弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成29年12月25日判決言渡
平成28年(行ケ)第10254号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成29年10月11日
判決
原告株式会社Shapes
訴訟代理人弁護士高橋隆二
寺島英輔
被告Y
訴訟代理人弁理士広瀬文彦
末岡秀文
被告株式会社ShapesInternational
訴訟代理人弁護士神田孝
井嶋倫子
清野龍作
主文
1特許庁が再審2015-950001号事件について平成28年10
月31日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告らの負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
主文同旨
第2事案の概要
1前提事実
原告は,商標登録第5177809号に係る商標(登録年月日平成20年10月
31日。以下,「本件商標」といい,本件商標に係る商標権を「本件商標権」という。)
の商標権者であったところ,被告株式会社ShapesInternation
al(以下「被告Shapes」という。)に対し,平成24年2月10日,本件商
標権を譲渡して移転登録をした(以下,当該移転登録を「本件移転登録」という。)。
もっとも,原告は,被告Shapesに対し,同年10月17日,本件商標権の譲
渡を解除したと主張して,本件移転登録の抹消登録手続を求める訴えを提起したと
ころ(以下,当該訴えに係る訴訟を「別件訴訟」という。),被告Y(以下「被告Y」
という。)は,平成26年11月28日,本件商標が使用されていないとして,商標
法50条1項に基づき本件商標に係る商標登録の取消しを求めて審判(以下「原審
判」という。)を請求した(審判の予告登録年月日平成26年12月17日。取消2
014-300963号)。
特許庁は,被告Shapesが応答しなかったことから,平成27年3月31日,
上記商標登録を取り消す旨の審決(以下「原審決」という。)をし,原審決は,同年
5月11日,確定した(本件商標権登録の抹消の登録年月日平成27年6月5日)。
本件は,原告が,被告らは共謀して本件商標権を害する目的をもって原審決を確
定させたとして,特許庁に対し,商標法58条1項に基づき,原審決の取り消しを
求めて再審を請求した事案である。
争点は,商標法58条1項該当性(被告らが共謀して原告の権利を害する目的を
もって原審決を確定させたか否か)である。
2特許庁における手続の経緯
原告は,平成27年6月24日付けで,特許庁に対し,商標法58条1項に基づ
き,原審決の取消しを求めて,原審決に対し再審を請求した(再審2015-95
0001号)。これに対し,特許庁は,平成28年10月31日,被告らが共謀して
本件商標権を害する目的をもって原審決をさせたとは認められないとして,原告の
再審請求を却下する旨の審決をし,当該審決は,同年11月10日,原告に送達さ
れた。
3審決の理由の要点
被告Shapesが原審判の予告登録前3年の間に本件商標を使用したことが明
らかであると認めるに足りる証拠はなく,原審判において被告Shapesが答弁
しなかったとしても,この事実をもって被告Shapesと被告Yとの共謀の事実
を認めることはできない。また,被告Shapesが原審決確定後に本件商標と同
一商標につき再度出願を行った事実についても,被告Shapesは,別件訴訟に
おける裁判所の和解勧告を受けて原告に譲渡する目的で既に取り消された本件商標
を再出願したと主張しており,この主張は一応の合理的理由があるといえる。
また,被告Yが,原審決確定後に本件商標と同一又は類似の商標を自ら出願して
いないことについては,不使用取消審判の請求人が当該審決の確定により取り消さ
れた商標と同一又は類似の商標を出願するものとは必ずしもいえないから,この事
実が直ちに共謀の存在を示すものとはいえない。
したがって,原告が主張する上記の事情を踏まえても,被告Yと被告Shape
sとの間に共謀があったものとは認められない。
第3原告主張の取消事由
被告Yは,平成26年11月28日,正に別件訴訟事件の審理中というタイミン
グで,自己使用等の目的を全く有しないにもかかわらず,原審判を請求した。しか
も,原審決の確定後にも何ら合理的な理由なく本件商標と同一又は類似の商標を自
