弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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 目  次
 主   文
 理   由
 (略語例について)
 第一 控訴趣意第一(不法に公訴を受理した等の主張)について
 (弁護人の主張)
  一 証人喚問決定の憲法一四条違反
  二 証人喚問権の主体の問題
  三 告発と会期不継続の原則との関係等
  四 告発した委員会の目的と権限
  五 告発状の形式及び内容等
  六 証人尋問の実施方法の違法
  七 予算審査権の犯罪捜査目的による濫用
 (当裁判所の判断)
  一 憲法一四条違反の主張について
  二 証人喚問権の主体の問題について
  三 告発と会期不継続の原則との関係等について
  四 告発した委員会の目的と権限について
  五 告発状の形式及び内容等について
  六 証人尋問方法の不当性を主張する点について
  七 予算審査権を犯罪捜査目的で濫用したとの主張について
  八 結論
 第二 控訴趣意第二(証拠調における訴訟手続の法令違反の主張)について
 一 証拠能力のない嘱託証人尋問調書を証拠に採用したとの主張
 (弁護人の主張)
 1 外国に対する嘱託証人尋問の一般的違法性
 2 本件嘱託証人尋問手続施行上の具体的違法性
  (一) 嘱託権限の欠如
  (二) 米国法上の嘱託証人尋問の要件の欠如
  (三) 嘱託尋問の実施方法における違法
  (四) 証言に対する免責付与についての違法
 3 嘱託証人尋問の際予定された使用目的の逸脱
 4 刑訴法三二一条一項三号書面該当性の判断の誤り
 5 本件証言調書の採用後の取調方法の違法
 (当裁判所の判断)
 1 外国に対する嘱託証人尋問の一般的違法性の主張について
 2 本件嘱託尋問手続施行上の具体的違法性の主張について
  (一) 嘱託権限の欠如の主張について
  (二) 米国法上の要件の欠如の主張について
  (三) 尋問実施方法の違法の主張について
  (四) 証言に対する免責付与について
   (1) 不起訴宣明がなされた経緯等
   (2) 不起訴宣明の性質及び効力について
   (3) 不起訴宣明による証言の取得と国内法との関係
 3 証言調書の使用は嘱託の目的外であるとの主張について
 4 刑訴法三二一条一項三号書面該当性を争う主張について
 5 証言調書の採用後の取調方法の違法の主張について
 二 証拠能力のない証拠物等を証拠に採用したとの主張
 (弁護人の主張)
 (当裁判所の判断)
 第三 控訴趣意第三(被告人がA1に対しL-〇一一型機の購入を從慂した関係
の訴因についての主張)について
 一 理由不備ないし理由そごの主張
(弁護人の主張)
(当裁判所の判断)
 二 被告人の国会証言の趣旨に関する事実誤認
(弁護人の主張)
(当裁判所の判断)
 三 從慂行為の事実認定上の事実誤認
 (弁護人の主張)
 1 從慂に至る動機についての誤認
  (一) B1証言とハワイ会談の情報収集依頼の件
  (二) 被告人の検面供述と前記情報収集を依頼された件
 2 從慂行為の有無についての事実誤認
  (一) A1と被告人の各検面供述の信用性
  (二) 他人の話の伝達と「從慂」の評価
 (当裁判所の判断)
 1 從慂に至る動機についての誤認の主張について
  (一) B1のハワイ会談に関する情報収集依頼の供述について
  (二) 情報収集依頼に関する被告人の検面供述について
 2 從慂行為の有無について
  (一) ハワイ会談における話合の内容と本件從慂行為との関係について
  (二) A1の検面供述の信用性について
  (三) 被告人の検面供述の任意性・信用性について
  (四) 慫慂行為とはならないとの主張について
  (五) 結論
 第四 控訴趣意第四(被告人がB1からP3C型機売込の援助を要請された関係
の訴因についての主張)について
 一 理由不備ないし理由そごの主張
(弁護人の主張)
(当裁判所の判断)
 二 「四者会談」に関する事実誤認の主張
 (弁護人の主張)
 1 偽証の前提となる客観的事実の誤認
 2 国会証言部分の虚偽陳述の犯意の誤認
 (当裁判所の判断)
 1 偽証の前提となる客観的事実の誤認の主張について
  (一) 「四者会談」の時期と社有自動車行動表の記載
  (二) 「四者会談」とB2日記による裏付けの有無
  (三) 「四者会談」の認定の可否
 2 予備的検討
 第五 控訴趣意第五(被告人がa国際空港で二〇万ドルを受領した関係の訴因に
ついての主張)について
 一 国会証言の趣旨に関する理由不備ないし事実誤認
 (弁護人の主張)
 (当裁判所の判断
 二 二〇万ドル受領の事実認定における事実誤認
 (弁護人の主張)
 一 B2の本件授受に関する証言の信用性について
 2 B1証言の信用性について
 3 C1及びC2の供述の信用性について
 4 支払原因の不存在等
 5 本件二〇万ドルとC3の報酬等との関係
 6 本件授受の時間的可能性
 7 被告人の同行者らの供述
 (当裁判所の判断)
 1 B2の供述の信用性について
  (一) 一般的信用性を認めるべき事情
  (二) B2の本件授受に関する供述の内容
  (三) D1の大陪審証言調書の供述
  (四) 授受の前後にわたる状況について
  (五) B2日記の本件授受当日の記載等について
  (六) 弁護人の主張する偽装工作説とB2証言を裏付ける客観的証拠の有無
について
  (七) C3領収証の作成の真否について
  (八) 授受後の金員の動きについて
  (九) その余の弁護人の主張について
 2 B1証言及びC2の供述の信用性について
 3 結論
 第六 破棄自判の裁判
 (罪となるべき事実)
 (証拠の標目)
 (法令の適用及び量刑の事情)
 (訴因の一部の無罪理由)
         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一〇月に処する。
     この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     訴訟費用中、原審における証人A2、同A3、同A1に支給した分の二
分の一、及び同証人A4、同A5、同A6、同A7、同A8に支給した分並びに当
審における鑑定人C4に支給した分は、被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人黒澤長登、同鹿道正和、同中利太郎、同長畑裕三、同
大沢一郎、同荒川正三郎連名の控訴趣意書に、これに対する答弁は検察官石黒
久・、同山本和昭、同飯田英男連名の答弁書に、各記載されたとおりであるから、
これらを引用する。
 (略語例について)
 以下においては、次のような略語を使用することがある。
 議 院 証 言 法   議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律
 外   為   法   外国為替及び外国貿易管理法
 C5社         C5・コーポレイシヨン
 L   A   I   C6・インコーポレイテツド
 L A A L     C7
 全   日   空   C8株式会社
 日       航   C9株式会社
 丸       紅   C14株式会社
 コ ー チ ヤ ン   B1
 ク ラ ツ タ ー   B2
 D1    D1
 L―一〇一一      L―一〇一一型ジエツト旅客機
 P   3   C   P3C型対潜哨戒機
 国 会 証 言     衆議院予算委員会における証人としての供述
 何 某 の 証 言   原審公判廷における証人何某の供述(別件公判におけ
る証人としての尋問調書中の供述も含む。)
 被告人の公判供述    被告人の原審公判廷における供述(別件公判における
証人としての尋問調書中の供述も含む。)
 検 面 調 書     検察官に対する供述調書、その作成日付は算用数字で
年月日を略記する。
 検 面 供 述     検察官に対する供述調書中の供述
 コ嘱何巻何頁      B1に対する嘱託証人尋問調書の原文の該当頁
 ク嘱何巻何頁      B2に関して右と同様
 摘要中の特別勘定    ク嘱四巻に添付された副証二七Dの摘要と称する文書
綴中、B2作成のスペシヤル・アカウントと題するメモ(原審で後にそのC11・
コピーが独立の証拠として採用されたもの)
 なお、原審で取調べられた書証・証拠物の引用は、原審における請求番号(書証
の場合)または押番号の符号番号(証拠物の場合)をそのまま使用して引用する。
 第一 控訴趣意第一(不法に公訴を受理した等の主張)について
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、被告人の本件衆議院予算委員会における証人喚問手続ないし
偽証告発手続には、以下記載の諸点において告発を無効にさせるような瑕疵があ
り、あるいは証人尋問の実施方法・尋問目的において違法があつて、なされた証言
が議院証言法上の適法な証言にあたるとはいえないから、かような瑕疵のある告発
を基礎とした本件公訴は、刑訴法三三八条四号により棄却されるべきであつたの
に、原判決がその措置に出ないで実体判決をしたのは、同法三七八条二号所定の不
法に公訴を受理した場合にあたり、また、適法な証言でない被告人の証言を適法視
し、偽証であるとして有罪としたのは、事実を誤認しまたは法令の適用を誤つたも
のである、というのであり、その理由として次のとおり主張する。
 一 証人喚問決定の憲法一四条違反
 前記予算委員会の被告人の証人喚問は、当時のマスコミの報道(C5社の対外不
正支払問題に被告人も関与しているとするもの)の影響や、PXL問題に関しC1
2ら政府与党側政治家に疑惑があるとして証人喚問を主張した野党側議員の動きに
対応する与党側議員の党利党略により、右C12ら政治家は喚問されなかつたのに
対し、被告人は、そのほとんとが民間人である他の証人らと共に、差別的に証人喚
問を決定され、また前記委員会は同じ予算三案の審査に関し、他の問題については
多数の者を参考人として喚問しているのに、被告人を証人として喚問した点も不公
平であるから、被告人の証人喚問決定自体が憲法一四条の法の下の平等の原則に違
反して無効であり、ひいては本件偽証の告発も無効となる。
 二 証人喚問権の主体の問題
 国会の証人喚問権の主体は各議院であつて、議院の内部機関である常任委員会で
はなく、衆議院規則五三条も衆議院内部の手続・規律を定めるのみで国民の権利・
義務に効力を及ぼす性質のものではないから、これをもつて議院が常任委員会に証
人喚問権を委譲したと解すべきではなく、委員会が証人喚問を決定しても、対外的
には議院でこれを認める議決をすることを必要とし、そのうえで議長から証人に決
定を伝達する筋合であると解すべきところ、本件被告人の証人喚問については衆議
院の議決はされていないから、予算委員会かした喚問決定は無効であり、ひいては
本件偽証の告発も無効となる。
 三 告発と会期不継続の原則との関係等
 本件証人喚問が実施された第七七回国会においては、被告人の偽証告発問題は予
算委員会及び同理事会の議題に上つたが、案件として未決のまま会期が終了したと
解する余地があるのに、新たな第七八回国会の予算委員会において被告人に対する
告発の動議が提出され、なんら実質的審議もなく可決された経過からすると、右告
発の動議はその実質を備えていないもので、前国会の未決の案件をそのまま後国会
に継続したと見るべきであるから、本件告発は国会法六八条の会期不継続の原則に
違反する疑いがあつて無効である。また、同法四七条二項(懲罰事案の閉会中審査
の特例)が改正追加されたことと比較しても、偽証の有無を最もよく判断できるの
は当該証言の行なわれた委員会であり、偽証の告発は懲罰以上に重大な事項である
ので、告発は当該証言が行なわれた委員会自体によりなされる必要があると解すべ
きところ、本件告発を行なつた予算委員会の構成員中、被告人の証言した委員会に
出席していた者は過半数に足りず、したがつて本件告発は前後の予算委員会の実質
的同一性が失われている点で無効である。
 四 告発した委員会の目的と権限
 予算委員会の審査権についても、第七七回国会においては予算三案の審査と予算
の実施状況に関する国政調査を取り扱つたのに対し、第七八回国会においては後者
の国政調査のみを取り扱い、活動範囲が縮少されていたので、前国会の予算審査に
関しC5問題について喚問した被告人の証言の偽証告発の問題は、後国会の同委員
会の目的の範囲外であつたから、同委員会がした右告発の議決はこの点からしても
無効である。
 五 告発状の形式及び内容等
 告発の形式についても、本件告発状は衆議院予算委員長C13作成名義となつて
いるが、議院証言法八条本文によると、偽証告発の権限は証人喚問をした委員会に
あるから、委員長名義による告発は違法であり、たとい同委員会において告発手続
は委員長に一任する旨議決したとしても、告発の主体を委員長に変更することまで
は委任できないから、やはり違法な告発であつて無効である。
 また、告発状に記載された被疑事実は、「被告発人はトライスターの売り込みに
ついて、C5社のB1社長から依頼があつたので、わかりましたとは言つたがその
まま聞き流しにして誰にも話をしたことはない旨、C5社あるいはC8に関するこ
とでC3と話し合つたことはない旨証言したが、これらの証言は偽証の疑いが濃厚
である。」というだけであつたのに、本件公訴事実には右告発にかかる事実のほか
に、被告人は右B1からP3Cオライオンという言葉を聞いたことは全然ない旨及
びC5社が右C3に支払つた金の一部を受領したことはない旨証言して偽証した点
も付加されているところ、三権分立の立場から検察官としては国会の告発にかかる
被疑事実を尊重すべきであつて、たとい同一機会における証言中の事実であつて
も、右告発にかかる被疑事実と異なる事実を付加して起訴することはできないと解
すべきであるから、原判決は右付加事実については告発そのものがないとして公訴
を棄却すべき旨を主文もしくは判決理由中で示すべきであつたのに、右二つの付加
事実について有罪の認定をした点も違法である。
 六 証人尋問の実施方法の違法
 被告人の証人尋問の実施方法についても、(イ)あらかじめ本人に尋問事項を知
らせることも、証言時までに十分な記憶喚起の時間的余裕を与えることもなく、
(ロ)尋問に際し弁護士の補佐を認めるべきであつたのにこれを認めず、(ハ)宣
誓及び証言の拒否権の告知が法規上の義務とされておらず、(ニ)尋問の際に誘導
尋問、威嚇的・侮辱的尋問等不適当な尋問が続出して被告人をとまどわせ、または
答弁に窮せしめたのに、委員長においてなんら制限措置を行なわず、(ホ)被告人
の健康状態が不良で、公開の席で尋問に耐えることが困難であつたのに、これに対
する配慮もなされず、(ヘ)テレビカメラによる撮影・放送を許可したため、尋問
者側はこれを意識して演説口調に終始するなど適切な尋問に欠け、被告人も国民注
視の中でさらし者にされて屈辱感を味わされた等の点で、被告人の人権を無視しそ
の正当な防御権を侵害した違法ないし不当があるから、右尋問の結果取得された証
言は違法に収集されたもので有効な証言でないことに帰し、偽証罪の対象とならな
い。
 七 予算審査権の犯罪捜査目的による濫用
 被告人に対する尋問及び証言の内容からすると、捜査機関の持つ犯罪捜査権を代
つて行使することはできない衆議院予算委員会が、自らC5問題の犯罪の捜査に乗
り出し、しかも事件に関係のない被告人を証人に喚問して犯罪人のごとく尋問した
ことが明らかであるが、これは予算委員会の予算審査権を濫用した越権行為であ
り、違法であるから、被告人の証言は議院証言法が予定する適法な証言には該当せ
ず、その真偽を問わず同法の適用を認めるべきではない。
 (当裁判所の判断)
 一 憲法一四条違反の主張について
 関係証拠によると、本件被告人の証人喚問決定当時のC5事件に関する報道で
は、B1の米国上院における証言内容から、C5社から日本側で不正に金員の支払
を受けた疑いのある人物として、C3、C14のC15・C16・C17のほか、
被告人の名も挙げられていたが、右C15らから更に右金員を受けとつたとされる
政府高官等の政治家の名は全く出ていなかつたこと、本件喚問決定当日の衆議院予
算委員会において、C18委員がいわゆるPXL国産化白紙還元問題とC5社の不
正支払問題が関連する疑いがあるとして、C12ほか二名の政治家の証人喚問を要
求したが、右疑いは同議員の憶測によるにすぎないと見られ、結局喚問決定には至
らなかつたこと、当時の報道によるB1証言の内容からすれば、前記C3に関する
巨額の脱税や外為法違反、前記C15らからの政府高官に対する贈賄等の容疑が推
測され、米国国会の動きに対応して日本の国会においても、早急にB1証言に名前
の出た前記C3以下の人物について事情をただす必要があると考えられたことを認
めることができ、右のような情況下では被告人を含む民間人が、ことさら政治家と
差別されて証人喚問を決定されたということはできない。また、他の参考人らとの
差別という点も、当該参考人らは不況・雇傭問題に関しC19連会長らの意見と
か、C20会長のC12前首相邸保釈見舞の事情等、犯罪容疑とは関係のない事柄
について喚問されたことが認められ、被告人らの場合とは聴取すべき問題の性質を
異にしていたのであるから、一方は証人、他方は参考人という取扱の差が出ても当
然であつて、なんら不合理な差別をしたというには当らない。そうすると、被告人
の証人喚問決定が憲法一四条に違反するとの主張はその前提を欠くもので採用し難
い。
 二 証人喚問権の主体の問題について
 原判決も説示するような国会の委員会制度の実情、衆議院規則五三条・議院証言
法一条・二条・五条一項・八条等の文言解釈、偽証等の罰則が議院証言法自体に規
定されている法形式等からすれば、右規則五三条は、衆議院が証人決定権を含む証
人喚問権を内部機関である委員会に委譲し、ただ証人喚問権の行使手続について
は、外部に対する関係上、議院の代表者である議長を経由させることにした趣旨で
あると解するのが相当であつて、この点について原判決の説示するところはおおむ
ね相当として是認することができる。所論のように、衆議院自体が証人喚問権の主
体であつて、委員会の喚問決定のほかに衆議院の議決を要するものとは解せられな
いから、この点の所論は失当である。
 三 告発と会期不継続の原則との関係等について
 被告人の証人喚問の行なわれた第七七回国会の予算委員会において、被告人に対
する偽証告発の問題がその会期中(閉会中審査を含む)に案件として提出されたこ
とは、本件の証拠上これを認めるべきものがない。所論の国会法六八条の会期不継
続の原則は、議案として議院または委員会に上程されたが議決に至らなかつた案件
について適用される規定であるから、本件の場合には適用の余地がないというべき
である。前国会で審議の対象とならなかつたということが、その問題を後国会で審
議することの妨げとなるべき道理はない。原判決のこの関係の説示部分の判断も相
当であつてこれを是認することができる。所論は第七七回国会において、被告人の
告発の案件が未決のまま終了したと解する余地があるというが、そのように解する
余地は認められない。
 また、懲罰事案については会期末に生じた場合の処理のため、特に閉会中の審査
を認めたものと見られるから、これと偽証告発との比較均衡を論ずるのは相当でな
い。偽証の判断と告発の判断が同一の委員の構成する委員会でなされるべきである
という点も、それが望ましくはあつても、そうしなければ違法であるというほどの
問題ではなく、証人尋問をした委員会と偽証の告発をする委員会が、法律上同一で
あれば足りると解すべきである。原判決のこの点に関する同趣旨の判断も相当であ
つて是認てきるから、会期不継続の原則を援用する告発の無効の主張も失当という
べきである。
 四 告発した委員会の目的と権限について
 所論は、本件告発は後国会では予算委員会の権限外であつたと主張する。しかし
ながら、議院において証人尋問を行なつた委員会は、前記のように議院から証人喚
問権の委譲を受けた効果として、当該証人尋問に際して生じた偽証の容疑につき告
発をなす固有の権能を有すると解すべきであり、前国会と後国会とで審査案件に変
動があつても、右固有の権能は影響を受けないと解するのが相当である。この点の
所論も失当というほかはない。
 五 告発状の形式及び内容等について
 本件告発状は衆議院予算委員長作成名義であるが、本文には同委員会の決議に基
づき告発する旨明記されているから、右告発の行われた際の会議録にも照らし、同
委員会が告発の主体であつて、委員長は同委会から告発の手続を一任されてこれを
代行したものと解すべきである。原判決のこの点の判断も相当とめられる。また、
告発状記載の被疑事実以外に、本件公訴事実にP3C関係と二〇万ドル授受の関係
の訴因が付加されているが、これらは一個の宣誓の下に同一機会になされた証言中
の各偽証部分であつて、全体的に単純一罪を構成すると考えるべきであるから、告
訴告発不可分の原則(刑訴法二三八条一、二項)により、本件告発の効力は本件証
言時の証言内容の偽証の点のすべてに及ぶと解すべきである。所の三権分立尊重論
も、右原則を排除するほどの特別の事情というには当らない。
 原判決が右付加された事実につき公訴棄却をすることなく異体判断をしたことも
相当と認められる。よつて、この関係の所論もすべて失当である。
 六 証人尋問方法の不当性を主張する点について
 所論の(イ)、(ロ)の点は、刑訴法上の証人尋問でも保障されていない事柄で
あり、これら及び(ハ)以下の点も、すべて自律権能を有する国会各議院ないし当
該証人尋問を実施する委員会の裁量により決せられるべき事柄であると認められ
る。(ニ)の尋問方法が不適当であつたという点も、議員のすべてが法律家でない
以上、ある程度は相当でない尋問があつてもやむを得ないところである。また、
(ニ)、(ホ)、(ヘ)の点については、証拠物である証人尋問の状況を録取した
ビデオテープ(符52の1・2)を見ても、被告人は内面の状態はともかくとして
外見上は、当初は緊張していたが次第に落ちつきを見せ、時には笑顔を見せたこと
もあり、余裕を持つて尋問に応答していた一面のあることが認められるから、所論
のように被告人の人権を無視し、正当な防御権を侵害した尋問方法であつたとはい
えない。
 もつとも、証人に弁護士の付添(随伴)を認めることは、昭和五四年二月以降の
第八七回国会における、C21・C22両社の不正支払問題に関する証人尋問にお
いては実現を見ており、また、本件被告人らに対する証人尋問の質間者の態度ない
し尋問方法が必ずしも適切でなかつたことは、尋問に関与した国会議員のうちから
も後日反省の弁か述べられるほどであつたが、これらの点は前記のとおり国会が自
律権を有する証人尋問の実施方法の相当性の問題であつて、証人尋問の手続の効力
に影響を及ぼすものではなく、偽証罪の成立する場合に、その責任判断に際して考
慮すべき情状の問題にすぎないというべきである。この点の所論も失当というほか
はない。
 七 予算審査権を犯罪捜査目的で濫用したとの主張について
 当時一般に報道されていたC5事件の疑惑の情況とその中における被告人の立場
を考えれば、被告人の証人喚問には、ある程度犯罪容疑について問いただす一面が
あつたことは否めないが、国政レベルにおいて、予算審査に関し過去の運輸行政の
適否にも関係し、国民の重大関心事であつたC5事件について被告人の関与の有
無・程度を問いただすことが主眼であつたと認められ、捜査機関に代つて犯罪捜査
を行なう目的で行なわれたとは認められない。右証人尋問の結果、捜査機関におい
て特定の犯罪容疑につき捜査の端緒を得たとしても、それはいわゆる反射的効果に
すぎないものというべきである。なお、被告人と事件との関係の有無は、尋問して
みなければわからない事柄であるから、事件に関係しているという合理的な疑いさ
え存すれば、証人として喚問する必要性が認められるというべきである。本件被告
人に対する証人尋問が、内容的に犯罪捜査目的であつて、予算審査権ないし国政調
査権を濫用して行なわれたとは認められず、右尋問は適法に行なわれたと認められ
るから、この点の所論も失当である。
 八 結論
 以上判断したとおり、被告人の国会における証人喚問手続ないし偽証告発手続に
所論のような瑕疵があつたこと及び証人尋問の実施方法・尋問目的に所論のような
違法があつたことは認められないから、原判決が告発の無効を前提とする公訴棄却
の措置をとらなかつたこと及び被告人の証言を議院証言法上の適法な証言として取
扱つたのは相当であり、また、告発と公訴事実との関係に不一致はないから、公訴
事実のすべてにつき実体判断したことも相当であつて、原判決には所論のような違
法はないからこの関係の論旨は理由がない。
 第二 控訴趣意第二(証拠調における訴訟手続の法令違反の主張)について
 一 証拠能力のない嘱託証人尋問調書を証拠に採用したとの主張
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、原判決が本件の有罪認定の証拠としたB1及びB2の各嘱託
証人尋問調書(以下単に本件証言調書ということがある)は、わが憲法及び刑訴法
に違反して収集されたものであり、また、形式的・内容的に見ても不備があつてそ
の証拠能力を否定すべきであるのに、これらの調書を証拠に採用し、これらに依拠
して被告人を有罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続
の法令違反がある、というのであつて、その理由として次のとおり主張する。
 1 外国に対する嘱託証人尋問の一般的違法性
 現行の刑訴法は、わが国の裁判所または裁判官が、外国の裁判所または裁判官に
対し証人尋問を嘱託する権限を認めていない。このことは民訴法二六四条に対応す
る規定がないことから明らかであり、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法も外国の嘱託
による受動的証拠調につき規定するのみで、外国に対する能動的証拠調までは認め
ていないし、同法一条ノ二・一項六号の相互保証主義の規定を右権限を認めた趣旨
に解釈するとしても、日米両国間で右相互保証主義の内容が実質的に満たされてい
るとは認め難い。
 旧日満司法事務共助法等の立法例を見ても、外国に対する強制処分または強制捜
査の嘱託は、法律の明文を要することを裏書している。原裁判所は本件証言調書の
採用決定において、刑事事件に関して当該嘱託の権限は裁判所固有の訴訟指揮権に
その根拠を見出すべきであるとの見解を示し、証拠開示命令に関する昭和四四年四
月二五日の最高裁決定を援用したが、右最高裁決定は厳しい条件の下に証拠開示に
関し訴訟指揮権の発動を認めたものにすぎず、本件嘱託のような強大な権限にまで
その論理を推及すべきではない。もともと刑訴法一六三条が国内の証拠調の嘱託の
み規定しているのは、外国への嘱託は禁止している趣旨に解すべきであり、原裁判
所のような見解をとれば、法律の認めない証拠収集の一方式を是認することにな
り、法的安定性を害するに至る。
 以上の点から見ると、わが国の法制度上、刑事事件については、裁判官は外国に
対する証拠調の嘱託の権限を有しないと解すべきであるのに、これがあるとして進
められた本件嘱託証人尋問手続は明らかに違法である。
 2 本件嘱託証人尋問手続施行上の具体的違法性
 (一) 嘱託権限の欠如
 東京地方検察庁検察官が刑訴法二二六条に基づき東京地方裁判所裁判官に対しB
1、B2外一名に対する証人尋問を請求し、その方法として本件米国司法機関に対
する証人尋問の嘱託を要請したのを受けて、同裁判官は米国側司法機関に対し米国
法による証人尋問の実施方を嘱託したが、右刑訴法二二六条による証人尋問は日本
の刑訴法の規制する証人に対して認められるのみで、米国法による証人に対して認
められるものではないから、右裁判官は権限外の事項を処理したものであつて違法
である。原裁判所は、刑訴法二二六条所定の裁判官は受訴裁判所と同等の権限を有
するとし右嘱託の実施権限を肯定したが、刑訴法二二六条に基づき捜査に関与する
裁判官には裁判所に認めれるような訴訟指揮権はないから、訴訟指揮権を根拠に嘱
託権限を認めることもできない。
 (二) 米国法上の嘱託証人尋問の要件の欠如
 前記刑訴法二二六条による請求を受けた裁判官は、捜査手続の一環として捜査目
的のために奉仕する一機関にすぎないのに、嘱託を受けた米国側において米国法上
の嘱託尋問に関する合衆国法典二八編一七八二条に規定する「外国司法機関」から
の嘱託にあたると判断し処理したのは誤りであるから、違法な手続としてその証人
尋問調書も無効となる。
 (三) 嘱託尋問の実施方法における違法
 米国法上、嘱託証人尋問の実施に関し共同コミツシヨナー(執行官)を置くこと
は認められていないのに、本件では三名のコミツシヨナーを置き、一名を証人尋問
の主宰者とし、他の二名を証人尋問の担当者としたこと、また立会権限が不明のま
ま日本の検察官二名を立ち会わせたうえ、強力で一方的な尋問を行ない、かつ本件
の被疑者側の反対尋問権につきなんら考慮を払わないままで終つたのは、米国憲法
