弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2(主位的請求)
横浜市α区長が控訴人に対し平成18年4月3日付けでした原判決別紙物件
目録記載の各土地に係る平成18年度の固定資産税及び都市計画税の賦課決定
処分を取り消す。
3(予備的請求)
(1)横浜市α区長が控訴人に対し平成18年4月3日付けでした原判決別紙
物件目録記載の各土地に係る平成18年度の固定資産税及び都市計画税の減
免許可決定処分のうち減免不許可とした部分を取り消す。
(2)横浜市α区長は,控訴人に対し,控訴人が平成18年2月27日付けで
した原判決別紙物件目録記載の各土地に係る平成18年度の固定資産税及び
都市計画税の減免申請について,平成18年4月3日付けの減免許可決定処
分により減免した部分を除き,全額減免の許可決定処分をせよ。
第2事案の概要
1控訴人は,相続により原判決別紙物件目録記載の各土地(本件土地)を取得し,
平成18年度の固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)の賦課期日において本
件土地の所有名義人であったが,平成18年2月24日,東京国税局長から本件土
地を物納財産とする相続税の一部物納許可決定を受け,同月27日,その旨の登記
も完了したことから,同日,控訴人は,横浜市α区長に対し,本件土地に係る平成
17年度第4期分及び平成18年度第1期ないし第4期分の固定資産税等につき,
上記相続税の物納を理由とする減免の申請をした(本件減免申請)。横浜市α区長
は,同年4月3日,本件土地に係る平成18年度の固定資産税等の賦課決定処分
(本件各賦課決定処分)と併せて,本件各賦課決定処分による年税額の10分の7
について減免許可決定処分(本件各減免許可決定処分)をした。
本件は,控訴人が,主位的には,本件土地の所有権は平成18年2月24日
の物納許可決定によって国に移転しており,横浜市α区長は,上記所有権移転
及びその旨の登記の完了の事実を把握し,平成18年4月1日から平成19年
3月31日までを対象年度とする本件各賦課決定処分をした時点では,これら
の事実を認識していたはずであり,かかる事情の下では,いわゆる台帳課税主
義の根拠である課税上の技術的考慮の要請はないなどと主張して同処分の取消
しを求めるとともに,予備的に,仮に固定資産税等を課税されるとしても,そ
の全額が減免されるべきであったなどと主張して,本件各賦課決定処分に係る
固定資産税等の税額の一部の減免を許可した本件各減免許可決定処分のうち減
免不許可とした部分の取消しと,上記固定資産税等の税額のうち同処分により
減免した部分を除く全額の減免許可決定処分の義務付けとを求めた事案である。
2原審は,控訴人の主位的請求をいずれも棄却し,予備的請求に係る訴え中,固定
資産税等の全額減免の許可決定処分の義務付けを求める部分をいずれも却下し,そ
の余の予備的請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴した。
3主な関係法令等,本件の基礎となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,
当審における控訴人の主張が後記第3の2の(1)記載のとおりであるほかは,原判
決「事実及び理由」欄の第2の2及び3,第3並びに第4に記載されたとおりであ
るから,これを引用する(ただし,原判決12頁7行目から8行目にかけての「原
告の減免申請につき,本件各賦課決定処分に係る固定資産税等の全額の減免許可決
定処分をすべきである。」を「原告(控訴人)の減免申請につき,本件各減免許可
決定処分により減免許可した部分を除き,全額減免許可決定処分をすべきであ
る。」に改める)。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の主位的請求をいずれも棄却し,控訴人の予備的請求に係る
訴え中,固定資産税等の全額減免の許可決定処分の義務付けを求める部分をいずれ
も却下し,控訴人のその余の予備的請求をいずれも棄却すべきであると判断する。
その理由は,以下のとおり付加訂正し,次項において控訴人の主張に対する補足説
明を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第5当裁判所の判断」に記
載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決16頁15行目から20行目までを以下のとおり改める。
