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平成16年(行ケ)第25号 再審請求却下決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成16年3月9日
判          決
原        告    株式会社シンセイ
訴訟代理人弁理士    永島郁二
  被        告    特許庁長官 今井康夫
    指定代理人    粟津憲一
    同      鈴木公子
    同      高木 進
    同      涌井幸一
主           文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1)特許庁が再審2003-95002号事件について平成15年12月3日に
した決定を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2 本訴提起に至る経緯
 証拠(甲1ないし10)によれば,次の事実が認められる。
(1)特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方
法」とする特許第3138916号の特許(平成8年12月24日出願,平成12
年12月15日設定登録。以下「本件特許」といい,その発明を「本件発明」とい
う。登録時の請求項の数は1である。)の特許権者であった。
本件特許に対し,特許異議の申立てがあり,特許庁は,この申立てを,異議
2001-72306号事件として審理し,その結果,平成14年2月15日,
「特許第3138916号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定(以下
「本件決定」という。)をし,同年3月6日その謄本を原告に送達した。
(2)本件決定の理由
要するに,本件発明は,公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすること
ができたものであるから,特許法29条2項の規定に該当する,したがって,本件
特許は,この規定に違反して登録されたものである,ということである。
(3)本件決定に係る取消訴訟の判決の確定と同判決に対する再審の申立て
  原告は,本件決定の取消しを求めて,東京高等裁判所に提訴した。同裁判所
は,この事件を平成14年(行ケ)第122号として審理し,その結果,平成15
年2月10日,「原告の請求を棄却する。」との判決(以下「本件判決」とい
う。)をし,同判決は確定した。原告は,平成15年3月25日,東京高等裁判所
に対し,本件判決に対する再審の申立てをした。同裁判所は,同申立てを平成15
年(行ソ)第2号事件として審理し,その結果,平成15年5月7日,「本件再審
の訴えを却下する。」との決定をした。
(4)本件決定に対する再審の申立て
 原告は,平成15年5月19日,本件決定に対する再審の申立てをした。特
許庁は,この申立てを再審2003-95002号事件として審理し,その結果,
平成15年12月3日,「本件再審請求を却下する。」との決定(以下「本件再審
決定」という。)をした。
(5)本件再審決定の内容
 本件再審決定は,特許法第171条第2項で準用する民事訴訟法第338条
第1項第9号所定の再審事由の申立てに対し,次のとおり判断した。
「2.特許法第171条第2項で準用する民事訴訟法第338条第1項第9号
にいう判断遺脱というような再審事実は、そのことがらの性質上、通例決定謄本の
送達を受けてこれを一読すれば容易に知りうるはずのものであるから、特段の事情
のない限り、同決定確定前に判断の遺脱のあったことを知りえたものといわざるを
えない。
3.記録によれば、再審請求人である特許権者は、平成14年3月6日に決定
謄本の送達を受けたことが明らかであるから、特段の事情のない本件においては、
再審請求人は上記送達を受けた時点で再審事実を知ったものと認めるのが相当であ
る。他方、再審請求人が原決定に対する控訴審において、再審事実を主張しなかっ
たことは当庁において顕著な事実であるので、結局、本件再審の請求は特許法第1
71条第2項で準用する民事訴訟法第338条第1項ただし書の規定に違反するも
のとして不適法というべきであり、却下を免れない。」
3 当裁判所の判断
原告の本件決定に対する再審の申立ての理由は,本件決定には,本件発明と本
件決定が引用した引用例との相違点に関する認定判断に誤りがある,原告は,本件
決定にこのような誤りがあることについて,本件判決が確定した後に気が付いた,
というものである(甲12の1・2,本件の訴状)。原告は,この再審事由を,特
許法171条2項で準用する民事訴訟法338条1項9号所定の再審事由,すなわ
ち,「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。」
(判決注・取消決定についてこの再審事由を準用している特許法177条によれ
ば,この再審事由は「取消決定に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱
があったこと」と読み替えることになる。)に当たる,と主張している。しかし,
民事訴訟法第338条第1項第9号でいうところの判断遺脱とは,判決に影響を及
ぼすべき重要な事項について,当事者が主張していたにもかかわらず,その判断を
しなかった場合をいうものであり(取消決定についても,民事訴訟法第338条第
1項第9号所定の再審事由が準用されているのであるから,これと同様に解すべき
であることは当然である。),当事者がそもそも主張していなかったことについ
て,判断の遺脱ということはあり得ないことである。原告は,本件決定について,
本件判決がなされた後に,原告が主張すべきであったことに気が付いた,本件決定
が現に行っている認定判断の誤りに関する主張を,判断遺脱という再審事由とし
て,新たに主張するというものであり,本件決定の段階において,原告が主張して
いたことについて,本件決定において判断の遺脱があった,ということを主張する
ものではない。このような原告の再審事由の主張は,その主張自体からみて,失当
であることが明らかである。原告の主張は,本来,本件決定に係る取消訴訟におい
て主張すべきであった,本件決定の認定判断の誤りに関する主張を,取消訴訟にお
いて主張しなかったため,これを,本件判決確定後に本件決定の再審事由の名の下
に主張しようとするものであるにすぎない。本件判決確定後にこのような主張をす
ることを許容すれば,特許異議の申立手続若しくは取消決定に係る取消訴訟の手続
に相当するものを何度も蒸し返すことを許容することになることが明らかである。
本件再審決定は,上記のとおりであり,本判決とは異なる理由により,原告の再審
の申立を却下しているものの,原告主張の再審事由の主張が失当であることからす
れば,本件の再審の申立てを却下したその結論において誤りがないものであること
が明らかである。
4 以上のとおりであるから,本訴請求は理由がない。そこでこれを棄却すること
とし,訴訟費用の負担については,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用
して,主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所知的財産第3部(旧第6民事部)
 
    裁判長裁判官     山  下  和  明
  
       裁判官     設  樂  隆  一
 裁判官阿部正幸は,転補のため署名押印することができない。
     
  裁判長裁判官     山  下  和  明

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