弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人那須弘平の上告理由第一点ないし第三点について
 本件株式の譲渡による所得を雑所得として課税した本件更正処分に違法はないと
の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是
認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、
ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決の法令解釈の誤りをいうか、又は原審に
おいて主張しない事由に基づいて原判決の不当をいうものであつて、いずれも採用
することができない。
 同第四点について
 国税通則法(以下「法」という。)六五条の規定による過少申告加算税と法六八
条一項の規定による重加算税とは、ともに申告納税方式による国税について過少な
申告を行つた納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであつて、同一の
修正申告又は更正に係るものである限り、その賦課及び税額計算の基礎を同じくし、
ただ、後者の重加算税は、前者の過少申告加算税の賦課要件に該当することに加え
て、当該納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の
全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づ
き納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、
当該基礎となる税額に対し、過少申告加算税におけるよりも重い一定比率を乗じて
得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられるから、両者は相互に無関
係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課され
るべき一定の税額に前記加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分
として、右過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解す
るのが相当である。
 したがつて、重加算税の賦課決定に対する審査請求においては、右の加重事由の
存否のみならず、過少申告加算税の賦課要件の存否も当然に審判の対象となり、審
査の結果、後者の要件の全部又は一部が否定された場合には、加重事由の存否を問
うまでもなく当然にその限度で重加算税の全部又は一部が取消しを免れないことと
なるとともに、右後者の要件の存在が認められ、加重事由の存否の点についてのみ
原処分庁の認定判断に誤りがある場合には、加算税額中これに応じて減額されるべ
き部分についてのみ原処分を取り消し、その余については審査請求を棄却すべきも
のであつて、このように解しても、もとより審査庁である国税不服審判所長がその
権限に属さない税の賦課決定権を行使したことになるものではない。
 そして、重加算税の賦課決定に対する審査請求における審判の対象及び内容が前
記のとおりである以上、審査請求人において過少申告加算税の賦課要件の存否につ
いての原処分庁の判断にも不服があるときは、右審査請求手続において法六五条二
項に規定する「正当な理由」の有無の点を主張することができ、また、そうすべき
ものであつて、その主張がされていないために審査庁が審査裁決の中で特に右の点
に関する判断を示さなかつたとしても、そのために右裁決に所論の違法があるとい
うことはできない。
 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違
法はない。論旨は、採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    和   田   誠   一
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝

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