応答』メッセージが転送されてきた場合に・・・」部分の
充足性
a 上記部分の意義
 本件明細書の特許請求の範囲の構成要件Dに係る部分(以下「構成
要件D」と略称することがある。)は,「送出した『呼設定』メッセージの呼が受
け付けられて網から『呼出』メッセージまたは『応答』メッセージが転送されてき
た場合に,直ちに網に『切断』メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行す
るとともに,当該『呼設定』メッセージの前記電話番号を有効番号と判定する」と
記載されている。
 構成要件Dは,以下のとおり,切断復旧シーケンスの実行に当たっ
て,「網から『呼出』メッセージ又は『応答』メッセージが転送されたことを直接
検知する場合」に限られるのではなく,「網から『切断』メッセージが転送されて
くるべき時間内にその転送がないことを検知する場合」も含むと解すべきである。
その理由は以下のとおりである。
 すなわち,呼設定メッセージの「呼」は受け付けられるか受け付け
られないかしかない。そして,呼が受け付けられた場合には,網から「呼出」メッ
セージまたは「応答」メッセージが転送され,他方,「呼」が受け付けられなかっ
た場合には,「切断メッセージ」が転送されてくる。そこで,「呼」が受け付けら
れなかった場合に,「切断メッセージ」が転送されるべき時間内に該メッセージの
転送がないのであれば,「呼」が受け付けられ網から「呼出」メッセージまたは
「応答」メッセージが転送されてきたのと同じであると理解しても差し支えないこ
とになる。そこで,「呼設定」メッセージの呼が受け付けられたことを判断するた
めには,網から転送されてきた「呼出」メッセージまたは「応答」メッセージを直
接に検知することによってもよいし,網から「切断」メッセージが転送されてくる
べき時間内にその転送がないことを検知することによってもよい。いずれの方法
も,検知方法の差異にすぎないから,「網から『呼出』メッセージまたは『応答』
メッセージが転送されてきた場合」を意味する。具体的な検知方法を示す本件明細
書の第2図は,本件発明の実施例を示すものにすぎず,検知方法を限定するもので
はない。
b充足性について
被告装置1の構成dにおける「送出した『呼設定』メッセージの呼
が受け付けられて網から『呼出』メッセージまたは『応答』メッセージが転送され
てきた場合,または『呼設定』メッセージの呼が受け付けられない際に網から『切
断』メッセージが転送されるべき時間内に該メッセージの転送がない場合」との構
成は,本件発明の構成要件Dの「網から『呼出』メッセージまたは『応答』メッセ
ージが転送されてきた場合」に該当する。
これに対し、被告は,呼設定メッセージにおいて伝達能力を非制限
ディジタル情報と指定した場合,網が「呼出」メッセージや「応答」メッセージを
転送することとなる「ディジタル通信機器」は一般には存在しないので,転送を前
提とした検知の必要性はないと主張する。しかし,ISDN回線にパソコン端末を
接続する場合,DSU(回線接続装置)とターミナルアダプタを介在させることに
なるが,その場合,ターミナルアダプタのディジタルポートにパソコン端末を接続
すると,パソコン端末からのディジタル信号はそのままISDN回線に送信され,
その場合のDSU-ターミナルアダプタ-パソコン端末の組合せは,正に「ディジ
タル通信機器」ということができる。このような場合に,呼設定メッセージにおい
て伝達能力を非制限ディジタル情報と指定すれば,呼設定メッセージの呼は受け付
けられて,網から呼出メッセージまたは応答メッセージが転送されてくることにな
るのであり,被告の主張は失当である。
(イ) 「・・・直ちに網に『切断』メッセージを送出する」部分の充足性
本件発明において,「呼設定」メッセージの呼が受け付けられた場合
には,これをもって当該電話番号を有効と判定し,それ以上通信状態を維持する必
要がないので,相手先に無用の負荷を掛けたり,電話料金が嵩むなどの問題が生じ
ない程度の短い時間的間隔で網に「切断」メッセージを送出する。したがって,本
件発明の構成要件Dにおける「直ちに」とは,「呼が受け付けられたと判断した場
合には,相手先に無用な負荷を掛けたり,電話料金が嵩むなどの問題が生じない程
度の短い時間的間隔で」と理解すべきである。
 一方,被告装置1の構成dは,「呼設定メッセージの呼が受け付けら
れない際に網から切断メッセージが転送されるべき時間内に,該メッセージの転送
がないこと」を検知することにより,呼が受け付けられたものと判断して,当該電
話番号を「有効」と扱って,相手先に無用な負荷を掛けたり,電話料金が嵩むなど
の問題が生じない程度の短い時間的間隔で網に切断メッセージを送出して切断復旧
シーケンスを実行するものである。
(ウ)以上によれば,被告装置1の構成dは,本件発明の構成要件Dを充
足する。
