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平成24年5月16日判決言渡
平成22年(行ウ)第629号不当労働行為救済申立棄却命令取消請求事件
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は参加によって生じたものも含めて原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
中央労働委員会が平成20年(不再)第30号事件について平成22年3月
31日付けでした不当労働行為救済申立棄却命令を取り消す。
第2事実の概要等
原告全日本造船機械労働組合ニチアス・関連企業退職者分会(以下「原告分
会」という。)は,かつて参加人においてアスベストばく露作業に従事した者
らを中心に結成された労働組合であり,原告全日本造船機械労働組合(以下「原
告組合」という。)はその上部団体であるところ,原告らは,参加人に対し,
アスベストばく露作業による被害について現行制度の下では労災保険給付を受
けられない立場の者に対する補償制度を作ることなどを要求して,2度にわた
り団体交渉の申入れを行ったが,参加人はこれを拒否した。
本件は,原告らが,上記団体交渉の拒否が不当労働行為に当たるとして,奈
良県労働委員会(以下「県労委」という。)に対し救済命令の申立てを行った
ところ,県労委が救済命令を発したものの,参加人からの再審査申立てを受け
て中央労働委員会(以下「中労委」という。)がこれを取り消して救済命令申
立てを棄却する旨の命令を発したため,原告らが,被告に対し,同中労委命令
の取消しを求めた事案である。
1前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記する各証拠によって容易に認
定できる事実である。
(1)当事者ら
ア原告組合は,労働者の政治的・経済的・社会的地位の向上を図ること等
を目的とする労働組合である。
原告組合は,昭和21年に結成され,その組合員数は平成19年6月1
4日現在1226名である。
イ原告分会は,アスベスト(以下「石綿」ともいう。)被災者の社会的,
経済的地位の向上を図ることを目的とする労働組合の分会であり,参加人
及びその関連企業で働いた労働者,アスベストによって被災した労働者の
遺族並びに原告分会が承認した者を構成員とするものとする法人格のない
社団である。
原告分会は,平成18年9月,原告組合の下部組織である全日本造船機
械労働組合P1協議会P2労働組合(以下「全造船P2労組」という。)
の下部組織として結成されたが,平成19年3月,原告組合の直接の下部
組織となった。
原告分会の結成当初の執行委員長はP3,書記長はP4であり,結成後,
P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11,P12,P13が加入
した(乙B1,6。以下,原告分会の組合員については,P10,P11
及びP13を除き,その姓のみで呼称する。また,以下,原告分会の組合
員を「原告分会員」という。)。
ウ参加人は,明治29年に設立された,高機能樹脂製品,耐火断熱材等の
製造,販売や,耐火,断熱,防音等の建材工事等を行う株式会社であり,
その従業員数は平成19年6月14日現在1490名である。
同社には,同日現在,従業員1219名で構成されるP37労働組合が
ある。
参加人は,P14工場(奈良県北葛城郡<以下略>所在),P15工場
(岐阜県羽島市所在)等の生産拠点で各種アスベスト製品を製造し,全国
各地の支店,営業所や下請企業を通じて販売・施工してきた。
(2)原告分会員らについて
アP3は,参加人の従業員として,昭和30年3月21日から昭和39年
5月7日まで,P14工場において石綿製品の入出庫業務に従事し,退職
後,公立老人ホーム,消防組合等での勤務を経て,昭和58年ころ以降,
主に運送会社の長距離トラック運転手として勤務した。同人は,平成17
年8月ころ,参加人の実施する健康診断を受けた結果,胸膜プラークと診
断され,同年11月24日,健康管理手帳(石綿)の交付を受けたが(乙
A28),平成▲年▲月▲日死亡した。
イP4は,参加人の従業員として,昭和31年9月1日から昭和32年1
月1日まで,P14工場において石綿製品の製造に従事したが,その後飲
食店の経営等に従事した。同人は平成17年11月までに,参加人の実施
する健康診断を受けた結果,胸膜プラークと診断され,翌年1月24日,
健康管理手帳(石綿)の交付を受けた(乙A29)。P4は,P3の死亡
に伴い,平成22年10月11日,原告分会の執行委員長に選出された。
ウP5は,参加人の従業員として,昭和55年から昭和56年まで,P1
4工場において石綿製品の製造に従事した。同人は,参加人の実施する健
康診断を受けた結果,胸膜プラークと診断され,平成18年7月,健康管
理手帳(石綿)の交付を受けた。
エP6は,参加人の従業員として,昭和44年から昭和55年2月まで,
P14工場において石綿製品の製造等に従事した。同人は,参加人の実施
する健康診断を受けた結果,胸膜プラークと診断され,平成18年7月,
健康管理手帳(石綿)の交付を受けた。
オP7は,参加人の従業員として,昭和39年から昭和55年9月まで,
P14工場において,石綿製品の製造に従事した。同人は,参加人の実施
する健康診断を受けた結果,胸膜プラークと診断され,平成18年1月,
健康管理手帳(石綿)の交付を受けた。
カP8は,参加人の従業員として,昭和29年から昭和36年2月まで,
P14工場において,石綿製品の製造に従事した。同人は,参加人の実施
する健康診断を受けた結果,胸膜プラークと診断され,平成17年11月,
健康管理手帳(石綿)の交付を受けた。
キP9は,P16組に在職し,昭和42年から昭和43年まで,参加人の
前身であるP17の旧P18造船所において,石綿ばく露作業である保温
工事に従事した。同人は,その後,胸膜プラークと診断され,平成18年
8月までに,健康管理手帳(石綿)の交付を受けた(乙A39)。
クP10は,P19有限会社(以下「P19」という。)に在籍し,昭和
44年から昭和51年まで参加人の下請けとして,石綿ばく露作業である
吹付工事に従事し,平成17年4月,じん肺管理区分管理4の決定を受け
た。
P11は,P10の妻であり,アスベストの家族内ばく露により,胸膜
プラークとなったと主張している。
ケP12は,参加人の従業員として,昭和29年ころから昭和31年ころ
まで,同P38支店において,火力発電所,化学工場の石綿ばく露作業で
ある保温作業に従事した。同人は,平成18年3月,じん肺管理区分管理
4の決定を受けたが,平成19年6月14日までに,原告分会を脱退した。
