弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人白井正明の上告理由一および二について。
 賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借権を譲渡しもしくは賃借物を転貸した場合
においても、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するに足りない特段の事情が
あると認められるときには、賃貸人は、民法六一二条に基づいて賃貸借契約を解除
することができないものと解すべきである。そして、この理は、土地の賃貸借契約
において、賃借人が賃借権もしくは賃借地上の建物を譲渡し、賃借物を転貸しまた
は右建物に担保権を設定しようとするときには賃貸人の承諾を得ることを要し、賃
借人がこれに違反したときは賃貸人において賃貸借契約を解除することができる旨
の特約がされている場合においても、異ならないものと解するのが相当である。
 原判決(およびその引用する第一審判決)は、本件土地賃借人訴外Dが賃借地上
に所有していた第一審判決別紙目録第二(イ)記載の建物については、同人から訴
外Eに売買による所有権移転登記がされているが、実体上そのような譲渡はなく、
また、訴外FがDに対する債権の代物弁済として右建物の所有権を取得したことも
なく、したがつて、その敷地部分の土地につき右EまたはFに賃借権の譲渡もしく
は転貸がされたものではないこと、その後右建物につき右Eから訴外Gに売買を原
因とする所有権移転登記がされたが、その実体は、DがGに対し借受金債務のため
右建物を譲渡担保に供したものにすぎず、その前後を通じて右建物はDとその家族
の居住の用に供され、敷地利用の実体にほとんど変更がなく、しかも、上告人主張
の契約解除の日より七年以上前である昭和三〇年五月中に、債務の弁済によつてG
の担保権は消滅したものであること、Dは右譲渡担保の解消により右建物の所有名
義を回復するにあたり、右建物に同居する長男である被上告人に右建物を贈与し、
便宜Gから直接被上告人に所有権移転登記をさせたものであること、次に前記目録
第二(ロ)記載の建物については、Dがこれを建築したのち、右Gに対し借受金債
務のため譲渡担保に供し、便宜Gの名義をもつて所有権保存登記を経由したが、D
が右建物を第三者に賃貸していて、Gにおいてこれを現実に使用収益したことはな
かつたこと、Dの死後の昭和三三年五月、その共同相続人においてGに対する債務
を弁済して右担保権を消滅させ、昭和三七年一二月、共同相続人の一人である被上
告人へGからの売買名義により所有権移転登記をしたものであること、以上の事実
を認定判示しているのであつて、右判示に所論の違法はない。そして、右事実関係
のもとにおいては、賃借地上の建物について所有名義の移転ないし担保権の設定が
あつても、敷地の賃貸借契約について賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りな
い特段の事情があるものと認めることができ、したがつて、上告人は、賃借権の無
断譲渡、転貸または前記特約違反を理由に賃貸借契約を解除することはできないも
のというべきであつて、これと趣旨を同じくする原審の判断は正当であり、論旨は
採用することができない。
 同三について。
 建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、賃借人が新たに賃借地上に工
作物を建設しようとするときはあらかじめ賃貸人の承諾を得ることを要し、賃借人
がこれに違反したときは賃貸人において賃貸借契約を解除することができる旨の特
約があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借地上に新たな建物を
建築した場合においても、この建築が賃借人の土地の通常の利用上相当であり、賃
貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれが
あると認めるに足りないときは、賃貸人は右特約に基づき賃貸借契約を解除するこ
とはできないものと解するのが相当である(最高裁判所昭和三九年(オ)第一四五
〇号、同四一年四月二一日第一小法廷判決、民集二〇巻四号七二〇頁参照)。
 原審の確定した事実関係のもとにおいては、訴外Dが前記目録第二(ロ)記載の
建物を建築したことは本件賃借土地の通常の利用上相当な範囲を出ないものといえ
ないことはなく、これによつて賃貸人に著しい影響を及ぼさないものと認められ、
賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない特段の事情が
ある場合にあたるものと解されるのであるから、上告人は、右建築が上告人の承諾
を得ないでされたことをもつて、前示特約に違反するものとして、賃貸借契約を解
除することはできないものと解すべきであり、これと趣旨を同じくする原審の判断
は正当であつて、これに所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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