弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 東京高等検察庁検事長花井忠の上告趣意について。
 外国人登録令(昭和二二年勅令二〇七号)は、同令一条の規定により明らかなよ
うに、一方において同令二条所定の外国人の入国に関する措置を適切に実施し、且
つ、他方において外国人に対する諸般の取扱の適正を期することを目的とするもの
であるから、同令により外国人に登録申請義務を課するのは、前記目的達成のため
現に本邦に在留する一切の外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめる必要が
あるからであつて、その在留するに至つた原因、目的等の如何により右の関係を明
確ならしめなくともよいとするものでないことは、多言を要しないところである。
このことは、同令附則二項において、同令施行の際現に本邦に在留する外国人にも
登録申請義務を課している点からもこれを窺い知ることができるのである。従つて、
同令四条一項に「外国人は、本邦に入つたとき」とある外国人とは、同令二条にい
わゆる外国人(同令一一条一項にいわゆる外国人とみなされる者を含む)であつて、
本邦に入つた一切の者を指すものと解するを相当とし、不法入国の外国人を除外す
べきでないものといわなければならない。
 しかるに、原判決は、同令一二条、一六条(本件行為当時は一三条、一四条、以
下これに同じ。)の同令中最も重要且つ強力な規定の存在する点から同令四条中に
不法入国者を包含せしめることは法の予想しないところである旨説示する。しかし、
同令二条には外国人の定義を掲げ、日本の国籍を有しない者のうちから同条一号な
いし三号の者を除外しただけで、不法入国者を除外していない。そして、同令一六
条は、任意規定であるばかりでなく、不法入国者のみに対する規定ではなく、登録
不申請者にも適用されること明らかである。また、本件犯罪行為当時(昭和二四年
六月一八日頃)における同令一二条の規定は、その後昭和二四年一二月三日政令三
八一号によつて改正された同令一二条とは異り、不法入国者のみを罰する規定では
なく、登録不申請者等をも同一刑罰を以て罰する唯一の罰則規定であること明白で
あるから、少くとも本件においては、同条の罰則を以て同令中最も重い刑罰を定め
ていると解し、これを前提として登録申請義務者から不法入国者を除外する原判決
の見解は、失当であるといわなければならない。
 次に、原判決は、所論引用のごとく、期待不可能の見地からしても、回合が不法
入国の外国人に対し登録申請義務を課したものと解することができない旨説示して
いる。しかし、外国入登録令施行規則(本件では、昭和二二年内務省令二八号)二
条、別記第一号様式によるも、同令四条一項に規定する登録の申請は、不法入国の
犯罪の申告を要求しているものとは認められないから、これが申請義務を課したか
らといつて、原判決説示のように自己の不法入国の罪を供述するのと同一の結果を
来たさすものということはできない。元来外国人の登録は、前述のごとく現に本邦
に在留する一切の外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめる必要からなさし
めるものであつて、本邦に出入国する者の出入国それ自身の公正な管理を目的とす
るものではない。従つて、出入国と登録申請とは直接の関係はないのである。この
ことは、外国人登録法において、外国人登録令三条、一二条(本件当時は同条一号)、
一六条に相当する規定を設けなかつたことからもこれを知ることができるのである。
されば、不法入国の罪によつて処罰される危険において登録することを期待できな
いとする見解は、登録申請の本質を誤解するものであつて、失当である。
 以上述べたとおり、原判決が、外国人登録令四条一項所定の登録申請者には不法
入国した外国人は含まないものとして無罪を言渡した第一審判決を是認したことは、
法令の解釈を誤つたもので、判決に影響を及ぼすべき違法があるものといわなけれ
ばならない。そして、所論引用の当裁判所第二小法廷の判例は、本件に適切でない
から、原判決がこれに反する判断をしたものとする所論は失当である。しかし、所
論引用の札幌高等裁判所の判例は、所論のごとく「外国人登録令第三条に違反し、
不法に本邦に入国したものといえども同令第四条第一項による登録申請の義務ある
ものと解すべき旨」判示しているから、原判決はこの判例と相反する判断をしたも
のというべく、前述のごとく判決に影響を及ぼすものであるから、この点において、
所論はその理由があつて、原判決は刑訴四一〇条一項、四〇五条三号により破棄を
免れない。よつて、同四一三条本文に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官谷村唯一郎は退官につき評議に関与しない。
 検察官佐藤藤佐、同安平政吉、同大津民蔵出席。
  昭和三一年一二月二六日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