弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2名古屋入国管理局長が平成19年4月20日付けで控訴人に対
してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく同控訴人
の異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。
3名古屋入国管理局主任審査官が平成19年4月20日付けで控
訴人に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)の国籍
を有する外国人として本邦に上陸した控訴人が,名古屋入国管理局(以
下「名古屋入管」という。)入国審査官から,出入国管理及び難民認
定法(以下「入管法」という。)24条4号ロに該当する旨の認定を,
名古屋入管特別審理官から,上記認定に誤りがない旨の判定を受けた
ため,法務大臣に対し異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の
委任を受けた名古屋入国管理局長(以下「名古屋入管局長」という。)
から,控訴人の異議の申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」
という。)を受け,引き続き,名古屋入管主任審査官から退去強制令
書発付処分(以下「本件退令発付処分」という。)を受けたため,控
訴人が日本国籍を有すると主張して,本件裁決及びこれに基づく本件
退令発付処分の取消しを求めた事案である。
原審は,本件裁決及び本件退令発付処分にはいずれも違法がないと
して控訴人の請求を棄却したことから,控訴人が控訴した。
2法令等の定め及び前提となる事実は,原判決「事実及び理由」中「第
2事案の概要」2及び3項に記載のとおりであるから,これを引用
する。
3争点及び争点に関する当事者の主張は,後記4において,当審にお
ける主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中「第2事案
の概要」4項及び「第3争点に関する当事者の主張」に記載のとお
りであるから,これを引用する。
4当審における付加的主張(争点(1)について)
(被控訴人の主張)
(1)ア行政処分における主張立証責任の分配は,権利侵害処分かどう
かのみによって決することができる事柄ではなく,個々の法規の
条文解釈や,その法規の趣旨・目的をも参照することによって初
めて決することができる事柄である。
イ入管法は,同法の適用上,日本国籍を有する者は,日本国の構
成員である以上,構成員として日本国に永遠に居住することがで
きる権利を有する一方で,日本国籍を有しない者については,当
然には入国・在留の権利が認められず,日本国籍者であるか否か
が,その法的地位を根本的に分かつ前提となっていることから,
その対象者が日本国籍を有する者であるか,有しない者であるか
によって入国・在留管理の処遇を分かつ建前を採っている。
つまり,「外国人」は,入管法上の在留管理の対象とされるべ
き者か否かの前提となる身分事項であって,同法は,「外国人」
については,当然の入国・在留の権利が認められないことを前提
に,その入国,上陸,在留,退去,出国に至るまでの一連の在留
管理をする仕組みを採用しており,そのような「外国人」に対し
ては,退去強制処分といった権利侵害処分の場面のみならず,上
陸許可,在留期間更新,在留資格変更,難民の認定等様々な授益
処分も予定しており,「外国人」の要件に関しては,それが授益
処分であるか,侵害処分であるかという処分の性質の違いから主
張立証責任の分配の具体的中身を異ならせるという立場を採って
いないと解される。
ウさらに,同法上,「外国人」としての上陸と日本国籍者として
の上陸の二通りしか予定していないところ,「外国人」として上
陸が許可された者については,以降,その「外国人」としての身
分が継続するものとして取り扱うこととなり,他方,日本国籍者
の入国については,同法61条の要件(日本国旅券の所持等)を
満たさない限りは日本人として上陸することは許されず,日本国
旅券を所持しない者が日本国民であると主張するときには,その
主張立証責任は当該本人にあると解され,かかる立証ができず,
それでも本邦に上陸を企図する場合は,「外国人」として上陸す
