弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
       事実及び理由
第1 請求
被告A及び同Bは,群馬県利根郡利根村に対し,各自金187万7500円及びこ
れに対する平成11年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
本件は,群馬県利根郡利根村(以下「利根村」という。)が,造園業を営む被告B
を相手方として,随意契約の方法により,群馬県指定の天然記念物である「経塚の
松」に代わる松(以下「本件赤松」という。)の植栽請負工事契約(以下「本件契
約」という。)を締結し,289万円の公金を支出したことにつき,利根村の住民
である原告らが,随意契約の制限に関する法令に違反する違法な財務会計上の行為
に当たるなどと主張して,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項
4号に基づき,利根村に代位して,利根村長被告A及び被告Bに対し,損害賠償を
求めた事案である。
1 争いのない事実等(末尾に証拠を掲げた事実以外は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
原告らは,肩書住所地に居住する利根村の住民である。
被告Aは,平成8年11月から平成12年10月まで,利根村の村長の職にあった
者である。被告Bは,利根村において,B造園という屋号を用いて造園業を営む者
である。
(2) 本件契約の締結及び公金の支出
ア 利根村は,平成11年2月9日,被告Bを相手方として,随意契約の方法によ
り,以下のとおりの内容で本件契約を締結した(乙7の2)。
工事名    松植栽工事
工事場所   利根村大字a字b地内(経塚の一本松付近)
工期     着手 契約の日から7日以内
完成     同年3月16日
請負代金額  289万円
支払方法   完成引渡しの時
ただし,植栽後において,天災等に原因があること以外で,本件赤松が枯れたりそ
れに似たような重大な影響が認められた場合,同等程度の松を再度移植すること
(以下「枯れ保証」という)。
イ 利根村は,本件契約の履行として,同年4月15日,上記代金を支払った(以
下「本件公金支出」という。)。
(3) 原告らによる監査請求
原告らは,平成12年4月3日,利根村監査委員に対し,法242条1項に基づ
き,本件公金支出についての監査請求を行い,利根村監査委員は,同年5月31日
付けで,原告らに対し,同条3項に基づき,上記請求には理由がない旨の監査結果
を通知した。
2 争点
(1) 本件公金支出の違法性
【原告らの主張】
ア 本件赤松の代価及び植栽費は,合計して101万8500円を上回らない。し
たがって,本件公金支出は,いわゆる最小経費による最大効果の原則を定めた法2
条14項及び「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最小の
限度をこえて,これを支出してはならない」とする地方財政法4条1項に違反する
違法なものである。
イ 本件契約は,代金289万円の請負契約である。したがって,本件契約及びこ
れに基づく本件公金支出は,指定都市を除く市町村は130万円を超える請負契約
を随意契約の方法で締結することはできないとする法234条2項及び地方自治法
施行令(以下「施行令」という。)167条の2第1項1号に違反する違法なもの
である。
ウ 本件契約には,施行令167条の2第1項2号の適用はなく,仮に適用がある
としても,同条項号の「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当しな
いから,本件契約を随意契約の方法によることは許されない。したがって,この点
からいっても,本件契約及びこれに基づく本件公金支出は違法なのである。
(ア) すなわち,同条項1号,施行令別表第5及び利根村財務規則138条によ
れば,売買契約又は請負契約を随意契約の方法により締結するための予定価格の上
限は130万円である。このような場合以外に,同条項2号に基づき売買契約又は
請負契約を随意契約の方法により締結できるとするなら,同条項1号の存在意義が
失われる。
したがって,本件契約には,同条項2号の適用はない。
(イ) 本件契約の対象となる松の樹齢及び枝振り等の特殊性が本件赤松程度のも
のであり,請負人の技術,技能,経験が本件において必要とされる程度のものであ
