弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 一審原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
1 一審原告らが一審被告に対し、雇傭契約上の権利を有することを確認する。
2 一審被告は、一審原告aに対して一九八万〇七三六円、一審原告bに対して一
九七万〇七七〇円を支払え。
3 一審原告らのその余の請求を棄却する。
二 一審被告の控訴を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審を通じこれを六分し、その一を一審原告らの、その余を
一審被告の負担とする。
四 この判決の金員支払い部分は仮に執行することができる。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一審原告ら
一 原判決を次のとおり変更する。
 一審原告らが一審被告に対し雇傭契約上の権利を有することを確認する。
 一審被告は一審原告aに対して二九六万六五六八円を、同bに対して二九五万一
七二〇円を支払え。
二 一審被告の控訴を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。
四 金員支払部分につき仮執行の宣言
一審被告
一 原判決中一審被告の敗訴部分を取消す。
二 一審原告らの請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも一審原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
 次に付加するものの外は、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用す
る。
一 原判決四枚目表六行目の「一〇乗務と四時間」を「一〇乗務」と改める。
二 同七枚目表八、九行目の「原告aの昭和五一年六月の乗務が一〇乗務と四時間
で」を削る。
三 同一五枚目表四行目の次に、「なお、一審被告(以下会社ともいう。)は営業
車の燃料補給については、経費節減のため、予め福岡市<以下略>の増田LPGス
タンド及び同市<以下略>の伊藤忠LPGスタンドと他店より安い価格で継続取引
契約を締結し、従業員には右二店で燃料の補給を受けるよう指示していたにもかか
わらず、一審原告らは右指示にしたがわず、割高であることを知りながら他店で燃
料の補給を受けることが多く、また、営業車の営業区域は特定地区に限定されるも
のではなく、そうでなければ充分の運収を挙げることはできないことは明らかであ
るにも拘らず、一審原告らは一審被告の再三の注意にも拘らず、営業所に近い福岡
市<以下略>地区が自分らの担当運行地域であると勝手に称し、右地区以外で客を
降した場合も、無理に空車で右自称運行担当地域に帰るという変則的営業をして、
故意に運収の上げなかつたものである。これらは故意に会社に損害を与え、雇用契
約上の信頼関係を破壊する行為であつた。したがつて、右のような不良従業員に対
する本件解雇が不当労働行為に該当しないことは明らかである。」を加える。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一 当裁判所も本件懲戒解雇処分は無効であつて、一審原告らの雇用契約上の地位
確認請求は正当であり、また一審原告らの右懲戒解雇の日から職場復帰の前日まで
の一時金を除く賃金請求は原判決の限度において正当であると認定判断するが、そ
の理由は次に付加、訂正する外は、原判決理由説示の当該部分(原判決一六枚目裏
三行目から三六枚目表七行目まで)と同一であるから、これを引用する。
1 原判決二二枚目裏一二行目から末行にかけての「乙第一一号証」の次に「成立
に争いのない乙第三九号証の一ないし七、当審証人cの証言から成立の認められる
乙第四〇号証の一ないし六」を加え、同二三枚目表一行目の「証人dの証言(第一
回)」を「原審証人d(第一回)」と改め、その次に「当審証人cの各証言」を加
える。
2 同二三枚目裏七行目の次行に次のとおり加える、「成立に争いのない乙第四号
