弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件申立てを却下する。
2申立費用は申立人らの負担とする。
理由
第1申立ての趣旨
大阪市長は,申立人らに対し,仮に都市公園法27条に基づく下記①ないし④の
テント,木製工作物等(以下「本件各物件」という。)の除却命令をしてはならな
い。

①申立人Aにつき,大阪市α-×-×所在のβ公園内の本決定添付別紙図面で
示す範囲内に設置された別紙写真(写)1のブルーシート製テント及び同申立人が
所有,占有又は管理するその他の物件並びに同公園内の同図面で示す範囲内に設置
された別紙写真(写)2の木製工作物及び同申立人が所有,占有又は管理するその
他の物件
②申立人Bにつき,β公園内の別紙図面で示す範囲内に設置された別紙写真
(写)3の木製工作物及び同申立人が所有,占有又は管理するその他の物件
③申立人Cにつき,β公園内の別紙図面で示す範囲内に設置された別紙写真
(写)4の木製工作物及び同申立人が所有,占有又は管理するその他の物件
④申立人Dにつき,β公園内の別紙図面で示す範囲内に設置された別紙写真
(写)5の木製工作物及び同申立人が所有,占有又は管理するその他の物件
第2当事者の主張
本件申立ての理由は,別紙「仮の差止申立書」(写),別紙「補充及び反論書
1」(写)及び別紙「申立補充書兼反論書(2)」に記載のとおりであり,これに対
する相手方の意見は,別紙「意見書」(写)に記載のとおりである。
第3当裁判所の判断
1記録によれば,以下の各事実が一応認められる。
(1)大阪市は,都市公園法2条の2及び同法2条の3に基づき,β公園を都市
公園として設置し,これを管理している。
(2)申立人Aは,少なくとも2年前から,都市公園法6条に基づく明示の占用
の許可を受けないで,β公園内の別紙図面で示す範囲内に別紙写真(写)1のブル
ーシート製テントを設置し,また,同図面で示す範囲内に別紙写真(写)2の木製
工作物を設置して,これらを起居の場所とし,日常生活を営んでいる。
申立人Bは,少なくとも2年前から,都市公園法6条に基づく明示の占用の許可
を受けないで,同図面で示す範囲内に別紙写真(写)3の木製工作物を設置して,
これを起居の場所とし,日常生活を営んでいる。
申立人Cは,少なくとも2年前から,同図面で示す範囲内に別紙写真(写)4の
木製工作物を設置して,これを起居の場所とし,日常生活を営んでいる。
申立人Dは,少なくとも2年前から,都市公園法6条に基づく明示の占用の許可
を受けないで,同図面で示す範囲内に別紙写真(写)5の木製工作物を設置して,
これを起居の場所とし,日常生活を営んでいる。
(3)別紙図面で示す範囲が含まれるβ公園のγにはバラ園が設置されていると
ころ,大阪市は,同市において平成18年5月11日から同月17日の予定で開催
される世界バラ会議大阪大会に向けて,β公園の主としてγについて,平成15年
度から平成17年度にかけての3か年計画で,バラ園の全面改修,γ全体の再整備
等を内容とするβ公園再整備工事を施工してきた。
(4)平成17年10月4日,大阪市西部方面公園事務所は,申立人らに対し,
「工事のお知らせ」と題する書面を配布した。同書面には,工事名称をβ公園整備
工事,工事期間を平成17年12月上旬から平成18年2月末までの予定,工事内
容を自然観察園路整備,景石据付,植栽,剪定・剪除,工事区域を別紙図面で示す
範囲として,「近くβ公園において工事を施工いたします。つきましては,この物
件は工事の支障となりますので,来る11月30日(水)までに撤去していただき
ますようお願いいたします。」旨記載されていた。
(5)平成17年10月11日,申立人らを含むβ公園内で生活する者らによっ
て構成されたE自治会は,大阪市西部方面公園事務所にF所長宛ての要求書を提出
した。同要求書には,全体工事によらず部分工事を行い,公園居住者の生活への影
響を最小限にとどめること,強制排除を行わないこと,事態の解決のため同自治会
と話し合うことなどが要求事項として記載された上,これに対する明確かつ真摯な
回答のない限り,公園からの立退き及び同自治会を通さない戸別訪問を拒否するな
どと記載されていた。
(6)平成17年11月8日,大阪市西部方面公園事務所は,申立人らに対し,
「告」と題する書面を配布した。同書面には,「公園内にテント・小屋掛け等を設
置することは,公園を利用される皆様の支障となるばかりでなく,関係法令により
禁止されていますので,所有者は,11月30日までに撤去してください。なお,
期日までに撤去しない場合は,本市において処分しますので,念のために申し添え
ます。また,自立に向けた生活相談や自立支援センター入所,福祉措置の支援を希
望される方は,ご連絡ください。」と記載されていた。
(7)大阪市長は,平成18年1月5日,申立人らに対し,予定される不利益処
分を都市公園法27条1項に基づく本件各物件の除却命令(以下「本件各除却命
令」という。)とし,弁明書の提出期限を同月11日までと定めて,行政手続法1
3条1項に基づく弁明の機会を付与する旨の通知(以下「本件各通知」という。)
をした。
(8)申立人らは,平成18年1月11日,当裁判所に対し,相手方(大阪市)
を被告として,大阪市長は申立人らに対し都市公園法27条1項に基づく本件各除
却命令をしてはならない旨求める差止めの訴え(当裁判所平成18年(行ウ)第4
号除却命令差止請求事件)を提起するとともに,本件仮の差止めの申立てを行った。
2本案訴訟の適法性