イ構成要件Eの充足性について
(ア) 本件発明の構成要件Eは,「送出した『呼設定』メッセージの呼が
受け付けられず,網から『切断』メッセージが転送されてきた場合に,直ちに切断
復旧シーケンスを実行する」と記載されているが,同記載の「直ちに」とは,「網
から切断メッセージが転送されてきた」ことと「切断復旧シーケンスを実行する」
こととの間に無用な間隔を置かない時間を指すというべきである。
 一方,被告装置1の構成eは,多数の調査対象に対して迅速な調査を
行い,実用に供しているのであるから,直ちに切断復旧シーケンスを実行してい
る。
(イ) 以上によれば,被告装置1の構成eの構成は,本件発明の構成要件
Eを充足する。
ウ その他の構成要件の充足性について
被告装置1の構成a,b,c,fは,本件発明の構成要件A,B,C,
Fを,それぞれ充足する。
(被告の反論)
 被告装置1は,以下のとおり,本件発明の構成要件を充足しない。
ア構成要件Dの充足性について
(ア) 本件発明の構成要件Dは,「送出した『呼設定』メッセージの呼が
受け付けられて網から『呼出』メッセージまたは『応答』メッセージが転送されて
きた場合に,・・・切断復旧シーケンスを実行する」と記載され,同記載によれ
ば,本件発明における検知の対象が「装置が網から『呼出』メッセージまたは『応
答』メッセージが転送されてきたこと」であることは明らかである。
 この点について、原告は,本件発明の構成要件Dは,切断復旧シーケ
ンスの実行に当たって,「網から『呼出』メッセージ又は『応答』メッセージが転
送されたことを直接検知する場合」に限られるのではなく,「網から『切断』メッ
セージが転送されてくるべき時間内にその転送がないことを検知する場合」も含む
と解すべきであると主張する。しかし,同主張は,特許請求の範囲の記載に基づか
ない解釈を前提とするものであり,失当である。
(イ)一方,被告装置1では,呼設定メッセージにおいて,伝達能力とし
て「非制限ディジタル情報」を指定しているので,相手先機器がディジタル機器で
ない限り,送出した呼設定メッセージが受け付けられ,網から呼出メッセージや応
答メッセージが転送されてくることはないのであり,これらのメッセージの網から
の転送を検知することや,これを検知した場合に一定の処理手順を行うべき必要は
そもそも存しない。現に,呼設定メッセージにおいて伝達能力を非制限ディジタル
情報と指定した場合,網が呼出メッセージや応答メッセージを転送することとなる
「ディジタル通信機器」は一般には存在していない。すなわち,DSU,ターミナ
ル・アダプタ,ターミナル・アダプタのディジタルポートに接続されたパソコン端
末という構成からなる機器(ISDNに接続されたパソコン)を相手先として,伝
達能力を非制限ディジタル情報と指定した呼設定メッセージを送出しても,これに
対して,網が呼出メッセージや応答メッセージを転送することはなく,この場合,
相手先機器が一般の電話機である場合と同様,通信が樹立できないとみなされ,切
断メッセージが転送されることとなる。
 被告装置1は,ISDN回線の上記特性(網から呼出メッセージや応
答メッセージが転送されてくることはないという特性)を踏まえ,網から呼出メッ
セージまたは応答メッセージが転送されてくるか否かにかかわらず,「呼設定メッ
セージの送出後一定時間内に網から切断メッセージが転送されない」ことを検知し
て,処理手順を進めるという構成を採用している。したがって,被告装置1の構成
dは,本件発明の構成要件Dを充足しない。
イ その他の構成要件の充足性について
被告装置1が依拠している制御手順は,「TTC標準JT-Q931」
であり,「ITU-T勧告Q931」ではない。両者は,全く同一ではない。よっ
て,被告装置1の構成bは,本件発明の構成要件Bを充足しない。その他の構成要
件の充足性についても争う。
(3)被告装置2の本件発明の構成要件充足性
(原告の主張)
被告装置2は,以下のとおり,本件発明の構成要件をすべて充足する。
ア構成要件Cの充足性について
被告装置2は,呼設定メッセージを網に送出する場合の伝達能力として
「音声」ではなく,「非制限ディジタル情報」を指定した。
 伝達能力として「音声」を指定した場合,相手方電話機がISDNに接
続された電話機であろうと,アナログ電話網に接続された電話機であろうと,必ず
呼出音が鳴ることになってしまい,多数の家庭の静穏を害する結果となるので,被
告装置2で伝達能力として「音声」を指定していることはありえない。また、被告
は,被告装置2について,「呼び出し音が鳴りませんので,お客様に迷惑を掛ける
ことはありません」と自ら宣伝しているのであり,同宣伝からすると、被告装置2
の伝達能力として「非制限ディジタル情報」を指定したものであることは明らかで
ある。
 被告は,伝達能力として「音声」を選択した場合においても相手先電話
