弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を却下する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 本件抗告の要旨は、原決定別紙目録記載の木材は、抗告人が昭和二十六年三月下
旬山元においてAから買受け、検収極印打入等すべて商慣習にしたがつて引渡を受
け、馬夫B等を使役して同年四月上旬までの間に原決定別紙目録記載の場訴まで搬
出したもので、抗告人はこの木材が他人に持去られるおそれがあつたので、釧路地
方裁判附に対しC外八名を相手方として仮処分を申請し、同庁昭和二十六年(ヨ)
第二一号仮処分命令を得て昭和二十六年六月二十六日その執行をしたところが、相
手方はその執行の直前である昭和二十六年六月六日この木材を買受けその引渡を受
けたと称して同裁判所に対し第三者異議の訴を提起し、且つ右仮処分執行取消決定
を申請して原決定を受けたのである。しかしながら相手方がこの木材を買受けた当
時この木材には抗告人の極印が打込んであつたことは明かであるから、商慣習から
して相手方が引渡を受けたことは無効であるばかりでなく、常識からしても怪しむ
べきものであるのみならず、仮処分命令は現状の変更によつて権利の実行が不能に
帰するおそれある場合に許さるるものであるのに命令そのものを許してその執行の
みを取消すことは矛盾であると考える。しかも、本案判決をなすまでこれを取消す
という決定はその意を諒解すにる苦しむ。すなわち、本案判決をなすにいたつたな
らば仮処分の目的物は一も存在せざるにいたり、無条件取消と何の相違もないこと
になり、仮処分により保全せらるる権利は保全せられ得ないこととなる。民事訴訟
法第五百四十七条以下の規定により本件仮処分執行取消は形式上は不法ではないか
もしれないが、実質上は甚だしく不当であり、実情を無視するものであるから、原
決定の取消を求めるために同法第五百五十八条により即時抗告に及んだというにあ
る。
 <要旨>そもそも民事訴訟法第五百四十七条の強制執行停止決定及び執行処分取消
決定はいずれも後に異議の判決において取消、変更、認可される意味におい
て仮の裁判であるから、これに対し独立にその当否を争わせることは単にその必要
がないばかりではなく、かえつてその弊害として異議に対する裁判がその目的を失
うにいたる危険すら存するのである。したがつて、同法第五百四十七条には同法第
五百条第三項のような規定はないけれど、この規定を類推して、同法第五百四十七
条の強制執行停止決定及び執行処分取消決定に対しては同法第五百五十八条の即時
抗告をすることができないものと解すべきである。
 そうとすれば本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし、民事訴訟法
第四百十四条、第三百八十三条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり
決定する。
 (裁判長裁判官 浅野英明 裁判官 熊谷直之助 裁判官 臼居直道)

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