コP13の夫P20は,株式会社P21(以下「P21」という。)に在
籍し,昭和49年から平成8年まで,参加人の下請けとして石綿ばく露作
業に従事し,平成15年3月,良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚であると
して労災認定を受けたが,平成▲年▲月▲日死亡した。
(3)アスベストについて
アアスベストは,繊維状鉱物の総称であり,これまで工業的に大量に使用
されてきたアスベストとして,クリソタイル(白石綿),アモサイト(茶
石綿),クロシドライト(青石綿)がある。アスベストは,耐摩擦性,耐
熱性,断熱・防音・吸音性,耐薬品性等の物質的特性を有し,鉱物であり
ながら,繊維状に織ることができることから,紡織品,摩擦材,保温材,
石綿吹付材など幅広く使用されてきた。
イ他方で,アスベストは,裂けて細かい繊維となり,人が呼吸する際に,
鼻,気管等の繊毛を通り抜けて,呼吸細気管支,肺胞に到達し,肺内等に
沈着し,石綿肺,肺がん,中皮腫,びまん性胸膜肥厚,胸膜プラーク等の
疾患等を引き起こす。これらのアスベストに関連する疾患は,その発症ま
でに数十年という長期間を要することも多い。
このうち,胸膜プラーク(胸膜肥厚斑,限局性胸膜肥厚)とは,壁側胸
膜に生じる局所的な肥厚であり,胸膜プラークだけでは通常肺機能の低下
は起こらないとされているが,石灰化が進行して広範囲になると,その程
度に応じて肺機能低下をもたらし,胸膜プラークの所見を有する者は,肺
ガン,中皮腫に進展していくリスクが高いことが知られている。胸膜プラ
ークの発生に要する期間は,アスベストばく露開始後おおむね15年ない
し30年である。
この胸膜プラークは,労働者災害補償保険(以下「労災」という。)の
運用を定める「石綿による疾病の認定基準について」(基発第09190
01号,乙B37),「石綿による疾病の認定基準の運用上の留意点につ
いて」(基労補発第0919001号,乙B38)において,疾病として
扱われていない。
以上のようなアスベストによる疾病ないし胸膜プラークを引き起こす職
業性の石綿ばく露としては,石綿関連製品の製造等による直接ばく露のほ
か,石綿工場で働く夫の作業衣の洗濯により妻がばく露を受ける家庭内ば
く露等がある(乙B36)。
ウこのようなアスベスト関連疾患の危険性については,平成17年6月2
9日,大手機械メーカーである株式会社P22が,兵庫県尼崎市の旧P2
3工場周辺住民及び従業員の中皮腫罹患の事実を公表したことを契機に
(この公表の事実及びそれに伴う社会的な衝撃については,俗に「P22
ショック」といわれた。以下「P22ショック」という。),広く認識さ
れて社会的な関心が一気に高まり,各企業,業界団体等が,石綿ばく露作
業に従事したことによる中皮腫及び肺ガンの患者の存在を公表するように
なった。(乙A21)
その後,平成18年2月には,「石綿による健康被害の救済に関する法
律」(平成18年2月10日号外法律第4号)が公布され,労災認定の対
象とされない石綿健康被害者等への補償制度が設けられた。
(4)第1回団交申入れの経緯
アP3及びP4は,平成17年,胸膜プラークと診断されて健康管理手帳
の交付を受け,参加人に対し何度か補償を要求したが,参加人にその要求
を拒否されたことから,平成18年9月17日,原告分会を結成した(乙
A1)。
イ原告分会及び全造船P2労組は,参加人に対し,平成18年9月20日,
以下の事項について団体交渉を申し入れた(以下「第1回団交申入れ」と
いう。乙A1)。
①P14工場をはじめとする参加人の各工場と関連企業における労働
者と周辺地域住民のアスベスト被害についてその実態を明らかにし,
また,その資料を提供すること
②退職した労働者のアスベスト被害に対する健康対策を明らかにし,
その資料を提供すること
③退職した労働者のアスベスト被害に対する補償制度を明らかにし,
その資料を提供すること
④現行では労災保険給付を受けられないじん肺管理区分2及び3の
者,また,石綿健康管理手帳の交付を受けた者への補償制度を作るこ

ウ原告分会は,参加人に対し,平成18年10月27日付けで,P3及び
P4に将来発症が想定される各疾病について,参加人においてどのような
補償が受けられるのかを明らかにすること等の要求事項を追加した「要求
書」を作成し,交付した(乙A2)。
エ参加人は,原告らに対し,平成18年11月15日付け「ご回答」と題
する書面を送付し,第1回団交申入れに対し以下のとおり回答して,団体
交渉を拒否した(以下「第1回団交拒否」という。乙A3)。
(ア)原告分会らの要求事項を団体交渉事項とすることについて次のよう
な疑念があること
aP3及びP4は,退職後40年ないし50年が経過していること
b参加人は胸膜プラークを含む健康不安に対する対応として,(すで
に)住民説明会の実施,相談窓口の開設,健康診断・健康相談等を行
っていること
cP3及びP4が将来疾病に罹患したことを仮定した補償内容に関す
る要求事項を掲げていること
dP4は,在職期間がわずか4か月であるため,胸膜プラークが参加
人の業務によるものか明らかでないこと
(イ)組合としてではなくP3個人及びP4個人としての相談であれば対
応すること
(ウ)第1回団交申入時の組合員らの言動等にかんがみ,参加人が対応す
ることが困難であること
(エ)P3及びP4が個人として相談し,又は組合として対応を求める場
合,参加人代理人弁護士に連絡してほしいこと
(5)第2回団交申入れの経緯
ア原告分会は,参加人に対し,平成19年2月27日付けで,P3及びP
4のほか,P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11,P12,P
13が,組合加入したことを通知した(乙A6)。
イ参加人は,平成19年3月1日付けで,原告分会に対し,直接交渉では
なく交渉窓口である代理人弁護士に対して連絡するよう求めた(乙A7)。
ウP3及びP4は,原告分会の上部団体の者とともに,平成19年3月5
日,同日付けの原告ら作成にかかる前記(4)イの要求事項①ないし④に加え
て,「通知した組合員のアスベスト被害補償について,参加人の考えを明
らかにすること」が記載された団体交渉申入書(乙A8)を持参して,参
加人P14工場を訪問した。
そして,P3らは,参加人P14工場のP24総務課長に対し,上記団
体交渉申入書を交付して団体交渉を申し入れたが(以下これを「第2回団
交申入れ」といい,第1回団交申入れと併せて「本件各団交申入れ」とい
う。),P24総務課長は,代理人弁護士が対応するので,そちらに相談
願いたいなどと述べて,同申入書の受領を拒絶した。P3らは,同申入書
をその場に置いて立ち去った。
