弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人株式会社A商店の弁護人大山菊治、同菅沼漠の上告趣意第一点ないし第三
点は、単なる法令違反の主張であり、同第四点は、量刑不当の主張であり、同第五
点は、相被告人上告趣意を利益に援用する、というのであつて、その趣旨が明確を
欠き、以上すべて適法な上告理由に当らない。
 被告人B株式会社の弁護人井上峯亀、同江藤馨の上告趣意第一点は、事実誤認お
よびこれを前提とする単なる法令違反の主張であり、同第二点は、単なる法令違反
の主張であつて、いずれも適法な上告理由に当らない。
 被告人C株式会社の弁護人浅沼澄次、同佐藤庄市郎の上告趣意第一、第二点は、
要するに単なる法令違反、事実誤認の主張を出ないものであり、同第三点は、量刑
不当の主張であつて、以上すべて適法な上告理由に当らない。
 被告人D商事株式会社の弁護人正木亮、同中本光夫、同山下卯吉の上告趣意第一
点について。
 所論は、本件適用法令たる外国為替及び外国貿易管理法(以下、単に法という。)
二七条一項三号前段の憲法一三条、二九条一項違反を主張する。しかし、右規定が
国民の経済活動、ひいて財産権の行使に対しある程度の制限を加えているものであ
ることは疑いがないけれども、右制限は、法一条の掲げる諸目的に照らし、これを
阻害する事態の発生を防止するため必要であり、従つて公共の福祉に適合する合理
的なものと認むべく、右規定は憲法二九条に違背するものでないことは、当裁判所
大法廷判決(昭和三七年(あ)第六二四号、同四〇年一月二〇日言渡)の趣旨とす
るところであるから、右趣旨に徴し、所論は採るを得ない。
 同第二点(上告趣意補足を含む。)は、単なる法令違反の主張であり、同第三点
は、単なる訴訟法違反およびこれを前提とする事実誤認の主張であり(なお、法七
三条の両罰規定の法意につき、当該違反行為〔本件の場合は、いわゆる預かり円の
支払〕について被告人たる法人の内部において定める決裁手続に遺漏があり、又は
さらに進んで法人の行為として法律上有効となるための代表者の行為を欠くことが
あつたとしても、法人の従業者がその業務に関し所定の違反行為をした以上、当該
法人を処罰することを妨げるものでないとした原判断は、もとより相当である。)、
同第四点は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第五、第六点は、単なる
法令違反の主張であつて(なお、本件行為時は、昭和二九年九月一〇日頃であると
ころ、昭和三三年五月一五日公布、即日施行の外国為替及び外国貿易管理法の一部
を改正する法律〔法律第一五六号〕により、「第七十条第一号を削り、同条第二号
……を同条第一号とし、同条中第三号以下を一号づつ繰り上げる。」旨の改正がな
されたが、同法律附則二項によれば、「この法律の施行前にした行為に対する罰則
の適用については、なお従前の例による。」とされているのであつて、昭和三七年
二月二二日言渡の原判決が、右条項を摘示しなかつた点はとにかく、本件所為に対
し右改正前の法七〇条八号を適用、処断したのは相当であつて、何らの違法も認め
られない。)、以上すべて適法な上告理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和四〇年九月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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