五条(修正六条の誤記と認める)に反するのみならず、わが憲法三七条二項にも反
する違法な手続である。
 (四) 証言に対する免責付与についての違法
 「A」 B1の証人尋問においては、同人が日本における自己負罪のおそれを理
由に供述拒否の申立をしたのに対し、東京地検検事正・検事総長・最高裁判所によ
る一連の不起訴宣明がなされていたが、これらはなんら法的効果を伴わないもので
あつたのに、米国裁判所側の曲解により証言に対する免責(イミユニテイ)付与が
なされたとして、同人の証言拒否を認めないで既に施行していた証人尋問調書四通
の伝達を認め、更に爾後の尋問手続を進めて証言させた点で、明らかに同証人の自
己負罪拒否特権を侵害した違法があり、「B」B2の尋問の場合も、同人が右同様
に証言拒否の申立をしたのに対し、右同様一連の宣明にはなんらの法的効果がなか
つたのに、立ち合つた日本の検察官がトランザクシヨナル・イミユニテイ(訴追免
責)の付与であるように発言し、当該免責が付与されたと誤解させて、強制的に証
言をさせた点で前同様の違法がある。
 原裁判所は、本件嘱託証人尋問調書の採用決定において、検察官側の不起訴宣明
は公訴権の放棄であるとの見解をとり、免責は有効であるとして本件証言手続ない
し証言調書を適法・有効視したが、これは現行法に即しない理論であつて、到底支
持することができない。
 3 嘱託証人尋問の際予定された使用目的の逸脱
 本件証言調書は、嘱託書に明示された被疑者及び被疑事実にかぎり、その明示さ
れた被疑者の訴追または処罰のために使用すべきことが、嘱託の性質上当然に日米
両国間に合意・予定されていたのに、右被疑者の中に含まれていなかつた被告人に
対して本件証言調書を証拠に使用したことは、嘱託の目的外の使用であつて違法で
ある。
 4 刑訴法三二一条一項三号書面該当性の判断の誤り
 原裁判所は本件証言調書の採用決定において、これらが右法条所定の要件を具備
していると判断したが、(イ)右調書の形式自体に共同コミツシヨナー三名による
認証がなく、主宰者でない者一名の認証のみが調書添付の証明書になされていて、
手続の公正さを確認できない形式的不備があるうえ、(ロ)刑訴法三二一条一項三
号所定の公判期日等における供述不能という要件も満たしておらず(この点につい
ては、B1とB2のC23検事宛の各書簡を見ると、両名は再度の考慮によつて公
判に出頭する可能性を示している。)、また証言内容を実質的に見ても、いわゆる
不可欠性・特信性及び任意性の要件を具備しているとは認め難いのに、原裁判所が
これらの要件があると認めて右法条一項三号書面に該当すると判断し証拠に採用し
たのは、判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反である。
 5 本件証言調書の採用後の取調方法の違法
 原審裁判長は、本件の第二四回準備手続期日において、本件証言調書の取調に関
して「裁判所が証拠として採用したのは証人尋問調書の英文による原本であつて、
訳文は当事者の理解を助けるためのものであり、証拠調は便宜それを朗読するとい
う方法をとるにすぎない。」との見解を示し、原裁判所は本件証言調書の英文によ
る原本のみを証拠としてその取調をしたが、これは裁判所法七四条に違反する違法
な措置である。
 (当裁判所の判断)
 <要旨第一>1 外国に対する嘱託証人尋問の一般的違法性の主張について 第一>
 所論1の点については、わが刑訴法上民訴法二六四条に対応する規定が存在せ
ず、同条の準用を認めた規定も存在しないけれども、それだけの事情から外国に対
する証人尋問等の嘱託権限が否定されているとは断定し難く、外国裁判所ノ嘱託ニ
因ル共助法一条一項、一条ノ二・一項三号及び六号によれば、刑事事件についても
外国裁判所からの証拠調の嘱託について、いわゆる相互保証主義のもとに施行する
ことが規定されているのであつて、これはわが国の裁判所から外国の裁判所に対す
る刑事事件の証拠調の嘱託があり得ることを予定しているものというべきである。
民訴法二六四条一項は、わが国の裁判所が外国裁判所に対し証拠調の嘱託権限を有
することを当然の前提として、その行使の方法について規定したものと解すること
ができる。
 そして、昨今の国際的取引も含む国際交流の進展した社会情勢下においては、刑
事事件の捜査ないし審理において、国内に存在する証拠のみでは足らず、国外に存
在する証拠についても収集する必要性が高い場合が容易に予想され、かような場合
に刑訴法一条にいう事案の真相を明らかにするためには、相手国の受託が可能でか
つ当該嘱託の実施が刑事手続全体の趣旨に特に反しないと認められる限り、刑訴法
一六三条一項の合理的解釈として、わが国の裁判所ないし裁判官は訴訟指揮権に基
づき外国裁判所に対する証拠調の嘱託をなす権限を有すると解するのが相当であ
る。所論のうち法的安定性を害するとの点は、被疑者・被告人に不利な証拠に限ら
ず、利益な証拠を収集するためにも嘱託をなすことが可能であるから、右嘱託を否
定すべき弊害というには足りない。また、本件当時日米両国間に前記共助法にいう
相互保証の条件充足がなかつたという点も、本件嘱託尋問に先立ち昭和五一年三月
二三日、日本国法務省と米国司法省との間で、いわゆるC5事件に関する両国間の
司法共助を含む「C5社問題に関する法執行についての相互援助のための手続」と
題する書面が取り交わされていたことからすれば、少なくとも本件嘱託尋問に関す
るかぎり右条件は充足されていたというべきである。所論の指摘するその他の諸点
も以上の解釈を妨げるほどの理由とするには足りないというべきであつて、原裁判
所が昭和五三年九月二一日付証拠決定(以下原証拠決定という)の第一章において
示した右と同趣旨の判断は、相当としてこれを是認することができる。
 2 本件嘱託尋問手続施行上の具体的違法性の主張について
 (一) 嘱託権限の欠如の主張について
 所論2の(一)の点については、本件証人尋問の嘱託方を刑訴法二二六条により
東京地方検察庁検察官から請求された東京地方裁判所C24裁判官は、前説示の理
由によりその訴訟指揮権(右裁判官は公判審理前の証拠保全の手続のみを主宰する
者であるが、右手続の主宰者としてその手続の目的遂行のためにする広義の訴訟指
揮権を有する。)に基づき、刑訴法一六三条一項に準拠し、米国の裁判所に対し本
件B1らの証人尋問の嘱託をなす権限を有していたと認められ、また、受託国にお
ける証人尋問は受託国の国内法により行われるべきことは、司法共助の国際慣行で
あると認められるから、この点は前記1の所論と同様にその理由がないことが明ら
かである。
 (二) 米国法上の要件の欠如の主張について
 次に2の(二)の点については、嘱託証人尋問の受託国である米国側において、
同国国内法上の受託実施の要件として判断すべき問題であつて、嘱託国側としては
受託国裁判所の判断に明白かつ重大な誤りがない限りこれを受け入れるべきである
うえ、前記のとおり嘱託を行なつた東京地裁C24裁判官の立場は、広義における
訴訟指揮権の発動を求められた立場にあり、その嘱託行為は司法権発動の一環をな
していると解し得る以上、同裁判官の地位を合衆国法典二八編一七八二条の「外国
の司法機関」に該当すると判断することは十分可能であつて、受託国裁判所の右判
断に明白かつ重大な誤りがあるとは認められないから、この点の所論も失当である
(なおこの点につき、証人らからの同一趣旨の異議申立に対し、カリフオルニア州
C25地区連邦地方裁判所がこれを棄却し、右決定は連邦高等裁判所により維持さ
れている。)。
 (三) 尋問実施方法の違法の主張について
 所論2の(三)の点については、米国側における証人尋問の方式・手続について
は前説示と同様の理由により、受託国である米国側が米国法に則つて適式に行なつ
た手続は、明白かつ重大な誤りが認められない限り適法に行われたものとして取り
扱うのが相当であり、また実質的に見た場合にも、受託裁判所はコミツシヨナー
(執行官)としてD2元判事一名を任命して証人尋問手続を主宰させ、他の検察官
二名はコー・コミツシヨナー(副執行官)として証人に対して発問することを担当
させていてその役割は厳格に守られていたこと、実際の証人尋問の進行において
も、尋問に立ち会つた証人の弁護人から適宜異議申立や証人に対する助言がなされ
ていて、所論のように一方的・糾問的な尋問が行なわれたというにはあたらないこ
と、証人尋問に被疑者側の弁護人を立ち会わせなかつたという点も、嘱託に際し検
察官の希望によりそのような要請をつけて嘱託を行つた結果であるところ、当時に
おけるいわゆるC5事件の容疑の内容、政府高官を含む被疑者ないし関係者と見ら
れる者の地位等からすると、捜査内容の漏洩防止の必要性は極めて高かつたことが
認められ、米国側の手続に明白かつ重大な誤りは認められず、右嘱託を行つた裁判
官の措置も合理的裁量の範囲内であつて相当であつたものというべきである(刑訴
法二二八条二項参照。)。
 また、被疑者側弁護人を立ち会わせないで行つた証人尋問の調書は、それ自体当
然に証拠能力を有するものではなく、後記のとおり刑訴法三二一条一項三号の要件
を具備していると認められる場合にはじめて証拠能力を持つことになるのであるか
ら、所論のように右立会の欠如が、わが憲法三七条二項の保障する公判審理におけ
る被告人の証人審問権ないし喚問権を侵害するものとは認められない。
 この点の所論も理由がない。
 <要旨第二>(四) 証言に対する免責付与について
 所論2の(四)の点については、本件不起訴宣明がなされた経緯及びその後の経
過は、関係証拠ないし資料によれば次のとおりであつたと認められる。
 (1) 不起訴宣明がなされた経緯等
 (イ) 本件嘱託証人尋問請求に際し、日本の検察官は、事前のB1、B2らに
対する事情聴取のための意向打診の結果から、同人らが嘱託による証人尋問の際も
自己負罪拒否特権により供述を拒否するであろうことを予想し、その場合に対処す
るため、昭和五一年五月二〇日付検事総長名義の「右各証人の証言内容及びこれに
基づき将来入手する資料中に、仮に日本国の法規に抵触するものがあるとしても、
証言した事項については右三名を日本国刑訴法二四八条により起訴を猶予するよ
う、東京地方検察庁検事正に指示している。この意思決定は当職の後継者を拘束す
るものである。」旨の宣明書及びこれを受けた同月二二日付東京地方検察庁検事正
名義の「右各証人の……あるとしても」までは前同文に続き、「証言した事項につ
いては右証人三名を日本国刑訴法二四八条によつて起訴を猶予する。この意思決定
は当職の後継者を拘束するものである。」旨の宣明書が各発せられていたので、こ
の事情が本件証人尋問請求に際し検察官側から東京地方裁判所の担当裁判官に伝え
られた。
 (ロ) そこで、右請求を受けたC24裁判官は、これを米国側司法機関に嘱託
するに際し、検察官の要請を容れ、「日本国の検察当局は各証人の証言内容及びこ
れに基づき将来入手する資料中に仮に日本国の法規に抵触するものがあるとして
も、日本国刑訴法二四八条によつて起訴を猶予する意思がある旨を証人に告げたう
え尋問されたい」旨を嘱託書に付記してこれを米国側に伝達した。
 (ハ) 右嘱託を受けた米国の管轄裁判所(カリフオルニア州C25地区連邦地
方裁判所)により、本件証人尋問を主宰する執行官(コミツシヨナー)に任命され
たD2は、同年六月二五日、B1を同裁判所に出頭させて証言を命じたが、同人は
日本国において刑事訴追を受けるおそれがあることを理由に証言を拒否し、そのこ
ろ、B2外一名も同様に証言を拒否する意向を右執行官に表明した。そこで、前記
各宣明書(謄本)がそのころ各証人に交付されたが、右宣明によつて日本国の法規
上適法に免責が得られたか否かにつき、証人らの弁護人から異議申立等があつたた
め、証人尋問手続は一時停滞した。
 (ニ) そこで同年七月六日、同裁判所の所長代行D3判事は、右証言拒否に関
し、証人らの証言録取(すなわち証人らに対する尋問)をただちに開始すべきこ
と、すべての手続を非公開で行うべきこと、本件証人が右証言において明らかにし
たあらゆる情報を理由として、また、右証言の結果入手されるあらゆる情報を理由
として、日本国領土内において起訴されることがない旨を明確にした、日本国最高
裁判所のオーダーまたはルールを日本国政府が当裁判所に提出するまで、本件嘱託
書に基づく証言調書を伝達してはならないことを命令した。
 (ホ) 右命令によつて米国でのB1に対する尋問手続は進行し始めたが、証言
調書の伝達に右のような条件が付されたので、日本側ではこれに対応する措置とし
て、検事総長の名義で、先の宣明書の内容を再確認したうえ、「本件につき、捜査
及び最終処理をする唯一の機関である東京地方検察庁の検事正が正式に右のような
措置(注 前記起訴猶予の確約)をとり、これが右各証人に伝達され、これにより
当該証人尋問が実施された以上、かりそめにも、将来右の措置に反する公訴が提起
されることは全くあり得ないものであり、当職は、ここに改めて前記玉名の証人に
対し、その証言及びその証言の結果として入手されるあらゆる情報を理由として、
日本国領土内で公訴を提起しないことを確約する。」旨記載した同年七月二一日付
宣明書を発するとともに、これを最高裁判所に提出し、最高裁判所はこれに基づき
同月二四日、「検事総長の右確約が将来にわたりわが国のいかなる検察官によつて
も遵守され、本件各証人らがその証言及びその結果として入手されるあらゆる情報
を理由として公訴を提起されることはないことを宣明する。」との宣明書を発し、
右各宣明書の内容は同日中に外交ルートを経て前記米国の裁判所に伝達された。こ
れに対し同所長であるD4判事は右宣明書によつて前記D3決定に定める条件が充
足されたものと認め、同日、証言の録取及びB1について同月六日ないし九日に行
われていた四日分の証言調書の交付を命じ、その後もB1の証人尋問は、日本国に
おける刑事免責が適法に与えられたとの前提のもとに手続が進められ、その証言を
録取した調書が作成され、日本側に交付された。
 (ヘ) 一方、B2は、同年七月九日D2執行官から証言を命じられた際、日本
国及び米国内の双方で刑事訴追を受けるおそれがあることを理由に証言を拒否した
が、その後前記D4判事の命令が確定した結果、日本国での刑事訴追のおそれを理
由とする証言拒否は維持できなくなり、次いで同年九月一三日米国における刑事免
責付与及び証言命令が発せられたため、証言拒否の根拠をすべて失うに至り、爾後
同人に対する証人尋問も、日本国及び米国における刑事免責が適法に与えられたと
の前提のもとに進められ、その証言を録取した調書が作成され、日本側に交付され
た。
 (ト) なお、米国法上の刑事免責の根拠法規である合衆国法典一八編六〇〇二
条によれば、「証人が連邦の裁判所の手続において、自己負罪(拒否)の特権に基
づき証言しまたはその他の情報を提出することを拒否した場合において、当該手続
を統轄する者が本節に基づく命令を告知したときは、当該証人は自己負罪(拒否)
の特権に基づき当該命令に従うことを拒否することはできない。ただし、当該命令
に基づき強制された証言あるいはその他の情報(右証言またはその他の情報から直
接間接を問わず入手したいかなる情報をも含む。)は、偽証・虚偽供述その他当該
命令に対する不服従により訴追する場合を除き、いかなる刑事事件においても、こ
れを当該証人に対し不利に用いてはならない。」とされている。
 (2) 不起訴宣明の性質及び効力について
 以上の経過ないし事実を率直に観察して考察すると、米国側裁判所当局者は、日
本の検察当局の当初の不起訴宣明(それは全体の文章的表現、特に「証言した事項
に関しては」までを見ると、検察官の意図としては米国の以前の法制度上の訴追免
責を与えようとした趣旨であつたと見られなくもないが、「刑訴法二四八条により
起訴を猶予する」という文言によるかぎり、文字どおり同条による起訴猶予の確約
にすぎないと見られる。)では本件証人らの刑事免責には不十分であるとして、前
記合衆国法典一八編六〇〇二条に基づく「当該証言及びこれに由来する証拠の当該
証人に対する刑事手続上の不利益な使用の禁止」(いわゆるUDUイミユニテイ、
USE AND DERIVATIVE USE IMMUNITY)の確約を求
めたものであり、これに対し日本の検察当局は、後の検事総長の宣明書によつてま
さに右確約を行なったものであつて、最高裁判所の宣明書は、検事総長の右確約を
事実として確認したものと解するのが相当である。
 右検事総長の第二次宣明書は、最高裁判所あての形式をとつているが、このよう
な形式は、最高裁のオーダーまたはルールを要求したD3決定に答えるものとし
て、最高裁の宣明書を得るための手段にすぎないと考えられ、公訴権の行使に関す
る宣明書の性質及びその宣明内容に鑑み、検事総長の第二次宣明書は、その内容を
相手国である米国に対し宣言ないし声明する作用においては、第一次の宣明書と変
りはないというべきである。そして、検事総長の第二次宣明は、一応は第一次宣明
の内容を再確認する文言の記載はあるが、「当職はここに改めて」以下の文言は、
第一次宣明を維持しつつ、それに加えて全く新たな確約を含める内容のものであつ
て、D3決定の要求した内容を充足する確約を、文字どおり最高裁判所のオーダー
またはルールという形式においてではなかつたものの、公訴権行使の最高の国家機
関である検事総長として与えたものであり、まさにD3決定が日本国に要求したこ
との実質をそのとおり国家として応諾したものにほかならないと認めるべきである
(なお、検事総長と具体的事件との関係については、検察庁法一二条による事務引
取権の行使としてなされたものと理解することができる。また、証人に対し起訴猶
予の確約をするのであれば、東京地方検察庁の検事正がこれに当るのが相当であろ
うが、国際刑事司法共助の場において、嘱託国として受託国に対し証拠の使用免責
を確約する場合には、むしろ日本全国の検察官を統括する検事総長がこれをする方
が適当であると考えられる。最高裁判所の宣明書も「検事総長の右確約が(中略)
わが国のいかなる検察官によつても遵守され」るとしている。)。右検事総長の第
二次宣明を単に第一次宣明を再確認したのにとどまると見ることは相当でなく、ま
た、前記日本の検察当局の一連の宣明をもつて、B1ら証人に対する公訴権を放棄
したものと解したり、もしくは単なる不起訴の確約であつて法律上は起訴を妨げる
等の効力もないと解したりすることは、事態を的確に把握したものとはいい難い。
 ところで、「その証言及びその証言の結果として入手されるあらゆる情報を理由
として、日本国領土内で公訴を提起しないことを確約する」という検事総長の第二
次の宣明は、前記米国法上の強制証言及びそれに由来する証拠の不利益使用禁止以
上に、いわゆる訴追免責まで与えたのではないかと見られる余地もあるが、右宣明
は、証拠の使用禁止による免責制度をとる米国側の裁判所当局者であるファーガソ
ン判事の決定によつて要求された内容のとおりの文言で答えたものであり、「その
証言及びこれに由来する証拠によつては公訴を提起しない」ことは、刑事手続にお
いて当該証拠を不利益に使用しないことの最も端的で効果的な方法であるといえる
から、右確約は訴追免責ではなく、強制証言及びこれに由来する証拠に基づく不起
訴の宣明という形式で、前記証拠の不利益使用禁止による免責を与えたものと解す
べきである(そうすると、訴追免責とは異なり、強制証言及びこれに由来する証拠
以外の他の情報源から別個に入手した証拠に基づき起訴することは妨げないという
ことになる。しかし、それは理論上可能ではあるとしても、本件嘱託尋問の場合に
は他に有力な情報源をほとんど期待できない状況であつたと見られるうえ、米国に
おける前記イミユニテイ制度の運用の実情として、強制証言後にこれと独立の情報
源から入手した証拠に基づいてその証人を起訴した場合には、検察官はその証拠が
独立の情報源から得られたもので、免責証言が直接的にも間接的にも後の訴追に使
用されていないことを積極的に立証する重い立証責任を課されていることが窺われ
るから、実際上はそのような新証拠の入手及びそれが強制証言に由来しないことの
立証はほとんど不可能と見られることからして、右証拠の使用禁止による免責は事
実上訴追免責と変らぬ効果があると認められる。所論(四)の「B」の尋問に立ち
会つたC23検事の発言も、その趣旨のものであつたと理解することが可能であ
る。)。
 右のように解するならば、米国側裁判所が右検事総長の第二次宣明及びこれを確
認する最高裁判所の宣明を、D3決定の要求した条件を充足するものとして受け入
れ、B1らに対する日本側の免責が与えられたとして爾後の手続を進行させたこと
を、極めて自然に理解することができる(B1については、検事総長の第二次宣明
前に証言をしているが、同人は米国法上の証言拒否権は行使していなかつたのであ
るから、その証言の内容が日本側に伝わらないよう措置したうえ、その証言を命じ
たD3決定が同人の証言拒否権を侵害したものとはいえない。)。
 また、右検事総長の第二次宣明が、日本の法制度上B1らの供述拒否権を消滅さ
せるに足りるものであつたかについて検討すると、わが国の憲法三八条一項は米国
憲法修正五条と同じく自己の刑事責任に関する不利益な供述の拒否権を保障するも
のと解されているところ、右第二次の宣明は、一国の公訴権行使を独占する機関の
最高責任者が、司法権の頂点に立つ最高裁判所の確認まで得て前記内容の確約を行
なつたもので、わが国としては司法共助に関する国際慣習・国際礼譲ないし国際信
義上、将来にわたりこれを遵守すべき国際的義務を負つたものと解すべきであるか
ら、B1らが右確約に反し、同人らの証言及びこれに由来する証拠に基づき処罰を
求められるようなことがあれば、それは国家の国際的義務違反行為として国内法上
もその適法性を認め難くなり、裁判所を始め訴訟関係者においても、これを遵守す
べき法的拘束力を生じたものというに妨げない(憲法九八条二項、九九条参照)。
 そうであれば、B1らがわが国において、右確約に応じてなした証言及びこれに
由来する証拠に基づき処罰されることは全くあり得ないことが法的にも保障された
以上、同人らは日本において自身の証言に基づき直接または間接に訴追ないし処罰
されるおそれがあることを理由として、前記憲法上の供述拒否権を行使する利益が
なくなつたと認めることができる。
 また、一歩を譲つて、右確約は対外的に国際道義上の義務を負つたのにとどま
り、国内法上は直ちに法的拘束力を生ずる根拠は十分ではないと解すべきものとし
ても、前記のように最高裁判所の確認の宣明と共に対外的に宣明され、国際信義上
覆えすことはできないものとして公的に確約された経緯からして、わが国の司法関
係者、とりわけ検察当局は、右確約を最大限尊重すべき立場に立たされるのであつ
て、右確約に反して、B1らの証言及びこれに由来する証拠を同人らの不利益に使
用することは、事実上全くあり得ないことが期待できる。したがつて、わが国の実
定法上は前記証拠の不利益使用禁止の保障が認め難いとしても、実際問題としては
右不利益使用の危険は極めて少ないということができ、かような事実上の保障だけ
ではB1らの供述拒否権が侵害されたと見るべき余地は残るとしても、もはや形骸
的なものであるその供述拒否権の侵害は、その程度が極めて軽微というべきである
から、当該証人以外の者にこれを使用する場合、本件証言調書の証拠能力に影響を
及ぼすほどの違法にあたるということはできない。
 そうだとすると、検事総長の前記確約により、B1らがその証言に基づき日本に
おいて処罰されるおそれはないことが、法律上あるいは事実上高度に保障されたも
のと認められる結果、B1らの自己負罪を理由とする供述拒否権は消滅したか、あ
るいは消滅しないまでもそれに近い状態にまで存在意義を縮少していて、証言手続
の適法性及び証言調書の証拠能力に影響するほどの、供述拒否権の違法な侵害はな
かつたということができる。
 (3) 不起訴宣明による証言の取得と国内法との関係
 そこで、次に、わが国の国内法上右のような免責を与えて供述を取得することが
適法であるか否かが問題となるが、「供述拒否権の侵害」の問題としては、その主
体はB1らであつて、被告人はB1らが右拒否権を行使する場合に反射的利益を受
けるにすぎないから、被告人はB1らに対する供述拒否特権の侵害の有無について
は、これを理由として本件証人尋問調書の証拠能力を争う適格は、原則として有し
ないと見られる。しかしながら、わが法制度上容認し難いような重大な人権の侵害
を伴い、あるいは虚偽の供述を誘発する危険が高いなど、著しく不公正な方法によ
つて右特権を失わせた場合は、その特権侵害によつて得られた供述を証拠に使用さ
れる関係にある被告人は、違法捜査の抑制の観点または虚偽の証拠により処罰を受
けるおそれがあるとの観点等から、その証拠の許容すべきでないことを主張するこ
とができると解すべきである。
 本件において弁護人側が、本件証人尋問調書を違法収集証拠であると主張してい
るのは、右の趣旨からであると解されるので、前記観点から検討を進めると、前記
のような免責の付与による供述の強制は、事件関係者の一部の者に取引による自白
ないしは約束による自白をさせて不当に利益を与えるもので、わが国の司法制度の
基本理念と相容れないという疑いがないとはいえない。しかしながら、個々の事件
の具体的事情の下で特に合理的必要性があり、右のようにして証言を強制して、特
段に不公正感ないし虚偽供述誘発のおそれを生ぜしめない情況的保障のある例外的
場合に、かような措置も訴追裁量権の高度の刑事政策的判断に基づく行使の範囲内
であつて、違法ではいと解すべきである。本件の場合にこれを見ると、本件嘱託尋
問に関する諸事情として
 「イ」 B1及びB2は、当時米国に居住する米国人であつて、わが国の捜査
権・裁判権はこれに直接行使できず、事案の性質上身柄引渡しの請求もできなかつ
たことから、同人らに対する被疑事実について捜査を進めてもその目的は達し難い
状況にあつたことは明らかであつて、そういう状況では、既にC26委員会での証
言調書等から窺われる事件の概要と同人らの立場・役割等(同人らがC14または
C8側の被疑者からトライスターの売込に関し政府高官への贈賄資金等に必要であ
るとして金員を要求され、これに同意して当該金員を右両社側の被疑者に交付した
という関係)にも鑑み、同人らに免責を与えてC5事件の内容に関する核心的な供
述を得、これを右事件全体の解明に役立てることは、わが刑訴法の基本理念である
実体的真実発見主義に合致するとともに、右事件の内容が政府高官の外国企業から
の収賄容疑を含むわが国の威信にもかかわる重大なもので、しかも当時右事件の被
疑事実中には公訴時効の切迫しているものもあつた関係上、免責を与えてでも右証
言を得る必要性は極めて高度であつたと認められること、
 「ロ」 右B1らは前記のようにもともと日本において起訴され裁判に付される
可能性が乏しかつたうえに、同人らが法制度として証言の使用免責が認められ、こ
の制度に社会的に慣熟していると見られる米国の市民であることからすると、同人
らに前記のような免責を与えても、わが国の法制度ないし法的感情上、許容し難い
ほどの不公正感は生ぜしめないと思われること、
 「ハ」 米国側裁判所で行なわれた尋問手続は、前述のとおり手続を主宰する執
行官のもとに宣誓し偽証の制裁を告知されたうえ、証人らの弁護人の立会もあり、
訴訟に類似した尋問方式で進められていて、虚偽の供述を誘発しないような手続の
公正さは客観的に保障されていたと認められること、
 「ニ」 前記免責はB1らの証言内容のいかんとは無関係に与えられたものであ
り、同人らは尋問者の意向に沿つた供述を求められたのではなく、あくまでも自己
の記憶に基づく事実の供述を求められ、その限度で尋問に答えたものであつて、利
益誘導による供述ではないこと
 などの諸点を認めることができ、このような諸事情を総合考察すると、右嘱託尋
問手続において、B1らに免責を与えて証言を強制した手続に、わが法制度から見
て許容し難いほどの「取引」に類似した不公正感ないし不公平感や、虚偽の供述を
誘発する危険性があつたとは認められない。そうすると、検察官による本件免責の
付与は、高度の刑事政策的判断に基づく訴追裁量権の行使の範囲内であつて違法で
はなく、その結果作成された証言調書に、わが法制度上証拠として許容し難いほど
の違法性があるとは認められないというべきである。
 以上のとおりであるから、原裁判所が本件不起訴宣明を公訴権の放棄であると解
したのは相当でないが、本件免責付与に関しては訴訟手続上の違法はなかつたとし
て、本件証言調書の証拠としての許容性を認めたその結論の部分は相当として是認
することができる。
 そうすると、右免責付与の点の違法を主張する所論は理由がない。
 3 証言調書の使用は嘱託の目的外であるとの主張について
 所論は、司法共助において受託国が嘱託国の請求を応諾するにあたり、共助によ
つて得られた証拠を共助の請求にかかる被疑者及び被疑事実の訴追・処罰のために
のみ使用すべき旨の明示の条件を付した場合、嘱託国の公訴権の行使は右条件によ
つて制限されるという、いわゆる「特定主義」に基づく主張であると解されるが、
本件嘱託手続においては、日米両国間に証拠を使用する被疑者及び被疑事実を限定
するという合意がなされたこと、または受託国である米国側から嘱託の結果得られ
