弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人喜治榮一郎の上告理由について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、首肯する
に足り、右事実関係のもとにおいて、本件松原市ab丁目c番の土地と同d番eの
土地との境界は、原判決添付図面のロ、ハ、ヌの各点を順次直線で結んだ線である
と確定し、右係争土地のうち、原判決添付図面のハ、ニ、ホ、ヌ、ハの各点を順次
直線で結んだ範囲の土地につき亡Dの時効取得を容認した原審の判断は、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はなく、論旨は採用することができ
ない。
 なお、職権により調査するに、原審の確定したところによれば、前記両土地の境
界は、原判決添付図面のロ、ハ、ヌの各点を順次直線で結んだ線であるところ、同
図面のハ、ニ、ホ、ヌ、ハの各点を順次直線で結んだ範囲の土地は、c番の土地の
一部に該当し、亡Dがこれを時効取得したうえ、同人所有のd番eの土地とともに
第一審脱退被告Eに売却し、更に被上告人(第一審引受参加人)Bが右Eからこれ
らを買受け所有権を取得するに至つた、というのであるから、その結果、c番とd
番eの両土地の前記ロ、ハ、ヌの各点を順次直線で結んだ境界線のうちの一部であ
るハ、ヌの各点を直線で結んだ線に相接する土地はいずれも被上告人B所有の土地
となり、残存する上告人所有のc番の土地は右ハ、ヌの各点を直線で結んだ線には
接していないことになるので、このような場合にもなお、右ハ、ヌ各点間の境界線
を上告人と被上告人Bとの間で確定する必要があるのかが本件境界確定の訴えの適
否という観点から一応問題となる。しかしながら、本件においては、公簿上、上告
人を所有名義人とするc番の土地と被上告人Bを所有名義人とするd番eの土地と
は相隣接する関係にあり、かつ亡Dにより時効取得され、順次売買により被上告人
Bが所有権を取得するに至つた原判決添付図面のハ、ニ、ホ、ヌ、ハの各点を順次
直線で結んだ範囲の土地は、右公簿上、地番の表示をc番とされ、依然上告人が所
有者と公示されている土地の一部である。そして、右取得時効の成立する部分が、
いかなる範囲でいずれの土地に属するかは、両土地の境界がどこにあるかが明確に
されることにより定まる関係にあり、右時効取得の対象となつた土地部分を含めて
上告人及び被上告人Bがそれぞれ所有者として公示されているc番の土地とd番e
の土地との境界が不明確なままでは、そのことに起因する紛争の抜本的な解決はあ
りえないのであつて、たとえ本件訴訟において、取得時効の対象とされたc番の土
地の一部を被上告人Bにおいてその所有権を取得したことが上告人との間で明らか
にされても、右土地部分を更に第三者に譲渡する場合には該土地部分をc番の土地
から分筆して被上告人Bに所有名義を変更したうえ、その所有権移転登記手続をす
る義務があり、右手続のためにも両土地の境界が明確にされていることが必要とさ
れるのである。そうすると、上告人、被上告人B双方にとつて、c番の土地とd番
eの土地の境界のうち、原判決添付図面のロ、ハの各点を結ぶ直線部分のほか、ハ、
ヌの各点を結ぶ直線部分についても、境界の確定をする必要があり、上告人及び被
上告人Bは、本件境界確定の訴えにつき当事者としての資格があるものというべき
である。
 してみれば、訴えの適否を問題とすることなく、本件c番の土地とd番eの土地
との境界を確定した原審の措置は相当というべきである。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    安   岡   滿   彦

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