るほかはなく,その後も「外国人」としての身分が継続するもの
として取り扱う。
これを強制退去手続における認定の場面についてみると,入管
法上,入国審査官は,それまで在留管理の中で外国人として取り
扱われてきた容疑者が強制退去対象者に該当するかどうかを審査
することとされており,国籍法所定の日本国籍取得原因が存在し
ないことを行政庁に積極的に審査,認定させるべき仕組みをとっ
ておらず,むしろ,その者が国籍法所定の日本国籍取得に係る要
件事実を立証しない者であることをもって「外国人」であると認
定することを前提としている。
実質的に見ても,上陸時あるいは在留時においては,日本国籍
取得要件該当性の立証がされないために「外国人」とされていた
者について,外国人に対する在留管理の処遇の一場面である強制
退去手続においては,処分行政庁が新たに国籍法所定の日本国籍
取得に係る要件事実の不存在について立証責任を負わなければな
らないとなると,仮にその立証ができなければ,「外国人」とし
て入国又は在留し,その在留管理に服していた者が,退去強制手
続の場面では「外国人」には当たらないために引き続きその者の
本邦への在留継続を認めざるを得なくなるという結果を招来しか
ねないことになるが,そのような結果が不合理であることは明ら
かであり,「本邦に入国し,又は本邦から出国するすべての人の
出入国の公正な管理を図る」という法目的を阻害するものとなり
かねない。
エなお,控訴人は,強制退去の対象となるか否かは,対象者が入
管法の「外国人」に該当するか否かで客観的に決定されるもので
あり,対象者がどのように入国したかは関係がないかのように主
張するが,「外国人」として上陸審査を受けて在留資格及び在留
期間が決定され,上陸が許可された場合は,「日本国籍を有しな
い者」として本邦に入国したのであるから,以後,その者につき,
国籍確認訴訟等により日本国籍者であることが立証されない限り,
入管法上外国人として扱うことは当然であるし,このことは上陸
時に日本国籍者たることを立証していない国籍不明者や無国籍者,
あるいは正式な入国手続を取らなかった不法入国者等,同法3条
の規定に違反して本邦に入国した者についても同様に当てはまる。
以上の扱いは,その者が「真に日本国籍を有する者であるか否
か」ということとは次元を異にする問題であり,飽くまで,法が,
本邦に入国した者について,その者を「外国人」として扱うか,
日本国籍を有する者として扱うかという出入国管理行政の問題で
あり,控訴人はこの点を混同して主張している。
(2)また,立証責任を考える上では,入管法24条柱書きにいう「外
国人」が,「日本の国籍を有しない者」(同法2条2号)と定義づ
けられた法律概念であり,当該処分の名宛人が我が国の国籍法上の
日本国籍者であるのかそうでないのかという,国籍法上の法律効果
を前提とした日本国籍者と表裏の関係にある概念であるというこ
とも念頭に置く必要があり,退去強制令書発付処分取消訴訟と国籍
確認訴訟が併合される場合,国籍確認訴訟については控訴人におい
て日本国籍の取得原因について立証責任があるのに,退去強制令書
発付処分取消訴訟において被控訴人に日本国籍を有しないことの
立証責任を負担させるというのは一貫しない。
(3)当事者間の公平及び立証の難易から見ても,日本国籍取得に係
る要件事実の不存在の立証責任を被控訴人が負うことは相当では
ない。
すなわち,処分行政庁が国籍法所定の日本国籍取得に係る要件事
実そのものの「不存在」を立証することは,もとより悪魔の証明を
要求することに等しい。その一方で,日本国籍取得要件該当事実は,
日本国籍を有すると主張する者自身やその尊属に関する事実であ
って,その者の側により多くの情報や証拠が存在しているのが通常
である。
(控訴人の主張)
(1)そもそも立証責任とは,訴訟の当事者双方が主張立証を尽くした
結果,なお一定の主要事実について真偽が不明である場合,その点
についていずれの当事者が不利益を負うかの問題であるから,「日
本国籍を有することについて,立証がない者であることを処分行政
庁が主張立証すれば足りる」という被控訴人の主張の趣旨が不明で
ある。
(2)被控訴人は,専ら入管当局による外国人の入出国・在留管理上の
実務的視点から本件についての主張立証責任を展開しているように
見受けられるが,問題となっているのは,行政事件訴訟における立