る場合,本件契約について,随意契約の方法による必要性があったということはで
きない。また,利根村は,本件契約に際し,3つの造園業者から,樹齢約40年程
度の赤松1本の植栽工事一式の見積りを求めている。このことは,指名競争入札に
より,本件契約における公正と機会の均等を確保することが可能であったことを示
すものである。
したがって,本件契約に仮に施行令167条1項2号の適用があるとしても,本件
契約を随意契約の方法によって行う合理性があったということはできない。
(ウ) 被告Aの後援会幹部らは,平成8年10月,利根村の村長選挙告示日の数
日前,被告Bを被告Aの後援会事務所に呼び出し,同人に対し,本件赤松を上記村
長選挙後に280万円で買い受けることを申し出た上,上記村長選挙において被告
Aを応援することを求めた(以下「本件密約」という。)。被告Bはこれを承諾
し,上記村長選挙において,被告Aの選挙対策の地区委員となり,活発な選挙運動
を行った。そもそも,「経塚の松」は,従来は教育委員会の所管であり,利根村の
重要な観光資源ではなかった上,枯れた「経塚の松」の枝を接ぎ木した黒松が群馬
県林業試験場で育成されていたのであるから,本件赤松を「経塚の松」が生育して
いた跡地に植栽する必要はなかった。しかしながら,被告Aは,本件密約の実行と
して,利根村と被告Bの間で本件契約を締結させることとし,被告Bは,他の造園
業者の談合により,利根村に対して最も低い見積額を提示して,本件契約の相手方
となったものである。
したがって,本件契約を随意契約の方法で行ったことには,以上のとおり公正を妨
げる事情が認められるのであるから,被告Bは本件契約の締結権者としてその裁量
権を濫用したというべきである。
【被告らの主張】
ア 「経塚の松」は,群馬県の天然記念物に指定された樹齢600年の赤松であ
り,利根村の観光名所となっていたが,平成3年ころ枯れてしまったものである。
そこで,利根村が本件契約を締結するに当たっては,観光木として価値ある松を植
栽するという目的に照らし,樹齢,枝振り等それにふさわしい松を調達できる能
力,松を活着させるための技術及び経験,植栽後に松が活着しないときは請負人の
負担において再度植栽に応じられる能力と資力等の条件に適合する相手方を選定
し,その者との間で契約を締結する方法をとることが,本件契約の目的を究極的に
達成する上でより妥当であり,ひいては利根村の利益の増進につながるというべき
である。
イ 被告らが,本件密約を交わしたことは否認する。利根村が,本件契約の相手方
を被告Bとしたのは,本件契約の実施に当たり,見積りを3つの造園業者に求め,
内容を比較検討したところ,被告Bが提出した見積りの価格が最も低く,被告Bが
提示した本件赤松も樹齢,枝振り等から観光木にふさわしかった上,長年にわたり
造園業を営んでいることから,被告Bには本件赤松を活着させる技術及び経験があ
り,活着しないときは再度植栽に応じるだけの能力と資力があると判断したからで
ある。
ウ したがって,本件契約を随意契約の方法で締結したことには合理性があり,公
正を妨げる事情もないのであるから,本件公金支出に原告らが主張する違法はな
い。
(2) 本件公金支出による利根村の損害の有無及びその額
【原告らの主張】
本件赤松は,被告Bが造園業を営む石川勇から無償にて譲り受けたものであり,本
件赤松の代価及び植栽費は,合計して101万8500円を上回らない。したがっ
て,利根村は,本件公金支出により,本件契約代金289万円と101万8500
円との差額にほぼ相当する187万7500円の損害を被った。
【被告らの主張】
利根村は,本件契約に当たり,3つの造園業者から,樹齢約40年程度の赤松1本
の植栽工事一式の見積りを求めたところ,被告Bの見積額が最低であった。また,
本件赤松は,樹齢約45年,高さ約5メートル,幹の太さ約1メートルで,樹齢,
枝振り等が観光木にふさわしいものであり,被告Bは,本件赤松を約17ないし1
8年間にわたり,途中2回ほど移植根回しをし,雪折れ防止の手入れをするなどし
て,十分に管理してきた。さらに,本件契約には,本件赤松が植栽後に活着しない
場合には,被告Bの負担で同程度の松を再度植栽するとの枯れ保証特約が付けられ
ている。
このような事情を考慮すると,本件契約代金の289万円を高額にすぎるというこ
とはできない。
(3) 被告らの責任の有無
【原告らの主張】
被告Aは,本件密約を主導し又は十分に知りながら,利根村に本件契約を締結さ
せ,本件公金支出を実施させた。また,被告Bは,本件契約が本件密約の見返りで
