弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人竹中半一郎の上告趣意第一点について。
 当該判決裁判所の公判廷における被告人の自白は憲法三八条三項にいわゆる「本
人の自白」に含まれないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一六八号、
同年七月二九日大法廷判決、同年(れ)第四五四号、同二四年四月六日大法廷判決、
同二三年(れ)第一五四四号、同二四年四月二〇日大法廷判決)の示すところであ
つて、弁護人の駁論にかかわらず、今日、これを変更する必要を見ない。新刑訴法
三一九条二項が、更に右憲法の規定の趣旨を拡充して、前叙のごとき公判廷におけ
る自白についても、別に補強証拠を必要とする旨規定したからといつて、右新刑訴
法の条項が前記憲法の規定に違反するものと解釈しなければならないものでないこ
とは勿論である。(昭和二三年(れ)第一六九六号、同二四年六月二九日大法廷判
決参照)論旨は理由がない。
 同第二点について。
 被告人の当該公判廷外における自白を証拠として、犯罪事実を認定するには、補
強証拠を必要とするけれども、その犯罪構成事実の全部に亘つて、一々、これが裏
付となる補強証拠を必要とするものではなく、要は、その自白の真実性を保障する
に足る他の証拠があれば足るのである。(昭和二三年(れ)第一四二六号、同二四
年一〇月五日大法廷判決参照)殊に、賍物罪において、犯人が賍物たるの情を知つ
ていたかどうかというがごとき、いわゆる犯罪の主観的要件に属するものについて
は、その直接の証拠は当該公判廷外の被告人の自白(本件においては第一審公判調
書中被告人の供述記載)のみであつても、その客観的構成要件たる事実(本件にお
いては、被告人がA某から依頼を受けて、昭和二三年一月中五回に亘つて、連合国
占領軍所属財産たるガソリンを預つた事実)について他に確証があつて、右被告人
の自白の真実性が保障せられると認められる以上、それ等の各証拠を綜合して、犯
罪事実の全体を認定することは適法であるといわなければならない。しかして本件
において右客観的要件については、原審公判廷における被告人の自白があり、之に
よつて適法に右事実を認定することができることは既に前点において説示したとお
りである。従つて以上各証拠を綜合して原判示事実を認定した原判決に所論のよう
な違法ありということはできない。(昭和二三年(れ)第一七四四号、同二五年一
〇月一一日大法廷判決)論旨は理由がない。
 同第三点について。
 被告人に対し、刑の執行猶予の言渡をするか、どうかは、原審の自由裁量に属す
るところであるのみならず、原審が本件において刑の執行猶予の言渡をしなかつた
点において、所論のような違法のあることはみとめられない。
 よつて、旧刑訴四四六条に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は、論旨第一点に関する裁判官塚崎直義、同澤田竹治郎、同井上登、同
栗山茂、同穂積重遠の少数意見(論旨第一点掲記大法廷判決記載のとおり、なお、
この点に関する裁判官真野毅、同齋藤悠輔の補足意見についても右各判決参照)並
びに同第二点に関する裁判官島保の少数意見(論旨第二点掲記の大法廷判決記載の
とおり)同齋藤悠輔の少数意見(昭和二三年(れ)第四五四号、同二四年四月六日
大法廷判決記載のとおり)を除く外裁判官一致の意見によるものである。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二五年一一月二九日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    島           保
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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