証責任の分配の問題であって,違反調査を行い,退去強制令書を発
付する入管当局の手続の内容や運用に当たっての便宜,当局の負担
から主張立証責任の分配が決定されるわけではなく,処分時におけ
る認定の正確性には自ずと限界があるということを前提としながら
も,誤った認定がされた場合,行政事件訴訟の段階でも原則的に処
分行政庁に対して主張立証責任を負担させて誤った処分からの救済
を保障すべきものである。
(3)ア被控訴人は,入管法上の「外国人」は,在留管理の対象とされ
るべきかの前提となる身分事項であり,処分の性質の違いから主
張立証責任の分配の中身を異ならせる立場を採っていないなどと
主張する。
しかし,在留管理の前提となる身分事項であることが,なぜ被
控訴人主張の根拠になるか不明である。
そもそも,入管法は「外国人」を「日本国籍を有しない者をい
う」と定義しており,在留管理の対象となるか否かは,対象者が
同定義に該当するか否かによるのであり,在留管理の一環として
侵害処分を行う場合に,対象者が「外国人」であることについて
立証責任を負うと解することは入管法の目的が外国人の在留管理
にあることと何ら矛盾することではない。
イ被控訴人は,入管法が「外国人」としての入国と日本国籍者と
しての上陸の二通りしか予定していないから,「外国人」として
上陸した者に対しては,日本国籍者たる立証がされない限り「外
国人」としての在留管理を予定していると主張する。
しかしながら,同法は,「日本国籍を有しない者」を「外国人」
と定義しているのであるから,日本国籍を有する者が便宜的に「外
国人」として入国したとしても,この者が入管法上「外国人」と
なる余地はなく,したがって同法上「外国人」としての在留管理
の対象となることはあり得ないし,この者の日本における在留が
不法残留の罪を構成することもない。
また,入管法上は,対象者が入国手続を経ないで入国した場合
についても規定しているから,入管法が「外国人」としての入国
と日本国籍者としての上陸の二通りしか予定していないという主
張も誤りである。同法上,強制退去の対象となるかどうかは,対
象者が「外国人」に該当するか否かで客観的に決定されることを
法が予定しているといわざるを得ない。
ウまた,被控訴人は,退去強制手続において,対象者について日
本国籍取得要件事実が存在しないことを処分行政庁が審査,認定
させる仕組みを採っていない点を指摘するが,退去強制手続の仕
組みと行政処分取消訴訟における立証責任は独立したものであり,
前者が後者の根拠となるものではないし,退去強制手続の過程で,
対象者について日本国籍を有することの蓋然性を示す資料が示さ
れた場合,被控訴人が対象者について日本国籍を有しないことを
十分に調査する義務を負うことは当然である。
(4)被控訴人は,当事者間の公平や立証の難易についても指摘するが,
控訴人としては,保有する限りの資料を提出し,控訴人の日本国籍
取得要件事実のほとんどを立証しており,立証が不十分なのは,A
とBが婚姻届を提出しなかったという事実のみであり,被控訴人は,
AとBが婚姻届を提出したという事実を立証すれば足りることから
すると,この立証責任を控訴人に負わせることは明らかに当事者間
の公平に反する。
また,控訴人は,フィリピンのパスポートにより上陸許可を得て
いるが,同事実から,控訴人が日本国籍を有しないことが事実上推
定されるなどとはいえない。控訴人は,平成10年に本邦に上陸し
た当時,自分が日本国籍を有するとは認識しておらず,したがって,
控訴人がフィリピンのパスポートで日本に上陸したのは極めて自然
であって,このことが控訴人が客観的に日本国籍を有していないこ
とを推定させる根拠にはなり得ない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)について
入管法は,外国人の出入国管理が元来は国家の自由裁量によるもの
で,かつ迅速に行う必要があるという側面と,上陸の拒否や退去強制
手続等外国人の利益に大きな影響を与える決定に際して慎重な手続を
要することから,行政手続法や行政不服審査法とは別個に制定された
手続法であるところ,その出入国,在留手続においては,本邦に上陸
するに際して,外国人として上陸する場合はもとより,たとい日本国
籍を有する者と主張されても,有効な旅券,又は日本の国籍を有する
