弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

     主    文
   本件控訴を棄却する。
   当審における未決勾留日数中80日を原判決の刑に算入する。
     理    由
 本件控訴の趣意は弁護人丸野敏雅作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に,控訴
趣意書に対する答弁は検察官岡本誠二作成の答弁書に,それぞれ記載されたとおり
であるから,これらを引用する。
第1 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の主張について
 論旨は,要するに,原判決は,本件起訴にかかる犯罪事実以外の被告人の被害者
に対する各暴行・傷害の余罪をも認定し,これらも実質上処罰する趣旨で,被告人
に対し重い刑を科したものであって,これは憲法31条に抵触するから,原判決に
は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのであ
る。
 そこで,所論にかんがみ,記録を調査すると,本件は14歳の中学2年生の少女
に対する傷害及び監禁致傷各1件の事案であるが,原判決は,(犯行に至る経緯)
中の「2 本件犯行に至る経緯」の項において,起訴された事実以外の被害者に対
する暴行・傷害の事実を約2頁にわたって詳細に認定し,とりわけ,平成12年1
2月7日の行為については,その日,場所を特定して暴行等の態様も詳細に記載
し,さらに,同日以降の行為の認定も具体的であるうえ,判示の(罪となるべき事
実)の傷害とは関連のない診断書類4通をこれらの事実に対する証拠として挙げる
などしていること,また,(量刑の理由)の項においても,起訴されていないA港
でのリンチ行為について記載したり,「一連の傷害,監禁行為」という表現を用い
たり,起訴事実からは導き出されない「丸坊主にされた」事実を認定したりしてい
ること,そして,被告人を求刑どおり懲役5年の刑に処していることが認められ,
これらを総合すれば,所論が,原判決においては,被告人の被害者に対する暴行・
傷害の余罪を認定し,これらを実質上処罰する趣旨で,被告人に対し主文のとおり
の刑を科したとの主張をするのにも,あながち理由なしとしない。
 しかしながら,本件各犯行は,被告人らがいわば遊び感覚で,わずか14歳の女
子中学生に対し常軌を逸した暴行・傷害を加え,被害者を家畜以下の扱いにより監
禁したという,通常人の感覚ではまことに理解し難い特異な犯行であって,この特
異性を明らかにするためには,本件の傷害の動機や犯行の発覚を免れるという監禁
致傷の目的,被告人の性格などを究明し,その暴行等が行われた背景事情や人間関
係,ひいては,本件各犯行に至る経緯の中で被告人らが被害者に対し加え続けた暴
行等の行状に具体的に触れざるを得ないうえ,それらの暴行等によって被害者が受
けた傷害の程度についてもある程度記載せざるを得ないこと,原判決は,(犯行に
至る経緯)と(罪となるべき事実)とを明確に区別し,(証拠の標目)の項におい
ても両者の証拠を分けて挙示していること,余罪とされる暴行等は本件の傷害・監
禁致傷に比してその程度においてかなりの差があるうえ,(量刑の理由)の項で述
べている「一連の傷害,監禁行為」という言葉や,「丸坊主にされた」という事実
も,これらの点が本件の審判において当然犯情として考慮されるべき事柄であるこ
とにかんがみると,その表現において適切を欠くきらいがあったとしても,余罪処
罰として違法ならしめるほどのことといえないし,また,下記において述べるとお
り,原判決が被告人を求刑どおりの厳罰に処したのは,本件各犯行の異常性,結果
の重大性,被告人の主導的な立場,その前科の内容などを考慮すれば相当であるこ
となどに照らせば,原判決は,被告人の余罪を単に犯罪の動機,目的,被告人の性
格等の情状を推知するための資料としてこれを考慮したに過ぎないというべきであ
って,所論が主張するような憲法違反の点は認められず,原判決に訴訟手続の法令
違反はない。論旨は理由がない。
第2 控訴趣意中,量刑不当の主張について
 論旨は,原判決の量刑不当を主張するので,所論にかんがみ,記録を調査し,当
審における事実取調べの結果もあわせて検討する。
 本件は,当時31歳の被告人が,22歳の自分の養子の男1名及びいずれも17
歳の少女2名とともに,14歳の中学2年生の少女に対し,理不尽な言いがかりを
付け,同女の苦しむ様子を見て楽しむという目的で,ターボライター等でその身体
をあぶって焼いたり,同女をクッションドラムに閉じ込めて坂道を転がすなどして
重傷を負わせたうえ,その犯行の発覚を免れるために,同女を約21日間にわたり
クッションドラムや車の後部トランク内に閉じこめて監禁し,その結果生命の危険
も生ずるような重傷を負わせたという事案である。
 被告人らは,遊びやその延長線上で本件各犯行に及んだものであり,その動機は
異常かつ身勝手であって,そのような人間性を喪失したかのような精神状態に対し
ては戦慄さえ覚えること,犯行態様も極めて無慈悲かつ残虐であるうえ,被害者は
監禁中トイレに行くことさえ許されず,その間尿を垂れ流すという極めて不衛生で
非人道的な仕打ちを受けていたものであって,その被った精神的・肉体的苦痛は想
像を絶する程のものであったと考えられること,結果もまた重大であって,被害者
は皮膚移植を要するような熱傷や,死に直面するまでの脱水等の傷害を受け,その
後遺症により将来モデルになりたいという希望も奪われたこと,被告人は,元暴力
団員であり,かつ共犯者らの中で飛び抜けて年上であって,被害者が被告人に別れ
話を持ち出したことから率先して同女に暴行を加えるようになり,他の共犯者もこ
れに誘発されて本件の暴行等に及んだものと認められるのであるから,被告人が本
件において最も重い責任を負うべきであるのは自明の事柄であること,被告人は,
原判示の累犯前科のとおり,懲役刑の前科3犯を有し,とりわけ平成7年10月に
受けた判決にかかる逮捕監禁罪は本件各犯行と酷似する犯行であって,被告人には
年端もいかない少女と関係を持ちこれに暴行,監禁などの暴力行為に及ぶ行動傾向
が明らかであって,再犯のおそれが強いことなどを総合考慮すれば,被告人の刑事
責任は相当に重い。
 したがって,被告人が自ら警察に出頭し,捜査段階から本件の各事実を素直に認
め,一応反省の態度を示していること,被害者側に見舞金として30万円を支払っ
ていることなどの所論指摘の諸事情を十分考慮しても,被告人を求刑どおり懲役5
年に処した原判決の量刑は相当であって,これが不当に重いとはいえない。論旨は
理由がない。
 よって,刑訴法396条,刑法21条,刑訴法181条1項ただし書を適用し
て,主文のとおり判決する。
(第3刑事部 裁判長裁判官 河上元康 裁判官 細井正弘 裁判官 水野智幸)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