機の呼出音を鳴らす前に切断処理を行うことは技術的に可能である旨主張する。し
かし,如何なる「技術」がこれを可能とするかについては何ら主張立証しない。
 また,被告は,被告装置2が伝達能力として「音声」を指定する理由と
して,携帯電話の電話番号調査にも利用できるようにするためである旨主張する。
しかし,被告装置2は携帯電話だけを対象にしたものでないので,携帯電話用に
「音声」を指定して発呼する機能を付加している可能性があったとしても,「非制
限ディジタル情報」を指定していないことの根拠にはなり得ない。
ところで,平成13年1月25日に原告及び被告によって実施された共
同実験(以下「共同実験」という場合がある。)では,被告が被告装置2であると
称する装置からアナログ回線に接続されたアナログ電話機に発呼したが,ナンバー
ディスプレイ対応型電話機は鳴動しないものの,それ以外の5種類の電話機は機種
により,40ないし100パーセント(平均すると,74パーセント)の確率で鳴
動し,携帯電話に発呼した場合にはすべて鳴動し,その鳴動時間について,大部分
が通常の1回分(約1秒間)鳴動し続けた。他方,被告は,自ら,被告装置2のカ
タログに,「呼出音が鳴りませんので,お客様に迷惑をかけることありません。」
と記載されていることと対比すると,共同実験に供した装置は,「相手方機器の呼
出音を鳴らさずに電話番号調査を行う」と宣伝して製造,販売,使用等している被
告装置2とは別の装置である。したがって、共同実験の結果が被告装置が伝達能力
として非制限ディジタル情報を指定していないことの根拠にはならない。
イその他の構成要件の充足性について
被告装置2の構成a,b,d,fは,本件発明の構成要件A,B,D,
Fを,それぞれ充足する。
被告装置2の構成dでは,①送出した「呼設定」メッセージが受け付け
られた場合に,網から転送されてくるのは「呼出」メッセージ又は「応答」メッセ
ージのみであり,経過表示メッセージが転送されることはなく,また,②網から本
体に「呼出」メッセージまたは「応答」メッセージが転送されてきた場合に,相手
先に無用な負荷を掛けたり,電話料金が嵩むなどの問題が生じない程度の短い時間
的間隔で,「網に切断メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行する」ので
あるから,本件発明の構成要件Dを充足する。
(被告の反論)
被告装置2は,以下のとおり,本件発明の構成要件を充足しない。
ア構成要件Cの充足性について
 被告装置2は,呼設定メッセージを網に送出する場合の伝達能力として
「非制限ディジタル情報」ではなく,「音声」を指定した。
電話機の特性上,相手先電話機に呼設定メッセージが到達しても,相手
先電話機の呼出音が鳴るまでに若干の時間的間隔がある。他方,発信側機器と相手
先機器との間の信号の伝達は極めて短い時間内にやりとりされるため,相手先電話
機の呼出音が鳴る前に呼出,応答,経過表示のいずれかのメッセージを検知して,
切断処理を行うことが可能になる。 被告装置2は,このような特性を利用して,
伝達能力を「音声」と指定したにもかかわらず,相手先機器の呼出音を鳴らさずに
電話番号調査を実現している。のみならず,被告装置2では,伝達能力を「音声」
と指定することによって,非制限ディジタル情報を指定した場合にはなし得ない,
携帯電話に関する調査や「都合取り外し」の情報の検知を行うことを可能とした
(被告装置2において「都合取り外し」の検知が可能なことは,原告と被告の共同
実験の際にも確認されている。)。伝達能力を「音声」と指定した場合でも,相手
先電話機の呼出音を鳴らす前に切断処理を行うことは技術的に可能であって,伝達
能力を「音声」と指定すれば相手先電話機の呼出音が必ず鳴るということにはなら
ない。
被告装置2において,伝達能力として「音声」が指定されていること
は,原告と被告による共同実験で確認されている。なお,原告は,原告と被告との
共同実験に供された装置が被告装置2とは異なると主張する。しかし,同実験に供
された装置が被告装置2であることは,同装置が,「都合取り外し」情報を検知で
きたことから明らかであり,この点の原告の主張は失当である。
 よって,被告装置2の構成cは,本件発明の構成要件Cを充足しない。
イ その他の構成要件の充足性について
(ア)構成要件Bについて
 被告装置2の構成bは,被告装置1と同じ理由により,本件発明の構
成要件Bを充足しない。
(イ)構成要件Dについて
 本件発明の構成要件Dは,「呼出メッセージまたは応答メッセージが
転送されてきた場合」と記載されている。
 一方,被告装置2の構成d(及びf)は,①網から「呼出」,「経過
表示」,「応答」のいずれかのメッセージが転送されてきた場合に,網に切断メッ
セージを送出するという構成を採用し(送出した「呼設定」メッセージが受け付け
られ,網から「経過表示」メッセージが転送されてくることは,原告と被告による