エ参加人は,第2回団交申入れに対して,おおむね上記(4)エ(ア)(イ)と同
様の理由により団体交渉を拒否した(以下,参加人が,原告らの第2回団
交申入れを拒絶したことを「第2回団交拒否」といい,第1回団交拒否と
併せて「本件各団交拒否」という。)。
(6)本訴提起に至る経緯
原告分会らは,県労委に対して,平成19年4月5日,本件各団交拒否が
不当労働行為に当たるとして不当労働行為救済命令申立てをしたところ,県
労委は,平成20年7月24日,参加人に対し,「本件各団交申入れに対し,
速やかに誠意をもって応じなければならない」旨の救済命令を発した(以下
「本件初審命令」という。)。これに対し,参加人が,中労委に対し再審査
申立てをしたところ,中労委は,平成22年3月31日,初審命令を取り消
して原告らの救済申立てを棄却するとの命令を発し(以下「本件中労委命令」
という。),同命令書は,同年5月24日,原告らに交付された。
原告らは,同年11月10日,本件中労委命令の取消しを求めて本訴を提
起した(顕著な事実)。
2争点
(1)原告らは,参加人の「雇用する労働者の代表者」(労働組合法〔以下「労組
法」という。〕7条2号)に当たるか(争点1)。
(2)本件各団交拒否に「正当な理由」(労組法7条2号)があるか(争点2)。
3争点に関する当事者の主張
(1)原告らは,参加人の「雇用する労働者の代表者」(労組法7条2号)に当た
るか(争点1)。
【原告らの主張】
ア(ア)労働契約関係が存在した間に発生した事実を原因とする紛争であれ
ば,紛争が顕在化した時期が退職後であっても,当該紛争当事者は「使
用者が雇用する労働者」に当たるというべきである。
(イ)そうすると,本件では,P3,P4,P5,P6,P7,P8は,
「使用者が雇用する労働者」に当たる。
また,P10は,参加人の専属下請会社(参加人以外の会社の業務を
請け負うことがない。)たるP19の従業員であった者であり,参加人
は,P10の労働条件等に対して,少なくとも部分的にはP19と同視
できる程度の現実的かつ具体的な支配力を有していたから「使用者」(労
組法7条2号)に当たる。また,同人の妻P11は,P10の作業服の
洗濯により家庭内ばく露しており,P11も「労働者」に当たるが,仮に
そうでないとしても,P10にとって労働環境が家族の健康状態に影響
を及ぼすか否かは重大な関心事であって団体交渉の必要性がある上,団
体交渉によって解決可能であって相当性も認められるから,P11の補
償等の問題は義務的団交事項に当たる。
さらに,P13の夫P20は,参加人の下請企業たるP21の従業員
であった者であり,参加人は,P20に対し事実上指揮命令をしていた
し,仮にそうでないとしても,参加人はP21の元請人(労働基準法8
7条1項)として災害補償についてP20の使用者とみなされる。同人
は,アスベスト関連疾患で死亡したから,その妻であるP13に対する
補償問題は,義務的団交事項に当たる。
P9は,参加人の下請企業であるP16組に勤務していたから,P1
0やP20と同様に「使用者が雇用する労働者」に当たる。
イ(ア)仮に上記ア(ア)の見解によることができないとしても,使用者と労
働者の間で労働契約関係が存在した間に発生した事実を原因とする紛争
が,雇用関係終了後に発生した場合,①当該紛争が雇用関係と密接に関
連して発生したこと,②使用者において当該紛争を処理することが適切
であること,③団交申入れが雇用関係終了後,社会通念上合理的といえ
る期間内にされたことを満たせば,「使用者が雇用する労働者」と認め,
団交応諾義務を認めるべきである。
(イ)本件においても,以下のとおり,原告分会員らは「使用者が雇用す
る労働者」に当たる。
a原告分会員らの労使紛争の原因事実は,参加人又はその関連企業在
職中の石綿粉じんの吸入であり,雇用に密接に関連して発生した。
b原告らの要求事項は,アスベスト被害の実態を明らかにし,健康対
策・補償の制度をつくることであり,使用者たる参加人において適宜
対応可能であり,そうすることが社会的にも適切である。
c原告分会員は,平成17年に初めて胸膜プラークと診断されるまで,
石綿による健康被害について知らされておらず,団体交渉権を行使す
ることができなかった。その原因は石綿被害の特殊性によるのであっ
て,労働者には何の責任もなかった。
原告分会員は,胸膜プラークが就労中のアスベストばく露に起因す
ることが明らかとなってまもなくの平成18年9月に原告分会を結成
して団体交渉を申し入れており,意図的に団体交渉の申入れを遅らせ
たような事情はなく,社会通念上合理的な期間内に申入れを行ってい
る。
【被告の主張】
ア(ア)「使用者が雇用する労働者」(労組法7条2号)は,その文理に照ら
し,原則として「現に使用者と雇用関係にある労働者」をいい,例外的に,
①労働組合がその組合員の労働契約の終了原因の効力やその条件を争う
ため団体交渉を申し入れた場合や,②労働組合がその組合員の在職中に
団体交渉を申し入れるなどしたことにより既に顕在化していた個別労働
紛争につき,同組合が,当該労働者の労働契約の終了後に改めて団体交
渉を申し入れた場合は,これに当たるというべきである。
本件は,労働契約終了原因の効力や条件が争われているものではなく,
かつ,最も遅く退職した労働者についても退職後約25年以上が経過し
て紛争が顕在化したもので,上記例外①及び②に当たらず,文理上「使
用者が雇用する労働者」に当たらないし,その解決が現在又は将来の集
団的労使関係の安定に資することも想定し難く,また,いつ紛争が顕在
化するか分からないため使用者の立場を著しく不安定にするから,「使
用者が雇用する労働者」には当たらないというべきである。
(イ)もっとも,団体交渉申入れに係る個別労働紛争の内容が,雇用期間
中の業務における石綿ばく露の健康被害に関する事項であるという本件
においては,石綿による健康被害の特殊性にかんがみ,社会正義の観点
から,「使用者が雇用する労働者」に当たるとする余地がないわけではな
い。
イなお,P10,P20,P9については,参加人が雇用主と部分的に同
視できる程度の現実的かつ具体的な支配力を有しているとはいえないか
ら,参加人からみて「使用者が雇用する労働者」には当たらない。
【参加人の主張】
労働組合にはある種の特権的な地位が認められており,その代理機能を従
来以上に拡張することは,弁護士法72条や民事訴訟制度の趣旨に反する。
また,不当労働行為救済制度には罰則規定(労組法28条)もあり,厳格性,
明確性が要請される。よって,団交応諾義務を無限定に拡大しないためにも,
「雇用する労働者」は,団体交渉を通じて正常な労使関係を樹立しようとする
団体的・集団的労使関係の一方当事者を意味するというべきであり,原則と
