弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人後藤一善の上告理由について
 一 本件について原審が認定した事実関係は、およそ次のとおりである。
 (一) 被上告人は、昭和五〇年九月三〇日、訴外株式会社D製作所に対し、一八
〇〇万円を弁済期日を昭和五一年二月一二日と定めて貸し付けたが、その際、訴外
Eとの間で、右貸金債権を担保するため、同訴外人所有の本件土地建物につき債権
極度額を一八〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結するとともに、右弁済期日に
債務を弁済しないときは、その弁済に代えて本件土地建物の所有権を被上告人に移
転する旨の代物弁済予約を締結し、昭和五〇年一〇月二日、本件土地建物につき右
根抵当権設定の登記を受けるとともに、右代物弁済予約を原因とする所有権移転請
求権保全の仮登記を経由した。
 (二) ところで、D製作所は、昭和五一年一月二〇日ころ倒産し、期限に右債務
の弁済をしなかつたので、被上告人は、同年五月八日、Eに対し前記貸金債権一八
〇〇万円のうち三〇〇万円の代物弁済として本件土地建物の所有権を取得する旨の
代物弁済予約完結の意思表示をした。
 (三) 他方、Eは、昭和五〇年秋ないし一二月ころ、訴外F物産株式会社から一
〇〇万円を借り受けたが、その際、同会社との間で、同会社の右貸金債権を担保す
るため、本件土地建物につき債権極度額を一〇〇万円とする根抵当権設定契約を締
結するとともに、右債務を期限に弁済しないときは、本件土地建物につき期間満三
年、賃料月額八〇〇〇円、譲渡、転貸のできる特約付の賃借権を設定する旨の停止
条件付賃貸借契約を締結した。そして、同会社は、昭和五一年一月二〇日、本件土
地建物につき右根抵当権設定の仮登記を経由するとともに、停止条件付賃借権設定
の仮登記を経由した。
 (四) 上告人は、昭和五一年二月ころ、F物産株式会社に対し一〇〇万円の債権
を有していたところから、同月七日、同会社から、同会社がEに対して有していた
前記の根抵当権と停止条件付賃借権を譲り受け、同月九日、右賃借権移転につき附
記登記を経由した。なお、右停止条件付賃借権は、本件土地建物の使用収益を主眼
として設定されたものではない。
 右の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、すべて肯認することができ、
原審の右認定の過程に所論の違法があるとは認められない。
 二 右事実関係によれば、本件代物弁済予約は、ひつきよう、被上告人のD製作
所に対する貸金債権を担保することを目的とする仮登記担保契約にほかならないと
解されるところ、このような代物弁済予約のされている不動産につき、第三者が右
仮登記におくれて民法六〇二条に定める期間を超えないいわゆる短期賃借権の設定
を受けてその旨の登記または引渡を了した場合、民法三九五条の規定を類推適用し、
右短期賃借権者がその賃借権をもつて仮登記担保権者に対抗することができるかど
うかについて検討するに、(1) 仮登記担保権者が担保目的実現のため仮登記に基
づく本登記についての承諾及び目的不動産の引渡を求める場合には、右仮登記にお
くれて目的不動産につき賃借権の設定を受けた者などの利害関係者は、その権利を
もつて仮登記担保権者に対抗することができないことが仮登記の順位保全の効力と
して定められているのであつて、仮登記の右効力になんらの制限が設けられていな
いこと、(2) 右の場合、仮登記担保権者と右不動産につき賃借権などの利用権を
有する者との関係については、昭和五三年に制定された仮登記担保契約に関する法
律(以下「仮登記担保法」という。)においても、これを調整するような措置はな
んら講じられていないのであつて、むしろ仮登記担保法は民法三九五条の規定の準
用を否定する立場をとつており、仮登記担保法の施行前においても同様に解するの
が相当であること、(3) もし右不動産に対する利害関係者のうち短期賃借権者が
その賃借権をもつて仮登記担保権者に対抗することができるものとするときは、現
行不動産登記法のもとでは、仮登記担保権者が仮登記に基づいて所有権移転の本登
記をすることができなくなるという不合理な結果を生ずるのを免れないこと、など
の諸点を勘案すると、民法三九五条の規定は、仮登記担保権が実行され仮登記に基
づく本登記がされた場合には類推適用されないものと解するのが相当であり、した
がつて短期賃借権者は、その賃借権をもつて仮登記担保権者に対抗することができ
ないものといわざるをえない。そうすると、これと同旨の見解に基づいて上告人は
その短期賃借権をもつて被上告人に対抗することができないとした原審の判断は正
当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する
証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論
難するものにすぎず、いずれも採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    宮   崎   梧   一

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