共同実験でも確認されている。),また,②網から「呼出」,「応答」若しくは
「経過表示」メッセージが転送されてきた場合,又は,「送出した『呼設定』メッ
セージが受け付けられた後一定時間内に網から何らの切断メッセージも転送されな
い場合に,網に「切断」メッセージを送出する構成を採用しているので(原告と被
告による共同実験でも確認されている。),本件発明の構成要件Dを充足しない。
(ウ)構成要件Eについて
 被告装置2の構成eでは,「呼設定」メッセージを網に送出すると,
すべての場合において,網から「呼設定受付メッセージ」が転送されてくるので,
本件発明の構成要件Eの「送出した『呼設定』メッセージの呼が受け付けられず」
を充足しない。
(エ)構成要件Fについて
 被告装置2の構成fでは,①「呼設定」メッセージの呼が受け付けら
れ,網から「呼出」メッセージ又は「応答」メッセージが転送されてきた場合に,
当該「呼設定」メッセージの発呼先電話番号を有効番号と判定するという処理手順
を介在させず,直接「01 実在」との分類名をもってユーザー情報に出力データ
として出力される構成を採用していること,②「呼設定」メッセージの呼が受け付
けられ,網から「切断」メッセージが転送されてきた場合に,そのメッセージに付
帯した情報要素の理由表示の内容に応じて当該「呼設定」メッセージの発呼先電話
番号を有効番号として扱うか無効番号として扱うかを判定するという処理手順を介
在させず,直接理由表示番号ごとに分類するのであるから,本件発明の構成要件F
を充足しない。
(4) 本件特許権の消尽
(被告の主張)
 被告装置1について,被告は,有限会社エー・エム・シー・インターナシ
ョナル(以下「エー・エム・シー」という。)から仕入れて販売していた。ところ
で,原告はエー・エム・シーに対して,本件特許権の包括的な実施許諾をしてい
る。このことは,原告がエー・エム・シーの製造販売する被告装置1と同一構成の
製品(「DOLPHIN21」)について製造販売の中止を求めていない点から推
測できる。そうすると,本件特許権は,エー・エム・シーから被告に本件装置1を
販売した時点で,その効力が消尽したと解すべきである。なお,仮に,原告とエ
ー・エム・シーの間で,被告装置1については実施許諾しないとの取り決めがされ
た場合があったとしても(甲24),本件特許権の効力が消尽したことにつき,影
響を与えるものではない。
(原告の反論)
 原告がエー・エム・シーに対して実施許諾を与えたのは、「DOLPHI
N21」についてであって、被告装置1についてではない。原告はその旨をエー・
エム・シーに通知してある(甲24)。エー・エム・シーは、原告の許諾を得るこ
となく被告装置1を製造して,被告に販売したのであるから,本件特許権の効力が
消尽したと評価されることはない。
(5)被告装置1について差止めの必要性
(原告の主張)
仮に,被告が被告装置1につき販売等の行為を中止したとしても,以下の
理由により,今後譲渡及び使用をするおそれは存在する。
 すなわち,被告は,被告装置1を6台,1500万円を超える対価を払っ
て購入したので,投下資本を回収する必要性があること,被告装置1には調査対象
となる相手方機器を鳴動させることはないという優位性があること,被告が関連会
社と現在進めている「Dr.BellMAX」なるサービスは,被告装置1を前
提としていること等の理由から,今後その譲渡及び使用をするおそれは存在する。
(被告の反論)
被告は,エー・エム・シーとの契約関係を終了させたこと,被告装置2の
開発に伴い,被告装置1の販売活動等を実施する必要性がなくなったこと等の理由
から,将来,被告装置1を販売するおそれはない。
(6) 損害額
(原告の主張)
被告は,本件特許権設定登録日以降,被告装置1については,少なくとも
20台,1台当たり1000万円で販売し,8000万円の利益を得,被告装置2
については,少なくとも10台,1台当たり1000万円で販売し,4000万円
の利益を得,合計1億2000万円の利益を得た。原告は,これと同額の損害を被
った。原告は,このうち金5000万円を請求する。
(被告の反論)
原告の主張は争う。
第3 争点に対する判断
1被告装置1の本件発明の構成要件Dの充足性について
(1) 本件発明の構成要件Dの解釈
 本件明細書の特許請求の範囲の構成要件Dに係る部分には,「送出した
『呼設定』メッセージの呼が受け付けられて網から『呼出』メッセージまたは『応
答』メッセージが転送されてきた場合に,直ちに網に『切断』メッセージを送出し
て切断復旧シーケンスを実行するとともに,当該『呼設定』メッセージの前記電話
番号を有効番号と判定する」と記載されている。
 原告は,構成要件Dの意義について,網に「切断」メッセージを送出して
切断復旧シーケンスを実行するに際し,「網から『呼出』メッセージ又は『応答』