た証拠を特定の事件以外には使用を認めないとの条件が付されていたということ
は、関係証拠上これを認めることができない。前記「C5社問題に関する法執行に
ついての相互援助の手続」は、「C5社及びその子会社または関連会社の日本にお
ける販売活動に関連する非合法な疑いのある行為」に関しての取り決めであるが、
その3項(提供される資料の使用目的)及び5項(同資料の裁判での利用関係)に
よつても、日本において裁判または審理の対象とすべき事件の範囲はなんら限定さ
れていない。また、米国側から付された条件としては、前記D3決定によるB1及
びB2らに対する本件証言調書等の不利益使用禁止の点のみであると認められる
(なお、B1、B2に対する各嘱託尋問事項中には、被告人に関する事項も含まれ
ていたことに留意すべきである。)。
 よつて、右特定主義を理由とする所論は、その前提を欠くもので失当である。
 4 刑訴法三二一条一項三号書面該当性を争う主張について
 所論4のうち、(イ)の証言調書の認証形式の不備を主張する点は、受託国の裁
判所が副執行官一名の署名で足りるとした以上、嘱託国側でこれに異を唱える必要
はなく、右副執行官の認証(証言調書と一体となつていると認められる)及び各証
人の署名があることにより、証言手続の公正及び証言内容の正確性を認めるに十分
であるから、右主張は理由がない。
 (ロ)の刑訴法三二一条一項三号所定の要件の判断を誤つたという点について
は、まず公判期日等における供述不能の点に関し、所論はB1及びB2は、検察官
において努力をすれば公判期日に出頭の可能性があつたのに、検察官の怠慢により
その手段を尽さなかつたので、右両名の不出頭は検察官が誘発したのと同様である
と主張するけれども、前記のとおりB1及びB2が嘱託尋問手続において自己負罪
拒否特権を主張して供述を拒否し、刑事上の免責付与によりょうやく証言するに至
つた経過や、右両名が本件の原審公判開始後、日本の検察官からの問い合せに対
し、日本の裁判所に証人として出頭する意思はない旨回答した事実(右両名の検察
官への各手紙のうち所論の指摘する拒絶の理由の部分は、社交辞令的文言であるに
すぎず、出頭を拒否する意思は強固であつたと認められる。)等に鑑みれば、右両
名は原審公判当時証人として来日する意思がなかつたことは明らかであつて、通常
の可能な手段を尽しても公判期日に出頭させることができない場合にあたつていた
というべきである。
 次に、不可欠性の点について考察すると、B1及びB2の各供述は、本件公訴事
実中P3C関係及び二〇万ドル授受の関係では、被告人に対するP3C売込の援助
の依頼または二〇万ドルの授受について直接ないし間接の相手方当事者としての供
述であつて、事柄の性質上最も有力な証拠方法というべきであるから右訴因の立証
のためには不可欠であり、C8のA1に対するL―一〇一一型機購入慫慂の関係に
おいても、右両名の供述はその動機・原因関係について、B1が被告人にL―一〇
一一型機のC8への売込援助の依頼をした結果、被告人がA1に対し前記慫慂行為
に及んだという関係にあるとされていて、右訴因の立証上重要な間接事実を含むと
認められるから、これも右訴因の関係で不可欠というに妨げない。
 更に、特信性の点については、所論は、原証拠決定が特信性を担保すべき事情と
して挙示している事実、すなわち、
 「A」 本件証人尋問は公平な第三者的立場において副執行官の尋問を規制でき
る法曹有資格者である執行官の面前において、米国法による証人尋問手続に準拠し
て行われ、その尋問及び供述を速記者が逐一録取したものであること、
 「B」 右執行官は本件証人らに対し宣誓及び偽証罪の制裁の告知を適宜かつ懇
切に行つており、証人に対し真実を述べる方向への心理的圧力となつていること、
 「C」 両証人の弁護人が終始尋問に立ち合い、異議申立及び証人への助言等の
活動を行なつていて、これが尋問者の片寄つた尋問を抑制し、客観的立場に立つた
証言がなされる方向に役立ち、かつ偽証罪の危険から証人を護り真実を供述させる
方向にも役立つていること、
 「D」 客観的資料を提示しての尋問が、記憶の喚起・是正等に寄与することか
ら正確な供述の確保に資するとともに、虚偽の供述の防止にも役立つていること、
 「E」 尋問及び応答の状況から窺える証人らの供述態度が誠実であること、
 「F」 B1は米国法上の証言拒否特権を行使せずに証言し、その証言が米国内
の刑事手続等において使用される可能性があることを注意されながら、あえて米国
法上も違法となるような、自己に不利益な事実を供述していることからも、供述に
信用性があると考えられること、
 「G」 B1もB2も、被告人・C3・C27ら日本側関係者を特に嫌忌し、偽
証罪の危険を冒してまで、故意にこれらの者を陥れるため虚偽の供述をなすべき立
場にないこと、及び、前記刑事免責との関係において、B1らが自己保身のため虚
偽の事実を述べる必要性は認められず、また同人らが執行官・副執行官及び日本側
立会検察官らの意を汲み、これに迎合して虚偽の供述を行なつたような事情も認め
られないこと、
 以上の諸点につき逐一反論を加えている。
 しかしながら、原審で取調べられたB1及びB2の各証人尋問調書の形式・内容
等を子細に検討すれば、前記「A」ないし「G」の諸事情があるとし、これらの諸
事情から右両名の供述には特信性が認められるとした原証拠決定の判断は、おおむ
ね相当であつてこれを是認することができる。
 所論は、本件証人尋問手続及び証言内容等の全体的・大局的観察を度外視し、局
部的事実をとらえて手続の不公平さを論じたり、あるいは原証拠決定は、検面調書
との比較において、供述のなされた外部的・付随的情況を主体とし、これに供述内
容中の応答状況や不利益供述がなされていること等を加味したうえ、類型的に供述
の信用性が担保されている場合にあたると判断しているのに、あたかも絶対的信用
性があると判断したように前提を曲解して立論していると思われる等、到底これを
採用することができない。
 また、所論は、任意性の点について、原証拠決定がB1らは本件不起訴宣明によ
りその供述事項に関し確定的に起訴されない地位にあり、なんら検察官の反感を顧
慮することなく自由に供述し得たとした判断部分を、右不起訴宣明が免責付与の効
力がないことを理由に反駁しているが、その前提が首肯できないことは前説示のと
おりであるから右所論も理由がなく、前記免責付与の効果等からして、B1らの供
述には任意性が認められるとした原証拠決定の判断は、相当であつてこれを是認す
ることができる。
 以上のとおりであるから、本件B1及びB2の各証言調書か刑訴法三二一条一項
三号所定の要件を具備するとした原裁判所の証拠決定は相当であつて、なんら所論
のような判断の誤りはないから、この点の論旨は理由がない。
 5 証言調書の採用後の取調方法の違沫の主張について
 原審第二四回準備手続期日の調書によると、被告人の弁護人が右証言調書の翻訳
の正確性に関し「仮に、検察官側の訳文と弁護人側の訳文とにくいちがいがあつた
場合の、裁判所の見解をうかがいたい。」と述べたのに対し、原審裁判長が所論引
用のような見解を表明したことが認められる。しかしながらその際検察官側が作成
した右各証言調書の日本語の訳文も、英文の調書と同時に取調べられていて、右裁
判長の見解は所論引用の部分に続いて、「その訳文が正確でないという指摘があれ
ば、その点について原文を検討し、それによつて心証をとるということになる。」
となつていることも考慮すると、本件証言調書は英文の方か主体であり、日本語の
訳文は補助的な役割を果し、誤訳の問題がある場合は原文によつて正確な訳を検討
し心証をとる旨を表明したのにすぎず、日本語の訳文は証拠とならない旨を表明し
たものではないと認められる。そうすると、所論は誤つた前提に立つた主張であつ
て、これまた採用できない。
 二 証拠能力のない証拠物等を証拠に採用したとの主張
 (弁護人の主張)
 所論は、原判決が有罪認定の証拠として掲げるC3領収証カラー写真四七枚(甲
(一)203)、「摘要」領収証(メモ)写真(甲(一)204)、B2作成のC
10と題するメモ(写)(甲(一)207)、小切手(NO.三三〇七七)(写)
一枚(符89)、C3とロッキード社間のマーケッテイング・コンサルタント契約
書(写)一通(三枚)(符141)、同修正一号契約書(写)一通(一枚)(符1
42)、同修正四号契約書(写)一通(一枚)(符143)、同修正五号契約書
(写)一通(一枚)(符144)の証拠物のうち、
 1 クラッター作成のC10と題するメモ(C11・コピーによる写)は、前記
B2に対する証人尋問において、その原本が証人尋問を通じ証言内容を明らかに
し、証人の記憶を喚起するために用いられ、その謄本(C11・コピー)が証人尋
問調書に添付されて証言の内容となり、これと不可分の一体をなしていると解され
るから、米国側コミッシヨナーはこれをB2の証言調書と独立の証拠としてわが国
に伝達したものではなく、それ自体では独立して証拠能力がないのに、原判決がこ
れを独立の証拠として取り扱い、有罪の証拠に思いたのは違法であり、内容的にも
刑訴法三二三条三号書面としての要件を具備しないのに、同号該当書面として採用
した点でも違法があり、
 2 その他の証拠については各原本の真正が争われていて、原本によらなければ
その真正か否かの判断ができない場合であるから、各写しによる証拠調請求はこれ
を許容すべきではないのに安易にこれを許容し、
 3 C3領収証カラ―写真、摘要カラー写真、マーケツテイング・コンサルタン
ト契約書(写)、同修正一号・四号・五号各契約書(写)については、原裁判所は
検察官が供述証拠として取調請求したのに対し、当該文書の存在・形状等に関する
非供述証拠として採用決定し、当事者の意思を無視している点で二重に違法を犯し
たものであり、
 4 C3領収証について真正か否かは判決理由中で判断するといいながら原判決
はその判断も遺脱しており、
 5 前記小切手(写)は本件と直接関係がない証拠であるのに、これを証拠に挙
示した点で違法であつて、これらの違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである
 と主張する。
 (当裁判所の判断)
 証拠能力のない証拠物等を証拠に採用した違法があるという右主張について検討
すると、
 1 まず、B2作成のC10と題するメモ写(C11・コピーによる)は、クラ
ッターの前記証言調書の第四巻に、副証27Dとして添付された「摘要」と題する
一連の書証(写)の中に右C10の分も含まれ、右証言と一体をなすものとして右
証言調書と共に証拠に採用されたが、その後検察官から独立の証拠として右C10
のC11・コピーによる写の取調か請求され、原裁判所は右証言と切り離しても独
立の証拠価値があるとして、昭和五六年一月二二日付証拠決定でこれを採用し取調
べた経過が本件訴訟記録上明らかであり、またその記載事項はB2が在日中自己の
職務に関連し、C5社のL―一〇一一型機の日本への売込み活動に関する同社の資
金の出入りを克明に記録していたものであつて、B2の供述によるその記入状況等
からすれば、商業帳簿である金銭出納帳とはいえないとしても、これに類する書面
で特に信用すべき情況の下に作成された書面の性質を持つと見ることができるか
ら、原裁判所がこれを刑訴法三二三条三号の書面(証拠物たる書類)に該当すると
し、記載内容の重要性に鑑み、独立の証拠価値を有するとして証拠に採用した措置
は相当としてこれを是認することができる。
 2 更に、C3領収証カラー写真、「摘要」領収証カラー写真、C5社とC3間
のマーケツテイング・コンサルタント契約書(写)、同修正一号・四号・五号各契
約書(写)等を証拠に採用した点について見ると、これらの原本はいずれも米国内
に存在していてこれをわが国の本件訴訟手続において提出することは不可能もしく
は著しく困難であつたと認められる(C5社もしくはB2が、その所持する前記原
本を、日本側の要請に応じて任意提出する可能性は極めて小さかつたと見られるこ
とは、原裁判所の前記昭和五六年一月二二日付証拠決定中に説示されているとおり
である。)から、原本の存在とその写の正確性が確かめられる場合は、その写に写
としての証拠価値が認められるかぎり、これを証拠として採用することになんら妨
げはないと解すべきであつて、これと同趣旨に出た右証拠決定中の判断は相当とし
て是認することができる。
 3 また、供述証拠として請求されたものを非供述証拠、すなわち原本の存在・
その形状・保管状況等を立証する証拠として採用したという点は、当該請求及び採
用に至る経過を見れば、検察官としては供述証拠として採用されない場合には、右
のような非供述証拠として採用されることを期待し、予備的に請求する意思があつ
たものと認めることができるから、所論のように当事者主義に反する措置であつた
ということはできない。また、各写の形状・内容等を検討しても、各原本の存在す
ること、その形状・保管状況等の立証について独立の証拠価値がないとはいえない
から、この点から見てもこれらを写として証拠に許容した原裁判所の措置は適法で
ある。
 4 C3領収証が真正であるか否かの判断は、C3自身に対する判決の場合は格
別として、被告人に対する本件公訴事実の判断においては直接の関連性がなく、こ
れを判断すべき必然性がないから、この点を原判決の理由不備のようにいう所論も
失当である。
 5 また小切手写の番号ちがいの点は、なるほど本件公訴事案中のa空港におけ
る二〇万ドルの授受と関係がある小切手の番号はNo○△□□□であつて、原判決
が証拠として記載した番号No○○□□□というのは本件と関係がない小切手の番
号であると認められるが、この点について当該各写を検討すると、一枚の用紙に右
二通の小切手が上下にコピーされていた(符89参照)ため、右二〇万ドルの関係
の小切手写を証拠として挙示するに際し、単にその番号を見誤つて誤記したにすぎ
ないと認められるから、所論のように無関係の証拠を挙示した瑕疵があるというに
はあたらない。
 以上のとおりであつて、証拠調手続における違法を主張する所論はすべて理由が
ないことに帰する。
 第三 控訴趣意第三(被告人がA1に対しL―一〇一一型機の購入を慫慂した関
係の訴因についての主張)について
 一 理由不備ないし理由そごの主張
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、原判決のこの関係部分の事実の摘示は、原判示程度では議院
証言法六条所定の虚偽陳述罪の事実摘示として不十分であり、かつ判示の客観的事
実と判示証言との間にくいちがいがあるので、理由不備ないし理由そごの違法があ
るというのであり、その理由として次のように主張する。
 被告人のこの関係の国会証言は、〔その一〕B1からの依頼に対し機会があつた
ら話してみようと言つたが、そのまま聞き流したという点及び〔その二〕C8の何
人に対しても、C5社のエアバスを買つてやつてくれ等とは一度も言つたことがな
いという点の二つの部分から成り立つているところ、〔その一〕の点では虚偽陳述
の前提である客観的事実として、「被告人が昭和四七年九月中旬ころC28応接室
において、B1から」L―一〇一一型機をC8に購入せしめるよう尽力してもらい
たいとの懇請を受け」たと摘示するのみで、この懇請を受けて被告人がいかに応答
したかの点は摘示されていない。また、〔その二〕の点では虚偽の陳述とされた客
観的事実として、「そのころC8副社長A1に対し、内閣総理大臣C12から聞い
たハワイ会談におけるD5米大統領の意向を伝える形をとるなどして、婉曲に同社
が右航空機を購入するよう慫慂し」たと摘示されているが、これだけの判示で航空
機購入の慫慂をしたとは何人も理解することができないから、右二点とも虚偽の陳
述の事実の摘示としては極めて不十分であつて、理由不備の違法がある。また、婉
曲に購入を慫慂したということには、右航空機を買つてやつてくれ等と直裁に言つ
たことを包含しない趣旨に解されるから、被告人のエアバスを買つてやつてくれ等
と直裁に言つたことはない旨の証言は、婉曲に慫慂したとの事実に対応する虚偽の
陳述というにはあたらないので、この点でも原判決には理由のくいちがいがある。
 (当裁判所の判断)
 そこで、右所論について順次検討すると、原判決のこの関係部分の事実摘示は、
被告人の国会における証言部分も、その前提である客観的事実の部分も、所論のよ
うに分断して個別的に観察すべきではなく、全体としての証言及び全体としての客
観的事実を包括的に観察してその趣旨を理解すべき性質のものであつて、この観点
から考察すると、原判示客観的事実を摘示した部分は、被告人がB1から当該懇請
ないし依頼を受けて応諾した結果、これに対応してA1に対する判示慫慂行為に及
んだという趣旨であることが明らかである。
 また、右慫慂行為の摘示も、日時・場所・方法等で他の事実とまぎれがない程度
に特定されていて、所論のように具体性に欠けるとはいえない。所論は、他国の大
統領であるD5の意向を伝えただけでは購入への働きかけをしたことにはならない
ようにいうが、原判決は「内閣総理大臣C12から聞いた」ハワイ会談におけるD
5米大統領の意向を伝える形をとるなどして、と判示しているのであつて、自国政
府の最高の地位にあつて、所管大臣を通じて航空行政にも影響力を有すると見られ
るC12首相の話としてD5大統領の意向を伝える形で婉曲に購入を誘いすすめ、
A1に対し大きな影響力を及ぼしたという趣旨に理解することができるから、その
点でも航空機購入の慫慂行為の事実摘示として不十分であるとはいえない。
 また、「C8の何人に対しても、C5社のエアバスを買つてやつてくれ等とは一
度も言つたことがない」との国会の証言部分は、「等とは」、「一度も……ない」
との表現から解釈すると、そのようなことは、直接的であると間接的であるとを問
わず一切言つたことがないという趣旨に理解するのが相当であるから、この点の証
言が前記A1に対しC5社の航空機の購入を碗曲に慫慂したとの客観的事実との関
係で、虚偽の陳述にあたることは明らかである。そうすると、原判決には所論のよ
うな理由不備ないし理由のくいちがいはないから、この点の論旨は理由がない。
 二 被告人の国会証言の趣旨に関する事実誤認
 (弁護人の主張)
 所論は、右国会証言の真偽の点は別として、原判決が被告人において、衆議院予
算委員会の証人尋問に際し、「B1からの依頼に対し、機会があつたら話してみよ
うとは言つたが、そのまま聞き流し、C8の何人に対しても、C5社のエアバスを
買つてやつてくれ等とは一度も言つたことがない」旨証言したと認定したこと自体
について、機会があつたら云々の点は被告人の内心の考えにすぎなかつたのにこれ
をB1に応答したように誤認し、また被告人の実際の証言はB1とは二、三回会つ
た際に同人から依頼を受けたが聞き流したというのにすぎないのに、被告人は昭和
四七年九月中旬ころ、C28応接室において、B1からL―一〇一一型機をC8に
購入せしめるよう尽力してもらいたいと依頼され、そのまま聞き流したと証言した
ように認定するなど、被告人の実際の証言の趣旨を誤認した点で、判決に影響を及
ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というのである。
 (当裁判所の判断)
 そこで、被告人の当該証言のなされた衆議院予算委員会の会議録(甲(一)11
2の告発状に添付)によつて検討すると、被告人はC29委員長の質問(第八問・
第九問・第一五問ないし第一七問)に対して、「(B1から)C8ヘエアバスを売
りたいのだけれど、何とかひとつ大株主として話をしてもらえないかと言われまし
たけれども、私もそのまま聞き流したものですから、C8の何人にも私は、その機
種選定、それからC5のエアバスを買つてやつてくれ、やつてくれないかというよ
うことは一切申し上げておりません。」と述べ、C8に対してエアバスの売込を督
促というか、あるいは推薦したとかいうようなことは一度もない旨を明確に証言し
ており、更にC30委員の前記聞き流したという点の補充質問(同委員の第四問)
である「聞き流すといつても、実際は非常にむずかしいことなんですね。何か言わ
なければなりませんね。向うがぜひC8に対する工作を頼むと言つた。それに対し
て一言も口をきかないということは、これはできないと思いますね。それで、そう
とあれば、やはり少なくともわかつたというか、そうでなければだめだというか、
どちらかしかないんで(中略)その点は大事な問題だから、再度お答えをいただき
たい。」との質問に対して、「まあ機会があつたらば話してみよう、ということで
ございますね。」と答えていることが認められ、右「機会があつたらば云々」とい
う点は、B1から前記依頼の話があつた際に、同人に対する応答としてそのように
言つたという趣旨に理解するほかはない。すなわち、被告人は、前記B1からの依
頼の話はあつたが聞き流したという点の、さらに具体的な応答状況の補足説明を求
められて右のような応答をした旨証言していると認められる。そうすると、原判決
が認定・摘示した前記被告人の証言部分は、実際の国会証言の趣旨のとおりであつ
て、なんら事実の誤認はないことになる。
 また、B1から被告人に右依頼があつた時期の認定を争う主張については、被告
人の証言では、B1とは二、三回会つたことがあるというだけで、依頼のあつた時
期まで特定していないことが認められるが、被告人は時期はともかく依頼そのもの
はあつたということを前提としてその際聞き流したと証言している趣旨に解され
る。そうすると、原判決が客観的事実として摘示している「昭和四七年九月中旬こ
ろ、C28応接室において……コーチャンから……懇請を受け」たという事実が証
拠上認定できるならば、それに対応する虚偽陳述の部分として「B1からの依頼に
対し……」と摘示することは、なんら差支えがないものというべきである。この点
の所論も理由がないことが明らかである。
 よつて、被告人の国会証言の趣旨に関する事実の認定において、原判決に所論の
ような事実の誤認はないから、この点の論旨は理由がない。
 三 慫慂行為の事実認定上の事実誤認
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、原判決がこの関係の虚偽陳述の前提となる客観的事実とし
て、「被告人は……真実は「1」昭和四七年九月中旬ころ同社(C28)応接室に
おいて、C3同席のうえC5・コーポレイション社長アーチボルト・カール・B1
から、同社製造のエアバス級ジエツト旅客機L―一〇一一型機をC8株式会社に購
入せしめるよう尽力してもらいたいとの懇請を受け、そのころ、同社副社長A1に
対し、内閣総理大臣C12から聞いたハワイ会談におけるD5米大統領の意向を伝
える形をとるなどして、婉曲に同社が右航空機を購入するよう慫慂し」たと認定し
た部分について、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというので
あり、その理由として次のとおり主張する。
 1 懲慂に至る動機についての誤認
 原判決では前記從慂に至る動機として、被告人の検面調書(51・12・1付、
51・9・21付等)によれば、C12・D5の日米首脳ハワイ会談が終つて間も
ない昭和四七年九月中旬ころ、まずB1との二回目の会談で、B1から、C8に対
するエアバス売込の話か依然として進まないが、C8の方に話してくれたか、それ
からC12・D5のハワイ会談でエアバス導入の話が出たかどうか、特にD5から
C12総理に、トライスターを日本で買つてくれればありがたいという意味の話が
出たかどうか、誰か政府筋の人に聞いてもらいたいとの趣旨の話があつたとしたう
え、右B1との会談後、同じころにC12総理から、「実はこの前D5との会談が
あつた時、D5から、日本が導入するエアバスはC5社のトライスターにして貰え
ばありがたいんだがなあ、そうして貰いたいんだがなあと言われたんですよ、C8
の方はどういう方針かなあ」との話を聞いたとし、これはC8にその話をしてくれ
という意味に受けとれるものだつたとして、先述のようにB1からC8に対するト
ライスターの売込について、C8の方に話してもらいたいと頼まれていたこともあ
つたから、私はC8にトライスターを購入させることが、日本のためにもアメリカ
のためにもなることだと理解し、C8のA1副社長に右のことを理解してもらうた
めに、前記D5会談の話をA1に伝えた旨の供述記載があり、B1との二回目の会
談と前後してC12総理からの話があつて、この二つの出来事がA1に対する慫慂
の動機となったように認定されている。
 しかしながら、
 (一) B1証言とハワイ会談の情報収集依頼の件
 右B1との二回目の会談時に、B1が被告人に対し、前記のようなハワイ会談に
関する情報収集ないし調査の依頼をしたという点は、B1の全証言を検討してもこ
れを認めるような具体的供述は存在せず、右会談に関係したB2及びC31もこの
点につき何も供述していないから、B1の右依頼なるものはもともとなかつたもの
と認めるべきであるのに、原判決がB1の証言の抽象的・断片的な関連部分をつな
ぎ合せて、同人の証言により右依頼の件は優に認められるとした(原判決五四頁、
弁護人の事実上の主張についての一の4項・第二回会談の内容・状況<争点「5」
「6」>以下の認定理由の説示部分)のは、慫慂の動機とされるB1との第二回会談
の内容に関し、採証法則を誤り事実の誤認をしたもので、右誤認は次の被告人の検
面供述の信用性についての原判決の判断に、直接重大な影響を及ぼすものである。
 (二) 被告人の検面供述と前記情報収集を依頼された件
 前記B1からハワイ会談に関する情報収集を依頼されたことを認めている被告人
の検面調書中の当該供述部分は、その依頼に対しどんな行動をしたのか、またはし
なかつたのかが不明のままであり、また、そのころC12事務所を訪問した際、C
12総理からハワイ会談の話を聞かされたという供述もあるが、それとB1の依頼
との関連について全く説明がなく、また右C12総理から聞いた話を、依頼されて
いたB1に伝えたのか否かという点も全く説明がないなど、不自然・不合理な点が
多いうえ、右検面調書中にはB1の初回の訪問の際、事前にC3から連絡があつた
ような気がするというなど、客観的事実に反する供述部分も存在し、これらの点か
ら見て取調官の誘導による供述ないしは押しつけによる供述であつて信用性がない
ことは明らかであるのに、原判決が右供述部分は十分信用に値すると判断したの
は、前記B1の証言の信用性の判断とも関連する事実の誤認である。
 2 慫慂行為の有無についての事実誤認
 慫慂行為の有無についても、関係証拠としてはこれを認めているA1及び被告人
の各検面調書の供述しか存在しないところ、
 (一) A1と被告人の各検面供述の信用性
 発端と見られるA1の検面調書(51・8・9付)の供述は、B1らか当時戦略
として流したD5のC5社肩入れ説のデマ情報に検察官が躍らされて、A1を追
及・誘導して無から有を生ぜしめたもので信用性がなく、被告人の検面調書(5
1・9・17付、51・9・21付等)の供述も前記のとおり信用性がないとこ
ろ、両名の供述の筋道となつている、被告人かC12から聞いた話の内容である
「ハワイ会談でD5大統領からC12総理に、C8がトライスターに決めてくれる
といいんだがという話があつた」との前提事実についてはなんら立証がなされてい
ないし、C12総理から右ハワイ会談の話を聞いたとする被告人の前記調書中の供
述にもその裏付け証拠はないから、右A1及び被告人の各供述のみで本件慫慂行為
の事実があつたと認定することは許されないのに、原判決が右両名の供述には十分
信用性があるとして右慫慂行為とされる事実を認定したのは、審理不尽のため事実
を誤認したものである。
 (二) 他人の話の伝達と「慫慂」の評価
 右事実が認められるとしても、ただC12総理の話をA1に伝え、あるいはD5
大統領のC12総理に対する話を紹介したにすぎない行為をトライスター購入の慫
慂行為と評価するのは相当でなく、かつ被告人にはC12総理の話を取り次ぐだけ
で、A1に対し航空機の購入を慫慂する意思がなかつたことは証拠上明らかである
のに、原判決が両当事者の認識ないし立場、当時の客観的状況、被告人のC8への
影響力などを総合勘案すると、被告人自身が航空機の購入を婉曲に勧めたものであ
ると判断したのは事実の誤認であり、この点はA1の前記供述中にある、A1が被
告人から聞いた話を社長であるA8に伝えたところ、同人は別に驚いた様子もなく
平然としていたという状況にそぐわないところから見ても明らかである。
 (当裁判所の判断)
 1 慫慂に至る動機についての誤認の主張について
 (一) B1のハワイ会談に関する情報収集依頼の供述について
 そこで、右1の(一)の主張から検討する。所論は原判決が、被告人・B1の第
二回会談の際、B1から被告人にハワイ会談に関する情報収集の依頼をした事実が
あると認めたのは、慫慂の意思と動機に関する事実の誤認であると主張する。しか
しながら、本件A1に対する慫慂関係の訴因は、前記のとおり、被告人がB1から
L―一〇一一型機をC8に購入せしめるよう尽力してもらいたいとの懇請を受け、
C8副社長であるA1に対し前記のような慫慂行為を行なつたというのが虚偽陳述