して現に雇用する労働者をいうと解される。そして,本件のように退職後長
期間が経過して紛争が発生した事案においては,「雇用する労働者」の例外を
認める余地はない。
(2)本件各団交拒否に「正当な理由」(労組法7条2号)があるか(争点2)。
【原告らの主張】
ア中労委は,退職後長期間が経過し,必要な資料が散逸したことにより法
的安定性や明確性を害するなどと判断するが,「法的安定性」が憲法によ
る労働基本権の保障に優越することはないし,使用者が労働者の健康被害
の危険性を長期間隠すことで団交応諾義務を免れるものとするのは,著し
く正義,公平に反する。また,本件各団交申入れにおける要求事項は,過
去の細かな事実関係を明らかにすることを求めるものではなく,明確性を
理由に団交拒否を正当化することはできない上,そもそも,「明確性」は,
労働組合法が団体交渉を命じる労働委員会の救済命令に対する違反につい
て罰則を定めていることから(労組法28条),救済命令の主文を明確にす
るという要請であって,罪刑法定主義に基づく「刑罰法規の明確性」のこ
とを意味するのであって,使用者の団交応諾義務の範囲を画するものでは
ない。
仮に,期間経過を理由に団交応諾義務が否定されるとすれば,それは,
退職後ではなく組合結成後に長期間が経過した場合であるというべきであ
るが,本件では,P3とP4は,紛争顕在化後に迅速に原告分会を結成し,
団体交渉権の行使に至っている。
イ参加人が,胸膜プラーク出現者に対して健康管理手帳を交付したり,健
康診断により重篤な疾病の早期発見を図り,疾病が判明した段階で独自に
補償等を行うという救済措置を講じたことを,団交拒否の正当理由を判断
する要素として考慮すべきではない。かかる措置が十分か否かは,団体交
渉において労使が決定していくべき事柄である。
ウ中労委による本件各団交申入前のP3及びP4の不穏当な言動の認定は
誤りである。仮に,分会結成前にそのような事実があったとしても,それ
は同人らの健康被害に対する強い不安と参加人に対する強い不信感に根ざ
すものであるし,組合結成後はP3らの行動も組合の統制下にあるから,
過去のP3らの行動によって団交拒否を正当化できるものではない。
第1回団交申入れも全体としてみれば極めて穏当であった。参加人に対
する抗議文の文言中,「貴社は何人の労働者や住民をアスベストによって殺
してきたか」は事実を述べたものであるし,「盗人猛々しい」とは,参加人が
第1回団交申入時のP3らの言動の言葉尻を捉えて非難したことに対する
もので,いずれも団交拒否の理由にはならない。
エ参加人が,P3ら個人の補償要求について弁護士を介した話合いの方途
を設けていたとしても,それをもって団体交渉を拒否する正当な理由には
ならない。
【被告の主張】
P3及びP4は,本件各団交申入前に参加人に対したびたび不穏当,不適
切な言動をしており,参加人の担当者においては,警察に相談に行くほどま
でに不安感,恐怖感が強まっており,かかる言動は,参加人に対し,建設的
な団体交渉の実施について重大な疑念を抱かせるものであった。しかも,P
3及びP4は,第1回団交申入時にも,不穏当な言動をしている。
これらに加えて,本件では,原告分会員らの退職後団交申入れまでに相当
長期間を経過していること,参加人が胸膜プラークが出現した者につき重篤
な疾病の早期発見のための措置を講じていること等を併せ考えると,参加人
が代理人による交渉の方途を用意しつつ行った本件各団交拒否には,「正当
の理由」がある。
原告らは,組合結成前のP3,P4らの言動は正当の理由に関して考慮す
べきでないと主張するが,同人らは,組合結成時に近接した日時に,後に組
合の交渉担当者となる者と,団体交渉事項と同一の事項について交渉した際
に,不穏当な言動をしたものであるし,さらには,第1回団交申入時にも「お
前らなめとるんか」と怒鳴る等しているから,本件においては,組合結成前
の言動も団交拒否の正当理由の判断要素となる。
【参加人の主張】
P3は,参加人に対して,平成13年1月ころ,仕事を要求し,平成17
年8月ころ,参加人の健康診断を受診した際は,タクシー代を威圧的に要求
し,平成17年11月4日,同年12月13日,同月26日,P25室長に
対し,金銭による補償を要求したりした。
また,P4は,平成18年5月23日,同年6月8日,P25室長に対し
て,元右翼であるなどと述べて金銭を要求した。
さらに,P3及びP4は,同年8月22日,P14工場を訪れ,P25室
長に対し,仕事を要求する等したが,その際,P3は,他の従業員に対して,
「何を面切ってんだ。」と怒鳴る等した。
このように,P4やP3は,第1回団交申入前の個別協議の時から,参加
人のP25室長らに対し,暴力団や右翼の威嚇力を背景として暴力的要求行
為を行ってきた。
かかるP3及びP4自身が,原告分会結成後の第1回団交申入時に「何で
録音するんだ。おとなしくしてりゃあ,お前らなめとるんか」等と暴言を発
し,原告組合のP26もかかる暴言を制止せず,むしろこれを許容した。ま
た,参加人が明確に第2回団交申入れを拒否する前の平成19年3月26日
には,原告組合のP26,原告分会のP3ら合計50人以上が,参加人の東
京都港区所在の本社玄関ロビーに侵入し「入ろやー。」と怒号して参加人の
執務室に侵入し「人殺し。」等と叫んだところ,これら暴言等は,原告分会
の組織的なものである。
これらによれば,原告分会結成後においてP3らの暴挙は一層助長された
ものであり,本件各団交拒否に正当な理由があることは明らかである。
第3当裁判所の判断
1争点1(原告らが参加人の「雇用する労働者の代表者」(労組法7条2号)に
当たるか。)について
(1)労組法1条1項,6条,14条,16条等の規定からすれば,同法が保護
の対象とする「団体交渉」とは,使用者とその雇用する労働者の属する労働
組合の代表者とが,労働者の待遇又は労使関係上のルールについて合意を形
成することを主たる目的として交渉を行うことであると解されるところ,労
組法がこのような団体交渉を通じて正常な労使関係の構築,樹立を図る趣旨
であることに照らすと,「使用者が雇用する労働者」(労組法7条2号)と
は,原則として,現に当該使用者が雇用している労働者を前提とするものと
解される。また,このように解することは,労組法7条2号の文言にも合致
する。
もっとも,現実に雇用契約関係の終了段階でこのような労働条件をめぐる
問題が顕在化することもあり,ときには,従業員の退職後,その退職条件を
めぐって紛争が生起することも稀ではないことからすれば,このような場合,
当該労働者を「使用者が雇用する労働者」と認めた上で,使用者に対し,当
該労働者の加入する労働組合との間で団体交渉を義務付けることが労組法の
趣旨に沿う場合があるというべきである。しかし,他方で,このような退職