メッセージが転送されたこと」を直接検知する場合のみに限定すべきではなく,
「網から『切断』メッセージが転送されてくるべき時間内にその転送がないことを
検知する場合」をも含むと解すべきであると主張する。
 この点につき,当裁判所は,原告主張のように解するのは相当でないと判
断する。その理由は以下のとおりである。
ア 本件明細書の特許請求の範囲に,「網から『呼出』メッセージまたは
『応答』メッセージが転送されてきた場合に」と明確に記載され,同文言を無視し
て,「『呼出』メッセージまたは『応答』メッセージのいずれも転送されない場
合」を含むものと解することは,到底できない。
イ 本件明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を参酌する。本
件明細書の6頁左欄5行ないし14行(第2図のフローチャート参照)には、本件
発明の実施例において,送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられた場合
について,「図2のフローチャートに示すように,呼設定シーケンス200におい
て,送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられて網から「呼出」メッセー
ジまたは「応答」メッセージが転送されてきた場合に,ステップ202またはステ
ップ203からステップ301→302→303の処理に抜け出して,直ちに網に
「切断」メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行するとともに,当該「呼
設定」メッセージの前記電話番号を有効番号と判定して有効リストに記入する。」
と具体的詳細に記載がされているが,他方,「『呼出』メッセージまたは『応答』
メッセージのいずれもが,所定の時間内に転送されない場合」における検知手段、
技術思想を示唆する記載の開示は一切されていない。したがって,本件明細書の特
許請求の範囲以外の部分を参酌してもなお,原告の主張に係る検知方法を含めるべ
きであると解することはできない。この点の原告の主張は失当である。
(2) 被告装置1の構成dと本件発明の構成要件Dとの対比
ア 本件全証拠によるも,被告装置1において,「網から『呼出』メッセー
ジ又は『応答』メッセージが転送されたこと」を直接検知する機能を備えているこ
とを認めることはできない。
イのみならず,証拠(乙7)によれば,以下の事実が認められ,これに反
する証拠はない。
(ア) NTTへの総加入者に対するISDN回線の割合は,平成11年度
末で約9.0パーセントであり,平成12年度末では,予想で16.8パーセント
である。
(イ) 伝達能力を「非制限ディジタル情報」と指定して発呼を行うと,以
下の(a)ないし(d)の場合には,ISDN網から切断メッセージが転送されてくる。
 すなわち,(a)DSUを介してISDN回線網に接続されたターミナル
アダプタのアナログ・インターフェイス(アナログ・ポート)に,アナログ電話機
やG3ファクシミリ装置を接続している場合,(b)DSUを介してISDN回線網に
接続されたターミナルアダプタのアナログ・インターフェイス(アナログ・ポー
ト)に,モデムを介してパソコンを接続している場合,(c)DSUを介してISDN
回線網に接続されたターミナルアダプタのディジタル・インターフェイス(ディジ
タル・ポート)に,パソコンを接続(RS-232C等)している場合で,低位レ
イヤ整合性,高位レイヤ整合性が合致しない場合,(d)DSUを介してISDN回線
網に接続されたターミナルアダプタのディジタル・インターフェイス(ディジタ
ル・ポート)に,ディジタル電話機(日本電信電話株式会社製の「でじたるでんわ
S-1000」等)を接続している場合には,ISDN網から切断メッセージが転
送されてくる。
 上記認定事実によれば,相手方機器がISDN回線である場合(その割
合は低い。),伝達能力を「非制限ディジタル情報」と指定して発呼を行うと,呼
設定メッセージの呼が受け付けられずに,網から発信端末に切断メッセージが転送
されることがほとんどであり,網から「呼出」メッセージや「応答」メッセージが
転送されてくることは少ないと推認される。なお,相手方機器がアナログ回線であ
る場合(NTTの総加入者の大半の割合を占めるケース)には,伝達能力を「非制
限ディジタル情報」と指定して発呼を行うと,「切断」メッセージが転送され(本
件明細書6頁右欄41行ないし47行),「呼出」メッセージや「応答」メッセー
ジが転送されてくることはない。
 そうすると,被告装置1において,「呼出」メッセージ又は「応答」メ
ッセージの転送を受けてこれを検知する機能を備えなければ不都合であると解する
こともできない。
ウ結局,被告装置1が,網から「呼出」メッセージ又は「応答」メッセー
ジが転送されてきた場合に,これを検知し,一定の処理手順を行うものであると認