ら出願をしていない。さらに,被告Shapesも,原審判の予告登録前3年の間
に,被告Shapesが現実に本件商標と実質的に同一の商標を使用している事実
を認識していたにもかかわらず,原審判において何らの答弁もせずに原審決を確定
させた。のみならず,被告Shapesは,原審決が確定して2週間後に本件商標
と同一商標を同一の指定役務について出願した。
これらの間接事実に経験則を適用すれば,被告らが共謀して原告の権利を害する
目的をもって原審決を確定させた事実を容易に認めることができる。
第4被告らの反論
1被告Y
被告Yは,公益的観点から不使用登録商標の排除のために原審判の請求をしたの
であり,被告Shapesの代表者等との面識はなく,被告Shapesは,被告
Yとは無関係の者である。そのため,被告Yと被告Shapesが共謀したという
原告の主張は,原告の想像にすぎない。
したがって,被告Yと被告Shapesが共謀した事実は認められないとした審
決の認定に誤りはない。
2被告Shapes
被告Shapesは,女性専用パーソナルトレーニング事業にふさわしい商標と
して「ShapesRebornMyself」(商標登録第5506263号)
を独自にデザインして展開してきた。そのため,被告Shapesは,女性的イメ
ージの乏しい本件商標を使用したことは一度もなく,今後更新する予定もなかった
ことから,原審判において答弁しなかったにすぎない。また,被告Shapesが,
原審決確定後に本件商標と同一商標を出願したのは,別件訴訟における裁判所の和
解勧告を受けて,原告に譲渡する目的で,既に取り消された本件商標の再出願をし
たにすぎない。
したがって,原告が主張する間接事実は,被告らの共謀を推認するに足りず,被
告Yと被告Shapesが共謀した事実は認められないとした審決の認定に誤りは
ない。
第5当裁判所の判断
1認定事実
当裁判所に顕著な事実及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1)原告は,平成29年5月31日,被告Yの本人尋問の申立てをしたところ,
尋問事項に関する原告の主張は,被告らが共謀して原告の利益を害する目的をもっ
て原審決をさせたことである(第3回口頭弁論調書参照)。
(2)当裁判所は,同年6月14日,第2回口頭弁論期日において,被告らの共
謀の存否を明らかにするには,当審において被告Yの本人尋問を行う必要があると
して,上記(1)の申立てを採用するとともに,本人尋問期日を同年10月11日に指
定した。なお,被告Yは,同年8月31日までに陳述書を提出することとされた。
(第2回口頭弁論調書参照)
(3)被告Yは,同年8月25日付けで,被告Shapesの代表者や関係者と
共謀したことはない旨を記載した陳述書を提出した(乙ア34)。
(4)被告Yは,適式の呼出しを受けたにもかかわらず,当裁判所に対し事前の
連絡なく,本人尋問期日に出頭しなかった。なお,被告Yは,当裁判所に対し,診
断書その他出頭できない理由を証明する書類を一切提出していない。
(5)被告Yの代理人は,本人尋問期日において,被告Yには民訴法208条の
不出頭の効果を説明して出頭しないと不利益になる旨を告げて出頭を促したものの,
本人からはそのことを承知の上で出頭しないと告げられた旨述べた(第3回口頭弁
論調書)。
(6)当裁判所は,上記の経過を踏まえ,弁論を終結した。なお,被告Shap
es及び被告Yの各代理人は,弁論を終結することにつき,異議を述べなかった。
2民訴法208条該当性
上記認定事実によれば,被告Yが当事者本人の尋問期日に正当な理由なく出頭し
なかったものと認められるから,民訴法208条に基づき,被告らが共謀して本件
商標権を害する目的をもって本件商標に係る登録商標を取り消す旨の原審決をさせ
たという原告の主張は,真実と認めることができる。
したがって,被告らが共謀して原告の権利を害する目的をもって原審決をさせた
とは認められないとした審決の判断には誤りがあるから,原告の取消事由は理由が
ある。
第6結論
以上によれば,原告の取消事由は理由があり,本訴請求は理由があるから,これ
を認容することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
清水節
裁判官
中島基至
裁判官
岡田慎吾

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