「(2)ア次に,前記第2,3(4)イのとおり,本件各減免許可決定処分の取消しを
求める訴えは,平成19年10月9日に陳述した準備書面において,予備的請求
として追加されたものであるところ,本件裁決は平成18年8月1日に原告(控
訴人)に送達されているから,本件各減免許可決定処分の取消しを求める訴えが,
行政事件訴訟法14条3項の定める出訴期間を徒過した不適法な訴えとなるかど
うかが問題となる。」
(2)原判決16頁末行から同17頁1行目にかけての「法367条及び本件市税
条例に基づいて,」を「法367条,本件市税条例及び本件市税規則に基づい
て,」に改める。
(3)原判決18頁9行目の「国に物納した固定資産については,」及び19頁1
行目から2行目にかけての「国に物納した固定資産につき,」の後に「当該固定
資産に係る固定資産税の納税義務者に対し,」をそれぞれ加える。
(4)原判決20頁5行目の「固定資産税の減免が,」の次に「主として」を加え
る。
(5)原判決20頁17行目の「本件市税規則」以下から20行目末尾までを以下
のとおり改める。
「すなわち,本件市税規則19条の3第3号ウは,相続税の物納に供された固定資
産について,本件市税条例62条1項3号が定めた公益上その他の事由による減
免の必要性という要件に則り,かつその観点から,固定資産税の税額の減免割合
を10分の7としたものと解される。」
(6)原判決21頁4行目から5行目にかけての「その後その年度中にその固定資
産の所有権を他に譲渡した場合であっても,」の後に「その者に対し,」を加え
る。
(7)原判決21頁9行目の「本件のように」から17行目末尾までを以下のとお
り改める。
「本件のように実質的な有償譲渡である物納の場合にどのような減免措置をとるか
についても同様に立法政策の問題であって,法上一義的に定められているもので
はない。したがって,本件市税規則19条の3第3号ウが,譲渡先が固定資産税
を課されないものとされている国や地方公共団体であるとはいえ,1月1日現在
の所有者として納税義務者と判定された者に対して,固定資産を所有していたと
いう事実により想定される担税力等を総合考慮した上,未到来の納期において納
付すべきその固定資産税に係る税額の全額ではなく10分の7の額を一律減免す
ると定めたこと自体,法の予定する授権の範囲を越えるものではない。」
2当審における控訴人の主張に対する補足説明
(1)控訴人は,当審において,次のように主張する。
①主位的請求について
最高裁昭和47年1月25日第三小法廷判決は,固定資産税の納税義務
者は当該固定資産の真の私法上の所有者であることを原則としながら,地
方税法は,課税上の技術的配慮から,土地については登記簿,または土地
補充課税台帳に一定の時点に所有者として登記または登録されている者を
所有者として課税するいわゆる台帳課税主義を採用していることを明らか
にしている。したがって,徴税上の便宜又は徴税コストの抑制上必要でな
い場合にまで真の所有者でない者に負担を課すことは許されないところ,
本件においては,本件各賦課決定処分の1か月以上前に物納による本件土
地の控訴人から国への所有権移転が行われ,横浜α区長はそのことを予め
認識していた。しかも,最近の課税・徴税事務は,いわゆるIT機器を用
いて行なわれているから,本件のような場合に賦課期日後の事情を考慮し
ても,課税・徴税事務の負担を著増させることはない。かかる事情の下で
は,課税上の技術的考慮の要請はなく,控訴人に課税される理由はない。
②予備的請求(1)-本件各減免許可決定処分について
原判決は,物納の場合における減免の範囲を10分の7に限定した本件
市税規則19条の3の第3号につき「固定資産の所有という事実により想
定される担税力を総合的に考慮する」としているが,減免の範囲を10分
の7に限定した理由としては不備である。台帳課税主義の例外を認めるべ
き具体的事情を勘案すべき本件のような場合には,物納によって所有権を
喪失した所有者に対する10分の3の課税自体が違法であり,その前提に
立てば,本件減免許可決定処分自体は法令の適用を誤った違法な処分とし
て取り消されるべきである。
③予備的請求(2)-義務付け訴訟-について
ア上記①のように本件各賦課決定処分は取り消されるべきであり,本件各賦
課決定処分を前提とした本件各減免許可決定処分そのものが無効である。ま
た,上記②のとおり,本件のような事案において,減免の範囲を10分の7
に限定した本件市税規則19条の3第3号を漫然と適用してされた本件減免
許可決定処分は,無効又は取り消されるべき処分である。したがって,行政
