弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
         理    由
 本件特別抗告の趣意は末尾添附別紙記載のとおりであつて、原決定の判例違反を
主張するものである。
 しかし所論引用の各判決はその後いずれも昭和二五年(あ)一五九六号、同二八
年六月一〇日大法廷判決(判例集七巻六号一四〇四頁以下)によつて変更されたも
のと解すべきである。即ち右大法廷判決によれば併合罪の関係に立つ二罪が前後し
て起訴され、その一罪につき刑の執行猶予が言い渡されていた場合に、他の罪が同
時に審判されていたならば一括して執行猶予が言渡されたであろうときは、他の罪
につきさらに執行猶予を言い渡すことができるのであり、右の場合においては刑法
二六条一項二号にいう「刑ニ処セラレタル」とはその刑につき執行猶予の言渡がな
い場合を指すものというのである。
 本件においては被告人は(一)昭和二五年七月一七日頃に犯した窃盗罪により同
年九月一七日大阪簡易裁判所において懲役一年、但し三年間執行猶予に処せられ、
(二)これより以前の昭和二三年八月一〇日頃に犯した背任罪により昭和二六年三
月一〇日大阪地方裁判所岸和田支部において懲役八月、但し二年間執行猶予に処せ
られたというのであり、且つ一件記録に徴するのに両個の罪が同時に審判されてい
たならば一括して執行猶予が言い渡されたであろうということが認められるのであ
る。即ち原決定が「刑法二六条一項二号にいわゆる『猶予の言渡前に犯した他の罪
につき禁錮以上の刑に処せられたとき』とは刑の言渡をした判決が確定したという
だけでは足らないのであつて、更にその刑について執行猶予の言渡のない場合に限
るものと解すべきである。すなわち二個の判決確定前に犯された数罪について、そ
れぞれ執行猶予の言渡があつた場合には刑法二六条一項二号を適用してこれを取り
消すべきものではないのである。」と判断したことは前記大法廷判決に徴し正当と
いわねばならない。従つて当裁判所は原決定を維持するのを相当と考えるので、本
件抗告は理由がないものといわねばならない。
 よつて刑訴四三四条、四二六条一項により裁判官全員一致の意見で主文のとおり
決定する。
  昭和二八年一二月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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