あることを知りながら,利根村と本件契約を締結し,本件公金支出を実施させた。
したがって,被告らは,民法709条に基づき,利根村に対し,同村の被った損害
の賠償をする責任がある。
【被告らの主張】
被告らには,原告らが主張するような責任は存しない。
第3 争点に対する判断
1 争いのない事実等及び証拠(甲2,4,8,10,乙1,2,3の1及び2,
4,5の1及び2,6の1ないし4,7の1及び2,8ないし10,11の1ない
し5,16ないし19,証人C,原告D本人,被告A本人及び被告B本人)並びに
弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 「経塚の松」とは,群馬県利根郡利根村大字a字bcに生育していた,樹
齢600年,根回り5メートル,高さ約15ないし16.5メートル,枝張り1
7.9メートルの赤松の大樹である。その由来は,ある雲水が,足利氏との戦いで
討ち死にした新田氏の冥福を祈り,小石に経文を書いて埋め,その上に植えたもの
であると言い伝えられている。「経塚の松」は,このような姿形と由来により,群
馬県の天然記念物及び利根村の指定文化財とされていたが,平成3年ころに枯死し
た。
(2) 高戸谷区長,老神区長及び老神温泉観光協会長らは,平成9年12月25
日,被告A及び利根村議会議長に対し,「経塚の松」に代わる一本松を植樹し,再
び利根村の名勝としたい旨の要望書を提出した。被告Aは,この要望を受け,平成
10年1月ころ,「経塚の松」に代わる観光木の植栽事業(以下「本件事業」とい
う。)を行うこととし,利根村企画観光課のE課長にその実施を一任した。本件事
業について,平成10年度予算として300万円の予算が計上され,議会で承認さ
れた。
(3) 上記E課長の後任であるC課長は,本件事業においては,遠くから見ても
一目で分かり,観光的な目玉となりうるようなある程度大きな赤松が必要であるこ
と,枯れ保証が必要であることから,本件契約を随意契約の方法で締結することが
適当であると考えた。そこで,C課長は,平成10年の前半ころ,利根村企画観光
課係長Fの提案で,被告B方を訪れ,被告Bが本件事業にふさわしい赤松を所有す
るかを調査した。
被告Bは,昭和53年ころから,利根村において造園業やりんごの栽培を手がけて
おり,その年間の売上げは約800万円から1000万円弱である。被告Bは,昭
和57又は58年ころ,平原地内の水田と原野の境に自生していた本件赤松を1万
円で買い受け,自然の赤松の姿に見えるように大きく育てる方針で,細かな手入れ
はせず,樹形をよくするための整枝と葉をとるもみあげを行い,移植を2回行うな
どした。被告Bは,平成10年ころには,上記のとおり荒く作り,高さ7メート
ル,太さ0.88メートルに生長していた本件赤松と,庭木用に枝を詰めて細かく
作った赤松を所有していた。
被告Bは,C課長及びF係長に対し,上記の赤松を示した上,本件事業には本件赤
松がふさわしいこと,本件赤松が植栽後に枯れた場合はもう片方の細かく作った赤
松を代わりに植えること,本件赤松の価格及び植栽費は300万円程度が見込まれ
ることを話した。
(4) C課長は,平成11年1月14日,「契約担当者は,随意契約をしようと
するときは,2人以上の者から見積書を徴さなければならない。」とする利根村財
務規則140条1項本文に従い,利根村内の業者から被告B,利根村以外の業者か
ら有限会社G及び有限会社Hを選び,これらの業者に対して,利根村大字ab地内
に約40年生程度の赤松1本を植栽する工事一式の見積書の作成を依頼した。C課
長が赤松の条件を約40年生としたのは,被告B方に樹齢約40年の赤松があった
ことに基づくものであった。
(5) 上記依頼に対し,被告Bは289万7361円,有限会社Gは310万7
953円,有限会社Hは297万3369円との見積書をそれぞれ提出した。
すなわち,被告Bは,本件赤松の価格を130万円とし,それ以外の摘要として堀
取工,運搬費,植栽工事,支柱工,手入れ工,回送費を挙げ,これらの金額を合計
して直接工事費を170万1769円と見積もった。そして,被告Bは,利根村か
ら工事を請け負うのが初めてであったため,公共工事に詳しい知人に尋ね,直接工
事費に24.74パーセントを乗じて共通仮設費を42万1017円とし,直接工
事費と共通仮設費を足した額に18.49パーセントを乗じて現場管理費を39万
2503円とし,さらに直接工事費と共通仮設費と現場管理費を足した額に15.