後の労働者の在職中の労働条件に関して,使用者に無制限に団体交渉を義務
付けることは,使用者側に不当に重い義務を負わせ,ときに無関係な者の関
与を許すことにもつながり,正常な労使関係の構築,樹立という団体交渉制
度の趣旨に悖ることにもなりかねないことから,この点にも配慮して団交応
諾義務の範囲が画されるべきであると解される。このような観点を踏まえて
検討するに,①団体交渉の主題が雇用関係と密接に関連して発生した紛争に
関するものであり,②使用者において,当該紛争を処理することが可能かつ
適当であり,③団体交渉の申入れが,雇用関係終了後,社会通念上合理的と
いえる期間内にされた場合は,元従業員を「使用者が雇用する労働者」と認
めることができるものと解する。そして,何をもって合理的期間とするかに
ついて,雇用期間中の労働条件を巡る通常の紛争の場合は,雇用期間終了後
の近接した期間といえる場合が多いであろうが,紛争の形態は様々であるこ
とからすれば,結局は個別事案に即して判断するほかはないというべきであ
る。(大阪高等裁判所平成21年12月22日判決・労働判例994号81
頁参照)
(2)本件についてこれをみるに,①P3,P4,P5,P6,P7,P8(以
下「P3ら6名」という。)は,いずれも参加人の従業員として,P14工
場において石綿関連業務に従事し,その後胸膜プラークという診断を受けて
いるもので(前提事実(2)),その因果関係は必ずしも明らかとはいえないも
のの,P3ら6名にかかる紛争は,参加人との雇用関係と密接に関連して発
生したものと評価することができる。
また,かかる紛争に対して,②実際にどの程度の義務を負うかはともかく
として,参加人は,少なくとも,可能な限り当時のアスベストの使用実態を
明らかにしたり,健康被害の診断,被害発生時の対応等の措置をとることが
可能であり,かつ,それが社会的にも期待されているといえる。被告は,P
3ら6名の勤務期間が短い者では1年未満,長い者でも16年程度であると
指摘するが,かかる事情は,上記社会的期待の存在を否定するものではない。
さらに,③本件各団交申入れが合理的期間内にされたといえるかを検討す
るに,石綿関連疾患は非常に長い潜伏期間があり,長期間経過した後に症状
が発生するものであるし,そのことは胸膜プラークも同様であること(前提
事実(3)),P3ら6名は,平成17年8月から平成18年7月までに,参加
人が実施した健康診断を受けて,胸膜プラークと診断され(前提事実(2)),
P3及びP4は,平成18年9月,原告分会を結成し(前提事実(4)),P5,
P6,P7,P8も,平成19年2月までに参加していること,原告分会は
参加人に対して分会結成後速やかに団体交渉を申し入れていること(前提事
実(4))が認められる。これらの事情によれば,P3ら6名が退職してから短
い者で約25年,長い者で約50年と相当長期間が経過してからの団交申入
れではあるものの,その長期間経過の責めを同人らに帰することは酷であり,
石綿被害の特殊性を考慮すれば,社会通念上合理的期間内に本件各団交申入
れがされたと認めるのが相当である。
以上に検討した結果を総合考慮すれば,その余の原告分会員らに関する事
情を検討するまでもなく,原告らは「使用者が雇用する労働者」を代表する
労働組合であると解するのが相当であり,少なくとも,参加人に直接雇用さ
れていた者との間でのアスベストによる補償問題については,義務的団交事
項であると解することもできよう。
もっとも,前記説示のとおり,原告分会員らが参加人を退職していずれも
長期間が経過していたのであるから,通常の(現役従業員で構成される)労
働組合からの団交申入れとは異なり,原告分会の団体交渉当事者としての適
格には,法律的に難しい問題を含んでいたのは否めないところである。した
がって,原告らから本件各団交申入れがなされた段階で,参加人において直
ちにこれに応諾すべき義務があるか否かについては,このような事案の特色
を踏まえて,慎重に検討すべき必要があるというべきである(後記2の説示
を参照)。
2争点2(本件各団交拒否に「正当な理由」(労組法7条2号)があるか。)に
ついて
(1)認定事実
前記前提事実及び後掲各証拠を総合すれば,以下の事実を認めることがで
きる。
ア参加人におけるアスベスト関連疾患発症者に対する補償等の取り組み
(ア)平成17年6月のいわゆるP22ショックによって,アスベストに
よる健康被害の実情が広く知られるようになるとともに,企業活動によ
る従業員らのアスベストばく露が社会的な問題となった(前提事実(3))。
このような流れの中で,参加人は,同年7月5日,「当社のアスベスト
(石綿)の使用状況,健康障害状況及びその対応について」と題する書
面を発し,アスベスト製品の製造状況及び管理状況や,アスベストに拠
る健康障害者の状況(各工場ごとの死亡者,療養者数)について公表し,
アスベスト疾患を持って退職した従業員に対し,社内規程に基づき補償
を行っている旨を明らかにした(乙B42)。
また,参加人は,工場周辺住民のアスベスト健康障害者及び遺族に対
して,平成18年5月,救済金として1500万円から3000万円を
支払う旨を明らかにし(乙B43),同月2日付け,同年11月13日
付け,平成19年5月7日付け,同年11月29日付けで,参加人元従
業員等のアスベスト(石綿)による健康障害状況を明らかにした(乙B
44ないし47)。
もっとも,参加人は,胸膜プラークに関しては,労災補償の対象疾病
になっていないことを理由に,上記補償制度における補償の対象として
いなかった(乙B25)。
(イ)他方で,参加人は,胸膜プラークを含む健康不安に対する対応とし
て,近隣住民に対する情報公開としての住民説明会の実施,相談窓口の
開設並びに健康診断及び健康相談の実施等を行っている。健康診断の実
施に当たっては,参加人が,健康診断自体の費用及び交通費(マイクロ
バスによる送迎等)を負担し,健康診断の結果により健康管理手帳の交
付申請の支援をしたり,疾病に罹患している場合は労災申請の支援等を
行うものとされていた。健康診断は,一次と二次に分かれ,一次健康診
断では,問診,聴診,胸部レントゲン撮影等を行い,医師がさらに検査
が必要と判断した場合は,二次健康診断で精密検査を行っていた。(乙
B3の1,24,25)
原告分会員らのうち,P3,P4,P5,P6,P7,P8も,上記
健康診断を受診した(前提事実(2))。
イ原告分会結成前のP3,P4の言動等
(ア)P3は,かつて運送会社に勤務していた当時の平成13年1月ころ,
参加人P14工場を訪問して,運送の仕事があれば回してもらいたい旨
求め,参加人P14工場の総務課長が対応したことがあった。P3は,
この総務課長とのやりとりの中で,自分は元右翼であると告げるなど威
