弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原告の請求を棄却する。
     訴訟費用は原告の負担とする。
         事    実
 (申立)
 原告は、昭和二十六年十月八日に被告委員会が原告に対してなしたa村議会議員
選挙管理委員会更正決定に対する訴願の裁決を取消す、昭和二十六年四月二十三日
執行のa村議会議員選挙における当選人原告を有効とする、との判決を求め、被告
は主文と同旨の判決を求めた。
 (当事者の陳述の要旨)
 原告の陳述の要旨は次のとおりである。
 (一) 昭和二十六年四月二十三日に執行された樺戸郡a村議会議員の選挙にお
いて、候補者の原告は当選し、候補者Aは原告と一票の差で次点となり同月二十四
日に当選の告示があつたところAは同月二十八日同村選挙管理委員会に対し異議の
申立をした。同委員会は右の異議を理由ありとし、同年五月十日Aを当選人とし原
告を次点とする旨の更正決定をした。原告はそこで同年五月二十三日被告委員会に
対し訴願したが、被告委員会は同年十月八日原告の訴願を棄却する旨の裁決をな
し、原告は同月二十一日裁決書の交付を受けた。
 (二) a村選挙管理委員会が前記の更正決定をした理由は、さきに開票の際無
効投票と決定された二票をA候補者に対する有効投票と認め、その結果同候補者の
得数は原告よりも一票多いと言う点にある。
 (三) しかしながら、右の二票はいづれも次の事実により無効である。
 (イ) その一票(甲第十号証として提出)はa村之印を押してないから、成規
の用紙とは言われない。
 また村選挙管理委員会に於て調製したものか否かも判明しないから無効である。
 (ロ) 他の一票(甲第五号証として提出)は片仮名でエクニと記載されてを
り、その筆跡之よれば片仮名を読み書きする普通の能力あるものが書いたとみとめ
られるから、Aの氏Aをエクニと書を誤つたものとは解することはできず、A候補
者は投票する意思が全然なくその以外の目的意思の下にエクニと書いたものと断定
すべきである。仮に書き損じと解すれば、それは同選挙に立候補したBの氏Bを書
き損じたものとも推測することができ、同票は候補者の何人を記載したかを確認し
難いものである。
 (四) 以上の理由により、前記の更正決定は違法でありその決定を正当とした
被告委員会の裁決もまた違法であるから、右裁決を取消し、原告を当選者と定める
判決を求める。
 被告の陳述の要旨は次のとおりである。
 原告主張の前記(一)(二)の事実はみとめる。
 原告提出の甲第五号証及び同第十号証が問題の票であることは相違ない。そうし
て、a村選挙管理委員会が定めた投票用紙の様式としてはa村之印を押さねばなら
ぬこと、甲第五号証の投票用紙に所要の押印がないことは原告主張のとおりである
が、それはたまたま係員が押印を遺脱したものであつて、右委員会が自ら定めた様
式に従つて調製し投票者に交付した用紙であることは間違いがないから、右の票は
成規の用紙たるを失わない。次に第五号証め票には片仮名でエクニと記されている
ことは事実であり、同選挙にBが立候補したことも事実であるが、エクニはA候補
の氏Aを書き誤まつたものとみとめられ、Bの誤りとは解されないから、A候補の
有効得票とみとむべきものである。
 (証拠)
 原告は甲第一号証から同第十号証までを提出し、証人CDの尋問並に鑑定を申請
し、甲第五号証及甲第十号証は原告が無効と主張する投票であり、甲第六号証から
第九号証までは十号証と同じく押印のない投票であつて、開票管理者は無効と決定
したものである、とのべ、甲第五号証及び甲第十号証の検証を求め、乙各号証が開
票管理者の有効と決定した投票であることはみとめる、とのべた。
 被告は乙第一号証から同第五号証までを提出し、同号証はいづれも開票管理者が
有効と決定したものであつて、之等と甲第十号証を対照して、甲第十号証は押印の
ない点を除いては所定の様式を具備していることを立証すると述べ、証人EFの尋
問並に鑑定を求め、甲第五号証乃至同第十号証は関する原告主張の事実をみとめ
た。
         理    由
 先づ、甲第十号証の投票につき考えると、新十津再村選挙管理委員会が定めた投
票用紙の様式ととてはa村の印を押さねばならぬこと、右の投票用紙にはその押印
がないことは争がない。しかし、証人EFの証言により、また甲第十号証と乙第一
乃至第五号証とを対照検証した結果によると、甲第十号証は前記委員会が自らその
定めた様式に従つて調製した用紙であつて、押印がないのは係員がたまたまそれを
遺脱し<要旨>たものであることがみとめられる。証人CDの右認定に反する証言は
信用できない。そうして公職選挙法第六十八条第一項に成規の用紙を用いな
い投票を無効とする趣旨は私製用紙の使用を禁ずるにあるから、右の如くたまたま
押印がなくても選挙管理委員会が調製した用紙であれば、その投票は無効とすべき
ものではない。
 次に甲第五号証の投票につき考えるに、同号証の投票には片仮名でエクニと書か
れていることは争がなく、A候補者の氏がエクニと誤つて発音されることは考えら
れない。また鑑定人G及びHの鑑定はよると、ユ及びタの字型をよくわきまえてい
る者が運筆を誤つてエクと書いたものとも認められない。しかし片仮名の字型を十
分にわきまえぬ者がユの字型をエと誤つてユの字を書く意思でエと書きまたタの字
の「、」を忘れてクと書くことはありうることである。甲第十号証の筆跡と前記鑑
定の結果によるとその投票者の読み書きの能力は中位よりやや劣るものとみとめら
れまた一方真面目に書いたもの、言いかえれば、ことさら無用の記載をしたもので
はなく候補者の何人かく投票する意思で書いたものとみとめられる。そうだとすれ
ばエクニはAの誤記であり、同票はAの有効得票と認めるのが相当である。原告は
B候補の氏を書き誤つたものと推測されると主張するがイをエとなまることはある
が右の投票ははヅの記載がなく明白に三字が記載されているからこれをBと推測す
るのは無理である。
 以上の通り原告が無効と主張する二票はいづれもA侯補の得票とみとむべきもの
である。故に当事者間に争のない前記(一)(二)の事実に徴して、A候補が適法
の期間内に申立てた異議に基いてa村選挙管理委員会がなした決定は正当でありそ
の取消を求めた原告の訴願を棄却した被告委員会の裁決もまた違法ではない。
 よつて原告の本訴請求は棄却し、訴訟費用は民事訴訟法第八十九条により原告の
負担とする。
 (裁判長裁判官 浅野英明 裁判官 熊谷直之助 裁判官 藤野稔)

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