19パーセントを乗じて一般管理費を38万2072円と算出した。さらに,被告
Bは,これら直接工事費,共通仮設費,現場管理費及び一般管理費を合計し,最終
的な見積額を289万7361円とした。
有限会社Gは,赤松の価格を135万円とし,それ以外の摘要として植栽工事,支
柱工事,手入れ工事,運搬・回送を挙げ,これらの金額を合計して直接工事費を1
74万5000円と見積もった上,直接工事費に25パーセントを乗じて共通仮設
費を43万6250円とし,直接工事費と共通仮設費を足した額に18パーセント
を乗じて現場管理費を39万2625円とし,さらに直接工事費と共通仮設費と現
場管理費を足した額に15パーセントを乗じて一般管理費を38万6081円とし
た。さらに,有限会社Gは,これら直接工事費,共通仮設費,現場管理費及び一般
管理費の合計額に消費税相当額14万7997円を合わせ,最終的な見積額を31
0万7953円とした。
有限会社Hは,赤松の価格を131万円とし,それ以外の摘要として植栽工事費,
支柱工事,運搬・回送費,剪定工事を挙げ,これらの金額を合計して直接工事費を
179万円と見積もった上,直接工事費にそれぞれ24.6パーセント,17.4
パーセント,16.2パーセントを乗じて共通仮設費を44万0340円,現場管
理費を31万1460円,一般管理費を28万9980円とし,これら直接工事
費,共通仮設費,現場管理費及び一般管理費の合計額に消費税相当額14万158
9円を合わせ,最終的な見積額を297万3369円とした。
(6) これらの見積書の提出を受け,C課長は,F係長とともに,最も低額の見
積書を提出した被告B方に再び赴き,枝振り,樹勢,高さ及び目通りの太さから,
最終的に本件赤松が本件事業の観光木としてふさわしいと判断した。C課長は,被
告Bが本件赤松を所有していることに加え,利根村内で被告Bの悪いうわさを聞い
たことがなく,資力,信用及び技術にも問題がないと判断し,有限会社G及び有限
会社Hの資力,信用及び技術については調査を行わず,同年2月9日付けで,被告
Bとの間で本件契約を締結する旨の伺い書を作成し,被告Aの決裁を得た。
(7) 被告Bは,平成11年2月9日,利根村と本件契約を締結し,同年3月1
6日,本件赤松の植栽を終了した。
2 争点(1)について
ア 前記認定のとおり,本件契約の締結は,その姿形と由来により,群馬県の天然
記念物及び利根村の指定文化財であった「経塚の松」に代わる赤松の植栽を目的と
するものであって,単なる樹木の植栽を目的とするものとは異なるから,請負代金
も比較的高額になることが予想され,注文者である利根村において,本件事業の対
象となる赤松が「経塚の松」に比肩しうる特別なものとして生育する見込みがある
かどうかにつき関心を払い,さらにそればかりではなく,植栽工事の遂行能力や植
栽後の手入れ,植栽した赤松が枯死した場合はこれと同等の松を植え替えるための
枯れ保証の必要といった点の考慮から,本件契約の相手方の資力,信用,技術,経
験等その能力に大きな関心を持ち,これらを熟知した上で特定の相手方を選定して
その者との間で契約を締結するのが妥当である。
ところが,C課長は,被告B方のみ現地調査を行い,有限会社G及び有限会社Hが
いかなる赤松を所有しているのかを確認しないまま,見積りを徴する業者として選
定した上,「経塚の松」は樹齢約600年であるにもかかわらず,被告B方に樹齢
約40年の松があることに基づき,見積りを依頼する際に赤松の条件を約40年生
程度と決定した。また,C課長は,利根村内で被告Bの悪いうわさを聞いたことが
ないということのみをもって,被告Bの資力,信用及び技術には問題がないと判断
し,利根村以外の業者である有限会社G及び有限会社Hの資力,信用及び技術につ
いては調査せず,被告Bとの比較を行わなかった。
このような事情によれば,選定された造園業者の中で被告Bが最低額の見積書を提
出したことを考慮しても,本件契約においては,被告Bを相手方とすることが当初
から予定されており,そのため,他の造園業者との比較において被告Bが本件契約
の相手方として適当であるか否かの検討が怠られたものと推認せざるを得ず,この
事実は本件契約を随意契約の方法で行ったことの公正を妨げる事情に当たるので,
本件契約とこれに基づく本件公金支出には違法性が認められる。
イ ところで,原告らは,本件契約は施行令167条の2第1項1号にいう売買又
は請負に該当するから,本件契約には同条項2号の適用はない旨主張する。
しかし,同条項1号は,金額の少額な契約についてまで競争入札で行うことは,事
務量がいたずらに増大し,能率的な行政運営を阻害することから,契約の種類に応
じた一定の金額以内のものについては,随意契約によることができるものとする趣