の前提事実とされていて、右関係のいわゆる罪体となる事実としては、被告人がB
1から右のような懇請を受けたか否か、これを受けて被告人からA1に対する慫慂
行為がなされたか杏かが問題となるだけであつて、所論のハワイ会談の情報収集依
頼の件が、右慫慂行為の意思と動機に直接関連するとされているものではない。の
みならず、所論引用の被告人の検面調書の供述記載によると、B1の前記依頼の件
とは無関係に、被告人はC12からハワイ会談でD5がトライスター推奨の話をし
ていた旨の話をされ、C8にその話をしてくれという意味に受けとつたこと、その
前からB1からトライスターの売込について、C8の方に話してもらいたいと頼ま
れていたこともあつたから、C8にトライスターを購入させることが日米両国のた
めになることだと理解し、C8のA1に右のことを理解してもらうために右C12
の話を伝達したというのであつて、B1との関係はB1のC8へのトライスター売
込についての援助の依頼が、A1に対する慫慂行為の動機の一つになつたという趣
旨の供述であつて、ハワイ会談に関する情報収集依頼の件が右動機となつたという
趣旨の供述は、右検面調書全体を精査しても見出すことができない。
 そうすると所論が「慫慂の意思と動機についての事実の誤認」というのは全く当
らない表現であつて、B1・被告人の第二回会談の際、B1から被告人にハワイ会
談に関する情報収集を依頼したか否かは、C8に対するL―一〇一一型機の売込援
助の話のほか、右依頼があつたように供述している被告人の検面供述の当該部分、
ないしはこれを含む全体の供述部分の信用性の判断に関し、その真実性の有無につ
いて検討すれば足りる一事情にすぎないというべきである。
 よつてこの観点から関係各証拠を検討する。B1がC5社製造にかかるL―〇一
一型機(愛称トライスター)の日本における販売活動に関し、被告人と接触をはか
つた動機、及び昭和四七年七月二九日ころ被告人と第一回目の会談を行なつた経
過・状況、さらに同年八月二〇日ころ再来日した直後の同月二二日ころ、L―一〇
一一型機の販売活動に被告人の援助を求めることに関し、C5社とコンサルタント
契約を結んでいたC3と会談したこと及びその内容等については、B1証言を含む
関係各証拠によれば、すべて原判決が第二 弁護人の事実上の主張についての一の
2項(四五ないし四七頁)のB1が被告人を知るに至つた経緯<争点「1」ないし
「3」>の(一)「イ」「ロ」の項に認定するとおりであると認められる。そこで、
右事実を踏まえたうえでさらに原判決が摘示するB1の関連供述部分を総合して検
討すると、次の事実、すなわちB1は、被告人をC9・C8両社の社長ら幹部から
の情報収集及び右幹部らへのL―一〇一一型機の売込のあつせん並びに大型航空機
導入問題に関する日本政府筋からの高度の情報収集に有力な人物としてこれに接触
し、被告人にそれらの援助を求めた経過の中で、昭和四七年九月一六日ころC3も
同席して行われた第二回会談の際、C8に対するL一〇一一型機売込のあつせんの
再依頼と共に、同年八月三一日及び九月一日の両日ハワイで行われたC12・D5
の日米首脳会談において、日本側の大型航空機導入問題がどのように論議された
か、特にD5大統領がC5社のL―一〇一一型機を推奨ないし支持する発言をした
かどうかにつき、当時のC12総理と親密な間柄であり、その種の政治的情報につ
いて入手の能力と機会があると見られていた被告人に対し、その調査ないし情報収
集の依頼をしたという事実を認めるに難くはない。
 B1の関連供述部分を、被告人の検面調書における「B1との二回目の会談の際
に、B1から、ハワイ会談でD5からC12先生に、トライスターを日本で買つて
くれればありがたいという話が出たかどうか、誰か政府筋の人に聞いてもらいたい
との依頼を受けた」旨の供述記載部分と比較対照して見ると、D5が云々という具
体的文言の有無に差は見られるけれども、B1としては自社製造のL―一〇一一型
機(愛称のトライスターは昭和四七年七月ころから宣伝用に使用されていた)の日
本側への売込に関し、自社の浮沈にかかわる故に、右ハワイ会談で日米首脳がどの
ように話し合つたか、特にD5がトライスターを支持する発言をしたかにつき重大
な関心を有していたこと、そして、その種情報収集源として適役と考えた被告人に
対し政府筋からの右情報の収集を依頼したことを十分認定でき、このことは、副証
一二号のB1のメモ日記の九月二二日の記載によつても裏付けられているというこ
とができる。そして当該B1の供述が、被告人の前記検面調書における供述と具体
的には一致しなくても、その趣旨において同一と認められるならば、被告人の当該
供述の補強証拠とするに十分であつて、原判決が前記B1の依頼の件は同人の供述
により優に認められるとした説示部分(原判決六一・六二頁)は、結局において右
と同趣旨を説示すべきところ、その表現にやや適切さを欠いたにすぎないというべ
きである。
 所論は、D5がどう発言したかということは、B1としては重大な事柄であるか
ら、記憶の忘失等は考えられず、被告人の供述のとおりの事実であれば、これに一
致する供述が得られるはずであると主張する。しかしながら、トライスターの売込
のため多方面にわたり奔走し活動していたB1と、その働きかけの一対象であつた
被告人とでは、同一事項に関しても印象度や記憶の強さ等に差異を生ずることは十
分あり得ると考えられ、所論のように考えるのは相当でなく、前記のとおり被告人
の供述の信用性判断の事情としては、両者の供述はその趣旨において一致していれ
ば足りるというべきであるから、右所論も理由がない。
 また、原判決の引用するB1証言の同年八月二二日ころ及び同月二八日ころの時
点の各情況に関する部分は、直接にはC14のC16との会談状況に関してのもの
ではあるが、B1が日本におけるL―一〇一一型機の販売のための情報収集原兼販
売活動の協力者として、C3・被告人・C14のC16の三つのルートを持つてい
たことは、B1の証言全般を通じて明らかであるから、C16との会談の時持つて
いた前記のようなハワイ会談に関する関心事項は、C3や被告人に対しても共通の
情報収集の対象事項であつたと考えられ、特に被告人は当時のC12首相との関係
において、C3やC16とは異なる独自の立場にあると見られていた(このことは
原判決引用のコ嘱二巻一四四・一四五頁、三巻一〇六・二〇七頁の各供述部分のほ
か、副証二四A号の情報ルート図及びこれについてのB1の説明部分等により明ら
かである。)関係上、B1がC16とは別個に被告人に対し、前記ハワイ会談に関
する情報収集を依頼するメリツトは大きかつたと考えられる。そうであれば、右C
16との会談に際しB1がハワイ会談の内容につき重大な関心を持つていたという
事実は、当のハワイ会談終了後間もないB1と被告人の第二回会談に際しても、そ
の会談内容の認定に関し重要な間接事実となるものというべきである。更に、当時
B1らにおいて、D5及び米国政府が日本政府にC5社を助けることを望んでいる
旨の話を戦略として広めるように努めていたこと、被告人がハワイ会談当時bに滞
在していたことを承知したうえで、第二回会談時被告人を訪問していること等の、
B1証言によつて認められる情況的事実も、B1がハワイ会談においてC5社の名
が出ることを期待していたこと、及び一般的に見て被告人が右会談の際、現地にお
いて情報入手の可能性があつたのではないかと期待していたことを窺わせる間接事
実といえるから、これらも前記会談内容についての認定に資する事情とするに妨げ
ない。なお、B1証言の信用性に関して、原判決が同人の他の供述部分との前後矛
盾性、または他証拠との矛盾点を逐一検討したうえ、結局信用性が認められると判
断した部分も、おおむね相当であつてこれを是認することができる。
 更に、所論は、当審において、B1の証言には被告人に依頼する前提として、D
5がハワイ会談でトライスター支持の発言をしたことの情報をどうして入手したの
か、被告人に右発言の有無について情報収集を依頼したのであれば、その結果はど
うであつたのか等に関し供述がなく、論理的整合性に欠ける点もその供述に信用性
を認め難い理由として付加主張する。しかしながら、B1は前記のようにハワイ会
談においてD5がL―一〇一一型機を支持する発言をするかどうかにつき、並々な
らぬ関心を有していたのであるから、所論のように具体的に誰かからD5が右発言
をしたことを聞いていたということが、被告人に対する情報収集依頼の動機として
不可欠であるというわけではなく、また右依頼の結果については、B1は全く証言
していないのではなく、被告人が二階堂官房長官に会つた結果C5社が良好な状態
を保つている旨回答してきてくれたと供述しているのであつて、それが全く依頼の
趣旨に合わない無意味な報告ともいえないことは、B1の当該供述の趣旨からして
明らかであるから、所論は当を得たものとはいえない。
 また、所論中B1・被告人の第二回会談の関係者であるC31及びクラッターの
各供述に、前記ハワイ会談に関する情報収集依頼の件についてのB1の供述を裏付
けるものがないという点は、右両名の当時の立場(C31は通訳者にすぎず、B2
は右会談には同席せずB1から話を聞いただけである。)や会談内容への関心の程
度がB1とは差異があつたと見られるうえ、両名とも右会談の具体的内容につい
て、特に詳細に記憶を有していた事情があるとは認め難いことからすると、右依頼
の件に関する供述が両名の供述中に見られないからといつて、両名は積極的に右依
頼の話がなかつたと否定しているわけではないから、B1の前記供述とは矛盾する
とはいえない。そうすると、この点もB1の供述により当該依頼があつた事実を認
める妨げとはならない。
 原判決の右同旨の説示部分(五〇頁)につき、所論はあれこれ論難しているが、
B2がその日記の47・9・16の欄にB1と被告人との会談かあつたと見られる
記載をしていることは、B2がB1から少なくとも、右両者の会談が当該日時にあ
つたことを確実に聞いていた事実を推測させるだけのものであり、B2が右会談の
内容を特に印象深く聞いたために、これを記載したということ等まで推測させるも
のではなく、原判決もその趣旨で判示していると解されるから所論は理由がない。
 また、C31の供述がないと主張する点も同人に対する検察官の多数回に及ぶ取
調は、ほとんどがC3に関する外為法違反等の容疑の解明のためのものであつて、
B1と被告人の会談に関することは、その中の一情景的に現われてきた部分にすぎ
ないと認められるから、C3関係と比較して少数回・短時間であつた被告人との会
合状況について、通訳者であるC31が逐一詳細な記憶を有し、検察官の質問に逐
一自発的にすべて供述する筈であると見ることは、人の記憶力の限度のほか、C3
や被告人のような勢威ある人物に対する忌揮・遠慮の感情等、必ずしも率直には供
述し難いと考えられる人情の機微をも無視した見解であつて、到底これに賛同する
ことができない。
 以上の検討結果によれば、被告人・B1の第二回会談において、B1から被告人
に対し、L―一〇一一型機のC9及びC8に対する売込についての援助の依頼のほ
か、被告人の検面供述にいうようなハワイ会談に関する情報収集ないし調査の依頼
もされているという事実がB1の供述によつて、少なくとも被告人の供述を裏付け
る程度において認定することができるといえるから、これと同趣旨に出た原判決に
は所論のような採証法則違反による事実の誤認はない。
 (二) 情報収集依頼に関する被告人の検面供述について
 よつて、次に、被告人の検面調書中の前記情報収集依頼の件を認める供述の信用
性について検討すると、右供述は検面調書の全体を通じて見ても、そのころC12
からハワイ会談の話を聞いたとしながら、そのこととB1の依頼との関係や、情報
収集を依頼されでいたB1に右話の件を伝えたか否かについて供述がないなど、論
理的整合性に不十分な点があることは否定できない。しかしながら右の点は、関係
証拠により認められる検察官による被告人の取調方法が、後記のように病臥中の被
告人を臨床尋問し、三、四〇分程度取調べては適宜休憩して医師の診察等を受ける
という短時間の断続的取調に終始せざるを得なかつた関係上、検察官において勢い
最重点的と見られる事項に絞つて被告人を尋問し、その関係の供述調書を作成する
ことで精一杯であつたため、論理的整合性の検討ないしその観点からの追及まで行
う余裕がなかつた状況が窺われるのであるから、右関係において突込みが不足の供
述調書ではあつても、右不足の点が供述全体の信用性を疑わせるほどの不自然ない
し不合理というにはあたらない。また右取調に対する被告人の対応状況も、後記の
とおり病臥中とはいえ、身体的にも精神的にも不安のない客観的状況のもとで、質
問に対し任意に供述することが可能であつたと認められるほか、C12及びC3に
累を及ぼすことは供述を回避しようとする傾向が顕著であつたと認められるので、
第一回の取調で事柄の重要性を余り意識せずハワイ会談に関する情報収集依頼の件
を供述したが、その依頼に対してどのようにしたかの点を追及されて累を他に及ぼ
すことに気づき、その関係の供述は回避する態度に変つたものと推測され(51・
9・21付調書では右の点を質問されて、よく憶えていないと供述している。)、
たたC12からハワイ会談の話を聞いたという件は、A1に対しC12総理がハワ
イ会談てD5か云々の話をしていた旨話したことは当初から認めていた関係上、そ
の話の出所を追及されてやむを得ず認めるに至つたものと推測するに難くない。ま
た供述調書上はハワイ会談の話はC12の方から積極的に話があり、C8に伝えて
ほしい意向のように被告人が受けとつたというのであるから、被告人としては当面
はC8のA1に話を伝えれば足り、B1の依頼の件はこれとは別個の問題であると
考えていた可能性もある。このように見るならば、右B1の依頼の件の話が調書上
立ち消えの形になつていることも、必ずしも理解し難い不自然・不合理な事柄とい
うにはあたらない。被告人の検面調書の不利益供述部分の任意性については、後記
説示のとおり十分これを肯認できるところであるが、右不利益供述の一部であるB
1からハワイ会談に関しD5あ発言の有無の情報収集を依頼されたという点は、原
判決も指摘するように、検察官において当時これを誘導すべき資料を持つていなか
つたと見られるのに、被告人が第一回の取調でこれを供述したということに徴し、
それだけに任意性を推認させる事情が高いというべきであり、所論のようにこの部
分だけが論理的整合性を欠く点で任意性・信用性に疑問かあるということはできな
い。
 また、所論指摘の被告人の検面調書中に原判決も認定する客観的事実に反する部
分があるという点も、これはC3がB1と被告人の第一回会談の紹介に関与してい
るかどうか、右第一回会談の際B1から被告人にL―一〇一一型機売込の援助の依
頼があつたかどうかに関する部分であるところ、原判決は右の点については虚偽陳
述の成否の判断上判断の必要を見ないとして判断を避けているのであつて(四七頁
2の(二))、右のような事実がなかつたと認定したものでないことは明白である
から、この点の所論は前提を誤つた失当な主張というべきである。
 以上のとおり、被告人の検面調書の当該供述部分に信用性があるとした原判決の
判断は相当と認められるから、この点の所論も理由がない。
 2 慫慂行為の有無について
 次に、慫慂行為の有無について、原判決の挙示する関係各証拠を検討すると、原
判決のこの関係の判断も相当として是認することができ、当審における事実取調の
結果によつても右判断を動かすには足りない。以下、所論に鑑み若干付言する。
 (一) ハワイ会談における話合の内容と本件慫慂行為との関係について
 ハワイ会談で実際にD5・C12両首脳間で、トライスター購入に関する話があ
つたということと、被告人がC12から右話があつた旨聞かされたということ及び
被告人からA1にC12総理から右話があつたとして伝えたということとの間に
は、前者がなければ後二者もあり得ないという必然性はない。なんとなれば、C1
2がD5の言葉を創作して被告人に話をした可能性もあり得るからである。すなわ
ち、右C12がC5社の販売代理店であるC14の社長C15らから、C14及び
C5社の利益のため、内閣総理大臣としての職務権限に基づきL―一〇一一型機を
C8に購入せしめるよう尽力されたい旨請託を受け、昭和四七年一〇月に右売込の
成功を見た後、現金五億円の供与を受けて賄賂を収受したという右C12に対する
起訴事実が真実であるとすれば、かような立場にあつたC12がC8への働きかけ
のため、右のような話を創作することも十分あり得ることと考えられるからであ
る。
 したがつて、ハワイ会談で右話があつたことが立証されなくても、後二者の関係
証拠に信用性が認められるならば、本件慫慂行為の事実を認定するのになんら妨げ
はないというべきである。
 (二) A1の検面供述の信用性について
 そして、この関係の証拠の発端と見られるA1の検面調書(51・8・9付)の
供述の信用性について見ると、同供述は「D5・C12のハワイ会談後間もない昭
和四七年九月中旬ころ、C28本社で私が被告人と会つたときに、被告人から『実
はハワイ会談のとき、C12(C12の意味)がD5と会談したあとで、D5か
ら、C8がトライスターに決めてくれるといいんだがという話があつたそうだよ、
この間C12に会つたらそう言つていたよ。』という話があつた。言いかたは娩曲
だつたが、要するに被告人としてはC8にトライスターを採用してくれということ
を言おうとしたのだと思つた。私はそのように受けとつた。」という内容である
(同調書四項)。そして、右供述がなされるに至つた経緯については、当時の取調
状況に関して、A9検事の証言と、A1自身の公判段階での証言とが強制ないし誘
導等の有無をめぐつて対立している。しかしながら、A1が取調中居眠りをして立
たされ叱責されたという状況の説明や自己の記憶にない事項を調書に記載され、こ
れに署名するに至つたという理由の説明及びA1が保釈になる直前ころ作成して検
察官に提出した反省の言葉を記載した上申書の作成事情等の説明を見ても、A1の
証言には不自然・不合理・誇張と思われる点が多く、A9証言にはそれらの点が認
められないことからして、A9証言の方に信用性があると認められる。右A9証言
によると、A1は取調の当初はかたくなに取調に対し反抗的態度を示していたが、
C32元C8社長の話をするなどして説得を続けるうち右態度を改め、自己の容疑
事実(C8がC5社からトライスター機の購入に関しリべートの金員を受領し、そ
のことを承知していたのに、国会の証人尋問において、そのようなことは知らない
旨偽証した議院証言法違反の容疑及びこれに関連する容疑)につきありのままに話
す心境になつて供述を続けていた過程において、たまたま若狭・A1がC12の私
邸を訪問した際、被告人がその紹介の労をとつてくれたとの供述が出たので、これ
に関連して同検事がA1に被告人に対するその他の依頼関係等について問いただし
ているうち、こういうこともありましたと言つて、全く任意に自発的に、被告人か
らC12総理に会つたらハワイ会談でD5大統領が云々と言つていたという話をさ
れた言旨かされた件を供述したことが認められ、右供述経過からすれば、右A1の
供述はその信用性を認めるに十分である。また、右A1の同じ検面調書における供
述中、昭和四七年一〇月二四日、若狭社長と共にC12総理を官邸に訪問した際、
C12総理からハワイ会談でD5大統領がトライスターを推奨する話をしていた旨
話されたとの供述(同調書五項)は、前記と同様の供述経過からこれも十分信用性
があると認められるところ、A8の検面調書(51・8・11付)の四項において
もほぼ同趣旨の供述がなされていて、これによつて補強されでいると認めることが
できる(右若狭の検面調書の供述の信用性は、A1の場合と同様に、取調状況に関
するA2検事の証言と若狭本人の証言を比較検討した場合、前者の証言の方により
信用性があると認められ、また内容的にもA1の前記検面調書の供述とほぼ符合し
ていること等からして、これを認めるに十分である。)。これらの供述は、同じ人
物から他の者も相前後した時期に同じような内容の話を聞いたという点で、間接的
にではあるが、後記の「ハワイ会談が終つて間もないころ、c会館のC12事務所
で、C12からハワイ会談でD5が云々といつた話を聞かされた」という被告人の
検面調書中の供述の補強証拠とするに足りるものであるといえる。
 なお、所論はA1の前記供述が検察官の誘導による架空のものである根拠とし
て、B1が被告人と会談したときに、たまたまA1も来合せていて、被告人からA
1を紹介してやろうかと言われたというB1の供述部分(コ嘱五巻五四二頁)を引
用し、右は第二回会談のあつた九月一六日以外には考えられないから、A1の検面
供述によるとその同じ日に被告人からハワイ会談におけるD5・C12間の話し合
いの内容を告げられたことになり、被告人はその情報を求めにきていたB1に対
し、A1に対するのと同趣旨の話をして然るべきはずなのに、B1の供述にはその
ような話はなく、その後における被告人からの報告にも右趣旨の話があつたとされ
ていないのは、著しく不合理であると主張している。しかし、A1の右供述は、ハ
ワイ会談後間もない九月中旬ころ、C28に赴いたときに、被告人から前記ハワイ
会談の話を告げられたというものであり、一方でA1は被告人とは他の用件等で何
回も会つていたというのであるから、右ハワイ会談の話を聞いた九月中旬ころとい
うのが、B1が被告人と会談した九月一六日と同日であると限られるわけではな
い。右引用にかかるB1の証言部分によれば、被告人からA1を紹介しようかと言
われたが、既に知つていたから断つたというのであるところ、関係証拠によればB
1は昭和四七年六月中旬ころ来日してC8本社を初訪問したほか、同年七月下旬こ
ろL―一〇一一型機のデモフライトの際陣頭指揮のために来日しているが、A1は
右デモフライトに搭乗していること、B1は右七月の来日中の最後の日の二九日に
被告人を初めて訪問していることが認められ、右訪問時には前記経緯から見て、既
にA1とは面識を得ていた可能性があるから、B1がC28でA1と来合せたとい
うのは、右第一回の七月の訪問の際である可能性も考えられる。もつとも第二回訪
問の九月一六日にもA1が来ていた可能性もないとはいえないが、その日にはA1
は他の用件のみを果しに来ていた可能性も考えられるのであつて、もし被告人から
ハワイ会談の話をされた際に、面識のあるB1らが来合せていたのであれば、その
ことがA1の印象に残り、検察官に対しその旨供述しているはずであると思われる
のに、同人の検面調書にそのような記載がないことからすると、A1が被告人から
ハワイ会談の話をされたというのは、右九月一六日ではなく別の日であると認める
のが相当である。
 すると前記所論は、右九月一六日にA1が被告人からハワイ会談の話を聞いたと
設定する点で、その前提を誤つているものというべきであるから、これを採ること
ができない。
 (三) 被告人の検面供述の任意性・信用性について
 そこで、次に右A1の供述に対応する被告人の検面調書の供述の任意性・信用性
について検討する。被告人の検面調書中の不利益な供述及びその記載がなされた経
緯については、被告人は原審公判段階において(別件C12等の公判における証人
としての供述も含む)、取調にあたつたA10検事やC33検事から執拗に誘導な
いし押しつけ的取調をされ、病臥中であつたため根負けして、やむを得ず相槌を打
たされた結果そうなつたように供述しているのであるが、一方においてA1に対す
る慫慂行為の件及びその動機となつたC12からハワイ会談の話をされた件につい
て、検事とは押問答をしたが最後まで認めなかつた、検事調書は自分の言つたとお
り書いてあると信じていたが、裁判が始まつて調書の内容を見てはじめて違つてい
ることがわかつた(乙16・乙17の別件公判における証人尋問調書)とか、右二
つの事項は検事の読み聞けのときは耳に入らなかつた(原審五六回公判供述)と
か、耳には入つたが内容が理解できなかつた(原審六一回公判供述)などと供述し
ている点で前後矛盾しているところがある。次に、右読み聞け時の理解の点も、被
告人自身、毎回取調内容は取調終了後邸内に待機していた弁護人に報告していたこ
とを認めていること、51・9・21付調書に例をとつても、その五項の記載はそ
れ以前の記載事項の読み聞け後、被告人が追加申し出をした結果追加録取されたも
のと認められること等からして、被告人の読み聞けに関する理解は十分であつたと
認められる。また、検面調書中にはB1との会談にC3が同席したことや、C3か
らC5社関係で金をもらつたことは終始否定し、B1のいう陰謀の件についても自
己の関与を否定するなど、自己の言い分を通している部分が少なくないほか、記憶
がないこと、または記憶がはつきりしないという点はそのとおり記載されている部
分も随所に見られること等からすれば、被告人は検事の追及に対し否定するところ
は否定し通し、記憶がないとかはつきりしないとかの点はそのとおり供述していた
ことが明らかである。そうすると不利益な供述部分はすべて検事の押しつけの結果
であるようにいう公判供述は、にわかに信用することができない。
 他方において、被告人の不利益供述のほとんどを引き出したと見られるA10検
事の証言を見ると、同検事の取調状況についての供述は具体的で自然であり、微細
な点はともかく、大筋において同検事作成の取調状況報告書の記載及び作成された
供述調書の記載状況とよく合致し、被告人の公判供述と比較してより信用性がある
と認められる。
 すなわち、前記51・9・21付調書の五項の追加録取の点も、同検事が被告人
のいうがままに供述を録取したことの一例であるが、他にも第一回の取調の際、被
告人は同検事の尋問に対し、A1にC12・D5会談の話をしたこと、その内容は
D5がC12総理にC5社の飛行機を推奨したというものであつたことは抵抗もな
く認めたが、その話は誰から聞いたのかと追及すると供述をしぶり出し、A1に話
したこと自体もはつきりしないと供述を後退させてしまつたので、そのままに調書
を作成したという点、第二回の取調で右話はC12から聞いたのではないかと追及
したが、理屈としてはそのはずだが思い出せない、と言つてC12に関することは
避けようとする態度であつたので、第三回の取調であれこれ利害を考えず事実を話
すよう縷々説得したところ、ようやくC12から聞いたことを思い出したとしてこ
れを認めたという点等は、各調書の関係部分の記載とよく符合しており、被告人の
任意の供述をそのまま録取したものと認められる。また、取調状況報告書に記載さ
れているように、取調時間が短時間に制約されていたことと、作成された供述調書
の分量とを比較しても、被告人がいうような押問答を繰返していたのでは、到底そ
のような分量の調書作成はできなかつたはずあると認められる。
 なお、関係証拠により被告人の取調当時の客観的状況を見ると、被告人は高血圧
症兼冠不全のため狭心症の発作を頻発して病床にあつたが、右発作は生命に危険を
きたすほどではなく、右被告人の病状を考慮し、A10・C33両検事は主治医で
あるC34医師と十分打ち合せ、同医師の要望に従い取調は必ず事前に同医師の診
察を経て取調可能の場合に行なうこととし、取調時間も三〇分から四〇分程度休憩
し(ただし九月末に被告人が諸検査のため入院し、動脈瘤の疑いが晴れて退院した
後は、一時間を超える場合もあつた)、医師の診察を受けるようにし、医師の所見
で体調不良の場合は取調を打ち切るなど、極めて慎重な取調方法をとつたほか、被
告人側でも取調の間中C34医師及び時には家族が隣室に待機し、適宜被告人の容
態を観察できる態勢にあり、被告人の依頼した弁護士も別室に待機していて、適宜
被告人に助言等ができる態勢にあつたことが認められ、かような状況からすれば、
取調場所が被告人の住み慣れた自宅であつたことと相侯つて、被告人は身体的にも
精神的にも不安等のない、まさに任意の供述が可能な状態での取調を受けたものと
認められ、この点は原判決も適切に説示するとおりである。
 以上のように信用性があると認められるA10検事の証言と被告人の取調の際の
前記客観的状況及び同検事作成の検面調書自体の記載内容がおおむね自然な進展を
たどつていること等を総合すれば、被告人の当該不利益供述部分は、被告人が任意
に供述したものと認めるに十分である。さらにC33検事作成の検面調書の不利益
供述部分についても、同検事の取調状況についての証言と被告人の公判供述を対比
すれば、前同様の理由で前者の方により信用性があるといわざるを得ず、右C33
検事の証言によればその任意性を認めるに十分である。
 また、右A10・C33両検事の証言を通じて、被告人は検察官の取調に対し質
問を的確に理解し、自からの考えに基づき応答する能力を保持していたのみなら
ず、特にC12及びC3に関することはできるだけ供述を回避する態度に終始して
いたことも窺われ、右のような状況下で被告人が任意に自己及びC12らに不利益
な供述をしたことは、その供述に信用性があると推測させる有力な事情の一つとい
うことができる。
 ところで、被告人の検面調書中のA1に対する慫慂関係の供述内容を見ると、お
およそ次のとおりである。すなわち、
 「C8のA1とは何回も会つたことがあるが、昭和四七年九月か一〇月ころ、C
