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平成24年6月13日判決言渡
平成24年(ネ)第920号退職金請求控訴事件,同年(ネ)第3013号承継参
加申立事件
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人承継参加人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の控訴人承継参加人に対する請求を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の要旨
被控訴人は,脱退前の控訴人(以下「控訴人」という。)に対し,退職金支
払合意に基づき,退職金3037万0170円及びこれに対する退職日翌日で
ある平成21年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分による遅延損
害金の支払を求めた
原審は,被控訴人の請求を3037万0170円及びこれに対する平成22
年2月4日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で
認容したところ,控訴人が請求全部の棄却を求めて控訴した。
控訴人は,控訴提起後,日本における一切の事業を控訴人承継参加人に譲渡
したことにより,同参加人が控訴人の義務の承継者として訴訟参加を申し立
て,また,控訴人は,被控訴人の承諾を得て訴訟から脱退した。
上記被控訴人の請求を棄却した部分については,不服の申立てがないから,
当審の審判の対象ではない。
2当事者の主張等
前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり補正し,当審
における控訴人承継参加人の予備的な主張を加えるほかは,原判決の「事実及
び理由」中の「第2事案の概要等」の2及び3に記載のとおりであるから,
これを引用する。
(1)原判決の補正
ア2頁7行目の「認定できる事実」を「認定できる事実。ただし,(1)ウ
を除き,控訴人承継参加人が控訴人から事業の譲渡を受ける前の時点の事
実である。」に改める。
イ同20行目末尾に改行して次のとおり加える。
「ウ控訴人承継参加人
控訴人承継参加人は,原判決言渡し後の平成24年4月2日,控訴
人との間で,控訴人が控訴人承継参加人に対してB支店における一切
の事業を譲渡する旨の契約を締結し,同契約及び控訴人との間の合意
に基づき,同日付けで,控訴人と被控訴人との間の契約に基づく控訴
人の地位を譲り受けた(弁論の全趣旨)。」
ウ3頁20行目の「「本件退職金合意」という」を「「本件退職金合意」
といい,これに基づいて支払われるべき退職金を「本件退職金」という。」
に改める。
(2)当審における控訴人承継参加人の予備的な主張
万一,本件不支給条項の有効性に何らかの疑義があると仮定しても,本件
不支給条項を全部無効としなければならない必然性はない。
一例として,Aへの転職は,被控訴人の功労を全部抹消するのでなく相当
程度減殺する要素であるとみて,本件退職金を減額する考え方は,裁判実務
上もしばしば見受けられる選択である。
ところが,原審は,このような柔軟かつ世間智をわきまえた穏当な比較衡
量の余地を探ることもなく,いわば一刀両断的な硬直した判定を下したもの
であり,不当である。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の請求は,原判決が認容した限度で理由があると判断
する。その理由は,次のとおり補正し,当審における控訴人承継参加人の予備
的主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3
争点に対する判断」に説示するとおりであるから,これを引用する。
18頁10行目から14行目までを次のとおり改める。
「1被控訴人の控訴人における地位について
(1)被控訴人は,平成16年7月1日から退職時まで控訴人の執行役員
の役職にあり,平成21年5月31日までは金融法人本部の本部長及び
金融法人企画部長の役職にあった。
控訴人承継参加人は,被控訴人が執行役員の役職にあったことに基づ
き,その高度の信任の見返りとして取締役に準じた忠実義務を負うこと
から,本件競業避止条項を定めることとした旨主張するところ,本件競
業避止条項の効力を検討するに際しては,被控訴人と控訴人との間の契
約関係が委任契約であるか雇用契約であるか,役職名が執行役員である
かどうかという形式的な事項ではなく,控訴人における執行役員の職務
の実態及び被控訴人の職務の実態を考慮して判断を行うことが相当で