旨であり,他方,同条項2号は,競争入札に適しない性質の契約については,随意
契約によることができるものとする趣旨である。このように,同条項1号と同条項
2号は趣旨を異にしているから,同条項1号には該当しない売買契約や請負契約に
ついて,同条項2号が適用されるとしても,同条項1号の存在意義が失われること
にはならず,原告らの主張には理由がない。
ウ 原告らは,利根村が3つの造園業者から見積書を徴したことを理由に,本件契
約も指名競争入札の方法で行うべきであった旨主張する。
しかし,利根村は,随意契約をしようとするときは,2人以上の者から見積書を徴
さなければならないとする利根村財務規則140条に基づき,随意契約における契
約内容の適正を確保しようとしたにすぎないから,原告らの上記主張には理由がな
い。
エ 原告らは,被告Aが,本件密約の実行として,利根村と被告Bの間で本件契約
を締結させた旨主張し,Iも,平成8年10月の利根村長選挙の告示日の数日前,
J方に,被告B,I,その他被告Aの支援者数名が集まり,本件密約を交わした旨
陳述する(甲2)。
しかし,本件契約が締結されたのは平成11年2月であって,本件密約が締結され
たという日から2年4か月も経過していること,Jは本件密約を否定する旨の陳述
をしていること(乙17)を考慮すると,Iの上記陳述は直ちに採用することはで
きず,原告らの主張には理由がない。
オ 原告らは,「経塚の松」は,利根村の重要な観光資源ではなく,枯れた「経塚
の松」の枝を接ぎ木した黒松が群馬県林業試験場で育成されていたのであるから,
本件赤松を「経塚の松」が生育していた跡地に植栽する必要はなかった旨主張す
る。
しかし,前記認定のとおり,「経塚の松」は,その姿形及び由来により,群馬県の
天然記念物及び利根村の指定文化財に指定され,「ふる里の散歩道 利根村 村お
こし運動 No.2」と題するパンフレットにも記載があること(乙4),「経塚
の松」の枝を接ぎ木した黒松が群馬県林業試験場で育成されており,利根村がその
引渡しの通知を受けたことが認められるが(被告A,原告D),上記の黒松は幼木
であり(乙11の1ないし5),「経塚の松」は赤松であって種類も異なっている
ことを考慮すると,本件契約と本件公金支出に違法性が認められるとしても,本件
赤松を植栽する必要がなかったと断定することはできない。
カ さらに,原告らは,被告Bが有限会社H及び有限会社Gと談合を行った旨主張
する。
しかしながら,これらの造園業者が「北毛造園クラブ」のメンバーであること(被
告B),前記認定のとおり各造園業者の見積りの摘要や赤松の価格が比較的似てい
ることなどを考慮しても,上記談合が行われたことを認めるに足りる証拠はない。
3 争点(2)について
証拠(甲1,5,6,9,乙28,29,33,31,被告B本人)によれば,赤
松の価格として10万円から100万円と記載したり,550万円の赤松を380
万円に値引きして販売する旨広告する造園業者があること,高さ7メートル,太さ
0.9メートル程度の赤松の価格は,造園業者によって45万円から130万円程
度と幅があること,造園業者は様々な要素を考慮し,それぞれの考えによって赤松
の値付けをしていることが認められる。加えて,前記認定の事実によれば,被告B
は,昭和57又は58年ころ,本件赤松を1万円で買い受けたとはいえ,その後2
0年にわたり,自然の赤松の形に見えるように,整枝やもみあげ等を行って手を加
えてきたというのである。これらの事情を考慮すると,本件赤松の価格が130万
円であるとしても,直ちに高額すぎると評価することはできない。
また,証拠(甲1,5,6)によれば,高さ7メートル,太さ0.9メートル程度
の赤松の植栽費を30万円から50万円程度とする業者がいることが認められる。
しかしながら,前記認定のとおり,被告Bが行った本件契約の見積りには具体的な
根拠があり,有限会社Gや有限会社Hの見積り方法と比較しても格別不合理な点は
認められないことを考慮すると,上記のような事情をもって直ちに本件契約におけ
る159万円の植栽費を高額であるということはできない。
したがって,本件契約に基づく本件公金支出により,利根村が損害を被ったことを
認めるに足りる証拠はない。
4 結論
(1) 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告
らの請求には理由がない。
(2) よって,原告らの請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
前橋地方裁判所民事第1部
裁判長裁判官 中野智明
裁判官 丹羽敏彦
裁判官 櫛橋明香

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