28でA1と会つたときに、C12・D5会談の際、D5が日本でC5社のトライ
スターを導入してもらえば結構だが、とC12総理に言つていたそうだということ
を話した。」(51・9・17付六項、他に51・9・21付三頂、51・9・2
4付一項、51・12・1付七項もほぼ同旨)、及びその動機、原因関係について
は「ハワイ会談が終つて間もないころ、私がc会館のC12事務所に行つてC12
先生と雑談をした際に、C12先生から、『実はこの前ハワイ会談があつたとき
に、D5から、日本が導入する飛行機はC5社のトライスターにして貰えばありが
たいんだかなあ、そうして貰いたいんだがなあと言われたんですよ、C8の方はど
ういう方針かなあ』と言われた。大体、政治家の話は口ではつきりいわず、遠まわ
しにいうことが多いので、右話はC8に伝えてくれとは言葉でいわなくても、その
ような趣旨に受けとることもできた。しかし、私は頼まれたからという気持だけで
そのことをA1副社長に話したのではない。コーチャン氏からトライスターの売込
について何回か頼まれていたし、C12先生も私にわざわざ話してくれたことだか
ら、この際C8にトライスターを買わせることが日米両国のためになることだとい
うことを理解してもらうためだつた。C8に対して圧力をかける気持でA1さんに
話したのではない。」(51・9・24付一項、51・12・1付七項)というの
である。
 右供述は、発端となるC12総理からハワイ会談におけるD5大統領の話を聞か
されたという部分に前述のとおり間接的な補強証拠もあり、被告人からA1に右C
12総理の話を伝えたという点も、被告人・A1の各供述がほとんど符合していて
相互に補強し合つていること、被告人の検面調書の不利益な供述が、前記説示のよ
うな取調状況から見て任意性に疑問の点はないと認められること、及びC12から
ハワイ会談の話をされこれをC8のA1副社長に伝えたという供述は、被告人の国
会証言との関係で自己に不利益であるのみならず、C12やA1までC5疑惑に巻
き込むことになるのに、あえて任意に供述されていることから見て虚構の供述とは
考えられないこと等の諸事情を参酌すれば、その信用性は極めて高いと認められ
る。
 かように信用性の認められるA1及び被告人の各検面供述等によれば、本件慫慂
行為と目される事実の存在を認めるに十分である。
 よつて、原判決がA1及び被告人の各検面供述等により、本件慫慂行為の事実を
認めたのは相当であつて、右認定に所論のような審理不尽や事実の誤認はない。
 (四) 慫慂行為とはならないとの主張について
 次にC12の話を伝達しただけでは慫慂行為にならないという主張(所論2の
(二)の点)については、右話を伝達されたA1自身が被告人の話は婉曲にトライ
スターの購入をすすめているものと理解したと供述していること、被告人も検面供
述でC8がトライスターを購入することが日米両国のためになることだと理解した
から、そのことをA1に理解してもらうためにA1に話したと供述していること、
事態を客観的に見ても、内閣総理大臣として政・財界等への発言力・影響力の大き
いC12が、D5大統領の話に籍口してトライスター購入を推奨ないし支持するよ
うな話をしていた旨を、財界の実力者であり、C8の大株主・社賓として同社への
発言力も少なくなく、C12の親しい友人として知られている被告人が、同社の新
機種選定の最終段階の時期において、同社の副社長であり同社の窓口として被告人
と接触していたA1に伝えたことは、A1をしてC12の話の影響力のみならず、
被告人自身も同社への発言力を背景に、C12と同じ意向で右話をしていると察知
させるに足りるものであつたといえること等からすれば、被告人の行為は単なる伝
達行為または紹介行為にとどまらず、被告人自らA1に対しトライスターの購入を
遠まわしに誘いすすめたもの、すなわち婉曲に慫慂したものであると評価するに十
分である。
 所論は、被告人には慫慂の意思がなかつたとして、前記被告人の検面供述部分の
ほか、「A1に話した際、C8に圧力をかける気持はなかつた」という供述部分を
援用するのであるが、「慫慂」とは前記のように誘いすすめるというだけの意味で
あつて、相手方に圧力をかける認識は必要とせず、被告人は前記のように「C8に
トライスターを買わせることが日米両国のためになることだと理解し……」と供述
していて、C8にトライスターを購入させる目的を意識して話したことを認めてい
るのであるから、これは右購入を誘いすすめる認識として十分であると認められ、
主観点にも慫慂の意思はあつたといえるから、右所論も理由がない。
 なお、A1の検面供述と若狭の検面供述との間には、A1から若狭に被告人の慫
慂行為について報告しているかどうかという点につきくいちがいがあるけれども、
A1が「被告人の話は若狭の既定方針とも合致していたので、若狭は別に驚いた様
子もなかつた」と供述していることから見れば、若狭はさして感銘を生ずるような
受け取り方をせず、これを軽く聞き流した状況が窺われ、そうすると、同人の印象
が薄かつたため記憶に残らなかつたとも考えられるから、若狭が報告を受けた件を
否定している一事をもつて、本件慫慂の直接当事者たるA1の供述内容を否定する
根拠とは認め難い。原判決の同趣旨の説示部分も相当と認められる。
 (五) 結論
 以上のとおりであるから、被告人のA1に対する慫慂行為の存在に関する原判決
の事実の認定は相当であつてなんら事実の誤認はない。また、その事実を前提とし
て、被告人が国会証言中において右事実に反する虚偽の陳述をしたとする原判決の
認定も、関係証拠に照らし相当と認められるから、右A1に対する慫慂関係の事実
誤認の主張はすべて理由がない。
 第四 控訴趣意第四(被告人がB1からP3C型機売込の援助を要請された関係
の訴因についての主張)について
 一 理由不備ないし理由そごの主張(所論には事実誤認の主張も含まれているも
のと解する。)
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、原判決はこの関係の前提事実として、「被告人は真実は……
「2」昭和四七年七月下旬ころC28株式会社応接室においてC3同席のうえ、B
1からC5社製造にかかる対潜哨戒機P3C型オライオンに関して種々説明を受
け、同航空機を日本政府に売却するについての援助を要請され、これについて右C
3と協議し」たとの事実を認定したうえ、国会証言における虚偽の陳述として、
「B1からPXLあるいはP3Cオライオンといつたような言葉を聞いた覚えは全
然ない、C5社に関することでC3と話し合つたことは断じてない」旨証言した事
実を認定しているが、右前段の事実と後段の事実との間には次のようなくいちがい
がある。(1)右証言中PXLまたはP3C関係の部分は、そういう言葉に関する
記憶の有無を尋ねられてこれを否定したのにすぎないから、右陳述を虚偽とするた
めには、その前堤としてB1が前記説明をした際に、PXLあるいはP3Cオライ
オンという言葉を使つて説明したという事実が必要であるところ、原判決はその事
実を摘示していないから、前提たる事実の認定と虚偽とされた証言の認定の間にく
いちがいがあり、(2)また、B1から前記のような言葉を聞いた覚えはないと証
言したとの認定が、B1自身の言葉として聞いた覚えがないという趣旨であれば、
被告人は英語を全く解しないから、覚えがないと答えたのは当然であつて罪となら
ないし、通訳を介して通訳の言葉の中で聞いたことがないという趣旨だとすれば、
挙示した証拠中にこの時の会話を通訳した者の供述が存在しなければならないとこ
ろ、そのような証拠は全く存在しないから、この点においても原判決には理由不備
があり、(3)実質的に見ても「C5社に関することでC3と話し合つたことは断
じてない」旨証言したとの部分は、証拠上は被告人は一般的にC5社に関するこ
と、またはC8に関することでC3と話し合つたことはない旨証言したにとどま
り、原判示の日時ころB1との会合の席上このような話合をしたことはない、と証
言したわけではないから、原判決の右部分の認定は明らかに被告人の証言内容を歪
曲したものであつて不当である(反論書八、九頁)、というのである。
 (当裁判所の判断)
 そこで検討すると、(1)、(2)の点については、原判示「B1から、前記C
5社製造にかかる対潜哨戒機P3C型オライオンに関して種々説明を受け」たとす
る認定部分は、合理的に解釈して当然にP3C型オライオンという言葉を使つて、
通訳を介して説明を受けたという趣旨であると理解すべきである。また、右関係の
証拠であるB1及びクラッターの各証言調書の供述は、通訳を介して被告人と会談
したことを当然の前提としてなされていると認められるので、P3Cまたはオライ
オンの用語を日本語に通訳した場合、その符号または呼称のとおり伝えるほかない
と考えられることからしても、関係証拠としては右両名の証言調書があれば足り、
その上に通訳に当つた者の供述までは必要でないというべきである。そうすると、
前記(1)(2)の主張は理由がない。
 次に(3)の点について見ると、所論指摘の「C5社に関することでC3と話し
合つたことは断じてない」との被告人の証言部分は、これを前記予算委員会の会議
録によつて検討すると、C35委員の質問の第九ないし第一一問に対応する証言部
分がこれに該当すると認められるところ、これに先立つ同委員の第一問ないし第八
問は、B1の米国上院での証言中、トライスターの売込の問題でC3と同様に被告
人と戦略的な相談をした旨、被告人は非常に影響力のある人物であるため大きな助
けとなつた旨、あるいは、C3及び被告人とは何回も売込の戦略について話し合つ
た旨の部分に関連しての質問であつて、同委員の第九問中の「その後C3氏とこの
関係でお話し合いをしたことがあるかどうか、伺います」との部分における「この
関係」とは、前の質問から続いているトライスター売込の戦略関係を指すと解する
ほかはないから、右第九問に対し被告人がC3とのつきあい関係のみを答えたのに
続き、同委員がした「そのおつきあいはわかりましたが、その後C5社に関するこ
と、あるいはC8に関することでお話し合いをしたことがありませんか」との第一
〇問及び重ねて同趣旨の第一一問も、トライスター売込の戦略の関係のみの質問で
あつて、P3C型機の日本政府への売込援助の要請の関係は含んでいないと認める
のが相当である。このことは、同委員の次の第一二問でC3とC5社とのP3Cの
契約について、第一三問ないし第一六問でPXL国産化白紙還元問題について被告
人の認識の有無をただし、第一七問で「この問題(右PXL国産化白紙還元の問題
を示す)については全然C3氏と話し合つたことはないですね」と改めて質問し、
被告人が「全然ございません」と答えているやりとりの経過からも認められるばか
りでなく、衆議院予算委員長名義の本件の告発状の被疑事実において、「被告発人
は、トライスターの売り込みについて、C5社のB1社長から依頼があつたので、
わかりましたとは言つたがそのまま聞き流しにし、だれにも話したことはない旨、
C5社あるいはC8に関することでC3と話し合つたことはない旨証言した。」と
されていて、トライスター売込の関係で右C3と話合つた件を否定したことをとら
えて偽証の疑いをかけている趣旨の記載になつていることからしても窺うことがで
きるというべきである。
 そうすると、原判決が採り上げた被告人の当該証言部分は、前記前提事実として
認定された「B1からP3C型機の日本政府への売込の援助を要請されてC3と協
議した」との事実に対応した証言であるとは認め難いから(むしろ被告人の右証言
部分は、原判決が認定した前提事実「1」の「昭和四七年九月中ころ……C3同席
のうえ、B1から……L―一〇一一型機をC8株式会社に購入せしめるよう尽力を
してもらいたいとの懇請を受け」たという事実に対応する証言であると認められる
が、件公訴事実は右の関係では単に「C3同席のうえ」とあるだけで、右懇請につ
いてC3と協議したとはしていないから、右「C5社に関すること、あるいはC8
のことでC3と話し合つたことは断じてない」との証言部分を、B1がL―一〇一
一型機売込援助を懇請した際に、C3と話し合いをしたという事実との関係で、虚
偽の陳述ととらえているのではないことも、原判決の指摘するとおり《四四頁》で
ある。)、右前提事実との関係で虚偽陳述となる余地がなく、原判決が当該被告人
の証言部分が、前記前提事実(P3C売込に関するもの)との関係において虚偽の
陳述であると認定したのは、事実を誤認したものといわざるを得ない。
 二 「四者会談」に関する事実誤認の主張
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに次のとおりである。
 1 偽証の前提となる客観的事実の誤認
 原判決は、前記P3C型機売込援助要請に関する前提事実として前記「2」の事
実を認定し、右認定の理由説示において、「A」B1はC8に対するL―一〇一一
型機販売計画が成功した後、被告人からもP3Cの売込についてL―一〇一一型機
売込に関してと同様の援助を得ようと考え、昭和四八年七月二三日から同月二九日
まで来日した間に、B2とともにC28本社に被告人を訪ね、同社応接室でC3同
席の下に被告人と会談したこと(以下「四者会談」という)、「B」右「四者会
談」において、B1は被告人に対しP3C型機の性能等に関する説明をし、同機採
用の利点等を指摘して、同機の日本政府への売込について前回同様に情報収集・説
得活動等の援助をしてもらいたい旨依頼し、これについて被告人はC3とも協議し
たこと、「C」右席上、被告人は従前取決められていたP3Cの売込にかかるC3
への手数料の額は適正でなく、増額すべきであるとのC3の主張に同調して、B1
に対し、C5社が当該売込を成功させたいならば、C3に対する手数料を増額する
ように口添え説得したこと、「D」そこで、B1は、被告人の右手数料増額勧告
は、P3C販売活動に対する援助の意向をも包含するものと推測し、これに同意し
たものであるが、かような経緯から、B1らは被告人が援助を約束したものと理解
したこと、「E」その後、右「四者会談」の結果を踏まえたC3・B2間の交渉の
末、P3Cの売込が成功した場合のC3の手数料等を総計二五億円とする旨の、同
年七月二七日付マーケツティング・コンサルタント契約修正四号契約書が右日付こ
ろ作成されたこと等の事実が認められるが、右「四者会談」の存在についてはB1
とB2の各証言のほか、社有自動車行動表(符20)の記載という客観的証拠の存
在によつても裏付けられていて、右行動表によると前記B1が来日中の昭和四八年
七月二八日、B1がB2と窺われる外一名とともに、午前九時三五分にC28本社
を意味すると見られる「d」に赴き、約三〇分間同所に滞留したことが明らかであ
つて、この事実は「四者会談」の存在を裏付けるに十分であると説示しているので
ある。
 ところで、原判決の前記理由説示を通観すると、原判決は前記「四者会談」は昭
和四八年七月二八日に行われたと認定していると解されるところ、(イ)B2日記
の同日分の、B2がC36とともにC8ゴルフトーナメントに参加し、B1がC3
1・C3・C37(C38社長)と会談した旨の各記載及び当日の社有自動車行動
表の記載から、B2はB1と別行動をとつたことが推測され、また、B2日記の同
月二七日分には、B1とB2が揃つてC31・C3・C27(C3の秘書)らとP
3の関係で会談した旨の記載があり、これが前記行動表の同月二七日分の記載とも
符合していることのほか、C3の腹心の秘書でC3の前記のような手数料増額要求
に同調し口添えできるC27の立場及び同年七月二七日付の前記修正四号契約書の
作成日付からすると、C3の右手数料増額についての合意は七月二七日の会談で成
立したものと見るのが合理的であつて、他にB2日記の七月二三日ないし二六日及
び二九日の記載を見ても、前記「四者会談」の存在を裏付けるものはないから、B
1は記憶ちがいによりC27を被告人と混同して証言した疑いがあり、(ロ)B1
を乗せた車の前記社有自動車行動表の七月二八日分の行先の記載中の「d」が、C
28本社を意味するとは限られないことは、昭和四八年一〇月四日分の同じ記載の
行先が、当日所用で仙台市に出張していて不在であつた被告人をB1が尋ねて会談
することは不可能であつたため、C28を意味しないと見られることからしても明
らかであり、(ハ)その他右「四者会談」に関するB1の証言は、事態の経過ない
し推移に関する説明に欠ける点が多く、B2の証言も漠然としているうえ、C3の
手数料増額要求と被告人の関与の件は述べていない等、右両名の関係供述部分は信
用性に乏しく、ことに前記「四者会談」で被告人とC3が協議したことは、右両名
の供述等によつてもこれを認めるべき資料がないので、原判決が前記説示の理由に
より前記前提事実を認定したのは、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認
である。
 2 国会証言部分の虚偽陳述の犯意の誤認
 仮に、月日及び同席者の点はともかく、B1が被告人に対しP3Cに関する説明
を行ない、その売込について被告人の援助を要請した事実が存在するとしても、そ
の要請はB1側の一方的行為にすぎなかつたと見る余地があるから、被告人として
はその事実について記憶を失つていたため、否定的な陳述をしただけであつて、そ
のような事実を秘匿するためにことさら虚偽の陳述を行なつたものではない可能性
があるのに、原判決が虚偽陳述の犯意があつたと認定し、本件訴因を有罪としたの
は、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認である。
 所論は以上のとおり主張する。
 (当裁判所の判断)
 1 そこで、まず偽証の前提となる客観的事実の誤認の主張から検討すると、原
判決が認定した前提事実は、前記のとおり「被告人は昭和四八年七月下旬ころ、C
28株式会社応接室においてC3同席のうえ、B1からP3C型機の日本政府への
売込について援助を要請され、これについて右C3と協議し」たとされているとこ
ろ、所論も引用するその認定理由の説示(原判決一三二頁2 本件会談の状況の
(一)項及び(二)項)を併せ考えると、原判決は、右前提事実であるB1・C
3・被告人の会談は、昭和四八年七月二八日、あるいは同月二三日から二九日まで
の間に前記場所で、B2を含む「四者会談」として行われたように認定しているこ
とが明らかである。
 (一) 「四者会談」の時期と社有自動車行動表の記載
 ところで、右日時ないし時期ころ、右のような「四者会談」が行われたことにつ
き、原判決挙示の関係各証拠により検討すると、原判決がいうような内容の「四者
会談」について、B1の証言は、右会談が一九七三年(昭和四八年)にあつたこと
を認めながら(コ嘱二巻一二五頁)、その時期ないし日時については明確に供述す
ることができず、その時期の特定のために同年中の五回にわたる来日の記録を告げ
られても「それでは全くのところ助けになりません」と答え(同三巻二一二頁)、
結局同年七月二七日付のC3の前記修正四号契約書を見て、この修正契約がその会
合の結果なされているので、会談は同月の来日期間中のその日付前に行われている
はずである(同二一五頁)と供述するにとどまつている。一方でB2の証言によれ
ば、右会談があつたことは認めているものの、その日時についてはこれを特定する
ための質問がないため、不明のままになつていることが認められる(B2日記の同
年七月二七日の記載について、前記修正四号契約書はこの会談で合意に達したのか
と質問されて、そうであろうと答えているが、同日の会談とは後記のようにC3・
C27・C31との間のものであつて、被告人を含む会談とは別個であると認めら
れる。)。
 そこで、原判決の援用する社有自動車行動表(C14がC5社関係の東京支社の
ために提供していた運転手つき乗用車の行動記録)を見ると、原判決摘示のとおり
B1が来日中にしばしば右乗用車を利用し「d」に赴いていることが認められるう
え、当時C28本社は東京都中央区ef丁目にあつたことも事実であることが認め
られるが、dと呼ばれる東京駅東側乗降口近辺に所在する会社・事業所等の数は多
いので、他に右dの記載とC28本社との結びつきを認めるべき証拠がないかぎ
り、右「d」の記載が直ちにC28本社訪問を意味するとは解し難く、原判決が右
行動表の記載だけから、コーチャンが来日中足繁く訪問すべき対象としては、dに
はC28しかないものと考えられるとしたのはにわかに首肯することができない。
右行動表の記載からは、B1がdで下車して後、C28本社を訪問した可能性があ
る、という程度の判断ができるにすぎないというべきである。
 更に、当審における事実取調の結果によると、右行動表の「d」の記載例中、昭
和四八年一〇月四日の場合は、被告人は当日朝から夕方まで仙台市に出張中(往復
国鉄利用)で、行動表記載の時間帯には会社にはいなかつた可能性が十分に認めら
れ、これを覆えすに足りる反証はないから、同日の「d」の記載はC28本社の訪
問とは関係がないと見るべき余地がある。そうすると、同年七月二八日の「d」の
記載についても、それがC28本社訪問を意味する可能性はあつても、確実にそう
であるという断定はできないといわなければならない。
 (二) 「四者会談」とB2日記による裏付けの有無
 更に、当審において取調べたB2日記の昭和四八年七月二三日から二九日までの
記載部分を、B2の証言及び同人が東京事務所において使用していたデスクカレン
ダー一綴(符140)の記載と併せて検討しても、B1が昭和四八年七月下旬に来
日した前記期間内に、前記のような「四者会談」があつたことを認め、または窺わ
せるような記載は、これを見出すことができない。
 すなわち、原判決が説示する昭和四八年七月二八日の欄には、
 ―(C8 Golf Tournament―C39/C40)
 ―C41/C42―C44―C43―P3 License agreed
 との記載があり、B2はC36(C5社の子会社であるC7日本支社の支配人)
とともにC8ゴルフトーナメントに参加していたことが窺われるほか、B1はC3
1(C41)を通訳としてC3(C42)・C37C38社長と会談し、その結果
P3Cのライセンスについて合意が成立したことが認められ、これらのことは前記
行動表の当日のB1らの行動の記載とも符合すると認められる。しかし、同日、B
1・B2・C3・被告人の四者が会談したことについては、これを窺わしめる記載
は全くない。
 かえつて、右前日の同月二七日の欄には、2:00 C41/C42/C45―
P3 C44/C39と、B1及びB2が二時にC31(C41)を通訳としてC
3(C42)・C27(C45)とP3に関して会談した趣旨の記載があり、B2
の証言によつても同日そのような会談があつたことが認められ(ク嘱四巻四二〇
頁)、このことは前記行動表に「使用者B1ら三名、13:50h町発、14:0
0i着、待時間一時間」とあることとも符合する(C3の事務所がiのj橋近くに
あつたことにつき、C1の検面調書等参照。)。しかし、右会談に被告人が参加し
たことは、同日記にこれを窺わしめるような記載はなく、B2の証言についても同
様である。
 また、B1の右両日以外の前記来日期間中の各記載部分を見ても、七月二三日と
二九日は各来日・離日の当日であつてその旨の記載があるにすぎず、時間的にも被
告人と会談する余裕があつたとは認め難いし、二四日は2:30 KHI C44
/C39/C40と、B1及びB2が午後二時半に前記C36と共にC38を訪問
したことを窺わせる記載があり、二五日は7:30 C41/C42/C44と、
午後七時半からB1がC31・C3と会談したことを窺わせる記載があり、二六日
は10:15 C46/C44/C39 Delivery P3Cと、午前一〇
時一五分からB1及びB2がC14のC16と引渡し(L―一〇一一型機の関係と
思われる)及びP3Cのことで会談したこと、11:00 C47―C44/C3
9/C40と、午前一一時にB1及びB2が前記C36と共にC8の若狭社長を訪
問したこと並びに5:00 C41/C42/C45―C44/C39 JAL 
C48と、午後五時からB1及びB2がC31・C3・C27とC9・C48のこ
とで会談したことを各窺わせる記載があり、これらの記載は前記社有自動車行動表
の記載によるB1らの動きと対照してほぼ符合しまたは矛盾がないと認められる
が、被告人の名前またはこれを示す符号等は、これらの期間を通じてこれを見出す
ことができない。
 ただし、前記行動表の記載に関し原判決の指摘する昭和四九年六月一八日と同月
二二日のB2日記の記載欄には、C48―C44/C39/C41 C50 (D
ifficult)(18日)、C48―C44/C39/C41 C50/P3
/C8 747SR (No 10)(22日)と記載があり、OがE1を意味す
るとすれば、コーチャンとB2とはその頃被告人と会談したことが窺われるが、こ
れらの会談は昭和四九年中のことであるうえ、C3が同席したとはされておらず、
内容的にもC50(C50)関係が主体の会談と見られるから、もとよりB1らの
いうP3C関係の「四者会談」に該当しないことは明らかであつて、このように被
告人と会談したことの記載が他にもある以上(なお、A1慫慂関係に関してである
が、昭和四七年九月一六日の欄には((C44―C51))と、B1と被告人の第
二回会談を窺わせる記載があり、同年一〇月五日の欄には、((C44/C41/
C52))((C44/C41/C42))と、B1証言にいう「陰謀」対策の件
で、B1がC31を通訳として被告人((B1は被告人にCURLYという暗号名
をつけていたので、C52はその頭文字と見られる。》及びC3と順次会談したこ
とを窺わせる記載があり、これらの記載についてB2は、それらの会談があつたこ
とをB1から聞いて記載した旨供述している。)、前記昭和四八年七月下旬の諸会
談の記載に、被告人を示すOまたはC52の文字がなく、右期間全般にわたつて見
ても同文字の記載がないことは、右期間内にB1らと被告人との会談は行われなか
つたのではないかという疑いを生じさせるものといわざるを得ない(なお、前記昭
和四九年六月一八日及び二二日のB2日記の記載については、B2の証言中に説明
がないので、右両日にB1がC28本社で被告人と会談したことまでは認定し難
く、これをもつて前記社有自動車行動表のdの記載をC28本社と結びつける資料
とはなし難い。)。
 そして、右B2日記が、B2において在日中の自己及びB1の行動状況につい
て、重要と見られることはほぼ漏れなく記載するようにしていた性質のものであ
り、また、コーチャンと被告人の前記第二回会談の件及び「陰謀」対策のためB1
が被告人と会談した件について、同席しなかつたB2がB1からそれらのことを聞
いて記載したものであると認められることからして、B1のいうP3C関係のC
3・被告人との会談が、B2を抜きにして行われたものとしても(七月二八日午前
中B1がdに赴いたことは、その可能性を一応推測させるものである。)、B1は
被告人がC3のP3Cの売込関係の手数料増額要求を支持し、B1がこれを被告人
のC5社のP3C売込活動に対する援助の意思表明と理解し、右増額に同意したと
いう重要な会談について、B2に話さなかつたはずはないと考えられるから、B2
日記にその旨の記載もないことは、問題の会談が右三者会談の形式としても行われ
なかつたのではないかとの疑いを生ぜしめるに足りるものである。
 もつとも、B2日記にも記載漏れがあり得るから、社有自動車行動表の記載では
B1に時間の余裕があつたと認められる二四日ないし二七日において、他に用事の
ない時間帯に、B1がC3及び被告人と会談したと見ることも、一つの推論として
可能であるとはいえる。しかしながら、反対尋問による吟味の機会が与えられなか
つたB1らの証言に、裏付け証拠の不足という弱点が見出される場合に、その弱点
を推論によつて補充しようとすることは、反対尋問の吟味に代り得るほどの高度の
信用性が要求される証拠方法の評価としては相当でないといわざるを得ず、また、
日記の記載漏れということはあり得るとしても、その記載漏れ自体、前記のように
所論の期間中に被告人以外の者との諸会談については記載があるのに、それらに劣
らぬ重要性を持つと見られる会談がなぜ記載漏れとなつたのかという別の疑問を生
じ、この疑問を解消するほどの事情は関係各証拠によつても発見できないから、結
局、右推論によつて前記疑いを打ち消すことはできないというべきである。
 また、右に加えて、次のような疑いも生ずることは、これを看過することができ
ない。すなわち、前記のとおり七月二七日にはB1・B2・C3・C27の四名の
会談(C31は通訳と見られる)がP3Cに関して行われていることが認められる
うえ、所論のとおりC27がC3の秘書ながら(B1証言によると実権を持つてい
る秘書という。)、C3の手数料増額要求の件でC3を支持する発言をする可能性
もあつたと思われること(B1はC27の名を記憶していて、C3との会談の際一
回か二回はいた、しかしC27は会談に参加したことはなかつた旨供述しているが
((コ嘱二巻七七頁、六巻五九八頁))、常にそうであつたとは断定し難いし、B