ことを証する文書によって日本国籍を間接的に証明できない場合は,
本邦への上陸手続としては権利としての帰国確認手続を認めず,第3
章による上陸手続を,その後の在留及び出国についても,退去強制手
続を含めて第4,第5章,第5章の2の適用を予定しているものと解
される。何となれば,大方の日本人にあっては,日本国籍の取得を根
拠づける直接証明手段を有さないのが通常であって,入管法61条は,
戸籍に基づき発給される有効な旅券又は日本の国籍を有することを証
する文書という間接証明文書を所持すれば,日本国籍を有することの
証明(国籍証明)が一応尽くされたものとして帰国確認制度を適用し,
反対に,そのような間接証明文書を所持しない場合は,日本国籍を有
することの証明がない,すなわち,日本国籍を有しない者(外国人と
しての身分を占有する者)として扱い,帰国確認制度ではなく,入国
(上陸)制度の適用を予定していることを前提とするものと解される
からである。
そうとすれば,本訴においては,被控訴人において,本件退令発付
処分の要件である「外国人」の立証として,控訴人が上記のように日
本国籍を有しない者として上陸の許可を受け,入管法上の在留管理の
対象となっている者,あるいは在留管理の対象となるべき者という手
続的地位にあることを立証すれば足り,控訴人がこのような退去強制
手続の適用を排除するためには,改めて,上記のような有効な旅券又
は日本の国籍を証する文書という間接証明資料を所持すること(日本
人としての身分の占有),あるいは実体法上日本国籍を有すること(国
籍取得原因)を主張立証することを要するというべきである。
2争点(2)について
(1)しかして,本件では,控訴人が外国人としての入国(上陸)手続
を践んだ者で,入管法上の在留管理の対象者でありながら,在留期
限を超えて本邦に在留していることは前提となる事実のとおりであ
り,かつ,控訴人については上記のような間接証明資料を所持しな
いことは明らかであるから,出生による日本国籍の取得原因(①控
訴人の生父であるCとの法的父子関係の存否,②生母であるDの日
本国籍の存否)の有無につき検討する。
(2)前提となる事実に加え,証拠(甲4,6ないし10〔枝番を含む〕,
16,原審証人Dの証言,原審における控訴人本人)によれば,以
下の事実が認められる。
アA(平成▲年▲月▲日死亡)は,昭和22年ころから昭和28
年ころまで沖縄でアメリカ軍の軍属として過ごし,その任務期間
中に,日本人で鹿児島県出身と称するBと出会い,その間にD(昭
和▲年▲月▲日生)をもうけたが,昭和28年ころ,当時2歳に
なっていたDを伴いフィリピンの実家に帰国した。フィリピンで
「名付け親」というのは,結婚の立会人かつ証人であり,結婚を
見届けるとともに結婚を証明する書類に署名するなどの役割を果
たす者であるが,Dの友人であるE弁護士は,後年,Dに対し,
Eの母が昭和22年から昭和26年までの間,沖縄の米軍キャン
プで洗濯班の監督者として稼働しているときに,AとBの結婚見
届け人をした旨を教えた。
イDは,物心ついたころにはAが他に家族を持って別に生活して
いたため,高校卒業までは主としてAの祖母と叔母に養育された
が,通学したマニラ市内のF小学校の第1学年(昭和33年)か
ら第4学年(昭和36年)の永久保存録には,氏名を「G」,ミ
ドルネームを「○」,出生地を「日本,沖縄」と記載されている。
また,Aは近親者に,在沖中に,日本人であるBと結婚しでDが
生まれたこと,Dの日本名はHであることを話したが,Bとの顛
末は語らなかった。
ウDは,昭和45年ころからCと同居し,二人の間に,昭和▲年
▲月▲日控訴人を,昭和▲年▲月▲日Iをもうけたが,その後C
と生活を別ち,控訴人はCの祖父母に養育されるところとなった。
そして,Dは,平成7年9月8日Jと結婚して今日に至っている。
エところで,本件では,Dについては3通の身分関係記録,控訴
人については1通の身分関係記録が証拠提出されているが,その
1がDの申告に基づく昭和46年3月31日付け控訴人の出生証
明書(甲4の1),その2がDの申告に基づく平成7年7月19
日付けD第1出生証明書(甲9の1),その3がDとJの申告に
基づく同年9月8日付け婚姻証明書(甲6の1),その4がDの
従姉妹であるKの申告に基づく平成14年1月11日付けD第2
出生証明書(甲8の1)である。このうち,D第1出生証明書は,
