弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人加藤充上告趣意第一点及び第二点について。
 原審確定の事実によれば、「昭和二三年四月二三日A連盟の各支部代表者数十名
が朝鮮人学校閉鎖命令の撤回要求につき大阪府副知事Bと、大阪府庁内で会見交渉
中同府庁前大手前公園に集合し右交渉の結果を待つていたA連盟各支部員、朝鮮人
諸学校教職員、生徒、保護者等数千名のものが共産党員等の一部尖鋭分子から「吾
々の敵は反動官僚の牙城たるあの大阪府庁である。吾々は死を賭してあの府庁を乗
り取ろうではないか」と激烈な語調で煽動されたため、同日午後三時三〇分頃、府
庁舎内に押入り大衆の威力を以て府当局者を脅迫して閉鎖命令を撤回せしめる意図
の下に、ワツシヨ々々々々と喚声をあげて、右B副知事の監守する同庁舎に殺到し、
警察職員の制止があつたにも拘らず、正面玄関から続々と同庁舎内に侵入して一階
から五階に到る各廊下及び階段の大部分を占拠し、同日午後八時頃まで、朝鮮独立
歌を高唱する等喧騒を極めると共に、或る者は知事控室外数個所の扉等を破壊し、
或る者は鎮圧又は拘束しようとした警察職員と掴み合つたり、殴つたり等してこれ
を多数負傷せしめ、よつて府庁内勤務員をして、或は恐怖の余り執務を中止せしめ、
或は扉を閉して警戒に当らしめた程の騒擾行為をなしたものであるが、その際被告
人等はいずれも閉鎖命令に反対して大手前公園に集り、交渉委員でも連絡委員でも
ないのに、前記群集の意図を知りながら群集に従い、故なく府庁舎内に侵入すると
共に、右騒擾行為に附和随行したものである。」というのである。そしてこの原審
の事実認定は原判決挙示の証拠に照らしこれを肯定するに難くないのである。
 凡そ、官公署の庁舎の出入口及廊下等がその執務中一般に開放せられているのは、
その執務に関連して、正常な用務を帯びて民衆の出入することが予期せられる関係
上、これが便誼に応ぜんとするものに過ぎないのであるから、その出入口及び廊下
の如きはもとよりその庁舎を管理するものの看守内にあることは多言を要しないと
ころであり、これを道路に準ずべきものであるとなす所論には到底賛同することは
できない。原審認定にかかる被告人等の前示所為が一般に予期せられる正常な用務
を帯びての庁舎への出入でないことは勿論、警察職員の制止を排しての押し入りで
ある以上、故なく他人の看守する建造物に侵入したものであることは明々白々であ
る。又原判決に、本件騒擾行為の首魁或は指揮者又は卒先助勢者が何人であるかを
具体的に指名判示されていないことは所論の通りであるが、首魁その他のものの存
否又は不明確というようなことは、判示被告人等の所為が本件騒擾行為に附和随行
したものに該当することに何等の消長を来すべきではない。原判決には所論のよう
な違法はない。その他の所論は結局事実審である原審がその裁量権の範囲内で適法
になした事実認定を非難するに帰着し上告適法の理由となすに足りない。論旨は採
用に値しない。
 同第三点について。
 所論は漠然と原判決は旧態依然たる封建的官僚独善の裁判であり、官僚が人民の
公僕になつた新憲法下の法律の解釈適用の立場や方法を誤つているというに止まり、
原判決に如何なる法令違反があるかを具体的に主張するところがない。上告適法の
理由とするに足りない。
 よつて旧刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 長部謹吾関与
  昭和二四年六月一六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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