証、原審証人e、同f、同d(第一回)、当審証人c、同dの証言を総合すれば、
右スローガン書込闘争に際し、同年六月中旬ごろ、非組合員であるgがその乗務す
る車両に書込まれたスローガンを自己の判断で消したことで一審原告aとの間にト
ラブルが発生したこと、同年六月八日ごろ、一審原告らが非組合員であるfの乗務
する車両に同人の意思に反してスローガンを書き込んだので、同人が組合に抗議を
申し込んだことが認められる。
3 同二四枚目表一二行目の「本件解雇以前会社には、」の次に「前記のようなト
ラブルを発生させた一審原告らの責任を含め、」を加える。
4 原判決二四枚目裏三、四行目の「証人d」を「原審証人d」と改め、同四行目
の「同e」の次に「当審証人c、同h、同d」を加える。
5 同二六枚目表七行目から二六枚目裏五行目までを次のとおり改める。
「前掲甲第一九号証によれば、一審原告らの右点呼の拒否は、懲戒解雇事由である
就業規則七三条一三号「職務上の指示命令に不当に反抗して事業上の秩序を紊した
とき」に該当する。
 そして、前掲乙第九号証、乙第二二号証成立に争いのない甲第二〇号証、原審証
人d(第一回)、当審証人hの各証言に原審における一審原告らの各本人尋問の結
果によれば、一審原告らが右点呼を拒否したのは、後記4認定のような刑事事件の
発生により、hと一審原告ら組合員との間に感情的対立があつたことが原因であつ
たこと、会社は右刑事事件に関連してhを出勤停止処分に付した外、組合との間に
「当分の間同人を組合員との接触のない職務につかせること」等を内容とする協定
を結んで実行したこと、右刑事事件は昭和四五年五月一日のことであつたのに、一
審原告らの点呼拓否は昭和五一年二月から八月まで続いたことが認められる。
 右のいきさつからみれば、一審原告らがhの点呼を拒否した心情は理解できない
わけではないが、事件後会社も組合に対して相当の配慮をしていることではある
し、一審原告らの右認定のような長期にわたる点呼拒否はやや執拗に過ぎるとみら
れないことはない。」
6 同二七枚目表四行目の「認め難い。」の次に「右の点に関する当審証人dの証
言も直ちに採用し難い。」を加える。
7 同三一枚目表三行目の「甲第四六号証の一」の次に「及び原審証人iの証言」
を、同五、六行目の「結成されたこと」の次に「右結成については会社の取締役d
が運転手に対して入会を勧誘したこともあること、右結成大会後宴会が催された
が、その費用は会社が負担したこと、」を加える。
8 同三二枚目表一一行目の「からすると」を「及び成立に争いのない甲第五二号
証によると」と改め、同一二行目の「何らかの」を削り、同末行の「推認」を「認
定」と改める。
9 同三二枚目表末行の「さらに、」から三二枚目裏一行目までを、「他方、会社
主張の解雇事由中、一審原告らのhの点呼拒否行為は就業規則所定の懲戒解雇事由
に該当するものであつて、極めて些細な事案とまでいうことのできないところであ
り、また、営業車両への闘争スローガン書込み闘争は正当な争議行為の範囲を逸脱
するものであるが、右闘争につき組合幹部としての一審原告らの責任を追及できる
かどうかはともかく、右闘争からすでに一年以上経過していることから、会社とし
ては右闘争につき組合幹部を懲戒する意思はなかつたものと認められ、その他の本
件解雇事由として会社の掲げる事由は違法視することのできない前認定のような多
岐にわたるものも含まれ、その中には六年も前の刑事事件の法廷における一審原告
らの証言にまで及んでいること等の事情を総合して判断すると、」と改める。
10 同三二枚目裏四行目の「認めるのが相当である。」の次に「成立に争いのな
い乙第四一号証の一ないし四七、乙第四二号証の一ないし八に当審証人c、同hの
証言、当審における一審原告らの本人尋問の結果を総合すれば、会社は経費節減策
として、その主張の二店舗と低価格で燃料の継続取引契約を締結し、従業員には営
業車の燃料補給は原則として右店舗で受けるよう指示していたのに、一審原告らが
右店舗以外で割高な燃料の補給を受けることが多かつたことは認められるが、しか