められない。
(3)以上によれば,被告装置1の構成dは,本件発明の構成要件Dを充足しな
い。
2被告装置2の本件発明の構成要件Cの充足性について
(1)被告装置2において,呼設定メッセージを網に送出する場合の伝達能力と
して「非制限ディジタル情報」を指定しているか否かについて検討する。
 この点につき,当裁判所は,被告装置2において,指定している伝達能力
は「音声」であって,「非制限ディジタル情報」ではないと判断する。その理由の
詳細を述べる。
 証拠(各認定部分に表記した。)によれば,以下のとおりの事実が認めら
れ,これに反する証拠はない。
ア原告及び被告の共同実験の結果
(ア) 原告と被告の合意に基づいて平成13年1月25日共同実験(2種
類)が実施された。
a 第1の実験では,被告装置2にINS回線(実験回線)を接続し,
アナログ回線(ND契約実験回線,非ND契約実験回線)に各種電話機(アナログ
電話機5台,ナンバーディスプレイ対応電話機1台,携帯電話4台)を接続して,
これらの各電話機に向けて被告装置2から各10回ずつ発呼する実験を行い,出力
データ及び鳴動の有無の確認が行われた。
 出力データに関しては,被告装置2では,呼設定メッセージを送出
する場合の伝達能力(情報転送能力)として,「音声」が指定されている旨のデー
タが出力表示された。その結果は,アナログ電話では,74パーセントの確率で鳴
動し,ナンバーディスプレイ対応電話機では1度も鳴動せず,携帯電話ではすべて
の場合に鳴動したことが確認された(甲19の1,乙8の1)。
b 第2の実験では,被告装置2にINS回線2本(実験回線)を接続
し,あらかじめ設定されている電話番号1000件に被告装置2より発呼する実験
を行ったところ,発呼に伴い送出された「呼設定」メッセージが受け付けられ,網
から切断メッセージが転送されてきた場合,「切断メッセージ」に付帯する理由表
示番号をピックアップして,ユーザー情報として出力したところ,「03 都合取
り外し」(63 その他のサービス利用不可クラス)の理由表示番号が136件出
力されたことが確認された(乙9の2)。
(イ) 上記共同実験の結果を総合すれば,被告装置2では,呼設定メッセ
ージを送出する場合の伝達能力として,「音声」が指定されていると認められる。
これに対し,原告は,第1の実験結果(鳴動の確認)及び原告が独自
に実施した実験結果(甲17)によれば,伝達能力として「音声」を指定した場合
には,相手方電話機が実際に鳴動することが確認されたところ,被告が,自ら「相
手先機器の呼び出し音を鳴らさずに電話番号調査を行う」と宣伝して被告装置2を
製造,販売等していること(甲6)からすれば,共同実験では,被告装置2と異な
る装置を用いたと推測されると主張する。
 しかし,原告の主張は以下の理由により採用できない。すなわち,確
かに,第1の実験結果(鳴動の確認)及び原告が独自に実施した実験結果(甲1
7)によれば,伝達能力として「音声」を指定した場合には,相手方電話機が実際
に鳴動したことが確認されているが,同実験結果報告書によれば,鳴動の有無の判
定基準は,音が少しでも聞こえれば鳴動と判定するとされたこと,鳴動する場合で
も,実際の鳴動時間は1秒ある場合もあれば,0.数秒の場合もあると確認されて
いること(いずれにしても1秒を超えることはないこと),また,電話の機種によ
っては,全く鳴動しなかった場合や無鳴動の確率が5割以上の場合も確認されてい
ること,共同実験では鳴動がばらつきがあるが,網では1秒ON2秒OFFの周期
を刻んでいるので,必ず本実験のような結果にはならないこと,他方,被告装置2
に関するパンフレット(甲6)には,「呼び出し音が鳴りませんので,お客様に迷
惑を掛けることはありません。」と記載されているが,あくまでも宣伝用パンフレ
ットであるから,必ずしもその記載を前提とすることはできないこと等の点に照ら
すならば,共同実験に用いた装置が被告装置2と異なるということはできない。し
たがって,原告の同主張は失当である。
イその他の証拠について
(ア) その他,被告装置2において指定している伝達能力に関する証拠と
して,以下のものがある。
a (a)お客様都合による取り外し(通話停止)中のアナログ加入者番
号,又は(b)お客様都合による取り外し(通話停止)中のISDN加入者番号を相手
方とし,伝達能力として「音声」を選択した呼設定メッセージを送出した場
合,(a)(b)の両場合とも,切断メッセージに伴う理由表示番号として「♯63:そ
の他のサービス又はオプションの利用不可クラス」との理由表示がされるが,伝達
能力として「非制限ディジタル情報」を選択した呼設定メッセージを送出した場合
には,(a)の場合では「♯3:相手へのルートなし」,(b)の場合では「♯63:そ
の他のサービス又はオプションの利用不可クラス」との切断メッセージに含まれる