圧的な言動を行っていた(乙A37,B26,C4の1,2。なお,こ
の点について,P3は,かつて参加人に勤務していたという話の流れで
昔話として右翼団体に属していたと話したにすぎない旨陳述書において
供述するが,通常の営業活動において,あえてそのような活動歴につい
て言及するはずがないというべきであるから,上記供述については採用
することができない。)。
(イ)P3は,平成17年8月ころ,参加人の実施する健康診断を受ける
ため,自宅から集合場所となっていたP14工場にタクシーで出向き,
P24総務課長に対し,領収証を差し出してタクシー料金を請求した。
参加人は,健康診断を希望する元従業員らに対し,同工場から参加人指
定の病院までの間をマイクロバスで送迎することとしていたものの,元
従業員らの自宅から同工場までのタクシー料金を負担する取扱いはして
いなかったし,P24総務課長は,事前にP3の上記タクシー料金を支
払う旨了承していなかったが,P3の態度を威圧的と感じ,やむなく自
己の判断で同料金を支払った。(乙B26)
(ウ)P3は,同年11月4日,P14工場を訪れ,同工場の環境対策室
室長であるP25(以下「P25室長」という。)と面談をし,「最近,
嘔吐やせきがよく出る。白黒はっきりさせてくれ。」などと述べた。
また,P3は,同年12月13日,再度P14工場を訪れて,P25
室長に対し,「障害1級で仕事ができず年金だけでは生活できない,生
きている間に補償してほしい,参加人から仕事をもらえないのか,胸膜
プラークに対する慰謝料はないのか」などと述べた。P25室長は,胸
膜プラークは疾病ではないので金銭要求には応じられないことなどを伝
えた。
さらに,P3は,同月26日,P14工場を訪れ,「胸膜プラークの
ため健康管理手帳を持つようになり精神的ショックを受けたので,金銭
補償してほしい,一時的に30万円貸し付けてほしい,体を張ってでも
白黒つける方法もある,一番の要求は参加人が雇ってくれることである」
などと述べた。これに対して,P25室長は,金銭の支払はできないが,
貸付,補償,雇用に関する要望については,本社と相談したいなどと回
答した。(乙B25,C3の1)
(エ)P3は,平成18年1月ころ,P25室長に電話し,いろいろなと
ころに相談に行って確認したところ,新法では胸膜プラークについては
補償の対象にならないことなど,参加人の回答に間違いないことがわか
った旨話した(乙A36,B25)。
(オ)P4は,平成17年11月ころ参加人の健康診断を受診し,胸膜プ
ラークと診断されて,同年12月に石綿健康管理手帳の交付を受けてい
た。P4は,平成18年2月1日,P14工場のP25室長に電話をか
け,「健康診断の結果,胸膜プラークと診断されたが,参加人からの補
償はないのか」などと尋ねたところ,P25室長は,胸膜プラークは疾
病ではなく,参加人には補償制度はないが,症状が進んだ場合は遠慮な
く申し出て欲しいと伝えた(乙B25)。
(カ)P4は,P25室長に対し,平成18年5月19日,電話をかけて,
「2日後の『P27の会』(以下「P27会」という。)の奈良支部設
立総会に出席する,息苦しく夜熱も出る,参加人はどこまで面倒を見て
くれるのか」などと述べた。
これを受けて,P25室長は,P4から事情を聴くため,上記設立総
会の数日後の同月23日午前9時30分ころから午前10時40分ころ
までの間,1人で同人宅を訪ねた。P4は,P25室長に対し,「被害
者の会の設立総会では,P3がテレビで,P25,ニチアスのことを,
すべて話しすると息巻いていたが,私が止めた。」「P3は元右翼の親
分で,私の弟分だった。私は,元やくざであった。」「ニチアスはひど
い会社だ。医者と結託し胸膜肥厚を病気と認めない。」「7月に被害者
の会の総会が開催される。P3と2人で被害者の会の幹事も頼まれてい
る。ニチアスが幾らお金を出すのか,はっきり言って欲しい。駄目な場
合は,被害者の会の幹部として働く事になる。要はニチアスの出方ひと
つである。」と述べ,P25室長が,胸膜プラークは疾病ではなく補償
金を支払えないと説明したところ,P4は,「お前はおれをなめとんの
か。お前は頭をかち割って血を見ないとわからんのか。治療費として1
0から20万円を毎月,振り込め。」などと怒鳴り,さらに「P25個
人としては,幾ら出せるのか。」などと述べた。P25室長は,P14
工場のP28工場長に対して,帰社後,以上の面談結果を書面で報告し
たが,その際,「ヤクザの,おどしとすかしそのものでした。(中略)
P29警部補(同人は奈良県西和警察署の警察官である。)に報告して
おいた方が良いと存じます」と付記した。(乙A37,B25,48,
C3の1。この点,P4は,暴力団加入歴があったことを認めつつ〔乙
A37〕,そのことをこの時点でP25室長に伝えたことはないと供述
するが〔原告分会代表者尋問の結果〕,P25室長の当時の社内報告文
書には上記認定のP4の発言が記載されていることなどに照らして,上
記P4の供述については直ちに信用することができない。)
P28工場長及びP25室長は,その翌日である同月24日午前11
時ころ,奈良県西和警察署を訪れ,同警察署のP30警部,P29警部
補と面談し,P3とP4に対する従前の事実経過を話した上で今後の対
応を協議し,同警部らから,街宣車を用いたり工場に押しかけることも
想定されるが,そのときは連絡してほしい,P4宅を訪問するときは複
数名で行くことなどの指導を受けた(乙B23の1・2,25,49)。
(キ)P25室長は,平成18年6月8日,参加人本社環境対策室担当者
のP31とともに,P4宅を訪ね,同人に対し,再度,胸膜プラークは
疾病ではないので補償金を支払うことはできないと回答した。P4は,
「(胸膜プラークを病気でないということを)P27会に出席して,み
んなの前で説明してこい。」などと応じ,「10万円でも出せないのか。」
「P25個人としてはどうなのか。」と金銭支払を執拗に求めたが,P
25室長らは補償金の支払には応じられない旨を答えた。(乙B25)
(ク)P3及びP4は,平成18年8月22日,P14工場を訪れ,P2
5室長に対し,胸膜プラークに対し,会社が補償しないなら元の体に戻
せ。健康管理手帳を渡せば終わりという態度が気に入らない,などと述
べた。また,P3は,面談場所付近を参加人の子会社従業員が通った際
に目が合ったことで立ち上がり,「何
めん
面切ってんだ。」と大声で叫んだ。
(乙B25,C3の1,4の1)
ウ本件各団交申入れの状況等
(ア)原告分会が平成18年9月17日に結成され,同日,原告組合に加
入したことは前提事実(1)記載のとおりであるが,原告分会のP3,P4
のほか,原告組合のP26,P32センター事務局次長のP33,P2
7会のP34は,同月20日,P14工場に出向き,参加人に対し,「組