Jとの婚姻届に必要な出生証明書がないため作成されたもので,
第2出生証明書もパスポートの発行を受けるのに出生証明書が見
あたらないため改めて作成されたものである。
オそして,控訴人の出生証明書には「D(出産時19歳)の氏名
をL,その出生地を日本国沖縄,DとCの結婚日が昭和44年5
月27日,控訴人がその嫡出子」との記載が,Dの第1出生証明
書には「昭和▲年▲月▲日,α,β通で出生し,父はA,母は日
本人B,AとBの婚姻の日付は出生記録簿に記載なし」との記載
が,婚姻証明書にはD(未婚)の「氏名がL,昭和▲年▲月▲日
にマニラで出生」との記載が,D第2出生証明書には「氏名がL
で,昭和▲年▲月▲日フィリピンのγで出生し,母は日本国籍の
Bで,D出産時の年齢が30歳」との記載がある。
(3)控訴人の日本国籍取得の有無
アそこで,控訴人が出生により日本国籍を取得したか否かを検討
するに,旧国籍法2条3号は,「父が知れない場合又は国籍を有
しない場合において,母が日本国民であるとき」は日本国民とす
る旨規定しているのであるから,控訴人と生父であるフィリピン
国籍を有するCとの間に法律上の父子関係があれば,父がフィリ
ピン国籍を有するものとして控訴人が日本国籍を取得する余地は
なく,同じく,控訴人とCとの間に法律上の父子関係がない場合
であっても,生母であるDが日本国籍を有しなければ控訴人が日
本国籍を取得する余地が存在しない。そこで,まず,Dが出生に
より日本国籍を取得したか否かにつき検討を進めた場合,Dが日
本国籍を有する者であるといえるためには,同じく旧国籍法2条
3号に従い,Dが出生時に生父であるAと法律上の父子関係にあ
ったか否か,Bといわれる生母が日本人であるか否かが問題とさ
れる。
イ後者についてみれば,当裁判所は,Dの生母は,日本国籍を有
するBなる人物であると判断するが,その理由は,以下のとおり
補正するほかは,原判決21頁17行目から23頁8行目までに
記載するのと同一であるから,これを引用する。
(ア)原判決21頁17行目の「(ウ)」を「(ア)」,22頁7行
目の「(エ)」を「(イ)」,23頁6行目の「(オ)」を「(ウ)」
と改める。
(イ)22頁5行目の「蓋然性が高い」を削る。
(ウ)22頁7行目の「被告は,」の次に「そもそもBなる人物
の存在すら,これを裏付ける戸籍等も提出されておらず,これ
を確認することができないし,」を付加する。
(エ)22頁13行目から23頁4行目までを以下のとおり改め
る。
「しかしながら,戸籍を確認することができないからといって,
直ちにBなる人物が確認できないとはいえない。また,控訴人
が提出する証明書については,矛盾した記載があり,当該記載
内容を全面的に信用することができないのは被控訴人主張のと
おりであるが,少なくとも,物心ついてからのDが,生父であ
るAから,同女の母親は日本人であるBであり,Aとの間の子
として沖縄県で出生したと聞かされ,同女もそのような認識を
有して今日に至っていることは疑問を差し挟む余地はない。そ
うである以上,Dの母親は,沖縄県において少なくともBと名
乗る女性であったと認めるのが相当であり,そのような女性は,
日本国籍を有する者であった可能性が極めて高いというべきで
ある。」
(オ)23頁8行目の「といえる蓋然性はあるというべきである」
を「と認められる」と改める。
ウそこで前者について検討した場合,当裁判所は,Dと生父であ
るフィリピン国籍を有するAの間に法律上の父子関係がないとは
認め難いと判断するものであるが,その理由は以下のとおりであ
る。
(ア)前提問題としてのAとBの婚姻関係
原判決23頁10行目から24頁17行目のとおりであるか
ら,これを引用する(ただし,原判決23頁19行目の「『母
の夫』と」の次に「規定しており」を加える。)。
(イ)前記認定のとおり,控訴人やDの身分関係記録の記載中に
は相互に矛盾するところがあり,例えば,Dが昭和28年に2
歳でフィリピンに入国していることからすれば,その生年月日
を昭和▲年▲月▲日とする記載(Dの第1,第2出生証明書,
婚姻証明書)は入国年を出生年と違えた申告によるものである
し,その出生場所をフィリピン国内とする記載(婚姻証明書,
第2出生証明書)も事実に沿わないもので,その時々のDの都
合に合わせて作成されている。翻って考えてみれば,Dは昭和
28年の2歳時に,両親の都合で生母と引き裂かれた過酷な境
