弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Bの上告趣意第一、二点は、いずれも違憲をいうが、その実質は事実誤認
と独自の見解にもとづく刑法一三〇条の解釈を争う単なる法令違反の主張に帰する
ものであつて、刑訴四〇五条の適法な上告理由にあたらない。
 被告人Aの上告趣意第一点は、違憲をいうが、その実質は事実誤認単なる法令違
反の主張に帰し、同第二点は、事実誤認、採証法則違反、単なる法令違反の主張を
出でないものであつて、適法な上告理由にあたらない。同第三点は、記録によると、
被告人Aは、第一審第四回公判において、適式な次回期日指定の告知を受け、第五
回公判に出頭したのであるが、裁判所の職務執行を妨げたので、裁判所法七一条一
項の規定により退廷を命ぜられ、裁判所は、右被告人の退廷後、証人C、同D、同
E、同Fを尋問し、これらの各証言を判示第二事実認定の資料に供していること、
及び被告人Aに対する本件被告事件は必要的弁護事件でないので右第五回公判期日
までに弁護人の選任なく、従つて右の各証人尋問は弁護人の立会もなくして行われ
たものであることが認められる。右の如く被告人が裁判所の職務の執行を妨げたた
め退廷せしめられるに至つた場合は、被告人自らの責において証人に対する審問権
を喪失したものというべきであり、従つてこの場合被告人は、証人審問の機会を与
えられなかつたということはできないものと解するを相当とする(昭和二七年(あ)
四八一二号同二九年二月二五日第一小法廷判決、集八巻二号一九〇頁参照)。され
ば憲法三七条二項違反の論旨はその前提を欠くものであるから論旨は到底採用する
ことができない。
 被告人両名の弁護人関原勇、同池田輝孝の上告趣意第一点及び被告人Aの弁護人
関原勇、同池田輝孝の上告趣意第二点、いずれも法令違反の主張を出でないもので
あつて適法な上告理由にあたらない。そして建造物侵入罪は故なく建造物に侵入し
た場合に成立し退去するまで継続する犯罪であるから、同罪の成立する以上退去し
ない場合においても不退去罪は成立しないものと解するを相当とする。それ故原判
決には所論の違法は存しない。
 被告人両名の弁護人関原勇、同池田輝孝の上告趣意第二点は、原判決の理由にく
いちがいがあるという主張であり、同第三点及び被告人Aの弁護人関原勇、同池田
輝孝の上告趣意第三点は、いずれも原審で主張、判断のないしかも単なる訴訟法違
反の主張であり(記録によると、昭和二六年六月六日の第一審第一回公判期日にお
いて、被告人Aに対する判示第二の各事実について冒頭手続のなされていることが
明らかである。)、被告人Aの弁護人関原勇、同池田輝孝の上告趣意第一点は、違
憲をいうが、原審で主張、判断のない事項に関する主張であるばかりでなく、その
実質は単なる法令違反の主張に帰し(憲法二八条及び旧労働組合法一条の法意につ
いて、昭和二四年(れ)三九号同二五年七月一九日大法廷判決、集四巻八号一四一
一頁。憲法と勤労者の争議権について、昭和二三年(れ)一〇四九号同二五年一月
一五日大法廷判決、集四巻一一号二二五七頁。各参照)、同第四点は、量刑不当の
主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の定める適法な上告理由にあたらない。
 なお記録を調べても各被告人等に対する本件につき刑訴四一一条を適用すべきも
のとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三一年八月二二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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