合結成通知および団体交渉申入書」と題する書面を交付して,団体交渉
の申入れを行った(第1回団交申入れ)。
参加人は,上記来訪者をP14工場3階会議室に案内し,P28工場
長,P24総務課長,P25室長外1名において対応したが,参加人側
が冒頭,会話の録音を申し出たのに対し,P3及びP4は,「なんで録
音するんだ。おとなしくしてりゃあ,おまえらなめとるんか。」と激し
く怒鳴りつけ,また,参加人が説明をする途中でも,「ごちゃごちゃ言
わずに元の体に戻せや。」「P25は首を振っているだけで話をまとも
に聞いていない。担当者を替えろ。なめやがって。」「土産を持ってく
ると言いながら,土産の代わりに本社を連れてきやがって。」などと発
言し,P3は机を叩いて「お前ら患者のことを考えたことあるんか。」
と怒鳴る等した。(乙A3,B25,26,C1の1,2,3の1)
原告分会は,参加人に対し,同年10月27日付けで,要求事項を追
加する「要求書」を作成し,交付したのに対し,参加人は,同年11月
15日付けの回答書により団体交渉を拒否した。(前提事実(4))
(イ)原告分会らは,平成18年11月28日付けで,上記団交拒否等に
対し「会社回答に対する抗議文」を送付したのに対し(乙A4),参加
人代理人弁護士は,原告分会らに対し,参加人に直接連絡しないよう求
める等した回答書を送付した(乙A5,B5の1・2)。なお,上記抗
議文中には,参加人に関し「これまで貴社は何人の労働者や住民をアス
ベストによって殺してきたのか,どれだけ不安を与えてきたのか,その
事に対する怒りの言葉に対して,このような対応は『盗人猛々しい居直
り』と人は言うでしょう。」との記載がある(乙A4)。
また,原告分会が,参加人に対し,平成19年2月27日付けで,組
合員の追加加入を通知したのに対し,参加人は,同年3月1日付けで,
原告分会に,直接交渉ではなく交渉窓口である代理人弁護士に対して連
絡するよう求めた(前提事実(5))。
(ウ)原告分会及び全造船P2労組は,参加人に対し,平成19年3月5
日,第2回団交申入れをした(前提事実(5))。その際,P3,P4,P
26らは,「団体交渉申入書」と題する書面(乙A8)をP14工場に
持参したところ,P24総務課長が,同工場守衛所付近で対応し,団交
申入れには代理人弁護士が対応する旨述べ,上記団体交渉申入書の受領
を拒否した。原告分会側は,弁護士を通した交渉は適切ではない,これ
では門前払いである,被害者のことを考えていない等と述べた。その集
団の中程にいたP3は,話の途中,突然P24総務課長の前に寄って行
き,P24総務課長は「もしかしたら殴られるのではないか。」と思っ
たところ,P26がとても慌てた様子で,P3を制した。その後,P2
6は,「要求書を置いていくので読んでおいてくれ。」と述べ,原告分
会側は上記団体交渉申入書を置いて立ち去った。(以上,乙A8,B2
6)
全日本造船機械労働組合P1協議会及び原告分会は,参加人に対し,
同月9日付けで,前記平成19年3月5日付けの団体交渉申入書の受取
を拒否したことに対する抗議文(乙A9)を送付した。
(エ)P3,P4やP26その他原告分会の関連団体の者であると思われ
る者達(以下「原告分会関係者」という。)合計約50名は,平成19
年3月26日午前11時ころから,東京都港区所在の参加人本社を取り
囲み,赤,青,黄色等の幟を10本以上立てて,正面玄関前に横断幕も
掲げ,拡声器を使用して街宣を行った。
原告分会関係者のうち7,8名が,同日午前11時40分ころ,参加
人本社の玄関ホールに入ったため,受付にいた女性従業員は緊急スイッ
チを押し,これを受けた同社総務部総務チームリーダーのP35及び同
部法務チームリーダーP36は受付に出向き,上記7,8名に対し,「本
件は代理人弁護士が対応させていただきます。」「お引き取りください。」
と伝えた。しかし,上記7,8名は,P35らに対し,「入れろ。」な
どと言い,P35らと押し問答になった。
やがて,本社前にいた原告分会関係者も続々とホール内に入り,30
名ないし40名ほどがホール内に集結し,幟を多数立てて同所を占拠し
た。原告分会関係者の中には,ホール内で拡声器を使用して「人殺し。」
などと怒声をあげる者や,全身白色の防護服に防護マスクまで着用して
いる者もいた。P35らは,ホール内の多数の原告分会関係者に対し,
「責任者は不在です。」「本件は代理人弁護士が対応をさせていただき
ます。」「お引き取り下さい。」と繰り返し退去を求めたが,原告分会
関係者らは,「代理人って何や。ふざげんな。」などと叫んで興奮状態
であり,立ち去ろうとしなかった。受付の女性従業員2名のうち1名は,
以上の経緯の途中で,カウンターにいることに耐えられなくなり,退出
した。
さらに,原告分会関係者らは,ホールに隣接する1階執務室内に立ち
入ろうとし,「乱入するぞ。」「入ろやあ。」などと怒号したため,P
35らがホールと執務室を隔てるドアの前に立ち,ドアを押さえて原告
分会関係者らの侵入を制止しようとした。
原告分会関係者らは,大勢で上記P35の体ごと執務室のドアを押し,
最終的にドア枠を掴むP35の手を引きはがして執務室内に押し入っ
た。侵入した原告分会関係者は,同室内にいた従業員に対し,口々に「お
ら。こぉらぁ。」「どうなんだよ。」「人殺してんだよ,お前らは。」
「さんざん人殺しといて,何やっとんだ,てめえらぁ。」などと大声で
怒鳴り,参加人は警察に通報した。
P35らは,その場を収めるため,やむなく担当者2名において,原
告分会関係者を代表する6名と本社地下会議室で対応することとし,他
の原告分会関係者は執務室を退出して本社前に戻った。
参加人担当者2名及びP3,P4ら原告分会関係者を代表する者6名
は,地下会議室に移動したが,P3は,参加人担当者らに対し,同室に
おいて,「元の体に戻せや。それがだめなら話し合いに応じろ。」と述
べ,P4が,「なんちゅう企業や。」と述べ,P3は時に机を叩く等し,
参加人担当者らは終始威圧感を受けている様子で対応した。
また,原告分会関係者らは,参加人本社前で,「ニチアスは被害の救
済も交渉も行っていない。」「ご近所のみなさん,もしこのニチアスと
いう会社から,アスベストを今からばらまいたら,皆さん,平気でいら
れますか。」「アスベスト,まきましょうか。まいて,皆さん,吸って
みますか。」「ニチアスがちゃんとした交渉に応じない限り,私たちは
もしかしたら,ここでアスベストをまくかもしれませんよ。」などとい
う演説をした。
(以上,乙A31の2,B12,17の1・2,18,19,21,2
7,C5の1)
(オ)上記の原告分会関係者らの暴力的言動を踏まえて,参加人代理人弁
護士らは,平成19年3月27日付けの「抗議文」と題する書面により,
