弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人榎本勝則及び上告補助参加人代理人小池貞夫、同安養寺龍彦の各上告
理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照ら
し、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はなく、また、所論引用
の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。右違法があることを前提とする所論
違憲の主張は、失当である。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の
認定を非難するか、又は独自の見解に基づき若しくは原審の認定にそわない事実を
前提として原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
伊藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。
 私は、法廷意見と本件の結論を同じくするものであるが、被上告人のした本件食
堂の利用の拒否、警告書の交付等が不当労働行為に該当するかどうかに関しては、
労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活
動の正当性の有無が問題となるので、この点についての私の見解を明らかにしたう
え、本件について検討を加えることとしたい。
 さきに、最高裁昭和四九年(オ)第一一八八号同五四年一〇月三〇日第三小法廷
判決・民集三三巻六号六四七頁は、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理
する物的施設を利用して行う組合活動が正当なものとされるためには、使用者の許
諾を得ること、又は使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許さないことが権
利の濫用と認められるような特段の事情があることが必要である旨を明らかにした
が、法廷意見も右の説示を正当としているものと思われる。
 私も右の判例が一般論として説示するところは賛同できないものではない。けだ
し、使用者が当該施設の利用を許諾するのは、通常、労働組合が使用者と団体交渉
等なんらかの交渉をした結果であろうし、これによつて労働組合又はその組合員が
使用者の所有し管理する物的施設を利用するのが本来の姿といわなければならない
からである。それゆえ、右の物的施設の利用について労使間の合意を形成するため
に、労使双方の誠実な努力が求められることはいうまでもない。しかしながら、労
使間に実際に紛争が生じるのは、右のような使用者の許諾ないし労使間の合意が存
在しない場合であろうし、現に本件においても、被上告人(使用者)が本件食堂の
利用を許諾しなかつたため、労使間に紛争が発生しているのである。このような場
合においても、労働組合又はその組合員が当該施設を利用して行う組合活動が常に
正当性がないということはできず、使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許
諾しないことが権利の濫用と認められるような特段の事情があるときはこれを正当
なものというべきである。そして、右の特段の事情があるかどうかについては、硬
直した態度で判断するのではなく、当該施設の利用に関する合意を形成するための
労使の努力の有無、程度が勘案されなければならないことはもちろんであるが、さ
らに、いわゆる企業内組合にあつては当該企業の物的施設を利用する必要性が大き
い実情を加味し、労働組合側の当該施設を利用する目的(とくにその必要性、代替
性、緊急性)、利用の時間、方法、利用者の範囲、労働組合によつて当該施設が利
用された場合における使用者側の業務上の支障の有無、程度等諸般の事情を総合考
慮して判断されるべきものであると考える。
 本件の場合、被上告人は本件食堂の利用を許諾しなかつたのであるが、そのこと
をもつて直ちに本件組合活動が正当性を欠くと即断することなく、さらに右の特段
の事情の有無を検討する必要があるところ、原審の適法に確定した事実及びこれか
ら推認しうるところによれば、(ア) 本件食堂の利用をめぐる紛争が発生した当
時、上告補助参加人組合は結成されて間もない時期であり、しかもその組合員がD
工場とE工場とに分れていたため、上告補助参加人組合が本件食堂(D工場食堂・
E工場食堂)において集会をもつ必要性は相当高かつたうえ、その使用方法も不当
な態様にならないように配慮されていたばかりでなく、(イ) 上告補助参加人組
合が本件食堂を利用しても、被上告人の業務ないし他の従業員のレクリエーシヨン
活動に格別の支障が生じたことは窺われないにもかかわらず、(ウ) 被上告人は、
上告補助参加人組合の強引な態度に触発された面があることは否定できないものの、
本件食堂の利用に相当強硬な姿勢を示したこともあるというのであるが、その反面、
(エ) 被上告人は、年約四回の定期大会、臨時大会については本件食堂を利用す
ることを許諾し、暫定的に使用料を負担して外部の会場を借り受けるなど一定の譲
歩をし、(オ) 上告補助参加人組合は、昭和四九年三月被上告人の提供した右会
場で臨時大会を開催したのちは、多数回にわたつて無許可で本件食堂を利用し、本
件食堂の利用に関する合意を形成する努力を全くしないうえ、ときには暴力行為に
及ぶなど行き過ぎた行為をした、というのである。
 以上を総合すると、被上告人が上告補助参加人組合ないしその組合員に対し本件
食堂の利用を許諾しないことが権利の濫用であると認められるような特段の事情が
あるとまではいえないのであつて、結局、本件の場合、被上告人のした本件食堂の
利用の拒否、警告書の交付等が不当労働行為に該当するということはできない。原
判決は、その借辞からみて、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物
的施設を利用して行う組合活動の正当性の判断について厳格にすぎる感を免れない
けれども、その結論は正当であるから、本件上告はこれを棄却すべきである。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    坂   上   義   夫
            裁判官    貞   家   克   己

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