(1)相手方は,行政事件訴訟法は,執行停止の要件については処分,処分の執
行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときと規
定している(25条2項)のに対し,差止めの訴えの適法要件として,差止めの訴
えは一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合
に限り提起することができる旨規定している(37条の4第1項)ところからすれ
ば,同項にいう損害には後続処分により生ずる損害は含まれないことは明らかであ
るところ,本件各除却命令がされることにより直ちに申立人らに重大な損害が生ず
るおそれがあるとは認められず,本件各除却命令によって直ちにホームレス状態に
なる,あるいはその危険が生ずるなどといった申立人らが主張するような損害は,
本件各除却命令がされることにより生ずる損害ではなく,その後続処分として代執
行手続が行われて初めて生ずる損害であるから,本案訴訟である本件差止めの訴え
は,同項の適法要件を満たさず,不適法であり,したがって,本件仮の差止めの申
立ては,適法な差止めの訴えの係属を欠くものとして,不適法である旨主張する。
これに対し,申立人らは,除却命令の代執行は事実行為にすぎない上,除却命令か
ら極めてわずかな時間の猶予しかないのが通常であるから,本件各除却命令がされ
ることにより重大な損害を生ずるおそれがあるというべきであり,本件差止めの訴
えは適法であると主張する。
(2)行政事件訴訟法37条の5第2項は,差止めの訴えの提起があった場合に
おいて,その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うこと
のできない損害を避けるため緊急の必要があり,かつ,本案について理由があると
みえるときは,裁判所は,申立てにより,決定をもって,仮に行政庁がその処分又
は裁決をしてはならない旨を命ずることができる旨規定している。同項の規定の文
言に加えて,同項の仮の差止めの制度は,差止めの訴えの本案判決の確定を待って
いたのでは償うことのできない損害を生ずるおそれがある場合に迅速かつ実効的な
権利利益の救済を可能にするため,一定の要件の下で,行政庁が当該処分をするこ
とを事前に仮に差し止める仮の救済の制度として法定されたものである趣旨に照ら
すと,仮の差止めの申立ては,本案訴訟である差止めの訴えが適法な訴えとして提
起されていることをその適法要件としていると解される。
しかるところ,行政事件訴訟法は,差止めの訴えは,行政庁が一定の処分又は裁
決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において,一定の処
分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り,提起
することができるものとし(3条7項,37条の4第1項),ただし,その損害を
避けるため他に適当な方法があるときは,この限りでないと規定している(同項た
だし書)。平成16年法律第84号による行政事件訴訟法の改正により抗告訴訟の
新たな訴訟類型として同法3条7項所定の差止めの訴えが定められた趣旨は,処分
又は裁決がされた後に当該処分の取消しの訴えを提起し,当該処分又は裁決につい
て同法25条に基づく執行停止を受けたとしても,それだけでは十分な権利利益の
救済が得られない場合があることにかんがみ,処分又は裁決の取消しの訴えによる
事後救済に加えて,行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれ
がされようとしている場合において,事前の救済方法として,一定の要件の下で行
政庁が当該処分又は裁決をすることを事前に差し止める訴訟類型を新たに法定する
ことにより,国民の権利利益の救済の実効性を高めることにあるものと解される。
そして,同法37条の4第1項が差止めの訴えは一定の処分又は裁決がされること
により重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り提起することができるものと規
定した趣旨は,差止めの訴えが,取消訴訟とは異なり,処分又は裁決がされる前に,
行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を裁判所が命ずることを求める事前
救済のための訴訟類型であることにかんがみ,事前救済を認めるにふさわしい救済
の必要性を差止めの訴えの適法要件として規定することにより,司法と行政の適切
な役割分担を踏まえつつ行政に対する司法審査の機能を強化し国民の権利利益の実
効的な救済を図ることにあると解される。これらの趣旨からすれば,同項にいう
「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」
とは,それを避けるために事前救済としての当該処分又は裁決をしてはならないこ
とを命ずる方法による救済が必要な損害を生ずるおそれがある場合をいうものと解
されるのであって,一定の処分又は裁決がされることにより損害を生ずるおそれが
ある場合であっても,当該損害がその処分又は裁決の取消しの訴えを提起して同法
25条2項に基づく執行停止を受けることにより避けることができるような性質の
ものであるときは,同法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされるこ
とにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」には該当しないものと解すべきで
ある。
(3)ところで,都市公園法6条1項は,都市公園に公園施設以外の工作物その
他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは,公園管理者の許可
を受けなければならない旨規定し,同条2項は,同条1項の許可を受けようとする
者は,占用の目的,占用の期間,占用の場所,工作物その他の物件又は施設の構造
その他条例(国の設置に係る都市公園にあっては,国土交通省令)で定める事項を
記載した申請書を公園管理者に提出しなければならない旨規定している。また,同
法27条1項1号は,公園管理者は,同法(同法26条を除く。以下同じ。)若し
くは同法に基づく政令の規定又は同法の規定に基づく処分に違反している者に対し
て,同法の規定によってした許可を取り消し,その効力を停止し,若しくはその条
件を変更し,又は行為若しくは工事の中止,都市公園に存する工作物その他の物件
若しくは施設(工作物等)の改築,移転若しくは除却,当該工作物等により生ずべ
き損害を予防するため必要な施設をすること,若しくは都市公園を原状に回復する
ことを命ずることができる旨規定し,同条3項は,同条1項の規定により必要な措
置を命じようとする場合において,過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確
知することができないときは,公園管理者は,その措置を自ら行い,又はその命じ
た者若しくは委任した者に行わせることができ,この場合においては,相当の期限
を定めて,その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは,
公園管理者又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらか
じめ公告しなければならない旨規定している。これらによれば,同法6条1項に基
づく許可を受けずに都市公園内に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設(工
作物等)を設けて公園を占用する者に対しては,公園管理者は,同法27条1項に
基づき,当該工作物等の除却を命ずる(除却命令)ことができる。そして,除却命
令を受けた者が当該工作物等の除却を履行しない場合,公園管理者は,行政代執行
法の定める手続により,自ら義務者のすべき行為をし,又は第三者にこれをさせ,
その費用を義務者から徴収することができる(除却命令により命じられた行為が同
法2条にいう他人が代わってすることのできる行為であることは明らかである。)。
そうすると,申立人らに対して本件各通知に記載された各除却命令(本件各除却命
令)がされた場合,申立人らは,本件各除却命令に係るテントや木製工作物等(本
件各物件)を除却する義務を負い,申立人らが当該義務を履行しない場合,申立人
らに対して行政代執行法の定める手続により本件各物件の除却を行うことができる
ことになる。
しかしながら,以上述べたところからすれば,公園管理者が都市公園法27条1
項に基づき同項1号に該当する者に対して工作物等の除却を命ずる除却命令は,当
該命令を受ける者に対して当該工作物等を除却すべき行政上の義務を賦課すること
を法的効果とする処分にすぎず,その内容,性質からして,除却命令によりその執
行を待たずに直ちにこれを受ける者に何らかの具体的な損害が発生するとは考え難
い。そして,除却命令が執行されることによりこれを受けた者に損害を生ずるおそ
れがあるとしても,そのような損害は,その処分又は裁決の取消しの訴えを提起し
て行政事件訴訟法25条2項に基づく執行停止を受けることにより避けることがで
きるような性質のものであるということができるから,同法37条の4第1項にい
う「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場
合」には該当しないものというべきである。
この点,申立人らは,本件各除却命令によって居住の場所と生計の維持の道具を
奪われ,直ちにホームレス状態になり,また,唯一の生活手段を失うことによって
ホームレスになる危険が生ずるなどと主張するが,申立人らが主張するような損害
は,いずれも,本件各除却命令が執行されて初めて生ずる性質のものというべきで
あって,一件記録に照らしても,他に本件各除却命令によりその執行を待たずに直
ちに申立人らに何らかの具体的な損害を生ずるおそれがあると認めることはできな
い。
(4)以上述べたところによれば,本案訴訟としての本件差止めの訴えは,行政
事件訴訟法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大
な損害を生ずるおそれがある場合」の要件を欠く不適法な訴えというほかないから,
本件仮の差止めの申立ては,本案訴訟としての適法な差止めの訴えの提起を欠くも
のとして,その余の点について判断するまでもなく,不適法として,却下を免れな
い。
3結論
以上によれば,本件申立ては不適法であるからこれを却下すべきである。
よって,主文のとおり決定する。
平成18年1月13日
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官西川知一郎
裁判官田中健治
裁判官森田亮

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