弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人らの負担とする。
         理    由
 一、 本件抗告の趣旨と理由
 別紙記載のとおり
 二、 当裁判所の判断
 (一) 抗告理由一、二について
 民訴法一五一条三項によれば、当事者は訴訟記録の謄写を裁判所書記官に請求す
ることができるが、同項にいう訴訟記録とは、特定の事件に関して当事者から裁判
所あてに提出される訴状・答弁書・準備書面・書証の写しや、裁判所の作成する口
頭弁論調書・証拠調調書・裁判書の原本等、当事者・裁判所の共通の資料として利
用されるため、受訴裁判所に保管される書面の総体をいい、訴訟記録は裁判所書記
官がこれを保管する(裁判所法六〇条二項)。
 ところで、抗告人は、本件磁気テープ(プログラムを含む。以下、本件磁気テー
プ等という)のように、文書提出命令に基づいて提出された文書(準文書)の原本
が訴訟記録に含まれる旨主張するので検討する。
 およそ文書の提出は、文書の原本・正本または認証謄本をもつてしなければなら
ず(民訴法三二二条一項)、文書の写しをもつてすることができないが、提出者は
期日に文書を携行して受訴裁判所及び相手方に提示すればよく、右提示された文書
は、裁判所が必要と認め、これを留置(決定)しない限り(民訴法三二〇条)、そ
の後は提出者に返還され、書証申出当事者によつて作成されたその写しか記録に編
綴されうるにすぎない(民訴規則三九条)。従つて、文書提出命令によつて提出さ
れた文書の原本は、原本提出者の任意の了解により、または受訴裁判所の決定によ
り、その証拠調の前後を通じて受訴裁判所に留め置かれることがあつても、訴訟記
録に編綴されることはないから、民訴法一五一条三項にいう訴訟記録に含まれない
と解するのが相当てある。これを本件についてみるに、一件記録によると、相手方
(被告)は文書提出命令に基づき本件訴訟の第三四回口頭弁論期日において本件磁
気テープ等を提出し、裁判長はこれを顕出したが、提出者かその保管を移転しない
旨述べて持帰り、本件訴訟記録に編綴されておらず、また受訴裁判所の書記官にお
いてもこれを保管していないことが認められるから、本件磁気テープ等は本件訴訟
記録に含まれないものというべきである。なお、受訴裁判所においてなされた取寄
記録等が受訴裁判所の書記官において保管されている場合、民訴法一五一条一項、
三項を類推適用して同書記官に対し、その記録等に編綴されている書類の閲覧・謄
写等の請求をし、これが許される場合があるが、この場合は前認定の本件の場合と
は異なるから、別論である。従つて、抗告人の主張は失当であつて採用できない。
 (二) 抗告理由三ないし五について
 受訴裁判所の裁判所書記官は、その保管にかかる訴訟記録の謄写等を許すことが
できる(民訴法一五一条)けれども、当事者又は第三者が所持、保管する文書の謄
写等を許す権限がないことはいうまでもない。
 従つて、準文書たる本件磁気テープ等が相手方によつて所持、保管されている本
件において、受訴裁判所の書記官にその閲覧、謄写等を許す権限がないことが明ら
かである。のみならず、磁気テープ等の特異性からみて、これを閲覧、謄写すると
いうこと自体許され得ないことは次に説示するところにより明らかである。
 そもそも、本件磁気テープ等の提出命令の可否について、当裁判所が当庁昭和五
二年(ラ)第一二〇号事件につき同五三年三月六日にした決定(高裁民集三一巻一
号三八頁)をもつて、本件磁気テープ及びプログラムが一体として民訴法三一二条
にいわゆる文書に準ずるものであると判断したのは、磁気テープとプログラムを使
用し、磁気テープに適合したコンピューター装置を用いてその内容をアウトプツト
することに<要旨>より、紙面等の上に見読可能な文言が顕出され得ることによるの
である。かくして見読可能な文言が紙面等の上に顕出され記載されたものが
準文書たる磁気テープの写し、またはその内容を顕出した文書の原本そのものとな
るのであり、この写しまたは原本が提出され記録に編綴されることにより、はじめ
て裁判所もこれを判断の資料となし得るのであつて、抗告人らが本件磁気テープ等
が文書にあたるとしてその提出を求めた目的もここにあつたと考えられる。磁気テ
ープ等が提出されても、それのみでは当事者も裁判所もなんらこれを役立てること
ができず、また抗告人が主張するように、磁気テープ及びプログラムそのものを如
何に数多く複製して提出してみてもこの理は同一であることが明らかである。のみ
ならず、本件磁気テープには、抗告人らが必要である旨主張した資料のほかに、多
数の相手方企業に関する資料がインプツトされており、かつ磁気テープ自体の保管
についても十分な設備と細心の注意を払う必要があるのである(この点に配慮して
原審が磁気テープを留置する措置を採らなかつたことが窺知される)から、このよ
うな磁気テープ自体の複製を行なわせることの必要性がなく、これを行なわせるこ
とにより却つて相手方の権利を不必要に侵害するおそれがあるといわねばならな
い。
 そして一件記録によると本件訴訟の第三四回口頭弁論期日において本件磁気テー
プの内容をプリントアゥトして見読可能のものとした文書が、相手方(被告)によ
り、乙第二一号証の一ないし一四一、第一三号証の一ないし八四、第一四号証の一
ないし三一八として提出され、右乙号各証の写しが本件訴訟記録の一部となつてい
ることが認められるが、本件磁気テープ等は前示認定のように裁判所においてはも
ちろん裁判所外においても裁判所書記官によつて保管されていないのであるから、
抗告人らが本件磁気テープ等について謄写―複製―請求権を有しないのはもちろ
ん、裁判所書記官がその監督のもとに謄写人の裁判所外における謄写を許すことも
できないというべきであり、またその必要がないことも前説示により明らかであ
る。
 なお、抗告人らにおいて、本件磁気テープの収録内容とプリントアウトした文書
(前掲乙号各証)の内容とが一致しないこと、またはその疑があることの疑念を抱
くのであれば、受訴裁判所に対し本件磁気テープの収録内容をアウトプツトするこ
とについての鑑定を求めるか、若しくは検証を求め、裁判所が適当な補助者を使用
しコンピユーターを操作させてアウトプツトされた結果を検証の結果として調書に
作成する等の方法を採りうる。そしてこれらの方法が、相手方において磁気テープ
の内容をアウトプツトした前示のような文書写を提出しない場合における方法であ
ると考えられるが、このことは本件抗告理由についての前示判断を左右するもので
はない。従つて抗告人の右主張も失当であつて採用できない。
 (三) そうすると、裁判所書記官の事件記録等謄写申請拒否処分に対する抗告
人らの本件異議の申立を理由がないとして却下した原決定は結局相当であつて、本
件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとし
て、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 下出義明 裁判官 村上博己 裁判官 吉川義春)
(別 紙)
<記載内容は末尾1添付>

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