し成立に争いのない甲第五一号証の一、二を併せると、会社は一審原告らの解雇後
も従業員に対して数回前記指示を順守するよう呼びかけていることが認められ、こ
のことからすれば前記指示は従業員に充分徹底していなかつたものと推認するのが
相当であるので、一審原告らが前記指示に従わなかつた事情も右認定を妨げるもの
ではない。なお一審被告は一審原告らが運収の上るのを抑えるため勝手に運行担当
区域を定めて変則運行をしていた旨主張するけれども、右事実を認めるに足りる適
確な証拠がない。
11 同三四枚目表九行目の「なお、」から三四枚目裏二行目までを削る。
12 同三四枚目裏八行目の「原告aの六月分の賃金が一〇乗務と四時間であ
り、」を削る。
13 同三五枚目表二行目の「右出勤停止」から同三行目の「一乗務一二時間」ま
でを、「同年六月一〇乗務四時間乗務したが、右出勤停止処分を受けなければ、更
に一乗務一二時間合計一二乗務」と改める。
二 次に一審原告らの一時金請求について検討する。
 前記のように解雇された労働者が、解雇期間中他で収入を得た場合、使用者から
支払いを受ける賃金から控除することが許されるのは労働基準法一二条所定の平均
賃金の計算の基礎になる賃金のみであり、その計算の基礎にならない本件のような
一時金(同条四項所定の賃金)は控除の対象にならないものと解するのが相当であ
る。
1 一審原告らは、一次的に昭和五一年冬期から昭和五二年冬期までの賃金協定に
より計算して支給される筈であつた一時金が一審原告両名とも合計五六万二五〇〇
円であると主張する。
 成立に争いのない甲第四一号証の二及び三によれば、昭和五一年度と昭和五二年
度の賃金協定の内容から月間運収三〇万円の従業員に対する一時金の支給額は明ら
かであつて、これによつて計算した一時金の総額は一審原告らの主張のとおりでは
あるが、しかしながら弁論の全趣旨から成立の認められる乙第一五号証によれば、
一審原告らが仮に乗務していたとしても、その月間運収は三〇万円に達しなかつた
ものと推認されるところ、右のような従業員に対する一時金の支給額がいくらにな
るかは前記賃金協定のみによつては明らかではなく、他に一審原告らがその主張の
額の一時金の支給を得られたものと認めるに足りる証拠がないから、右一時的請求
は理由がない。
2 次に予備的請求について検討するに、一審原告らが解雇前の昭和五〇年冬期及
び昭和五一年夏期にそれぞれその主張の一時金の支給を受けたことは当事者間に争
いがなく、反証のない限り、本件解雇がなければ、一審原告らは昭和五一年の冬期
及び昭和五二年の夏期、冬期には解雇前を下廻らない額の一時金の支給を得られた
ものと推認するのが相当である。
 また昭和五三年夏期一時金として一審原告らがその主張の一時金の支給を受けた
ことは当事者に争いがない。そして弁論の全趣旨によれば夏期一時金の計算期間は
前年一二月一日から当年五月三一日まであること、一審原告らが昭和五三年三月一
四日から復職して乗務を始めたことが認められるから、一審原告らが昭和五二年一
二月一日から乗務していれば、昭和五三年夏期一時金は右昭和五二年一二月一日か
ら昭和五三年三月一三日までの期間に応じた額が加算して支給されたものと推認す
るのが相当であるから、日割計算すると、一審原告aは更に六万三九七七円、一審
原告bは更に七万一三六九円の支給を得られた筈である。
 以上のとおりであつて、本件解雇後復職まで支給を得られたであろう一時金の合
計額は、一審原告aにつき五二万二六九二円、一審原告bにつき五一万八六六五円
になる。
三 以上のとおり一審原告らの本訴請求は、同人らが被控訴人との雇傭契約上の地
位にあることの確認及び未払賃金及び一時金として一審原告aにおいて一九八万〇
七三六円、一審原告bにおいて一九七万〇七七〇円の支払いを求める限度において
正当として認容すべきところ、一部これと異る原判決は変更すべく、民訴法九六
条、九二条、九三条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 矢頭直哉 諸江田鶴雄 日高千之)

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