弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決および第一審判決中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人を懲役六月に処する。
     第一審における未決勾留日数中三〇日を右本刑に算入する。
     博多税関支署の押收した起訴状添付犯罪一覧表(第二表)記載の物件中、
西陣織ネクタイ五本、模様入り縮緬絹布四ヤール、どんす端切れ一ヤール、事務用
鉛筆三六本、黒ビロード生地〇・五ヤール、朝鮮服袴一枚、どんす端切れ一ヤール
および人絹端切れ二枚(物件番号四二ないし四九)は、これを没收する。第一審に
おける訴訟費用中証人A、同Bに支給した分は、被告人をして第一審相被告人Cお
よび第一審における分離前の相被告人Dと連帯して負担させ、証人Eに支給した分
は、被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人山内忠吉の上告趣意第一点一は、憲法三五条違反をいうが、原審で主張判
断のない第一審の訴訟手続に関する主張であつて、適法な上告理由に当らない。
 同二(イ)(ロ)は、憲法三一条違反をいうが、実質は、原審で主張判断のない
事実誤認の主張を前提とする単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当
らない。
 同三(イ)は、憲法一四条違反をいうが、外国人登録令が憲法同条に違反しない
ことは、当裁判所の判例(昭和二六年(あ)第三九一一号、同三〇年一二月一四日
大法廷判決、刑集九巻一三号二七五六頁)とするところであつて、所論は理由がな
い。
 同三の(ロ)は、憲法三一条違反をいうが、実質は、単なる訴訟法違反の主張で
あつて、適法な上告理由に当らない。
 同第二点は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 しかし、職権をもつて調査するに、原判決の是認する第一審判決は、博多税関支
署の押收した貨物(起訴状添付の犯罪一覧表第二表記載の物件)および船舶(F丸)
一隻を没收しているのであるが、旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前
の関税法をいう。以下同じ。)八三条一項により被告人以外の第三者の所有物を没
收することは、同法その他の法令において所有者たる第三者に対しその所有物件の
没收につき、告知、弁解、防禦の機会を与えるべき旨の規定を設けていないから、
憲法三一条および二九条に違反し許されないものと解すべきことは当裁判所の判例
(昭和三〇年(あ)第九九五号、同三七年一一月二八日大法廷判決)とするところ
である。しかるに記録によれば、前記起訴状添付の犯罪一覧表(第二表)記載の貨
物中物件番号一ないし四一および五〇ないし五九の物件並びに船舶F丸は、被告人
および第一審相被告人ら以外の第三者の所有に属することが明らかであるから、こ
れが没收の言渡は、憲法の右各条に違反し、許されないものというべく、右貨物お
よび船舶の没收を言い渡した第一審判決中被告人に関する部分およびこれを是認し
た原判決は、この点において破棄を免れない。
 よつて、刑訴四一〇条一項本文、四〇五条一号、四一三条但書により原判決およ
び第一審判決中被告人に関する部分を破棄し、被告事件につき更に判決する。
 原審の是認する第一審判決の確定した事実に法律を適用すると、被告人の同判示
第一の所為は、外国人登録法附則三項により従前の例によるものとされた外国人登
録令九条一項、一三条四号に、同判示第二の所為は、関税法附則一三項により従前
の例によるものとされた旧関税法七六条一項、刑法六〇条に該当するから、所定刑
中いずれも懲役刑を選択し、両者は刑法四五条前段の併合罪であるから、同四七条、
一〇条により重い旧関税法違反罪の刑に法定の加重をし、その刑期範囲内で被告人
を懲役六月に処し、同二一条により第一審における未決勾留日数中三〇日を右本刑
に算入し、主文第四項掲記の物件は、第一審判決判示第二の犯罪に係る貨物であつ
て被告人の所有するものであるから、関税法附則一三項により従前の例によるもの
とされた旧関税法八三条一項によりこれを没收することとし、訴訟費用の負担につ
き刑訴一八一条一項本文、一八二条を適用して主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官下飯坂潤夫、同高木常七、同石坂修一、同山田作之助の反対
または少数意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官下飯坂潤夫の反対意見は、次のとおりである。
 わたくしは、第三者所有物の没收を違憲とする多数意見に賛成しえない。その理
由は、昭和三〇年(あ)第二九六一号、同三七年一一月二八日言渡大法廷判決にお
けるわたくしの反対意見と同趣旨であるから、これを引用する。
 裁判官高木常七の少数意見は、次のとおりである。
 わたくしは、第三者所有物の没收を違憲とする多数意見に賛同しえない。その理
由は、昭和二八年(あ)第三〇二六号、同三五年一〇月一九日大法廷判決(刑集一
四巻一二号一五七四頁)におけるわたくしの補足意見と同趣旨であるから、これを
引用する。
 裁判官石坂修一の反対意見は、次の通りである。
 本件に関する多数意見に反対する理由は、わたくしが先に昭和三〇年(あ)第二
九六一号、同三七年一一月二八日言渡の大法廷判決に示した反対意見につきて居る
から、これを引用する。
 裁判官山田作之助の少数意見は、次のとおりである。
 没收の点に関するわたくしの意見は、昭和三〇年(あ)第二九六一号、同三七年
一一月二八日言渡大法廷判決におけるわたくしの少数意見と同趣旨であるから、こ
れを引用する。
 検察官  村上朝一公判出席
  昭和三七年一二月一二日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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