理由表示がされる旨,東日本電信電話株式会社営業部ネットワークサービス担当者
の回答がある(甲20)。
b 伝達能力として「非制限ディジタル情報」を選択した呼設定メッセ
ージを送出した場合,相手方機器がアナログ電話であれば,非制限ディジタルのル
ートが存在しないので,「♯3:相手へのルートなし」との理由表示がされる旨,
東日本電信電話株式会社営業部ネットワークサービス担当者の回答がある(乙
6)。
c「都合取り外し」の状態にある電話(一般加入電話)に対して,伝
達能力として「非制限ディジタル情報」を指定して発呼した場合,通常の通話可能
状態にある電話についてと同様,理由表示番号03(相手へのルートなし)で切断
され,「都合取り外し」の状態にある電話と通話可能な状態にある電話とを区別で
きないが,伝達能力として「音声」を指定して発呼した場合には,「都合取り外
し」の状態にある電話については,理由表示番号63(その他のサービス又はオプ
ションの利用不可クラス)で切断されるため,通常の通話可能状態にある電話との
区別が可能となる(乙5)。
d 伝達能力として「音声」を指定して発呼した場合には,「都合取り
外し」の状態にある電話(理由表示番号63を表示)と通常の通話可能状態にある
電話(理由表示番号03〔相手へのルートなし〕)の区別が可能となることに加
え,「都合取り外し」はほとんどの場合,顧客が「電話料金未納」であることを意
味するので,これを検知できるため,信用調査が可能となり「顧客管理」という点
で利点があり,そのような観点から,被告装置2は伝達能力として「音声」を指定
して開発されたとされている(乙5)。
e NTTへの総加入者に対するISDN回線の割合は,平成11年度
末で約9.0パーセントであり,同12年度末でも,予想で16.8パーセントに
すぎない旨,日本電信電話株式会社営業部ネットワークサービス担当者の回答があ
り,伝達能力を「非制限ディジタル情報」とした場合には,「都合取り外し」を判
別可能な場合が非常に限定されることになる(乙7)。
f 伝達能力が「非制限ディジタル情報」と指定されていることに争い
のない被告装置1では,その操作説明書の16頁の表(甲3,「調査結果ステータ
スの説明」)には,「03 取り外し」で「『・・・お客様の都合により,電話を
取り外しています。』または『・・・通話ができなくなっています。』のようなメ
ッセージが聞こえてくる電話番号です。」と記載されているのに対し,被告装置2
の仕様書の5頁の表(甲4,「ステータスの簡単な説明」)には,上記の「03 
取り外し」のほかに,「07 取り外し2」で「発信先の電話番号が案内に含ま
れ,一時的に利用ができない。」と追加されていることからすると,被告装置2
は,被告装置1とは異なり「都合取り外し」を判別可能な装置であると推認でき
る。
(イ) 以上認定した事実を総合すると,伝達能力を「音声」と指定した場
合には「アナログ回線に接続された電話機」,「ISDN回線に接続された電話
機」,「携帯電話機」のすべての場合について「都合取り外し」を判別できる等の
優位点があり,被告装置2において,呼設定メッセージを網に送出する場合に,
「都合取り外し」を判別することを可能とするために,伝達能力として「音声」を
指定していると認めることができる。
(2)したがって,被告装置2において,呼設定メッセージを網に送出する場合
に,伝達能力として「非制限ディジタル情報」を指定しているものと認めることは
できない。被告装置2のcの構成は,本件発明の構成要件Cを充足しない。
3よって,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がな
い。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官    飯  村  敏  明
裁判官今  井  弘  晃
裁判官石  村     智
物件目録
1 被告装置1
被告装置1は,「DoctorBell(DBⅠ)」という製品名の電話番号
調査装置であり,以下の構成を有する。
a 電話番号調査装置(DBⅠ)は,パソコンなどのコンピュータ本体を有し,
本体はディスプレイ,キーボードと,ISDN通信回線に接続するための通信ボー
ドと,中央演算処理装置(CPU)と,メモリと,動作プログラムを格納したハー
ドディスク装置と,媒体着脱式ディスク装置とを備え,動作プログラムに基づき処
理を実行する。
b 本体は,回線接続装置(DSU)を介してISDN通信回線に接続され,T
TC標準JT-Q931に規定された回線交換呼の制御手順を発信端末として実行
する。
c 本体は,電話番号及びユーザー情報からなる入力データから所定の順番で電
話番号を読み取り,その電話番号を着番号とし,伝達能力として非制限ディジタル
情報を指定した「呼設定」メッセージを作成して網に送出する。