2がC27の名を日記に会談当事者と読めるように記載したのは、同人が単にC3
の従者の役にとどまらず、会談内容について発言したからではないか、という推測
が可能である。)、右P3C関係のC3の手数料増額に関するC5社との修正四号
契約書が右同日付で作成されていることからすると、同日の右四名の会談で右契約
書所定の合意が成立したと見るべき蓋然性が相当に高いから、B1は、C27が出
席していた四者の会談を被告人の出席していた会談のように思い誤つて証言したの
ではないか、という疑いが生するのである。
 そして、被告人とC27の立場の大きな相違を考慮しても、右疑いについて、こ
れを解消できるほどの事情を発見することができない。
 (三) 「四者会談」の認定の可否
 そうすると、B1とB2の証言にいう被告人を含む「四者会談」の時期がもとも
と不明確であつたうえ、社有自動車行動表の記載も右会談が昭和四八年七月下旬の
B1の在日期間中に行われたことの裏付け証拠とするには足らず、B2日記という
関係当事者の記録でも右会談の存在を裏付けることができず、かえつて右期間中に
「四者会談」は行われなかつたのてはないかという疑い及びB1がC27を含む会
談のことを被告人を含めての会談と誤つて証言したのではないかという疑いが生じ
ているのであるから、原判決のいう「四者会談」が昭和四八年七月下旬ころ、ある
いは認定理由に説示する同月二三日から二九日までの間に存在したとの前提事実
「2」を、合理的疑いを超えて認めるに足りる証拠が十分でないといわなければな
らない。
 以上のとおり、原判決が前記時期に「四者会談」が存在したように認定したのは
事実の誤認であつて、右認定事実はP3C関係の虚偽陳述の前提とされているので
あるから、これが認め難い以上虚偽陳述の事実の認定もできないことになり(C5
社に関することで……との証言部分は、右前提事実とも対応していないことは前説
示のとおりである。)、結局この訴因の関係は犯罪の証明がないことに帰し、右誤
認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるというべきである。この関係の所論は
その余の点の判断に立ち入るまでもなく理由がある。
 2 予備的検討
 なお、前記「四者会談」の存在が確認できないとしても、本件訴因の前提事実と
しては、被告人がそのころB1との会談の中で、B1からP3C型オライオンに関
して種々説明を受け、日本政府への売込の援助を要請された際に、B1から「P3
Cオライオン」という言葉を聞かされたことさえあれば足りる筋合であるところ、
B1の証言はそのいう会談の形式ないし態様までは措信できないものの、前記四者
会談があつたとされるころ、B1と被告人がともかく会談し、B1から被告人に対
し右説明ないし援助の要請をしたとの点に限定してこれを措信することができるな
らば、被告人が国会証言において、「(B1との話の中で)B1からPXLあるい
はP3Cオライオンといつたような言葉を聞いた覚えは全然ない。」旨証言した部
分に関し、虚偽陳述の外形が成立する余地があるように見える。しかし、B1の証
言の趣旨は、C3と被告人が同席した会談において、B1から被告人に対しP3C
に関する性能等を説明し、その日本政府に対する売込の援助を要請したところ、被
告人はC5社とC3間の従前の約定による同型機の販売手数料が適正でないとし、
C3の右手数料を増額するよう主張し、あるいはC3の右増額要求を支持する発言
をしたので、B1としては被告人が右の対応をしたことから被告人において右要請
に同意したものと理解し、右C3の増額要求に同意したというものであつて、その
ような被告人の積極的関与の場面があつたとすれば、被告人としてはB1からP3
Cオライオンという言葉を聞かされたことを憶えていないはずはないと思われる
が、前説示のとおり被告人がC3の手数料増額要求を支持する発言をしたというコ
ーチャンの証言部分に、記憶ちがいの疑いがあつてその点が確実とはいえないので
あるから、B1が被告人にP3C型機の性能等を説明し、売込援助の要請をしたこ
とがあつたとしても、それは被告人の積極的発言のない通常の会話として行われた
にすぎないと考えられる。しかるに、被告人は純然たる民間人であり、客観的に見
てL―一〇一一型機のC8への売込の場合とは異なり、売込先との特別な関係も考
えられず、軍用機に対する特別の関心を持つていた事情も証拠上認められないこと
からすれば、B1からP3C型機の売込援助要請につきとおり一辺の話をされたと
しても、対潜哨戒機の話ということは格別として、P3Cとか、オライオンという
機名についてまで、いちいち記憶にとどめていなかつた可能性はこれを払拭できな
いところといわなければならない(なおPXLという言葉をC5社側の者が使つた
とするのは不自然である。)。
 そうすると、当該被告人の証言部分を導き出したC18委員の質問が、「B1さ
んと会われたときに、会われた言葉の中で、B1さんの方から、PXLあるいはP
3Cオライオンといつたような言葉を聞かれた覚えはございませんか。」というも
のであつて、B1が言つた言葉についての記憶をただすものとしか見られないこと
との関係上、被告人がこれに対し「全然ありません」とその記憶がない旨証言した
としても、被告人には真実右のような言葉についての記憶がなかつた可能性を否定
し難いというべきであるから、たとい前記四者会談をB1・被告人だけの会談に減
縮し、時期的枠を取りはずした訴因の形とした場合でも、被告人の証言が虚偽陳述
であると断定することはできず、結局この訴因の関係は犯罪の証明がないとするほ
かはない。
 第五 控訴趣意第五(被告人がa国際空港で二〇万ドルを受領した関係の訴因に
ついての主張)について
 一 国会証言の趣旨に関する理由不備ないし事実誤認
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、原判決は被告人が「昭和四八年一一月初旬ころ、アメリカ合
衆国a国際空港サテライト□内のC53接客用個室において、B1の指示を受けた
ジヨン・ウィリアム・B2らから、C5社のC3に対する支払金員の一部である米
国通貨二〇万ドルを受領した」との事実を前提事実として、国会証言において「B
1がC3に対して支払われた七〇〇万ドルの一部が被告人に渡つたと思われるよう
な証言をしているが、それは事実ではなく虚偽である旨証言した」との事実を虚偽
陳述にあたるとして各認定・摘示しているが、被告人の当該国会における証言は、
「C5社がC3に対し現実に支払つた金員の一部を、C3から被告人が受けとつた
と思われる」というようなB1の米国上院における証言を否定した趣旨のもので、
前記a空港でC5社から直接二〇万ドルを受けとつたという事実関係を前提とした
証言とは見られないから、被告人はなんら虚偽の陳述をしたというにあたらず、こ
れを虚偽陳述にあたるとした原判決には、審理不尽に基づく理由不備もしくは事実
誤認の違法がある、というのである。
 (当裁判所の判断)
 そこで、関係証拠である前記国会証言の会議録に即して検討すると、所論にいう
被告人の証言部分は、C29予算委員長の質問の最後の「B1氏が、C3氏に対し
て支払われた七百万ドルの一部があなた、E1氏に渡つたと思うというような、ま
たそう思われるような、あるいは疑いを持たれるような証言をされておりますが、
これについては事実でありますか、あるいは虚偽でありますか、その点をお聞かせ
を願いたいと思います。」との質問に対し、「事実ではございません。虚偽でござ
います。」と答えた部分がこれにあたると見られるところ、右C29委員長の質問
は、B1の証言について、所論のような「C5社がC3に対し現実に支払つた金員
の一部を被告人がC3から受けとつたと思う」という趣旨に限定したうえでの質問
とは解されない。右質問の全体を見ると、右質問はB1証言が、C5社からC3に
対して支払うべき金員の一部が結果的に被告人に渡つたと思うという趣旨も含むよ
うに受けとれるが、その場合も含めて実際はどうなのかという内容であると認める
のが相当である。右のように、「またそう思われるような、あるいは疑いを持たれ
るような」という慎重な言い廻しからすると、「C3氏に対して支払われた」とい
う表現部分は、支払原因としてC3に対する出金であつて、C3の指示等により第
三者の手に当該金員が渡された場合を除外する趣旨であるとは解し難く、また「E
1氏に渡つたと思う」との表現部分も、C3の手を経由してという限定を付してい
るとは認め難いからである。
 また、「これについては事実でありますか、虚偽でありますか」という質問部分
は、右B1証言についてその真否を尋ねるようでもあるが、質問全体の趣旨からす
ると、B1の証言するような疑惑については、事実であるか否かを尋ねた趣旨であ
ると解すべきである。そして被告人自身も、右のような質問の趣旨は当然に理解し
得たと考えられる。(なお、念のために付言すれば、被告人は、C29委員長の次
の質問者C35委員が第一八問において「わが党の新聞局長C54代議士がアメリ
カに調査に行つて、帰つてきての報告によると、D6委員長と会つたときに、B1
証言を通じてC3氏に渡つた工作資金がE1氏に流れているらしいとあつた、とは
つきり言つておつたとのことでありますが(中略)この点をもう一度明快に、はつ
きりとお答えいただきたい。」と、前記C29委員長の質問と同趣旨の質問を繰り
返したのに対し、「いまお問い合わせの件は全くございません。」と、B1のいう
疑惑について否定の証言をしていることが明らかである。)
 そうすると、被告人がB1の指示を受けたB2から、C5社のC3に対する支払
金員の一部である米国通貨二〇万ドルを受領したことが真実存在するならば、その
事実はB1証言による被告人の疑惑についての前記C29委員長の質問に対し、被
告人が否定した対象に含まれていたと認められるから、虚偽陳述罪の成立すること
は明らかであるというべきである。
 よつて、右国会証言の趣旨に関する原判決の認定ないし事実摘示は相当であつ
て、所論のような理由不備もしくは事実の誤認はないから、この点の論旨は理由が
ない。
 二 二〇万ドル受領の事実認定における事実誤認
 (弁護人の主張)
 所論は、要するに、原判決が前記前提事実として認定した、被告人がa国際空港
においてB2から二〇万ドルを受領したとの事実について極力これを争い、原判決
の右認定には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というのであ
る。そして原判決の認定理由の説示が誤つているとして次のとおり主張する。
 1 B2の本件授受に関する証言の信用性について
 (一) 本件授受に関する直接的証拠であるB2の右証言については、客観的資
料であるB2日記の授受当日である昭和四八年一一月三日の欄にある4:30 C
55CC 9 HOLES との記載を、同人が同日午後四時三〇分からC55・
カントリークラブにおいて九ホールのゴルフのプレイを行つたことを示していると
すれば、被告人の同日午後四時一八分の前記空港到着時刻、同空港と右ゴルフ場と
の距離関係に鑑み、B2が二〇万ドルを被告人に交付することは物理的に不可能と
なるので、かように客観的資料と矛盾するB2の証言には重大な疑問があるのに、
原判決は独自の解釈により、当日午後四時三〇分からの九ホールのゴルフプレイは
日没のため物理的に不可能であるとし、同日記の他の記載例からすれば前記4:3
0の記載はゴルフの開始時刻を示すものではなく、むしろ本件金員授受のなされた
おおよその時刻を記載したものと推定できるとし、右日記の記載はB2証言により
本件授受の事実を認定するに支障とならないと判断したが、現地で同時刻からの二
人組の九ホールのゴルフプレイをすることは不可能ではなく、また、同日記の他の
記載例からする解釈も合理性を欠いているから、右判断は誤りであることが明白で
ある。
 (二) B2は授受の時刻について、「アラウンド・ミツドデイ・サムタイム」
と表現しているところ、ミツドデイとは正午であり、正午を含む前後十数分の時間
帯と解すべきであるから、前記被告人の到着時刻とは合わない不自然な供述であ
り、これは前記日記の4:30 C55CC 9 HOLES の記載を見てそれ
との抵触を避け、作為的にミツドデイ云々と供述した疑いがあるのに、原判決が
「アラウンドミツドデイ・サムタイム」を、早朝深夜を除く日中、デイタイムに近
い意味に理解できるから不自然ではない、とした判断も独断であつて誤りである。
 (三) 原判決は、本件授受の証言が尋問者も予期しなかつたのに、客観的資料
に基づき全く自発的になされたという証言の経緯の点、本件授受が場所・対象物・
相手方の点で三重の意味で異例の支払として強く印象に残つたと推認され、示され
た「摘要」の記載から記憶を甦らせたものとして高度の信用性があると評価できる
とした点、空港における授受の状況の供述が、体験者でなければ知り得ない事項に
つき、他証拠により認められる客観的事実と符合していることも信用性が高いと認
められる理由とした点、授受の場所についてジエツトウエイと同じ階にある小さな
個室だつたと自説を固持した証言部分が、後日実況見分の結果、当時はVIPルー
ムであつた右個室の存在が確かめられたという点、B2証言は虚構であると仮定し
た場合に、さまざまな不合理な結果が生ずるとした点を根拠として右証言が全体と
して信用できると判断しているが、それら根拠のいずれにも批判を免れない独断的
思考があるから、右判断は誤りである。
 (四) B2証言を検討した場合、C3から本件授受の実施を依頼されたという
状況が具体性・明確性を欠くこと、C3へ二〇万ドルを支払う根拠について、修正
一号契約書の約定に反し不合理な説明に終始していること、C3の要求を受けてか
ら授受に至るまでの経過についての供述も、不明瞭かつあいまいに終始しているこ
と、授受の状況についての供述を見ても、渡す前に金額を勘定しなかつたという
点、鞄(アタツシュ・ケース)をどのようにして渡したかという点、授受の場所で
ある個室を誰が予約したかという点等に不自然さや前後矛盾が見られること等の状
況からして、原判決がそれでも右証言に信用性があるとした判断は経験則に反する
誤つた判断である。
 2 B1証言の信用性について
 本件授受についてはB2から事前・事後に報告を受け、了承していた旨のB1の
証言は、B2の尋問終了後にD7検事の露骨な誘導尋問に対し最少限の応答をした
のにとどまり、B2と打ち合せた疑いがあつて信用性に乏しいと見られるのに、原
判決が右証言の信用性を肯定したのは誤りである。
 3 C1及びC2の供述の信用性について
 B2証言の補強証拠とされる右両名の各検面調書の供述は、(一)C1について
はB2と被告人との打合せがあつたらしい状況を供述するのみで、B2日記に記載
された同じころのB2とC3・C1との会談についてふれていない点で大きなそご
があり、C1がC28本社までついて行つて被告人に会う前に追い返されたという
点も不自然であつて信用性に乏しく、(二)C2については、被告人の出迎えの
際、C9の支店長も出迎えていた、被告人一行が荷物を受けとつた記憶はない、C
56への乗り継ぎに地下道を案内したと思う等と述べている点で他の証拠から認め
られる事実と反する点が多く、被告人が一行から離れて一時いなくなつたという供
述部分だけに特に信用性があるとは認め難いのに、原判決が両名の供述に信用性が
あるとし、B2証言の補強証拠としての価値を認めたのも誤つた判断である。
 4 支払原因の不存在等
 本件授受の前提として、C3と被告人間、被告人とB2間で、検察官冒頭陳述の
ような授受に関する打合せがなされた事実についてはなんら立証がないのに、原判
決が他の間接事実から右打合せの存在は推認できると判断した点、C3・被告人間
に本件二〇万ドルについて支払原因があつたか否かは、B2証言の真偽を判断する
うえで看過できない重要問題であるのに、原判決が授受の結果が認められれば縁由
は問題外であるように判断した点、確証がないのに、被告人はL―一〇一一型機の
売込に関しC3と種々協議・実行していること、P3Cの売込関係についても、C
3の手数料増額要求を支持・同調し、B1にこれを同意させたこと等C3を援助し
た状況が窺われるとし、かような状況からすれば、C3がL―一〇一一型機販売成
功の手数料の一部を、被告人に受領させることにしてもなんら不合理でないと判断
した点は、いずれも誤つた判断である。
 5 本件二〇万ドルとC3の報酬等との関係
 C3名義の領収証をB2作成の摘要中の特別勘定のC3に対する支払状況の記載
と対照した場合、C5社からC3とのコンサルタント契約どおりには毎年支払われ
ていないし、契約外の支払さえなされていて、支払はB2の専断に委ねられていた
と見られ、B2がそのうちの五千万円を着服したのではないかという疑いすら持た
れるし、本件二〇万ドルの領収証についても一時の支払なのに二枚に分けて発行さ
れているがその理由が不明である等、疑問点が多々あるのに、原判決の説示はその
説明を欠いたり、十分納得できる説明がなされていない点で合理性に乏しいところ
がある。
 6 本件授受の時間的可能性
 a空港における乗継時間が短時間であつたから、被告人は本件金員授受のための
時間的余裕がなかつたとの弁護人の主張に対し、原判決が実況見分の計測の結果に
よればその余裕はあつたと認められるとした判断も、多人数の移動の場合の実情に
合わない不合理な判断である。
 7 被告人の同行者らの供述
 本件当時a空港に被告人と同行したA11・A12・A13・A14及び被告人
を現地で出迎えたA15ら弁護側証人が、本件授受が行われるような機会がなかつ
た旨供述しているのに、原判決が右証人らはいずれもC28の社員またはその取引
先の関係者である等の理由で、これらの証言には信用性を認め難いとしたのは、証
言の正当な評価を誤つたもので不当である。
 (当裁判所の判断)
 そこで、検討すると、原判決の挙示する関係各証拠に当審における事実取調の結
果を併せて考察すれば、本件授受の事実及びこれを前提として被告人の虚偽陳述を
認めた原判決の認定は、相当としてこれを是認することができる。
 所論に鑑み、所論が最も強調するB2の供述の信用性の判断を中心に、その理由
の要点を示すと、およそ次のとおりである。
 1 B2の供述の信用性について
 (一) 一般的信用性を認めるべき事情
 B2の証言調書中、本件授受に関する供述がなされた経緯を見ると、原判決が弁
護人の事実上の主張についての判断の三項の3 B2証言の信用性(その一、総論
的判断)の(一)項(原判決一五六頁以下)に説示するとおりであると認められ
る。すなわち、それは尋問者も予期しなかつた事項につき、客観的資料に基づき、
全く自発的になされたものと評価することができ、また、本件授受の場所・授受の
対象物・授受の相手方が、他のC3に対する数多くの支払と異なつていて、三重の
意味において唯一異例の支払と見られることから、他の場合よりも強く印象に残つ
たであろうと考えられ、摘要という客観的資料に基づき直ちにその記憶を喚起し得
たものと推測される。そして、以上のことはB2の供述に信用性があると推認させ
る一般的事情ということができる。
 しかしながら、それだけの事情から直ちにB2の本件授受に関する供述に高度の
信用性があると認めることは尚早であるから、さらに信用性を吟味するため、具体
的供述内容について客観的証拠による裏付けの有無を検討する必要がある。
 そこで、以下にB2の本件授受に関する具体的供述について、前記意味での具体
的信用性の有無を検討することとする。
 (二) B2の本件授受に関する供述の内容
 B2の供述する本件授受に至る経過や、本件授受の状況等についての供述の要旨
は次のとおりである。
 「A」 本件交付は一九七三年一一月三日a国際空港のC53の建物で行われ
た。その時立ち会つた人はD1氏(注、B1の供述によると、C6の財務担当者)
だけだつた。それは現金だつたが、何ドル札だつたか憶えていない。D1氏が金を
持つていた(から私は金の勘定はしていない)。それをE1氏に渡したのは、D1
氏のように思うが、この点については確かではない。E1氏とD1氏はそれまで会
つたことがなかつた。私は彼らを空港で紹介した(ク嘱五巻三五四・三五五頁)。
 「B」 E1氏と空港で会う手筈については、この交付について私がC3氏から
要求を受けたとき、それが受け入れられるかどうかをkのC5社に照会し、受け入
れられるという返事だつたので、そのことをC3氏に伝えたが、しばらくして彼は
私に、私が自ら合衆国へ行つて、この交付が適切に行われるよう立ち会つてくれと
言つてきた。それで、当初はaで他の人がそれを交付する手筈だつたが、私自身の
立会をC3氏から要求されたので、私は再びロスアンゼルスのB1氏の方に連絡し
てC3氏の要求を伝えたら、来てくれという返事だつた(同三五六頁)。C3氏
は、私に東京で支払わないで合衆国で支払つてくれと特に要求したのだが、そうす
る理由は説明しなかつた。私から彼に尋ねたかどうかも憶えていない(同三五七
頁)。
 「C」 D1氏をロスアンゼルスの下町で私の車に乗せて一緒に空港へ行つて、
E1氏の飛行機が着くのをしばらく待つた。その飛行機はbから来たと思う。E1
氏は金を受けとつた後、ロスアンゼルスから去つたか、滞在したかは知らない。一
緒にいた時間ははつきりしないが、一〇分から一五分位だつたと思う。交付の時刻
は、私の記憶では真昼の前後ころだつた(原文・It was around m
idday sometime)、一二時の前か後かははつきりしない。私の記憶
では真昼です(同三五七・三五八頁。この時刻の点の訳文が「昼間」となつている
のは不正確と認められる。)。
 「D」 (空港では)私がC53の個室の一つを使わせてもらうよう話を決めて
あつた。E1氏が到着し、彼がほかの人達と一緒に出てきたが、そのグループと離
れて私と一緒にD1氏がアタツシユケースを持つて待つている部屋へ行き、彼が…
…いや、はつきりはしないが私が渡したと思うが、E1氏はアタツシユケースを受
けとつた。
 私がアタッシュケースの鍵を彼に渡し、それをあけて中身を確認するようにいう
と、彼はそうした。私も中身を見たが、合衆国ドルで、標準的な銀行の束だつたよ
うに思う。E1氏が現金を数えたかどうかについては、そうしたという記憶はな
い。彼はそそくさとした様子で(原文・He may have in a cu
rsory manner)坐りもせず、それぞれの札を数えはしなかつた(同三
五八・三五九頁。この所の訳文も必ずしも正確とはいえない。)。
 「E」 C3氏からの前記交付の要求は、はつきりしないが一一月三日より一〇
日から二週間位前に、C3氏から直接言われたと思う。C3氏は、E1氏にその支
払をする理由は言つてくれなかつた。私がC3氏から要求されたのは、C5社がこ
の支払をE1氏にすること、及びそれをL―一〇一一のコンサルタント契約に基づ
くC3氏への手数料支払義務の一部の履行として支払うこと、そしてL―一〇一一
の手数料としては、七号機と八号機について支払うべき分である、ということだつ
た。C3氏はそのとき、その支払に対する領収証は自分が書くと言つた(同三五九
―三六二頁)。
 「F」 B2日記の七三年一〇月・一一月の記載を示されながら、一〇月一五
日、iのC3事務所でC31・C3両氏と会い、同月二四日にもC31氏とiで会
つているが、前述のC3氏から本件授受の要求を受けたのは、右二つの会合のどち
らであつたかは思い出せない。一〇月三〇日の「C41」(C31)「交付―銀行
報告」とある記載は、本件授受と関係があるのか全くはつきりしないが、この種支
払に関する合衆国政府への報告義務の問題があつたような気がする。同日の「C4
2/Toshi」「授受の状況」とある記載は、C42はC3、ToshiはC1
であり、これが私自身の授受への立会を要求された会合であるかどうかは、そうだ
つたかも知れないが、現在記憶していない。一〇月三一日の「テレコソーC58」
「資金OK」とあるのは、現金が準備できた、またはできるだろうというD8氏
(他の証拠によるとC5社の財務部副部長)への通告かと思う。D1氏には、私が
合衆国に着く前か後か思い出せないが、この交付に関与するように頼んでいる。そ
れは同氏に直接だつたかも知れないが、あるいはD8氏に対してであつたかも知れ
ない。
 右と同じ日(一〇月三一日)に「テレコンーC44―C48」―P3C―授受L
とあるのは、私がB1氏とC48・P3Cの件及び本件二〇万ドルのことで話し合
つたことだと思うが、右話し合いの内容がどうであつたかは思い出せない。しか
し、C3氏の私自身の立会要求の件を私がコーチャン氏に相談したのは、たぶん右
同日かまたはそのころだつたと思う(七巻五八六―五九四頁)。
 「G」 D1氏が金を入れて持つていたアタツシユケースは、たしか新品の黒皮
のアタツシユケースだつたと思う。私はその金を勘定はしなかつた。E1氏と一緒
に飛行機を降りた連れの人々は皆日本人だつたと思うが、はつきりしたことはいえ
ない。彼らは一分隊位たつたが(原文 It was quite a cont
ingent,この点の訳文も不正確と認められる。)五人から一〇人位はいたよ
うに見えた。E1氏がどんな服装であつたかは憶えていない。先日この授受が行わ
れたと言つた個室は、小さな個室で、乗降客が飛行機の所に行くジエツトウエイと
いう通路と同じ階にあつた。その部屋を手配したのはD1氏だつたと思う。E1氏
は鞄を渡されたとき、ただ「ありがとう」と言つただけである。彼はそのアタツシ
ユケースを持つて行つた。私は彼からは、その時もその後も領収証は受けとつてい
ない(同五九七―六〇一頁)。
 およそ以上のような供述内容であるところ、まずその核心をなすa空港における
授受の状況に関しては、原審当時においてはこれを直接裏付けるような他の証拠は
なく、ただB2の供述にいう被告人の空港到着状況が、弁護側証人による当該状況
とおおむね符合していると見られること(もつとも、原判決のいうような体験者で
なければ知り得ないというほどの個別的・具体的な状況とはいえない。)、B2が
授受した場所であると供述している小さな個室が、後日クラッターの指示や日本の
検察官の実況見分等により、被告人の出てきたジエツトウエイと同一階て至近距離
の所に実在し、当時C53がVIPルームとして使用していた小部屋に該当すると
確かめられたこと、等がB2の供述を裏付ける状況ないし事実てあると見られるだ
けであつた(所論は、右VIPルームとしての使用は、重要な旅客のためにはいつ
でも開放されているので、一般公衆用に供しない意味でのプライベート・ルームに
は該当しないようにいうが、関係証拠によれば同室は、VIPルームとしての使用
のほか、C53の顧客の請求により使用が許されていたことが認められ、特定の顧
客のために専用に供される意味では、プライベート・ルームと表現することも、あ
ながち誤りであるとはいえないから、右所論は当を得たものとはいえない。)。
 (三) D1の大陪審証言調書の供述
 ところが当審において、本件授受の際B2に同行したというD1の大陪審証言調
書(抄本)が取調へられたが、その内容はB2の前記供述を直接的に補強する性質
のものと思われる。なお、弁護人は最終弁論において、右D1の証言調書の証拠能
力につき言及しているが、この点は当裁判所が先に同調書の証拠採用決定において
判断したとおりであつて、これを変更すべき理由は認められない。
 D1の供述の要旨は次のとおりである。
 「合衆国において、私が関与した(C5社の疑惑の)支払として、我々がC59
社から取得した総額二〇万ドルの米国通貨の交付があつた。それは一〇月だつたと
思う。私はそれをC59社の会計室で数えて我々の金庫室に戻した。B2氏は、翌
日それをある人に持つて行かねばならないと言つた。私は彼が一人で行くことにつ
いて忠告し、会社のためにも彼自身のためにも、私が彼に同行した方がよいと示唆
した。」(なお、一九七三年一〇月三〇日付C6の振出、金額二〇万ドルの自己の
署名のある小切手及びその振出請求書の写を示され、これがその時の米国通貨購入
のためのものであつたことを認めている。)「我々はa空港のC53のターミナル
に行き、そこのVIPルームで三人の東洋人の紳士と会つた。私は声の聞える範囲
外にいて、B2(B2のこと)は三人のグループの中央にいた人の方に行き、握手
をして、彼に二〇万ドル入りのブリーフケースを渡し、そして別れた。私は紹介さ
れなかつた。私は(相手の)名前も聞かなかつたし、その会話も聞かなかつた。そ
の金をどこで誰が最終的に受領するのか、私は知らなかつた。しかし、私はその後
C3からの領収証を受けとつた。」
 以上のD1の供述を検討すると、それは一連のC5社の対外不正支払等の米国国
内法違反容疑について証言している中の一場面の供述であるため、簡潔にすぎる嫌
いはあるけれども、B2とD1がa国際空港に同行したこと、C53の建物のVI
PルームでB2が被告人と思われる人物と会い、二〇万ドルが入つたアタツシユケ
ースまたはブリーフケース(B2の供述ではブリーフケースとも言つている。)を
その人物に渡したこと、その後右支払についてC3名義の領収証が送付されたこと
の諸点において、B2とD1の供述は一致していると見ることができ、B2の本件
授受の状況の供述の基本的部分は、D1の供述により裏付けされているということ