遇を歩むようになったもので,生父も平成11年までは存命し
たのであるから,せめて,生母と生き別れになった事情,両親
の沖縄での生活実態等の情報を得ていても不自然ではないが,
その唯一の語り部となった生父が余り多くを話さなかったとの
理由でその間の情報がとぎれてしまっている。そして,フィリ
ピン民法が離婚を禁止していることから,もし,帰国後のAが
正式の婚姻をしているとすれば,Bとの間に婚姻が成立してい
ない可能性も考えられないでもないが,この点の消息も本件証
拠上不明である。また,Bはフィリピンに入国することはなか
ったから,もし婚姻手続を了したとすれば,その挙行地は沖縄
県と推測され,その方式として戸籍法の定めるところによる住
所地沖縄県での届出又はBの本籍地といわれる鹿児島県での届
出(民法739条,戸籍法25条),住所地沖縄県での届出(旧
民法775条,旧戸籍法101条)が必要であったものである
が,少なくとも,二人がフィリピン民法の方式による婚姻の儀
式を行った可能性の強い限り,わが国民法(ないし旧民法)に
より戸籍吏員(市町村長)に対する届出をなした可能性も払拭
できない。戸籍法,旧戸籍法によれば,出生届には嫡出子の有
無,父母が結婚式を挙げたときはその年月日の記載を要すると
ころ,原審における調査嘱託の結果によれば,米軍基地周辺市
町村である沖縄県沖縄市ほか22市町村には,Dの日本名「H」
の臨時戸籍が作成された形跡がないことが認められるが,この
事実自体は上記判断を左右するものではない。
(ウ)本件のように,母が血統主義により日本国籍を取得したこ
とを立証する場合,出生時の祖父母の婚姻の成否の証明が必要
となり,一般的にその証明に困難を伴うことは十分理解できる
が,本件証拠上,控訴人の祖父母の婚姻の成否については,そ
のほとんどが母Dの生父Aからの伝聞で,それによっても,祖
父母の婚姻が成立していないことについては十分な心証を得る
ことができず,他に,それを認めるにたる資料は本件全証拠を
検討しても発見できないというほかない。
よって,控訴人の生母Dが日本国籍を有するとは認められな
い。
エ上記のとおり,控訴人の生母であるDが日本国籍を有するとは
認められない以上,控訴人が日本国籍を有するものと認めるに足
りない。
3争点(3)について
当裁判所も本件裁決が裁量権の範囲を超え,又はその逸脱があった
ものとして違法であるとは認められないと判断するが,その理由は,
原判決「事実及び理由」中「第4当裁判所の判断」3項に記載のと
おりであるから,これを引用する。
なお,控訴人は,前記認定の消極事情は,特別在留許可に係るガイ
ドラインの例示する消極事情に該当しないなどと主張するが,ガイド
ラインは,飽くまで例示にすぎず,法務大臣の裁量権行使の基準を定
めたものでもない。控訴人は,風営法違反については,不起訴処分と
されたものであるから,判断の基礎とならないなどとも主張するが,
同ガイドラインは,刑罰法令違反が認められることを消極要素として
おり,それにより起訴され,あるは有罪判決を受けたことを消極要素
としているものではないから,上記主張は,理由がない。
4争点(4)について
上記のとおり,本件裁決が違法とはいえない以上,本件退令発付処
分もまた違法とはいえない。
第4結論
以上によれば,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であ
り,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文の
とおり判決する。
大阪高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官渡邉安一
裁判官安達嗣雄
裁判官三村憲吾

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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
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経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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