d 送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられて網から「呼出」メッセ
ージまたは「応答」メッセージが転送されてきた場合,または「呼設定」メッセー
ジの呼が受け付けられない際に網から「切断」メッセージが転送されるべき時間内
に該メッセージの転送がない場合には,直ちに網に「切断」メッセージを送出して
切断復旧シーケンスを実行する。
e また,送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられず,網から「切
断」メッセージが転送されてきた場合,本体は直ちに切断復旧シーケンスを実行す
るとともに,網からの「切断」メッセージに付帯している情報要素の理由表示番号
をピックアップする。
f 入力データにおける各電話番号及びユーザー情報に,ステータス,新電話番
号及び課金情報を付加したものを出力データとして出力する。前記ステータスと
は,前記dの場合には「01 実在」との分類名をもって,前記eの場合にはピッ
クアップされた情報要素の理由表示番号ごとに「01 実在」「02 移転」「0
3 取り外し」「04 番号誤り」「05 区分未対応」「09 欠番」との分類
名をもって,その他の場合には各事由ごとに「04 番号誤り」「06 不正番
号」「50 回線エラー」との分類名をもって,それぞれ表示される情報である。
前記新電話番号とは,前記eでピックアップされた情報要素の理由表示番号が,
「相手加入者番号変更」を意味する「22」であり,かつ診断情報として理由表示
番号と共に網から新電話番号が送出されてきた場合に,その新電話番号をピックア
ップして表示したものである。前記課金情報とは,発信時に通話料として課金がな
された場合に網から送出される課金情報をピックアップして度数表示したものであ
る。
2 被告装置2
被告装置2は,「DoctorBellⅡ(DBⅡ)」という製品名の電話番
号調査装置であり,以下の構成を有する。
a 電話番号調査装置DBⅡは,パソコンなどのコンピュータ本体を有し,本体
はディスプレイ,キーボードと,ISDN通信回線に接続するための通信ボード
と,中央演算処理装置(CPU)と,メモリと,動作プログラムを格納したハードデ
ィスク装置と,媒体着脱式ディスク装置とを備え,動作プログラムに基づき処理を
実行する。
b 本体は,回線接続装置(DSU)を介してISDN通信回線に接続され,T
TC標準JT-Q931に規定された回線交換呼の制御手順を発信端末として実行
する。
c 本体は,電話番号及びユーザー情報からなる入力データから所定の順番で電
話番号を読み取り,その電話番号を着番号とし,伝達能力として非制限ディジタル
情報を指定した「呼設定」メッセージを作成して網に送出する。
d 送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられ,網から本体に「呼出」
メッセージまたは「応答」メッセージが転送されてきた場合,本体は,相手先に無
用な負荷を掛けたり,電話料金が嵩むなどの問題が生じない程度の短い時間的間隔
で網に「切断」メッセージを送出して切断復旧シーケンスを実行するとともに,当
該「呼設定」メッセージの前記電話番号を有効番号と判定する。
e 送出した「呼設定」メッセージの呼が受け付けられず,網から本体に「切
断」メッセージが転送されてきた場合,本体は直ちに切断復旧シーケンスを実行す
るとともに,網からの「切断」メッセージに付帯している情報要素の理由表示番号
をピックアップする。
f 入力データにおける各電話番号及びユーザー情報に,ステータス,新電話番
号,課金情報及び処理年月日を付加したものを出力データとして出力する。前記ス
テータスとは,前記dの場合には網から「呼出」メッセージまたは「応答」メッセ
ージが転送されてきた場合には「01 実在」との分類名をもって,前記eの場合
にはピックアップされた情報要素の理由表示番号ごとに「01 実在」「02 移
転」「03 取り出し」「04 番号誤り」「05 区分未対応」「07 取り出
し2(取り外し〔番号案内あり〕)」「08 取得番号不足」「09 欠番」との分
類名をもって,その他の場合には各事由ごとに「04 番号誤り」「06 不正番
号」「50 回線エラー」との分類名をもって,それぞれ表示される情報である。
右の新電話番号とは,前記eでピックアップされた情報要素の理由表示番号が,
「相手加入者番号変更」を意味する「22」であり,かつ診断情報として理由表示
番号と共に網から新電話番号が送出されてきた場合に,その新電話番号をピックア
ップして表示したものである。前記課金情報とは,発信時に通話料として課金がな
された場合に網から送出される課金情報をピックアップして度数表示したものであ
る。

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