ができる。
 もつとも、B2の供述ては被告人が同行者から離れて、一人で金を受け取つたよ
うにいい、また、D1を被告人に紹介したようにいう点がD1の供述とくいちがつ
ているが、被告人に同行者がいたという点では一致しているうえ、被告人にはC2
8の社員である秘書と通訳担当者が身辺に付いていたことも考えられるところ、授
受の相手方以外にも近くに人がいたかどうかの認識は、B2とD1の立場の相違
(前者は授受の責任者であつて授受の相手方により多く注意を払うであろうし、後
者は授受の安全を見守る護衛者的立場であつたから、相手方の周辺にも当然に注意
を払つたであろうと考えられる。)からすれば、右認識に差異が生じても不自然な
いし不合理とはいえず、見守り役として臨んだD1の供述の方に信用性があると認
められ、また、VIPルームの中に入室したのは被告人だけという可能性もあり得
るから、B2が入室後のことだけ供述していると解すれば、矛盾はないことにな
る。次に紹介の有無の点は、B2の供述を検討すると、D1と被告人はそれまでに
会つたことがあるか、という質問に対し否定の答えをしたのに続き、「あなたは彼
らを空港で紹介したのか」という質問に対し、「はい」と答えただけであるから、
記憶が不明確であつたのに、両者は初対面であつたから紹介したであろうという推
測による供述にすぎないと認める余地があり、そうでなくても記憶の錯誤による思
いちがいの可能性を否定できないから、この紹介の有無の点も紹介される立場にあ
つたD1の供述の方が真実に近いと認めるべきである。
 このように見るならば、右程度のそごは本件授受の状況についての右両者の供述
が、基本的には一致していると認めるのに妨げとはならないというべきである。ま
た、本件授受にD1が立ち会うに至った経過についても、B2が依頼したからか、
D1が自分から買つて出たのかの点でそごが見られるが、これは授受に至る経過的
な事実に関するものにすぎず、前同様に記憶の不明確化または錯誤の起り得る事柄
と思われるから、この点も両者の供述の基本的な一致性を損なうほどの事情とはい
えない。
 そして、右D1の供述は、当裁判所が先にその証言調書の採用決定において説示
したとおり、米国の大陪審の証人尋問手続において、一般的に虚偽の供述を排除
し、真実の供述が得られやすいような状況のもとてなされたものであるうえ、C6
の二〇万ドルの小切手によりC59社から米国通貨二〇万トドを引出し、a空港に
おける交付の準備をしたという点は、本件の原審において取調済のC6振出の二〇
万ドルの小切手及びその振出請求書の各写(甲(二)99・98)、D9の証人尋
問調書写(甲(一)298)によればその裏付けは十分であると認められ、その点
からしても供述の具体的信用性は高いと思われる。更に、右のようにB2の本件授
受の状況についての供述と、D1の同じ事項についての供述が、細かい点では差異
がありながら基本的には一致していることは、両者の証人尋問が別個の機会に別個
の目的で、別個の機関により行われていることをも考慮すると、両者の間に通謀等
がないままに(前記のように基本的部分以外の点でくいちがいが多少見られること
は、かえつて通謀による打ち合せ等がなかつた証左になると考えられる。)、おの
ずから一致した供述が得られたと考えられ、このことは本件授受が実在したからこ
そ、これを実際に体験した両者の供述が一致したものと見るべき事情であるといえ
る。
 弁護人は右D1の供述について、同じ証言調書中の他の供述事項(C5社のC3
に対する支払金調達の他の一口三、〇〇〇万円の関係)等に関し、米国通貨の国外
移送についての責任追及を回避するため、責任のがれ的な虚偽の供述をしているの
で、本件授受に関する供述部分にも信用性がないようにいうが、たとい所論のとお
り国外移送の関係において虚偽の供述をしているとしても、本件授受は米国の国内
での支払であるから、これについては他の国外移送の関係とは事情が異なり、責任
を追及されるおそれがないと見られるのであつて、あえて虚偽の供述をなす必要性
は認められないから右所論は失当である。
 また、弁護人は、D1が二〇万ドルの交付先が誰であるかB2から話をされず、
空港においても紹介されなかつたと供述している点は、C6の支払責任者としての
立場からすると不自然・不合理であるようにもいうが、D1の供述を通観すると、
本件二〇万ドルの授受はC3に対する支払として、C3から領収証が出される事情
は察知していたことを窺うに難くないから、従来B2の要求どおりにC3に対する
支払の資金を調達する立場にあつたD1としては、C3への支払関係で第三者に渡
すと言われれば、それ以上B2に問いただす必要はなく、a空港でも本件金員が無
事に相手に渡りさえずればよいとして、あえて相手の東洋人の紳士の名前の詮索も
しなかつたということが考えられるのであつて、このように見られる以上所論のよ
うに不自然・不合理であるというには当らない。
 (四) 授受の前後にわたる状況について
 次に、B2証言の信用性に関し、授受の前後にわたる状況について裏付けの有無
を検討する。
 まず、C3の当初の要求の時点では他の者が本件授受を担当することになつてい
たが、その後C3がB2自身の立会を要求したため、そのように変更されたという
経過の点は、B2が一九七三年一〇月二六日付、C5社側D10あてテレツクスに
より、同月二九日(月曜日)からの週の間(この点は所論のように金曜日に発信し
ているからといつて、木曜日までの趣旨と解するのは不自然である。)は東京支社
には旅行予定はない旨連絡していた(符137、テレツクス綴)のに、その後右の
週間中の一一月二日(金曜日)には予定を変更してC60でロスアンゼルスヘ飛ん
でいること、及び前記B2供述の「F」に示したように、B2日記によると同人
は、同年一〇月三〇日にはC1を通訳としてC3と「授受の状況」について話し合
つたと見られるほか、翌三日にはC5社の財務部副部長のD8に電話して資金の準
備ができたかどうか確認をし(この点尋問者の質問が不十分であるが、D8が資金
供給担当者、B2が資金受領着である事柄の性質上、右のように証言した趣旨に理
解すべきである。また、右の資金とは、後記摘要中の特別勘定によれば、B2が別
途C14に交付すべき五億円は同月一二日に半額の支払が完了し、同月末で同資金
用に一億円を超える貯えがあり、残額は翌年一月と二月に支払われているから、一
〇月末に急いで残額の資金準備を確かめる必要性は認め難く、資金OKとある旦記
の記載からしても、最も支払日時が迫つていた本件授受の分を指すと解するのが相
当である。)、また、B1とも電話でC48・P3Cの件のほか、本件授受に関し
て話し合つたことが認められ、B2自身も「C3からの本件授受の立会要求の件を
B1氏に相談したのはたぶん右三一日またはそのころだつたと思う」と供述してい
ることからして、B2が右一〇月三〇日ころ、C3から本件授受に立ち会うよう要
求を受け、翌三一日ころ右要求の件をB1に相談したことは、ほぼ確実と認めるこ
とができる。また、C1の証言及び検面供述も、C28でB2に追い返されたよう
にいう部分は、かかわり合いになるのを避けているためであるような印象を否定て
きないが、その余の部分は信用性に疑問はないと認められ、右一〇月三〇日ころの
B2とC3の会談及びその内容について、間接的ながら補強証拠とするに足りるも
のである。また、本件二〇万ドルに対応する領収証として、一ドル二六五円に換算
した昭和四八年一一月三日付の、C3名義の金額合計五、三〇〇万円の領収証(半
額ずつの二通)が後日B2に交付され、これが他の場合と同様にC31の英訳文を
添えたうえでC5社に届けられて、少なくともB2及びC31においてはC3の他
の領収証と同様、C3が発行したものとして怪しまなかつた経過が窺われること
も、B2がC5社のL―一〇一一型機の日本における販売活動資金の全収支状況等
を記録していた摘要中の特別勘定のメモに、本件二〇万ドルはD1から支出され、
C3のマーケツテイング・コンサルタント契約修正一号契約書に基づくC8に対す
るL―一〇一一型機の販売手数料の七号機分(一二万ドル)と八号機分の三分の二
(八万ドル)として処理された旨記載されていること(スペシヤル・アカウントと
題するメモ写、甲(一)207)と併せて、B2がC3から本件授受に関して要求
をされたという前記「E」の部分の供述を裏付けていると認めることができる(な
お、右特別勘定の記載によれば、右八号機分の販売手数料の残額四万ドルは、一九
七五年五月七日、九号機・一〇号機分各一二万ドルと合せて計二八万ドル(円換算
で八、一三四万円)がC3に支払われたことになつており、同日付の同金額のC3
名義領収証の存在と符合している。)。
 このように見てくると、本件授受に至る経過及び授受の際の状況等に関するB2
の供述は、細目の点はともかく、大筋においてはD1の供述その他の客観的証拠に
よつて十分裏付けされており、右両者間に通謀による偽装工作があつたことが疑わ
れない限り、両者の供述は相互に補強されることにより、高度の信用性を有するも
のということができる。
 (五) B2日記の本件授受当日の記載等について
 ところが、弁護人は原審以来、本件授受があつたとするクラッターの供述は、同
人が本件二〇万ドルを他のなんらかの用途に流用しながら、米国内での支払である
ためその支払先を隠蔽する手段として、かねて面識があり再々渡米したことのある
被告人に支払つたように偽装工作し、D1の協力を得て出金関係も形式を整えたう
え、支払先を被告人に押しつけたものであつて虚偽の供述であるように主張し、こ
れを基調としてB2の供述に信用性がない理由を縷々主張しているのであるが、右
B2の偽装工作説(したがつてD1との通謀説)を踏まえて、の根拠として主張さ
れていると見られる主な論点を検討してみると、
 (1) まず弁護人が主張しているB2証言と最も矛盾・対立するB2日記の本
件授受当日の4:30 C55CC 9HOLESの記載は、それがB2の行動を
正確に記録したものであるならば、まさに本件授受とは両立し得ないことになる
が、右記載が正確であるという前提が確かめられていないので、原審以来右記載の
正確性に関し、現地における午後四時三〇分からの二人組による九ホールのゴルフ
プレイの能否の点が問題とされてきた。
 しかしながら、右プレイが可能であるとしたところで、B2が当日そのとおりプ
レイし、その旨旦記に記載したものと直ちに断定することはできず、B2自身が日
記の他の部分に関してではあるが、日記の記載に絶対誤りがないとはいえない旨供
述していること(ク嘱七巻五九四頁)からすると、現地において一一月三日午後四
時半からの九ホールのプレイの可能なことを論証してみても、それが当日実際にそ
のプレイをしたことを意味するものでなければ、直ちにB2証言の信用性に関し、
致命的な疑いを生じさせることにはならないというべきである。
 この点に関し、原判決が右4:30以下の記載の解釈として、現地における日没
の関係から、当該時刻からの九ホールのゴルフプレイは物理的に不可能であると認
めた点は、前提とした緯度が約一度誤っていたこと(当審の検察官提出の実況見分
調書参照)もあり、依拠するC55CCのD11の供述も「C55CCで二人組で
プレイする場合、九ホールでは通常一時間半を要するが、一一月にはゴルフコース
は遅くとも五時三〇分にはクローズするので、二人組で午後四時三〇分以降九ホー
ルのプレイをすることは、通常不可能である。」というのであつて、絶対に不可能
とするものではないから、いささか速断にすぎた嫌いがある。また、B2日記の他
の記載例から推及して、4:30とC55CC以下の記載に結びつきがないと見た
点も、同日記の他の記載例全般と対照すると必ずしもそのようには見られないか
ら、原判決がそれらの理由から、4:30はゴルフとは関係がなく、本件授受のお
およその時刻を記載したものと推定されるとした点は、一つの推論としてその可能
性はあるものの、それが正しいと断定すべき根拠はないといわなければならない。
 右4:30 C55CC 9HOLES の記載の意味は、B2日記の他のゴル
フに関する記載例全般と対照して見た場合は、当日その時刻から九ホールのゴルフ
プレイをした趣旨に見るのが最も素直な解釈であり、B2がその趣旨て記載した可
能性は否定し難いところである。右記載が実体のない架空の記載であると見ること
もできず(たとえば予定だけで実行しなかつたのであれば、後日抹消線を引くこと
も考えられる。)、また、日米の時差の関係で、B2が帰米した一一月二日にプレ
イしたのを、三日のつもりで誤記したように見ることも、B2が日米間をしばしば
往復していて、時差には慣れていたと見られること(この点はB2の証言中の、一
一月二日C60便て帰米した関係についての、D7検事との問答部分を見れば明ら
かである。)からして相当でないと考えられるからである。
 しかしながら、ロスアンゼルスの当日の日没時刻と、C55CCにおける二人組
の九ホールのプレイの通常の所要時間の関係からすると、原判決が疑念を持つたよ
うに、B2がゴルフをする気であれば、当日は土曜日でもあり、もつと明るい時間
帯を随意に選べるはずであるのに、日没の関係で九ホールのプレイを終えることが
危ぶまれるほどの時刻(この点は弁護人の現地における実況見分等によつても、右
時刻から開始した場合右プレイを急ぎ目に行つてぎりぎりに完了できたというので
あつて、余裕を持つて完了させ得る時刻でないことに変りはない。)になぜプレイ
を始めなければならなかつたか、という疑問も当然に考えられるのであつて、所論
指摘のB2旦記のゴルフに関する全記載例を見ても、このように遅い時刻からのゴ
ルフの記載例は他に見当らないこと(最も遅いもので午後三時である)及び検察官
の現地における実況見分の際も、一般のプレイヤーの最終スタート時刻は午後三時
五〇分までであつたことからすると、前記4:30以下の記載のうち、少なくとも
時刻の部分は誤記ではないか、あるいはゴルフと関係がないのではないかという疑
問を生ずることは避けられない。したがつて、原判決の考え方は、4:30が積極
的に本件二〇万ドル授受の時刻を示すものと断定した点はともかく、右記載によつ
て直ちにB2が四時三〇分からゴルフを行つていたということにはならないとした
点では誤つていなかつたということができる。右のように考えるならば、B2の説
明がないことから、所論の解釈を含め、いろいろな可能性のうち、いずれが正しい
とも断定の仕様がない前記4:30 C55CC 9HOLESの記載をもつて、
直ちに本件授受の容疑事実と両立し得ない記載と見ることはできない。
 結局は、右授受に関する証拠としてB2の証言以外にも確実なものがあつて、授
受の事実が確実に認定できる場合には、右4:30以下の記載がその認定の妨げと
なるとまではいえないことになる。
 (2) 右のほか、弁護人は、B2証言の虚偽性の現われとして、授受の時刻に
ついての同人の「アラウンド・ミツドデイ・サムタイム」という供述は作為的であ
ると主張する。
 しかしながら、B2が当該供述前に前記4:30以下の旦記の記載部分を見てい
たという可能性はあるとしても、必ず見ていたと断定てきる事情は認められない
し、多数日にわたる日記の記載を逐一点検することもなく執行官のもとに持参・提
出したという可能性も否定できないから、右「アラウンド・ミツドデイ・サムタイ
ム」という表現が、正午を含む前後の時間帯を指す趣旨であるとしても、そのこと
から直ちにB2が前記4:30以下の記載を意識して、これとの抵触を避けるため
作為的な供述をしたものとは断定できない。同人が三年半以上も前のことでもあ
り、時刻に関する記憶の不明確なために思いちがいにより右のような供述をした可
能性もあり得るのであつて(本件授受のため帰米した際、B2は正午ころロスアン
ゼルス国際空港に到着しているので、その時の印象が残っていて、これと授受当日
の記憶とを混同して供述したものとも考えられる。)、この点の主張もB2証言の
虚偽性に直ちに結びつくものとは認められない。
 (3) その他にも所論はB2証言の前後矛盾、他の証拠との矛盾、不自然性・
不合理性・論理的不整合性(授受の要求を受けてから実現に至るまでの経過の不明
確性または説明の不足等を含む)等を緩々主張しているのであるが、所論の点が多
々あるとしても、尋問の不足または拙劣さによる結果と思われる点もあり、なにぶ
ん証言事項が三年以上前の古い事柄てあり記憶の忘失、または不明確化のために供
述が不正確になる可能性もあり得るのであつて、これらの点もB2証言の信用性を
根本的に疑わせる事情となるとは、にわかに断定し難いといわなければならない。
 (六) 弁護人の主張する偽装工作説とB2証言を裏付ける客観的証拠の有無に
ついて
 弁護人の主張に立ち戻つて考えると、所論はB2とD1の通謀による偽装工作説
を主張しているので、そうであれば右両者の供述がいかに一致しているにせよ、そ
れは両者の通謀による結果であるということになる。そこで、B2証言の信用性を
右偽装工作説の疑いを排除して明確に認めるためには、D1の供述以外に、B2証
言の核心部分について、客観的で動かすことのできない裏付け証拠があるか否かが
検討されなければならない。
 更に、本件授受の関係において、直接証拠とされているB2、B1、D1らの証
言調書は、いずれも米国における嘱託証人尋問または大陪審の証人尋問の結果得ら
れたものであつて、被告人側に反対尋問による吟味の機会を与えていないため、被
告人・弁護人としては反対尋問により確かめたい点は多々ありながらこれを実施す
る手段を持ち得なかつたという意味において、右証人らの供述は通常の公判廷の証
言と比べて不完全なものであることは否定できないところである。そこで、右不完
全性、すなわち反対尋問の吟味による供述の真実性テストの手段の欠如を補い、反
対尋問を実施したとしても結果に変りはないと認められるほどの高度の信用性が、
右証人らの供述に認められることが公平な見地から見て必要であるが、右高度の信
用性の有無の判断のためにも、B2の本件授受に関する供述に、客観的で動かすこ
とのできない裏付け証拠があるか否かが検討れなければならない。
 右の意味の裏付け証拠としては、二つのものが考えられる、その一は、本件授受
に対応するC3名義の領収証は真正に作成されたか否かである。すなわち、本件授
受があつたという昭和四八年一月三日付、金額各二、六五〇万円のC3の記名印と
押印らしきもののある仮領収証二通(ただしの原本はC5社が保管しており、原審
においては他のC3名義領収証四五通分と同様に、検官撮影のそのカラー写真が取
り調べられた。)が、C3の意思に基づいて作成されたものと認定できれば、C5
社のL―一〇一一型機売込活動にかかる支払に関する外国送金受領証に本件二〇万
ドルの分だけがないこと、前記のとおりC6の小切手によりC59社から二〇万ド
ルが出金され(その日付は一一月一日である)、B2ないしD1の手に渡つたと認
められることと相侯つて、C3が自己のコンサルタント契約(修正一号)に基づく
C8への七、八号機分のL―一〇一一型機の追加報酬のうち二〇万ドルを、自らは
国内で受け取つていないのに前記日付の領収証を出したということになり、これは
B2の供述するとおり、C3の要求ないし依頼によりロスアンゼルスにおいて右二
〇万ドルが被告人に交付されているからこそである、と考えざるを得ない。
 しからば、右領収証が真正に作成されているということは、本件授受があつたこ
とを推認させる有力な間接事実というべきであり、逆に右領収証の真正が認定でき
ないのであれば、それこそ弁護人主張のB2偽装工作説(弁護人はC3の領収証は
C31を抱きこめばその作成は容易である旨、C31と通謀しての偽造説を主張し
ていると見られる。)を裏付けることになる、というべきである。
 その二は、本件授受されたという二〇万ドルが被告人の手元に入つたことの裏付
け証拠があるか否かの点である(およそ贈収賄事件等で金員授受の有無が争われた
場合に、授受されたという金員が、受領者とされる被告人の手元に入つていること
が、預金通帳や家計簿等の客観的証拠によつて確認され、あるいは金員が費消され
た場合に、そのことが支払関係の記録等によつて確認できるならば、授受の事実は
疑いの余地なく証明されたといえようが、右の確認ができない場合には、授受を認
める贈賄者側の供述と出金関係の証拠だけで授受の事実を認定することには、いさ
さかためらいを感ぜざるを得ないであろう。殊に本件においては弁護人側はB2と
D1の共謀による偽装工作説を主張しているので、授受後の金員の動きに関する証
拠の有無を検討する必要性が大きいというベきである。)。
 すなわち、本件授受の有無について、被告人が当該二〇万ドルを入手していて他
に支払つたことを認めるに足りる裏付け証拠があれば、これは極めて有力な間接事
実になるものといわなければならない。
 (七) C3領収証の作成の真否について
 そこで、まず右C3名義の本件二〇万ドルに対応する領収証が真正に作成された
ものか否かを検討すると、関係各証拠(甲(一)203及び204の検察官の報告
書に添付された領収証カラー写真四七枚、領収証(メモ)写真一枚、甲(一)29
3の検察官の報告書謄本、B2作成のスペシヤル・アカウントと題するメモ(写)
(甲(一)207)、C31の検察官に対する昭和五一年二月二六日付・同月二七
日付・同月二八日付・同年三月三日付・同月五日付・同月九日付・同年四月一六日
付・同月一九日付・同年五月六日付・同月一八日付各供述調書謄本、警察庁技官C
61外二名作成の鑑定書謄本(甲(一)51)、科学捜査研究所技官C62作成の
鑑定書謄本(甲(一)294)等)によれば、次のような事実を認めることができ
る。
 「A」 C31は廣報宣伝業を営むC63株式会社の社長として、同社がC5社
関係の海外宣伝活動の一部を担当していた関係で、同じh町ビルに事務所があつた
前記C7社に駐在するB2と面識を得、またC3とは同人が戦犯容疑で巣鴨収容所
にいたころ通訳として知り合い、その後C3の著者の英訳と出版に尽力してやった
こともあつて、C3から特に信頼されていた者であるが、C5社のB1またはB2
ないし右両者がC3と会うときは、必ずC31が通訳として立ち会うことになつて
いた。
 「B」 C5社とC3間の一九六九年一月一五日付マーケツテイソグ・コンサル
タント契約書(写)(符141)、同年六月一日付マーケツテイング・コンサルタ
ント修正一号契約書(写)(符142)、一九七三年七月二七日付マーケツテイソ
グ・コンサルタント修正四号契約書(写)(符143)、同年一一月三〇日付マー
ケツテイング・コンサルタント修正五号契約書(写)(符144)の作成経過は、
おおむね右各日付ころ、B2・C3・C31の三名が会合し、B2が用意してきた
英文の契約書の内容をC31が逐一翻訳してC3に説明し、C3が納得したうえで
B2・C3の両者がこれに署名し(基本契約書及び修正一号契約書)、またはC3
が記名印を押し(修正四号・同五号各契約書)、さらにC3が自ら認印を押印し
て、いずれも真正に作成された。
 「C」 前記C3名義の多数の領収証(仮領収証と題したものが多いか、便宜上
「領収証」と呼称する。)が授受された経過は、一般的にはB2が前記コンサルタ
ント契約に基づく、C5社のC3に対する顧問料ないし報酬としての金員を、C3
宅またはC3事務所に持参してC3に交付する都度、C3からB2に手交されてい
たが、その多くの場合はその場で封筒に入れて手渡され、金額が多額で領収証を数
通に分けて出すようB2が依頼した場合にはしばらく時日を置いた後、右同様にC
3からB2に交付されるのをC31が目撃しており、B2は領収証を受けとつて
二、三日以内にC31に依頼してその英訳文を作成させるのを通例としていた。
 右の経過を通じて、C31はC3の記名印や認印をC3から預かつたことはな
く、自らがC3名義の領収証(原本)の作成に関与したことは一切なかつた。
 「D」 本件の二〇万ドルに見合う前記金額二、六五〇万円の領収証二通も、右
のような経過の中において、C31がB2から英訳を依頼されてその英訳文を作
成・添付したことはC31が記憶して供述しているが、この領収証二通がC3から
B2に対し交付された具体的状況については、C31に記憶がないためか、不明の
ままである(所論は、C31がこの件に深くかかわりを持つているために、B2と
の打合せでその事情を公けにすることができなかつたのではないかと推論している
が、これは単なる憶測にすぎないというべきである。)。
 「E」 本件二〇万ドルに見合う前記領収証二通のカラー写真を、他のC3名義
の領収証四五通のカラー写真と比較対照して見ると、昭和四七年一〇月二〇日付の
ものより前の領収証と後の領収証とは使用の用紙が異なつているが、右日付以後の
ものは本件の二通を含め同種類の用紙が使用されていて、C3の記名印及びC3の
認印の印影は、すべて同一形状であり、前後を通じ同一の記名印及び認印が押捺さ
れたものと認めることができる。
 「F」 なお、前記摘要中の特別勘定のうち、C3に対する支払関係の記載を、
前記C31の供述により真正に作成されたことが認められるC5社・C3間のマー
ケツテイング・コソサルタンート契約書、同修正一号契約書、同修正五号契約書に
記載のC3に対する顧問料・販売手数料等の支払約定、及びC3名義の領収証四七
枚等の各作成日付・受領金額と対照して検討すると、多少の支払時期のずれは見ら
れるものの、全体的に見て右契約に対応した顧問料・販売手数料の支払がなされた
計算になつていることを認めることができる(ク嘱六巻添付副証五四号参照)。
 「G」 C3の検面供述によれば、対C5社関係の契約書・領収証には同一の認
印が使用されていたが、それはC31に保管させて領収証の作成等に使用を一任し
ていた、自分としてはC5社との基本契約書と修正一号契約書に署名しただけであ
る、というのであるが、前記鑑定書二通によると、C3名義の四億四、〇〇〇万円
のメモ領収証に記載された「C3」の署名と、右基本契約書及ひ修正一号契約書に
記載されたC3の署名とは、同一人の署名と思われるとされており、また、C3名
義の昭和五〇年七月二九日付領収証(追加提出分)二通に記載された手書きの日付
部分は、C3の秘書C27の筆跡と対照して同一人の筆跡と推定されるともされて
いて、これらの点からすれば、C3またはC27が右領収証の作成に関与している
ことが認められ、右C3の供述は信用できないことが明らかである。
 以上認定した事実によれば、当該C3名義の領収証二通は、C3の意思に基づい
て真正に作成されたものと認めるのが相当である(C3本人の捜査・公判段階を通
じて全領収証につき作成の真正を否認する供述は、右関係各証拠と対比し信用する
ことができない。)。そうだとすると、前記(六)記載の理由により、この事実は
本件授受が案在したことを裏付ける有力な間接事実であるということができる。
 なお、念のため付言すると、B2偽装工作説を主張する所論中には、B2がC3
とも通謀していたように論ずる部分もあるが、もしB2が自己の資金流用を隠蔽す
るためC3の協力を求めたとすれば、C3に架空の領収証を発行してもらえば足
り、米国で支払われているという関係があつても、渡米したC3の代理人に渡した
ことにすればよいのであるから、これを被告人に支払つたように偽装すべき必要性
はそもそもないといわなければならない。また、C3がB2の作り上げた被告人に
渡したという筋書に協力してやるため、自己名義の架空の領収証を作成したという
ことは、五、三〇〇万円という多額の自己の報酬を犠牲にすることになり、C3と
B2間にはそのようなことを許容するほどの親密な関係はなかつたと見られること
からして、到底あり得ないことと考えられる(なお、一件分の支払に複数の小分け
した領収証が作成されていることは、C3への他の支払についても類似の事例はい
くつも認められるので、これまた偽装工作説の根拠とはなり得ない。)。
 (八) 授受後の金員の動きについて
 次に、被告人がその金員を入手していて他に支払つたことの裏付け証拠があるか
否かの点が問題になるが、検察官は原審において、「被告人は米国ネバタ州mのC
64ホテルにおいて、C65が昭和四七年一〇月に同ホテルのカジノ賭博場で負つ
た一二〇万ドルの債務の支払保証をし、右債務の分割払の最終回分二〇万ドルが四
八年一〇月の約定期日を過ぎて未払であつたところ、本件授受の当日ロスアンゼル
スからラスべガスのC64ホテルに赴いて、本件二〇万ドルを右債務の支払にあて
た」と主張し、右C64ホテル関係者作成の書面等を証拠として提出したのに対
し、弁護人側は被告人はC65の右債務の支払保証をしたことがなく、同人の負債
を肩代りして支払うべき理由は全くないとしてこれを争い、弁護人が直接右C64
ホテルの関係者らと面接して事情聴取を経たうえ作成された同人らの公証人面前の
宣誓供述書を証拠に提出したが、原判決は右検察官主張の事実についてはその有無
を断定するに足りる証拠がないとの判断を示している(原判決二二四頁(三)
項)。
 そこで、関係証拠により右C64ホテルの債務支払の件を検討してみると、D1
2(本件当時C64ホテルの副社長兼総括支配人)外三名作成にかかる「E1の取
引」と題する書面写(旧甲(一)255)、右四名名義でD13(当時C64ホテ
ルの貸付支配人)の署名のある関係者殿と題する書面写(旧甲(一)256、I.
