弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告をいずれも棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人岡井藤志郎の上告理由第一点の一について。
 所論は、本件売買契約の買主が契約当初から被上告人であつたとの事実、すなわ
ち、原審認定にそわない事案を掲げて原判決の違法をいうものであつて、採用でき
ない。
 同第一点の二について。
 上告会社が原審において所論準備書面に基づいて主張した所論①②の事実関係は、
ひつきょう、被上告人主張の本件売買契約が被上告人主張以外の当事者間に成立し
たことをいうか、被上告人主張の買主たる権利の承継のないことをいうものである
ところ、この点を原審で上告会社が争つていることは原判決の摘示するところであ
り、この争点についての判断は原判決に示されているから、判断遺脱はなく、所論
は採用できない。
 同第一点の三について。
 特定物の売買契約にあつても所有権は契約と同時に移転せず代金完済と同時り移
転する旨の所論は、独自の見解であつて採用できず、この見解を前提として原判決
の違法をいう所論は採用のかぎりでない。
 同第一点の四について。
 所論は、被上告人が買戻契約成立の妨害をしたと主張し、上告会社が原審で所論
準備書面に基づいて右妨害行為の事実関係を主張したのに、原判決は該主張の摘示
を脱落していると論ずるが、昭和三七年一二月一四日付準備書面、昭和三七年一〇
月七日付準備書面第一項⑩、昭和三八年五月五日付準備書面第三項、にに基づく上
告会社の主張は、原判決の事実摘示欄に記載されているところ、右各準備書面の記
載によれば買戻契約成立妨害の事実の主張はなされていないから、原判決には所論
違法は存しない。
 同第二点の一について。
 所論は、被上告人に対し本件買主の権利譲渡がないとの原審認定にそわない事実
を主張するものであり、釈明義務違反、審理不尽、判断遺脱をいう所論も、ひつき
よう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着し、採用
できない。
 同第二点の二について。
 弁論の再開をするかどうかは、原審の専権に属する事項であり、原審には審理不
尽、判断遺脱はないから、所論は採用できない。
 同第二点の三について。
 本件売買の買主が当初訴外Dであつたとの原審認定は、甲一号証その他原判決挙
示の証拠に徴し肯認でき、その点に所論違法はない。所論は、ひつきよう 原審の
専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎず、採用の限りでない。
 同第二点の四について。
 所論は、原審認定外の事実ないしは原審認定にそわない事実を前提として、原判
決の審理不尽、理由不備、理由そごをいうものであつて、採用できない。
 同第二点の五について。
 所論は、残代金先行義務の特約ありとの抗弁を提出したことはないというが、第
一審第一回口頭弁論調書に該抗弁の提出されたことの記載があるから、所論は採用
の限りでない。また、上告会社の所論明渡義務と被上告人の代金支払義務とが同時
履行の関係にあることをいう所論は、原審の認定に反することをいうにすぎないか
ら、論旨はすべて採用できない。
 同第二点の六について。
 所論指摘の点の原審認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認できる。原判
決に所論違法があるとの主張は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、
事実の認定を非難するに帰着し、上告理由として採用できない。
 同第二点の七について。
 所論は、昭和三八年五月六日付準備書面に基づく上告会社の主張事実について原
審が審理判断をしなかつたことをいうが、その所論の採用できないことは、前掲論
旨第一点の二について述べたと同様である。
 所論(一)として所有権移転登記の不法をいう主張は、前掲論旨第一点の三につ
いて述べたと同じく採用できない。
 また、論旨(二)は、前掲論旨第一点の四について述べるとおり採用できない。
 所論は、ひつきよう、原審認定にそわないことをもつて、原判決の違法をいうも
のであつて、採用できない。
 同第二点の八について。
 所論は、被上告人の不法登記ないし不法行為がなかつたとすれば所論買戻契約が
成立した筈であるとか、民法一三〇条に照らし買戻契約成立があつたと看做すべき
であると主張して、原判決の理由不備、理由そごをいうが、前掲論旨第一点の四に
ついて述べたとおり、右所論は、原審で主張なく従つて認定判断を経ないことを前
提とするものであつて、採用し難い。
 同第二点の九について。
 本件売買契約にあつては上告会社の窮状につけ入り暴利を得ようとした形跡は認
められないし、また登記手続にしても上告会社主張の如き書類冒用云々の事実その
他権利濫用、信義則違背の抗弁につき主張する事実を認むべき証拠はないとして所
論抗弁を排斥した原審の認定判断は、記録に徴し首肯でき、原判決に判断遺脱、理
由不備、理由そごの違法は見当らない。
 同時履行および登記申請につき私文書偽造行使をいう所論は、原審認定にそわな
いことを主張するものであり、右主張を前提として原審の違法をいう所論は採用で
きない。
 同第二点の十について。
 上告会社が被上告人に対し昭和三七年四月二日本件手附倍額を提供して契約解除
の意思表示をするまでの間に、被上告人が終始明渡の要求をなし残代金は即時でも
支払い得る状態であつたことの原審認定は、原判決挙示の証拠関係に徴して肯認で
きる。被上告人に残代金支払の意思のなかつたことをいう所論は、原審認定にそわ
ないことをいうにすぎない。
 しかして、右認定の事実関係と昭和三五年二月二六日被上告人がやむなく本訴を
提起して明渡要求をなしその訴状が同年三月三日上告会社に送達された事実関係か
ら、本件売買契約は上告会社の前示契約解除の意思表示以前既に被上告人によつて
その履行に着手されていたものと認めるのが相当であるとした原判決の判断は、首
肯できる(昭和二四年(オ)第一八九号、同二六年一一月一五日第一小法廷判決、
民集五巻一二号七三五頁参照)。この点に民法五五七条の解釈の誤りがあるとの所
論は、独自の見解であつて採用できない。
 同第二点の十一、十二について。
 所論は、本件につき損害金の約定および損害金請求権の移転の合意がなかつたと
の事実を主張するが、右は原審認定に反することをいうものであり、右の点につい
て原判決の違法をいう所論は、ひつきよう原審の専権たる証拠の取捨判断、事実の
認定を非難するにすぎず、上告理由として採用の限りでない。
 同第二点の十三について。
 原判決が上告人Aの本訴参加申出を却下した判断は、正当であつて、原審に所論
判断遺脱はない。本件参加申出が民訴法七一条前段の参加要件を充すとの所論は、
独自の見解にすぎず、採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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