前記(エ)の原告分会関係者らの行為について抗議し,その後,同年4月
5日付け「ご回答」と題する書面により,第2回団交申入れを正式に拒
否する意思を表明した(乙B12,14)。
(2)認定事実に基づく判断
ア第1回団交拒否について
(ア)以上の認定事実のとおり,原告分会結成前,P3は,参加人に対し,
自らが元右翼であるなどと名乗って仕事を回すよう要求したり,健康診
断の際にも領収証を差し出してタクシー料金を要求するなど威圧的な言
動を行っていた。また,P4も,原告分会結成前の平成18年5月23
日には,自宅を訪問してきたP25室長に対し,自身が元暴力団構成員
であることなどを示して,「お前はおれをなめとんのか。お前は頭をか
ち割って血を見ないとわからんのか。」などと極めて粗暴な脅迫的言動
を行い,治療費名下に月額10万円から20万円の金員を要求するなど
しているところ,このようなP4の言動にP25室長が相当な恐怖感を
覚えたことは,同室長が上司に「やくざのおどしすかしそのものでした。」
と報告していることや,直ちに警察に対応を相談し指導を受けているこ
とからも容易に推認できる。その後も,P3及びP4は,共にP14工
場を訪れて金銭の支払を要求し,通りかかった参加人関係者を怒鳴りつ
けるなどしたものである。
そして,P3及びP4は,第1回団交申入時にも,「おとなしくして
りゃあ,おまえらなめとるんか。」「ごちゃごちゃ言わずに元の体に戻
せや。」と怒鳴ったり,「P25は首を振っているだけで話をまともに
聞いていない。」等と発言し,P3は机を叩いて「お前ら患者のことを
考えたことあるんか。」と粗暴な脅迫的言動を繰り返していたものであ
る。
P3及びP4にこのような言動があったことに照らすと,同人らが参
加人において稼動した際にアスベストに曝露され,これにより被害を被
ったという認識を有していたことを考慮したとしても,参加人が,団体
交渉の場において原告らと正常な協議ができない状況にあると考えたこ
とについては,合理的な理由があったと考えられる。
この点について,原告らは,原告分会結成前のP3やP4の言動を団
交拒否の正当理由の判断に当たって考慮すべきでないと主張するが,同
人らは原告分会の中心人物であること(とりわけ第1回団交申入れの時
点では組合員はP3とP4の2名だけであった。),上記各言動は,P
3,P4らの参加人に対する補償要求の手段としてされたものであると
ころ,原告分会から参加人への要求事項にも同様の内容が含まれている
こと,P3及びP4は第1回団交申入時点でも同様に不穏当な言動をし
ていることなどに照らすと,原告らの上記主張を採用することはできな
い。
(イ)さらに,本件においては,P3やP4が,健康診断により胸膜プラ
ークとの診断を受けていたとはいえ,参加人を退職してから第1回団交
申入れまで既に42年から49年もの長期間を経過していたことからす
れば,参加人としては,原告分会を労組法7条2号の「雇用する労働者
の代表者」として取り扱うべきか否かについて疑問を抱いたとしても,
無理からぬ事情があったというべきである(参加人の第1回団交拒否が
このような考えに基づくものであったことは,団体交渉としては拒否し
つつ,P3やP4個人の権利行使については代理人弁護士を窓口として
交渉に応じるとした点からも推察されるところである。)。
(ウ)以上(ア)(イ)の事情を考慮すれば,原告らの第1回団交申入れを参
加人が拒否したこと(第1回団交拒否)には,正当な理由があったと認
めるのが相当である。
イ第2回団交拒否について
(ア)原告分会結成前及び第1回団交申入時のP3及びP4の言動は,粗
暴な脅迫的言動を含む不穏当なものであったことは前記アのとおりであ
るところ,参加人が,平成18年11月15日付け回答書において,第
1回団交申入時のP3及びP4の言動は団体交渉を困難にするものであ
る旨指摘したのに対し,原告らは,同月28日付けの「会社回答に対す
る抗議文」の中で,「これまで貴社は何人の労働者をアスベストによっ
て殺してきたのか。」とか「盗人猛々しい。」との過激かつ不穏当な文
言を用いて応酬し,何ら前記P3及びP4の言動の影響を排除するよう
な措置を採ろうとしていないことに照らすと,参加人が,依然として,
団体交渉の場において正常な協議ができない状況にあると考えたこと自
体は首肯できるものである。
また,前記ア(イ)のとおり,参加人の立場からすれば,そもそも原告
分会については参加人の「雇用する労働者の代表」といえるかどうかに
ついて,疑問を抱いてしかるべき状態であったといえる。とりわけ,第
1回団交申入後に新たに加入した組合員(ないし発症者)の中には,参
加人に直接雇用されたことがない者も多く存したことからすれば,(P
9,P10,P11,P20),参加人がこれらの者の補償問題等につ
いて,団体交渉事項とするかについては,一定の検討期間を必要とする
状況にあったといえる。
このように,第2回団交申入れがなされた平成19年3月5日当時は,
P3やP4の粗暴な言動の影響がなお排除されない状況下にあったとい
い得るし,のみならず,原告分会の団体交渉当事者としての適格の点や
団体交渉事項についても法律的な疑義が生じていたのであるから,参加
人が,第2回団交申入れの当日,代理人弁護士に対応を一任するとして,
同団体交渉申入書を直ちに受領しなかったことが不当であるとはいえな
い。
(イ)このような中,原告分会関係者ら多数人は,平成19年3月26日
に,参加人本社を訪れ,同本社玄関ホール内を占拠し拡声器を持ち込ん
で怒号する等,業務妨害というべき行為をし,さらには,参加人代表取
締役社長ないしその委任を受けた者が施設管理権を有し,かつ,ドアの
設置により関係者以外の立入りを禁ずる意思が明示されている本社1階
執務室内に不法に侵入した上,「人殺してんだよ,お前らは」などと怒
鳴るなどの暴力的行為を働き,かかる原告らの暴力的行為を受けて,参
加人が,もはや,原告らとの直接の交渉はできないと考え,同年4月5
日付けの回答書により,団交拒否の意思を明示したことは前記認定のと
おりである。
かかる状況の下での参加人の前記対応はいわば当然のことというべき
であって,合理性があることは明らかである。
(ウ)以上によれば,参加人が,弁護士である代理人による交渉の余地を
残して行った第2回団交拒否についても,正当の理由があるというべき
である。
第4結語
以上の次第で,処分行政庁の本件命令に違法な点を認めることはできず,原
告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
裁判長裁判官白石哲
裁判官西村康一郎
裁判官光本洋

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