O.UDISBURSEDと題する証拠物写(符132)、被告人及びC65の各
日本人出帰国記録調査書(甲(一)262、同275)、D14の宣誓供述書(旧
弁(一)60)、被告人の原審公判における供述(第七一回四、五丁、第七二回一
三~二七丁)、検察官作成の昭和五一年一二月一五日付捜査報告書(甲(一)8
0)等を総合すれば、次のような事実を認めることができる。すなわち、
 被告人は、昭和四七年一〇月中ラスべガスのC64ホテルに宿泊した際、同行し
ていたC65が同ホテルのカジノにおけるべカラ賭博で大敗をし、同ホテルに一五
〇万ドルの債務を負つたため、同年一二月初旬ころ渡米した際、C65に代つてC
64ホテル側の前記D12及びD14(同ホテルのカジノ支配人)らと交渉し、右
債務を一二〇万ドルに減額させる代りに、同ホテル側が日本において取り立てる労
を省き、米国ドルまたは銀行小切手で、翌年一月一五日に五〇万ドル、四月一日に
二五万ドル、七月一日に二五万ドル、一〇月一日に二〇万ドルを各持参払する旨申
し出たところ、右D12らはこれを被告人がC65の債務の支払引受をしたものと
理解して右申し出を承諾した(ただし右三〇万ドルの減免は第一回の五〇万ドルが
支払われたときとする条件つきであつた。)。その後、翌年一月一五日に、被告人
とその一行はC64ホテルに来て、被告人が五万ドルの銀行小切手一〇枚で第一回
の支払をしたが、その際被告人は次の二五万ドルは約束どおり四月一日に支払うと
確約した。しかし、二回目の支払は同年四月二八日に五万ドルの小切手と現金で行
われたが、右小切手と現金は被告人がハワイとロスアンゼルスのC28関連の支店
等て調達したものであつた。三回目の支払は同年七月一二日に五万ドルの小切手五
枚で行われたが、右の資金は被告人が前記海外の支店で仮払で出金させたものであ
つた。そして四回目の二〇万ドルは、約定の同年一〇月一日を過ぎても未払のまま
であつたところ、C65を含む被告人ら一行が、同年一一月三日午後五時a空港発
のC56便て同日午後六時ころうスベガスに到着し、C64ホテルに投宿した際、
全部現金でその支払がなされた。なお、被告人は右四回の支払の際いずれもC64
ホテルに赴いているか、C65は前記被告人が支払交渉をした時も渡米しておら
ず、四回の支払についても初回と最後の時にその場に同席していただけであり、そ
の二回の支払の際にもC64ホテルの関係者に、なんらかの目立つた言動によりそ
の存在を印象づけた形跡は窺うことができない。
 以上の認定は、主として前記「E1の取引」と題する書面の記載内容に依拠する
ものであるが、右書面はC64ホテルの用筆を用い、「秘密」D12よりフアイル
ヘとの表題を付し、内容はC64ホテルのC65に対する前記債権の減額と分割支
払の交渉及び約束に関するもので、同ホテルのカジノの業務に関する記録の性質を
有し、前記D12、D14のほか、カジノ貸付支配人のD13、管財人のD15の
四名のC64ホテルの幹部の署名がなされていること、及び右書面がC66という
公的監督機関に提出されていた状況等からすると、明らかに同ホテルのカジノ営業
の業務に関し、巨額の債権の減額及び分割払による徴収の関係の責任を明確にする
ための記録文書であると認められるのであつて、そのような書面の性質上、その記
載内容の信用性は高いといわなければならない。しかるに、右D12は宣誓供述書
において、右書面は営業上のものではなく、自己の個人的備忘のために作成したも
ので、内容的にも伝聞情報によることが多く、信用性が少ない旨を強調しているけ
れども、その供述内容を見ると、前記書面に一五〇万ドルの支払の交渉について彼
が提案したとある部分の彼とは、被告人のことではなくE1グループを指している
旨、「E1はその負債を保証しているものの、もし彼が保証を拒否したら云々」と
の記載についても、被告人は法的意味においていかなる負債をも保証したことはな
い旨の不合理な供述をしている。また、個人的備忘のための記録といいながらホテ
ルの四人の幹部が署名した理由について、納得の行く説明をしていない。更に、一
回目の支払の際「E1の取引」と題する書面では「彼は各五万ドルの銀行小切手一
〇枚を我々に渡した」「このとき彼は、次の二五万ドルは約束どおり四月一日に払
うと確約した」となつているのに、E1グループの誰かが渡したのであつて、被告
人自身からはいかなる支払も受けとつたことはないとか、四月一日の分の支払確約
は被告人がしたが、その支払を自分でするとはいわなかつたから、C65または彼
の代理人が支払をすると理解したとか述べ、被告人に関することはことさら責任を
あいまいにする態度が顕著であつて、前記E1の取引と題する書面の記載と比較
し、D12の宣誓供述書の信用性は乏しいものといわざるを得ない(なお、「E1
の取引」と題する書面の記載のうち、本件C65の賭博以前のE1グループの賭博
による債務の取立に関する部分は伝聞情報が多いと認められるが、本件C65の債
務の支払について被告人が関与した状況については、事柄の性質上伝聞情報による
ものとは考えられない。)。更に、D14及びD13の宣誓供述書においては、同
人らが「E1の取引」と題する書面の性質につき、D12の宣誓供述書の内容を支
持するような供述(D13は前記「関係者殿」と題する文書についても同趣旨)を
し、四回の支払のすべてについては被告人のグループの誰かから支払を受けてお
り、被告人からは直接いかなる支払も受けとつたことがない旨供述しているが、こ
れまた不自然であるうえ、被告人が第二回及び第三回の支払ないし資金調達への関
与を肯定していることと対比し、それらの部分は信用性に乏しいものというほかは
ない。これとともに、四回目の支払はE1グループの数名の日本人のうち、被告人
でない誰かがしたが、その際帯封のない多量の札を勘定したら、二〇万ドルを超え
る余分があつたので、その超過部分は返却した旨の右三名に共通する供述部分も、
信用性のある供述と認めることはできない。更に、D16の宣誓供述書に至つて
は、四回目の支払金の勘定に関して、D13が持つてきた金を再度勘定した際、日
本語が書かれた数個の帯封があつた旨、他の三名とくいちがう供述もしているので
あつて、右三名以上にその供述は信用性に乏しいというべきてある。以上の四名は
すべてC64ホテルの関係者であり、被告人はハワイやロスアンゼルスのホテルの
買収経営に実績を有し、C64ホテル側とも数次にわたり買収交渉を行なつていた
関係上、同ホテル側としては被告人を将来経営者となる可能性のある人物として、
いわば重要人物扱いをしでいたてあろうから、かような立場にあること及び証言手
続が裁判所の関与しない公証人面前の簡略な方法によつていることを考慮すれば、
右供述者四名に被告人に好意的で、本人の責任に関することはかばおうとする態度
が見られるのは自然の成行きと見られるのであつて、右事情も同人らの供述に信用
性を認め難い事情の一つというべきである。
 右認定の事実から考察すると、C64ホテル側ではC65の四回合計一二〇万ド
ルの支払債務につき、被告人が支払の責任者となるものと理解し、三〇万ドルの減
免と残額の分割払の申し出を承諾したもので、第一回分の支払は被告人が行ない、
第二回・第三回分の支払も被告人が資金調達等に関与したことが認められるのであ
るから、第四回の支払についても債務者たるC65に前記のとおり特に注目すべき
言動があつたと認められない以上、右支払は被告人ないし被告人の意を受けた者が
したものと認めるのが相当である(右C65は原審当時、公判外の記者会見におい
て、右四回目の支払は自己がなした旨言明しているが(弁(二)78)、その支払
を裏付けるに足る具体的根拠を示していないうえ、その発言がなされた場を考慮す
れば、その信用性を認め難い。)。
 ところで、被告人は、C64ホテルに対する四回目の支払をしたことを単に否認
するだけで、被告人が支払つたと認められる二〇万ドルの出所について明らかにし
ょうとしないままである。そうすると、反対証拠として見るべきものがない以上、
B2が供述する被告人への二〇万ドルの交付(ただし時刻が正午の前後ころという
点は誤りであつて、関係証拠によれば午後四時二〇分ころと認められる)が、時間
的・場所的にC64ホテルでの支払と極めて接近しており、支払金額の点でも一致
していると見られることからすると、B2の交付した二〇万ドルが、C64ホテル
に支払われた二〇万ドルの出所であると推認せざるを得ない。
 そうだとすると、B2の本件授受に関する供述は、その供述に見合う金員が被告
人の手元に入つていて、他に支払われたことが認定されること及び前記C3領収証
の真正が認められることと相俟つて、確実にその信用性が認められるといわなけれ
ばならない。
 (九) その余の弁護人の主張について
 また、このように見るならば、前記4:30以下のB2日記の記載は、前説示の
ように同時刻からゴルフをしたという趣旨のものではないと解すればよく、弁護人
のB2証言の信用性に関するその余の主張は、これを十分検討しても右判断を左右
するに至らない。すなわち、a空港での被告人一行の乗り継ぎ時間が短かかつたこ
とから、本件授受は時間的に不可能であるという点は、B2及びD1の供述する授
受の状況、さらに前記VIPルームの所在位置等からすれば、授受の所要時間はせ
いせい二、三分以内であると考えられるうえ、検察官の実況見分の結果(旧甲
(一)212)によれば、乗り継ぎのための時間から荷物受領・再預け・乗り継ぎ
のための移動等に要する時間を差し引いても、授受を行う時間的余裕は十分にあつ
たと認められる(その詳細は原判決が当該項目について説示するとおりであ
る。)。その余の主張するところは、要するにB2の供述の自己矛盾または他証拠
との矛盾を含む不自然性・不合理性・論理的不整合性(摘要中の特別勘定の記載
等、記録的なものについての説明不足、または欠如等の点を含む)等の主張につき
るのであつて、これを逐一検討してみても前記授受にかかる金員の行方についての
検討ほど、直ちに授受の有無の確実さまたは不確実さを明らかにし、ひいてはB2
及びD1の供述が真実であるか作り事であるかを確定できるほどの、決定的要素を
備えているとは認め難い(ただし、B2の供述の不自然性等の主張のうち、英語を
解しない被告人がただ一人で授受を行なつたという点は、D1の供述によれば通訳
等の随行者がいた可能性も認められるうえ、授受自体も前記のようにほとんど会話
を必要とせず簡単に行われたと認められるので理由がなく、授受した金員を渡す前
に勘定しなかつたこと、被告人から領収証をとらなかつたことの不合理性をいう点
は、これもD1の供述により同人があらかじめ勘定していることが認められるか
ら、平常金銭の出納を扱つている同人が勘定している以上、重ねてB2が勘定する
必要性はなかつたというべきであり、更にD1がC6の財務担当者として本件授受
に関与し授受を現認したと認められる以上、C3からの領収証以外に被告人の領収
証を必要とする事情は全く認め難いのであつて、他のC14関係の支払の場合と同
様に論ずることはできないから、右主張の点も失当である。)。なお、本件二〇万
ドルの支払根拠についてのB2の供述も、C3とのコンサルタント契約に基づくL
―一〇一一型機のC8に対する七、八号機の販売手数料の先払であるとする点で明
確であつて、摘要中の特別勘定の記載によつてもL―一〇一一型機売込関係のC3
の報酬等は、支払が先行し契約書が追認する形をとるなど、契約書に従わない支払
が多かつたことが窺われ、B1も右関係の支払は非常に融通がきいた旨証言してい
ること(コ嘱七巻六一〇・六一一頁)に鑑み、C3の要求により、引渡前であつて
も引渡に至ることが確実と見られた、C8への七、八号機分の販売手数料の前払に
応じたということは十分あり得ると考えられる。この点は、弁護人援用のB1副証
九号・二八号・二九号等を検討しても、前記授受についての認定を覆えし、B2が
本件二〇万ドルを他に流用したという疑いを抱かせるには至らない。前記摘要中の
特別勘定の記載とC3名義領収証との対応関係について見ても、基本的には一致し
ていると認めることができるから、右同様である。また、本件証拠上、C3と被告
人間・被告人とクラツタ―間で検察官の冒頭陳述のような本件授受の打合せがなさ
れたことについて具体的な立証がないという点は、本件授受の事実の有無が立証の
主題であり、右授受が確実と認められる以上、それに至る経過の一部に不明の点が
あるとしても、授受の事実自体の存在を疑わせるには足りないし(C3の通訳であ
つたC31の供述に、前記打合せ等を窺わせるものがないという点も、原判決がそ
の第二の三の4の(一)(一七〇頁以下)で説示するとおり、積極的な反対証拠と
なるものではないから、右と同様である。なお、C31の立場ないし供述心理につ
いては、先に控訴趣意第三の三に対する判断のⅠの(一)において説示したとおり
である。)、C3と被告人間に、本件二〇万ドルに関し支払原因が存在したことの
立証がないという点も、右同様に立証の主題外のことであつて、右両名が否認して
いるため右原因が不明であるからといつて、それによつて本件授受の事実の存在が
覆されるほどの事情であるとは認められない。
 なお、被告人が本件当時a空港において、前記VIPルームに立ち寄つたことが
なく、または本件授受を行なう機会がなかつたという被告人の同行者らの供述は、
前記信用性が確実と認められるB2の供述、さらにはD1の供述と対比し、これを
信用することができない。
 また、所論中、当時の被告人の多数の同行者のうち一人も被告人が一時別行動を
とつたことに気づいていないのは不自然であるという点(最終弁論要旨一八二頁)
も、前述VIPルームが被告人らの出てきたゲ―トから至近距離で、乗り継ぎのた
め歩くコースの脇にあつて簡単に立ち寄ることができ、しかも授受に要した時間は
前記のように短時間であつたと認められることからすると、格別注意を引くに至ら
ない程度の出来事であつたと思われ、被告人が一時見えなくなつても、特に周囲の
者に異常感を生じさせるほどのものではなかつたと考えられるから、右所論も理由
がない。
 2 B1証言及びC2の供述の信用性について(所論2及び3の(二))
 前記のように、B2の本件授受についての供述は、金員の出所及び行き先に関し
て授受の確実な裏づけがあると認められることにより、十分に信用性があると認め
られ、また、D1の供述とも併せて本件授受の事実の存在を認めるに十分であるか
ら、そのうえにB1の本件授受についてB2から事前に相談され、事後に報告を受
けた旨の証言部分及びC2の検面調書中原判決の認定に照応する部分を補強証拠と
して付加する要を見ないのであるが、両名の右各供述部分は、高度の信用性までは
認め難いが、前記認定にかかる本件授受の事実と客観的に合致している点からみ
て、その信用性を肯定することができ、そうするとその各供述に信用性ありとした
原判断を誤りとすることはできない。この点の所論も理由がない。
 3 結論
 右のように検討した結果、B2の証言中本件授受に関する供述部分は、枝葉の点
は別として、その基本的な点において十分に信用性があると認められ、これを裏付
けるに足りる客観的な他の物証等の証拠も存在し、D1の供述もまた補強証拠とし
ての価値があると認められるから、これらを総合すれば本件授受がなされた事実は
これを認めるに十分である。
 そうすると、これを認定した原判決は結論において相当であつて、事案の誤認は
ないからこの点の論旨も理由がない。
 第六 破棄自判の裁判
 以上検討した結果によれば、弁護人の控訴趣意中前記第三のP3C関係の事実誤
認の主張については論旨は理由があるから、量刑不当の主張に対する判断はこれを
省略し、刑訴法三九七条一項、三八二条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書
を適用して被告事件について更に次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、東京都中央区ef丁目g番地(当時)に本店を有するC28株式会社
の社主として同社の業務全般を統括しているものであり、C8株式会社の大株主と
して同社の社賓でもあつたものであるが、真実は、「1」昭和四七年九月中旬こ
ろ、右C28本社応接室において、後記C5社の販売コンサルタソトであるC3同
席のうえ、米国C5・コーポレイション社長B1から、同社製造のエアバス級ジエ
ツト旅客機L―一〇二型機(愛称トライスター)を、C8株式会社に購入せしめる
よう尽力してもらいたいとの懇請を受け、そのころ同社副社長A1に対し、内閣総
理大臣C12から聞いた話として、同月初めころ行われたハワイ会談において、D
5米国大統領がトライスターの日本での採用を希望していた旨伝える形をとるなど
して、娩曲に同社が右航空機を購入するよう復旧濾し、また、「2」昭和四八年一
一月三日ころ、アメリカ合衆国a国際空港サテライト□内のC53接客用個室にお
いて、前記B1の指示を受けたジヨン・ウィリアム・B2から、C5社の前記C3
に対するトライスター売込に関する支払金員の一部である米国通貨二〇万ドルを受
領したのにかかわらず、
 昭和五一年二月一六日、東京都千代田区永田町一丁目七番一号の衆議院予算委員
会において、証人として法律により宣誓のうえ証言するに際し、自己の記憶に反
し、「1」B1からの依頼に対し、機会があつたら話してみようとは言つたが、そ
のまま聞き流し、C8の何人に対しても、C5社のエアバスを買つてやつてくれ等
とは一度も言つたことがない、「2」B1が右航空機の売込に関しC3に対して支
払われた七〇〇万ドルの一部が、被告人に渡つたと思うとか、そう思われるよう
な、あるいは疑いを持たれるような証言をしているが、そのようなことは事実では
なく虚偽である旨証言し、もつて虚偽の陳述をしたものである。
 (証拠の標目) (省略)
 (法令の適用及び量刑の事情)
 被告人の判示所為は、議院における証人の宣誓及び証言竿に関する法律第六条第
一項に該当する。
 そこで、被告人の情状について考察すると、本件は、昭和五一年二月初旬米国上
院C67小委員会において、C5社の対外不正支払問題に関する調査資料が公開さ
れたことに端を発し、同社の航空機の日本への売込活動をめぐる疑惑としてわが国
民の耳目を聳動させたいわゆるC5事件に関し、国民の期待に応えてその真相を究
明しようとして行つた、国会の予算審査権ないし国政調査権に基づく衆議院予算委
員会での証人尋問において発生した偽証事件であるところ、かような全国民的関心
の場である国会の証人尋問において、各委員から発せられた右疑惑に対する関与の
有無についての質問に対し、当時右疑惑の重要関係者と見られていた被告人が前認
定のとおり虚偽の陳述をなし、国会の重要な権能である予算審査権ないし国政調査
権の行使を阻害した責任は、これを軽視し難いといわなければならない。しかし、
一方で右証人尋問に至つた経緯及び証人尋問の状況について見ると、元来高血圧症
で狭心症の持病を有した被告人が、ハワイ帰在中に証人喚問の件を知り、急拠帰国
の途についたか、過熱した報道陳の取材攻勢を避けるため韓国経由で大阪に帰着
し、同所からpの山荘に到着、滞在しているうち狭心症の発作を起し、証人喚問当
日は心身共に疲労した状況下で蒼惶として証人尋問に臨んだものであること、右証
人尋問の場においても騒然とした環境や、質問者の質問方法等に適切さを欠くとこ
ろもあつて、冷静に率直に事実を証言する雰囲気が形成されていたとはいい難いこ
と、一連のいわゆるC5事件で起訴された被告人らの間で被告人の占める地位は脇
役的なものであつたと見られること、被告人の役割を強調したB1の米国上院にお
ける証言部分は、他の証拠によつて裏付けられておらず、必ずしも真実てあつたと
はいい難いのに、本件予算委員会においては、これを前提にして被告人に対する追
究が行われた嫌いがなくはないと思われること等の事情が認められ、更に偽証事件
一般の量刑状況並びに被告人の健康状態及び企業経営者としての多年にわたる社会
への貢献等も参酌すると、被告人に対し今直ちに実刑を科するのは酷に失すると思
われ、今回は刑の執行を猶予するのが相当と考えられる。
 よつて、所定刑期の範囲内て被告人を懲役一〇月に処し、刑法二五条一項一号を
適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、原審及び当
審における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項本文を適用して主文第四項記載のとお
り被告人に負担させることとする。
 (訴因の一部の無罪理由)
 本件公訴事実中、被告人が真実は昭和四八年七月下旬ころ、C28本社応接室に
おいて、前記C3同席のうえ、前記B1から、前記C5社の対潜哨戒機P3Cオラ
イオンについて種々説明を受け、同航空機を日本政府に売却するについての援助を
要請され、これについて右C3と協議したのに、前記衆議院予算委員会において証
人として訓言するに際し、自己の記憶に反し、「B1からP3Cオライオンという
言葉を聞かされたことは然ない」、「C5社あるいはC8のことでC3と話し合っ
たことは断じてない」旨証言し、もつて虚偽の陳述をしたという点は、前認定のと
おりその前提事実を認めるに十分でない等の理由でその犯罪の証明がないことに帰
するが、単純一罪の一部が認定から脱落するにすぎないから、特に主文において無
罪の言渡をしない(なお、原判決において無罪とされた訴因の部分については、検
察官から控訴の申立がない以上、攻撃防御の対象から除外されたと解すべきである
から、これについての判断は示さない。)。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 和田保 裁判官 杉山英巳)

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