事件訴訟法3条6項2号の義務付けの訴えの適法要件である「当該処分が実
体的に取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在」(同法37
条の3第1項2号)を欠くとした原判決は誤りである。
イ控訴人は,台帳課税主義による控訴人に対する課税を肯定したとしても,
本件土地の所有権を喪失したのであるから,課税負担の合理的な調整を図る
必要があるとして固定資産税等の全額免除を求めたのである。それにもかか
わらず,原判決が,全額免除を否定する理由として,再び台帳課税主義によ
る公益性をいうのは不適切である。
ウ控訴人は義務付け訴訟の前提として本件各減免許可決定処分の取消しを求
め,取消結果を受けて台帳課税主義による課税の免除を義務付け訴訟として
求めたのであるから,控訴人の予備的請求(1)及び(2)を一体としてみて義務
付け訴訟の要件を判断すべきところ,原判決が本件各減免許可決定取消請求
と全額免除の請求を区々に分けて後者の全額免除の請求についてだけ義務付
け訴訟の要件存否を判断したのは誤りである。
エ控訴人は,物納によって所有権を喪失した本件土地の固定資産税等を本件各
賦課決定処分によって負担させられているが,課税期問である平成18年4月
1日以降,同土地の処分権及び使用収益権を喪失しており,担税力の根拠を失
っている。しかも物納によって所有権を取得した国は,非課税団体であるので,
不当利得の返還請求もできず,控訴人は,根拠のない負担を課せられたままの
状態になっている。その救済は,法治主義の下,何らかの方法によってなされ
るべきである。
(2)控訴人の上記(1)の①の主張は,要するに,処分行政庁である横浜市α区長は
本件各賦課決定処分の前に本件土地の国への所有権の移転や移転登記の事実を認
識していたから,課税上の技術的考慮の必要や理由がないというもので,原審に
おける主張の繰り返しに過ぎない。原判決が説示するように,地方税法は,固定
資産税につき,当該年度の初日の属する年の1月1日を賦課期日とし,同日にお
ける当該固定資産の所有者に同税を課することとしており(343条1項,35
9条),その所有者が当該年度(4月1日から翌年3月31日まで。地方自治法
208条1項)を通してその固定資産を所有することを当然の前提としているわ
けではなく,賦課期日後に,その所有権を譲渡しても,納税義務に消長を来さな
いのが原則である。なお,控訴人が引用する最高裁判例は,賦課期日において,
登記簿に所有者として登記されていた者と真実の所有者が異なっていた事例に関
するものであり,本件とは事案を異にするものである。
上記(1)の②の主張のうちの控訴人が引用する原判決の摘示は,真の所有
者でない者に最終的に固定資産税を負担させることとなっては憲法29条違
反の疑いが生じるとの控訴人の主張に対し,本件のように賦課期日後に物納
があった場合,どのような減免措置をとるかは立法政策の問題であるところ,
地方税法上一義的な定めはなく,市町村長の裁量的判断に委ねられており,
本件市税条例及び同規則もそれを前提として規定されたと述べた上で,考慮
されるべき一要素として「固定資産の所有という事実より想定される担税力
等」を挙げたものであることは明らかであり,何ら不適切なものではない。
また,物納によって所有権を喪失した所有者に対する10分の3の課税自体
が違法という主張について,法は,前記のとおり,納税義務者が賦課期日後
に所有権を失った場合にも納税義務に消長を来さないのを原則とした上,固
定資産税の減免についての要件等の定めを広く条例に委ねており,賦課期日
後に所有権を失った者に対し,どのような減免措置をとるかも,条例により
定められるべきことである。したがって,本件市税条例及び本件市税規則の
規定に基づき,控訴人に固定資産税等の年税額の10分の7の額の限度で減
免を許可した本件各減免許可決定処分に,何ら違法なところはない。
上記(1)の③の主張は,いずれも本件各減免許可決定処分に瑕疵があるこ
とを前提とするものであり,各処分に瑕疵がないことは上記のとおりである
から,いずれも採用できない。
第4結論
以上の次第であるから,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,
これを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第23民事部
裁判長裁判官鈴木健太
裁判官高野伸
裁判官大沼和子

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