ある。
(2)控訴人における執行役員の職務の実態及び被控訴人の職務の実態に
ついて,以下の事実を認めることができる。」
210頁12行目の「この記載によって」から13行目末尾までを「この記載
から直ちに執行役員の職務の実態を認定することはできない。」に改める。
3同14行目から11頁18行目までを次のとおり改める。
「(3)以上によると,被控訴人は,本件退職金合意当時から退職に至るま
で控訴人の執行役員の職にあり,また,本件退職金合意当時から退職の
間近まで金融法人本部の本部長の職にあったものの,その職務の実態
は,控訴人から取締役に類するほどの高度の権限や信任を付与されるも
のではなかったというべきである。
2何人にも職業選択の自由が保障されていること(憲法22条1項)から
すれば,雇用契約上の使用者と被用者との関係において,また,委任契約
上の委任者と受任者との間においても,雇用契約ないし委任契約終了後の
被用者ないし受任者(以下「被用者等」という。)の競業について,被用
者等にこれを避止すべき義務を定める合意については,雇用者ないし委任
者(以下「雇用者等」という。)の正当な利益の保護を目的とすること,
被用者等の契約期間中の地位,競業が禁止される業務,期間,地域の範囲,
雇用者等による代償措置の有無等の諸事情を考慮し,その合意が合理性を
欠き,被用者等の上記自由を不当に害するものであると判断される場合に
は,公序良俗に反するものとして無効となると解することが相当である。
3本件転職が本件競業避止条項に定める禁止対象行為に該当するか
(1)本件競業避止条項が定められるに至った経緯は以下のとおりであ
る。」
412頁13行目冒頭の「(4)」を「(2)」に改める。
513頁3行目及び13行目の「労働者」をいずれも「従業員や役員」に改め,
5行目の「正当な目的であるとはいえない。」の次に「これは,本件が,顧客
が会社ではなく人に付くため営業成績に人的関係が大きく影響し得る保険業
界における事案であることを考慮しても,変わるものではない。」を加える。
6同18行目から26行目までを次のとおり改める。
「被控訴人の控訴人における地位は,前記1認定のとおりであり,被控訴人
は控訴人の執行役員及び金融法人本部の本部長の職にあったものの,その職
務の実態は,取締役に類するほどの高度の権限や信任を付与されるものでは
なかった。
被控訴人が執行役員として,控訴人B支店の役員会の構成員となっていた
ことは前記のとおりである。」
714頁13行目の「それまで」を「平成11年11月以来約10年間にわた
って」に改める。
8同19行目の「言い難いし」から20行目末尾までを「言い難い(なお,被
控訴人は,控訴人の執行役員を退任した翌日にAに就職しているが,当該事実
は本件競業避止条項の当否とは無関係の事実であり,これをもって本件の結論
を左右するものではない。)。」に改める。
915頁12行目の「賃金後払的な要素」の次に「(控訴人と被控訴人との間
の契約を委任契約と解する場合には委任報酬額の後払いとしての要素)」を加
える。
1017頁24行目の「原告の退職前の地位は相当高度ではあったが」を「被控
訴人の退職前の地位は執行役員であったが,その実態は前記のとおり取締役に
類する権限や信任を付与されるに至らないものである上,」に改める。
1118頁1行目の「,地域」を削除し,2行目の「その他の事情を考慮しても」
を「これに加え,(6)のその他の事情を考慮すればなおさら」に,3行目の「労
働者」を「被控訴人」にそれぞれ改める。
12同8行目から13行目を削除し,同14行目冒頭の「6」を「5」に,15
行目冒頭の「7」を「6」にそれぞれ改める。
13以上のとおり,本件競業避止条項及び本件不支給条項は無効と認めるべきで
あるから,上記各条項の一部無効を主張する控訴人承継参加人の当審における
予備的主張も理由がない。
控訴人承継参加人は,控訴理由書において,その他種々の主張をするが,い
ずれも以上の認定及び判断を妨げるものではない。
第4結論
以上によれば,被控訴人の請求は原判決が認容した限度で理由があるからそ
の限度で認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであり,これと同
旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却すること
とする。
東京高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官梅津和宏
裁判官中山顕裕
裁判官野口忠彦

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